静止画、動画それぞれの表現のプロフェッショナルが、同じカメラ、同じ場所、同じモチーフを同時に撮影したらどのような作品が生まれるのか。それぞれの視点、それぞれの価値観で切り取られた同じ日常は、異なる「美しい世界」へと変わる。
今回は1.0型センサーを搭載したプレミアムコンパクトデジタルカメラCyber-shot RX100
V(DSC-RX100M5A)で、フォトグラファーの6151さんと映像作家のTAKAKURA
DAISUKE(高倉大輔)さんが、都会の喧噪(けんそう)と、喧噪の中にありながらも心を解放できる場所をテーマに撮影。撮影後に、共に撮影した感想や撮影の進めかた、使用したカメラの魅力について話を聞きました。
6151さんの静止画作品
:RX100 V,57mm,F3.5,1/250秒,ISO400
:RX100 V,70mm,F2.8,1/250秒,ISO160
:RX100 V,56mm,F2.8,1/500秒,ISO200
:RX100 V,56mm,F2.8,1/500秒,ISO200
:RX100 V,24mm,F3.5,1/2500秒,ISO200
:RX100 V,24mm,F3.5,1/500秒,ISO80
:RX100 V,63mm,F11,1/500秒,ISO80
:RX100 V,24mm,F2.5,1/250秒,ISO80
:RX100 V,52mm,F2.8,1/640秒,ISO500
:RX100 V,24mm,F5,1/200秒,ISO100
TAKAKURA DAISUKEさんの動画作品
初対面ながら相性の良さを実感。
ふたりの共通点はフットワークの軽さ
まずはおふたりの関係からお聞きしたいのですが、今回の撮影が初対面ですか?
高倉さん(以下敬称略):実は、今回の撮影が初対面です。
6151さん(以下敬称略):打ち合わせの時に初めてお会いして、最初は緊張しました(笑)。
高倉:でも、すぐに意気投合しましたよね。お互いに気を遣うこともなく、自然に打ち解けた感じだったと思いますが、どうですか?
6151:そうですね。本当に相手が高倉さんでよかった、と思いました。私はわりとマイペースで、「これが撮りたい」と言っていたのに、撮影当日は全然違うものを撮りたくなることもあるので。でも高倉さんは「あ、いいですよ」と、嫌な顔ひとつせずに対応してくれて「なんて心の広い人なんだ!」と思いました。
高倉:お互いに相性が良かったのかもしれませんね。僕もフットワクークは軽いほうなので、ペースを乱されている感じは一切しませんでしたよ。
6151: 私は高倉さんがどんな人かまったくわからなかったので、事前に少しお仕事内容をチェックしましたが、さすがに人柄まではわからなかった。
高倉: 本当ですか!?僕は名前とプロフィールくらいしか知りませんでしたよ。
6151: では、フォトグラファーだということはご存じですよね?(笑)あと、写真の仕事とは別に全国で写真講座の講師をしていて、旅モノや東京のカフェ巡りなどの企画では写真だけでなく記事も執筆しています。高倉さんのことはある程度わかっているつもりですが、一応仕事内容を教えてもらってもいいですか?
6151/
フォトグラファー
インスタグラムでの活動をきっかけにフリーランスの写真家に転身。ファッション、コスメ、食、空間など国内外の様々な企業とタイアップ撮影を行う傍ら、写真講座への登壇など東京を拠点にトラベルフォトグラファーとして海外や国内で旅に纏わる執筆なども手がける。情報誌『Hanako(マガジンハウス)』やJTBパブリッシングのおでかけメディア『るるぶ&more.』にて連載をもつ。
https://www.instagram.com/6151/ https://twitter.com/besidecoffee高倉: 僕は、企業のコマーシャルやプロモーションなどの映像をつくるのが主な仕事です。仕事ではα7S IIとα7R IIを使い分けています。RXシリーズもいろいろ使っているので、6151さんとの撮影は楽しみにしていました!
TAKAKURA DAISUKE(高倉大輔)/
映像作家
地形やその土地の雰囲気など環境を生かし、ポップで親しみのある映像、ダイナミックで臨場感のある映像を得意とする若手映像作家。フィリピン政府観光省・ドイツ観光局・ユニバーサルミュージック・OAKLEYなど企業や政府の映像、写真を制作。モデルとしても現役活動中で、大手飲料メーカー・飲食店・紳士服専門店のTVCMに出演実績をもつ。出演する立場と撮影する立場の両極端なワークバランスを生かし、シームレスでミニマムな制作を心がけている。
https://www.takakuradaisuke.com/ https://www.instagram.com/takakuradaisuke/6151: 高倉さんの動画も事前に見ていたので、「かっこいい作品をつくる人だな」と思っていました。なので、会う時は余計に緊張していました(笑)。
ふたりが撮影で使用したアイテムはこちら
テーマは都会のさまざまな表情を捉えること。
喧噪とそこからの解放をメインに撮影
撮影のテーマはどのように決めたのですか?
高倉: 打ち合わせで話をして、ふたりで決めた感じですよね。
6151: 撮影日は雨予報だったのに驚くほどいい天気になってしまったので撮影場所の変更をしましたが、ディープな匂いがする「都会の喧噪」をテーマに撮影にのぞみました。
高倉: いい意味で、現場判断になりましたよね。絵コンテ通りに撮るのではなく、絵コンテを完全に無視して撮る、みたいな。ロケーションも当日の朝、カフェでお茶しながら決めたくらいですから。
6151: 朝の打ち合わせで行きたいところを選別してルートを決めましたね。日が沈む前に都内の河川敷に行き、最後は湾岸で夜景を撮る、みたいな感じで。結局、行ったことがないところが多く、行き当たりばったりだったところもあっておもしろかった。
高倉: 河川敷は都会の喧噪からの解放、というイメージで選びました。都会の中のコントラストというか、「静」と「動」みたいなものも表現したいと思って。
6151: スケジュール通りにいかないところもありましたが、結果オーライで撮影は楽しかったです!
高倉: 予定の場所を1ヵ所飛ばしましたからね。それでも僕も大満足です!
高架下のワンシーンをファーストカットに選んだのはなぜですか?
6151: このシーンはふたりの中でもけっこう盛り上がりましたからね。ドラマチックなワンシーンに思えたので、高倉さんに思わず「ここで撮って!」と興奮しながら言ったことを覚えています。
高倉: そうそう。排水された水が溜まっていたので、その映り込みを生かしておもしろそうな映像が撮れそうだな、と思いました。僕はシューティンググリップを使って逆さに構えて、水面ギリギリのところから撮っています。
高倉: テーマを考えても、これをファーストカットにするのは僕もベストだと思いました。なんとなく都会のディープな雰囲気を感じますからね。6151さんはいいところに人が入るまでかなり粘って撮っていた気がします。
6151: そうですね、いい作品が撮れそうな匂いがしたのでかなり粘りましたね(笑)。ただ、高架下が暗くて、抜けた向こう側が明るかったので両方を撮るには難しいコンディション。でも「RX100 V」はダイナミックレンジが広いので、シルエットも潰れ過ぎず、明るい部分も白飛びせずに表現することができました。白と黒の世界を生かし合えるのは素晴らしいことですね。
高倉: お互いにかっこいいと思うシーンをファーストカットに選んだわけですが、結果、カメラのポテンシャルもわかるシーンを選んだということですね。
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AFや連写も優秀で、瞬間を逃さず撮影。
夕景もノイズが少なく美しい画が得られる
6151さんにお聞きします。撮影時、AFは使いましたか?
6151: 今回はすべてAFで撮影しています。人物などの動く被写体を撮るときは連写も多用しました。ストリート写真は被写体が来るまで待って撮影することが多いので、いいタイミングを逃さないように連写を活用します。何が起こるかわからないというか、後で選別するときにどんな動きが撮れているのか楽しみなので。
高倉: このカメラはAFに迷いがないですよね。動画でもフォーカスが抜けている感じは一切なかった。
6151: 静止画でもそうでした。例えば下の電車のシーンも連写を使いましたが、AFが抜けることなく、的確に車両を捉えていましたからね。動く被写体にもかなり精度高くピントを合わせつづけてくれました。
6151: あと、夕暮れの薄暗いシーンでもノイズが少なく、きれいに撮れるという印象です。とくに下の作品のようなシーンで撮影したときにノイズの少なさを感じました。これは1.0型の大型センサーや画像処理エンジンの性能が生きている印象です。
高倉: これ、JPEGの撮って出しを見せてもらいましたが、驚くほどきれいでしたよね。
6151: 元々の画像にノイズが少ないので、調整してもまだまだ耐えられるという感じでした。この時の夕景も含めて、とにかくあっちを撮ろう、こっちを撮ろうと動き回っていたので、高倉さん、正直なところ疲れませんでしたか?
高倉: いやいや、6151さんを見ていて、改めて思うことも多かったので疲れているヒマはなかったです(笑)。僕は仕事柄、絵コンテを描いて、それに沿って撮影することが多いですが、動画を始めたてのころは今の6151さんのように、歩きながら「ここ、いいな」と思うシーンを撮っていました。でも、最近はそういう撮りかたをすることが少なくなっているので、改めて歩きながら見えるものや世界観があるんだな、と思いましたね。
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映像制作のプロも使える機能が満載。
「生きている街」を描くには最適なツール
高倉さん、「RX100 V」で動画を撮影した印象を聞かせてください。
高倉: 6151さん同様、暗所での低ノイズはかなり良かったです。動画でノイズを消すとなるとパソコンのスペックが相当必要になるので、最初からノイズが少ないのは素晴らしいことだと思います。あとはボタンカスタムができるところもいい。メニューから設定すると時間がかかってしまうので、よく使う機能はダイレクトに呼び出せるようにしています。
6151: 高倉さんがカスタムで割り当てている機能が知りたいです!
高倉: よく使うのは、ゴミ箱ボタンに割り当てている「NDフィルター」のオン・オフです。動画の場合、NDフィルターは瞬間的に必要になりますからね。ボタンを押すとNDを入れる、入れないを選択できるので、カスタムできて助かりました。
高倉: 上のシーンをはじめ、日が出ているシーンではかなりの確率でNDフィルターを活用しました。手のひらサイズの大きさ、しかもLog撮影ができて、NDフィルターが入っている「RX100 V」は動画撮影にぴったりのカメラです。このコンパクトさで映像制作のプロツールとして使える動画機能を備えているのはとても魅力的だと思いましたね。
6151: 「RX100 V」はチルト液晶が180度回転して自撮りしやすいのに、今回は自撮りしていなかったですよね。
高倉: 撮らなかったですね。ちょっと恥ずかしくて(笑)。
6151: 「撮らないの?」と聞いたら、ビクッとしていて(笑)。ぜひ撮って作品に入れ込んで欲しかったので、とても残念です。でも高倉さんと一緒に撮影できて、とても楽しかった。「ここは動画で撮ったら楽しいだろうな」というシーンがいくつもありましたから。
高倉: 例えばどんなシーン?
6151: 人が動いているシーンとか、鏡に囲まれた下の作品を撮影したシーンとか。
6151: 写真では伝えきれないことも動画なら撮れるだろうな、と思って。なので、高倉さんが撮っている時、「どんな風に撮るんだろう」とニヤニヤしながら見ていました(笑)。
高倉: 僕は一部を切り取った形で撮影しました。そのほうが見る人の目線も定まって集中して見ることができると思ったので。
6151: こういうシーンでは刻一刻と変わりゆく様子を伝えたいわけですよ。私は「生きている街」を描くためにストリート写真を撮っていますが、どうしても写真では伝えきれない部分がある。動画では音が入ったり、人や物が動いていたりして、写真より伝わることが多いですから。不思議な視点で捉えたり、動いたりすることを考えると、なんだかワクワクして楽しい!
高倉: 僕も楽しかったですよ。今回はあえて6151さんと同じカットを撮ろうと思ったので、6151さんの真横や少し上から撮っています。ある意味、僕の構図ではなく、6151さんの構図なので、「こう撮るのか」と新鮮な視点で見ることができました。
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スマートフォンは動画撮影の入口。
クオリティーを求めるなら専用機で撮影を
構図が6151さん主体ということであれば、高倉さんのエッセンスは編集時に入れていく感じですか?
高倉: そうですね。曲もメロウな部分とダイナミックな部分があるものを選ぶと思います。それを意識して素材も撮っていますからね。ゆっくりなところとスピーディーなところ、緩急をつけることで東京の騒がしさや、そこからの解放も表現できると思っています。
6151: 編集作業はどのくらいかかるものですか?
高倉: 今回は1分くらいの動画なので、半日あればできますね。
6151: 頭の中である程度イメージして、撮影にのぞんでいるから短時間でできるのですね。
高倉: そうですね。だいたい頭の中にイメージしているので、パソコンの前でなくても編集できる感覚です。
6151: 何それ、かっこいい!
高倉: 編集とは、つまりそういうことです(笑)。
6151: 私はスマートフォンで動画を撮ることもあるけど、編集はあまりしたことがないかも。でも今回、高倉さんが撮るところを見ていて「専用機のほうがスマートフォンより撮影時も編集時も自由度が高いな」と思いました。画質もいいし、思い描いたものにより近いものが撮れるし。
高倉: スマートフォンよりも圧倒的に専用機のほうがいい素材が撮れますからね。ズームしても画質が落ちないし、色再現性も比にならない。さらにチルト液晶を使えば楽な体勢で撮りたい画が撮れる。ポップアップ式のフラッシュも手で動かせば上向きにしてバウンスさせることもできますし。
6151: バウンスできるなんて知らなかった。直当てで使うことは滅多にないので、これができるとまた表現の幅が広がりそう。個人的にはツァイスのレンズが好きなので、ツァイスのロゴが入っているだけで「かわいい」と思って気分が上がります(笑)。
高倉: でも6151さんは、動画はスマートフォンで撮ることが多いわけですよね。
6151: 今は、私個人の記録として動画を撮るので、そこまでこだわっていないというのが正直なところです。だからこそスマートフォンで簡単に撮るわけですが、旅行の時はクオリティーを求めてαで撮っています。そう考えると、スマートフォンはあくまで入口。ここである程度、動画撮影に慣れて、そこから専用機にステップアップしていく感じです。
高倉: 僕も6151さんと同じように、いい意味でスマートフォンは専用機を持つための入口だと思っています。専用機の機能をスマートフォンに入れることはとうてい不可能ですし、結局、電話やメール、ネット検索などがメインのもの。だから、きれいな動画、思い通りの動画が撮りたいと思ったら専用機に移行する。だから6151さんは動画撮影の正しい道を歩いていると思いますよ。
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動画撮影に慣れることが一番の近道。
最初はこだわりを捨て、妥協することも大切
6151さん、今回高倉さんと一緒に撮影に出かけて、動画に対する思いに変化はありましたか?
6151: すごく影響されて、きちんとした動画作品を撮ってみたい、という思いが強くなりました。
高倉: 6151さんがつくる動画、興味津々です。どういうテーマで撮りたいですか?
6151: 東京のドラマチックなところを撮りたいです。今回撮影した場所もドラマチックでしたが、四季で東京の風景を撮ってみたい。派手ではなく、静かな感じで東京を表現してみたいです。今、動画へのモチベーションが上がっているので、ぜひ高倉さんから動画撮影のアドバイスをいただきたいです!
高倉: 今回の撮影でも思ったことですが、6151さんはこだわりが強い人なので、そのこだわりを一旦捨て去るといいと思いますよ。
6151: とても難しいことを言いますね!(笑)
高倉: 素材にはこだわってもいいと思うのですが、編集にまでこだわるとストレスになってきますからね。
6151: 無になる、ということですか?
高倉: 「とりあえず、こんな感じでいいか」というところで毎回終わらせてもいいのではないかと。そうすると編集に慣れてきますから、そこからこだわり始めればいいと思います。
6151: そうか、まずは慣れろということですね。
高倉: そういうことです。編集のこだわりが邪魔をして作品がつくれずにいる人もけっこういますからね。
6151: たしかに、「いい作品をつくらないといけない」みたいなプライドはあるかも。
高倉: そのこだわりはぜひ捨ててください(笑)。こだわり=個性なので、6151さんなら慣れてくればきっと自然にその部分が出てくると思いますよ。
6151: なるほど。今年は動画がうまく撮れるようにがんばりたいですね。今回の撮影で、動画づくりは楽しいとわかったので、動画に対するハードも下がりました。さらに高倉さんを見て勉強になったので、もし今後動画を撮る機会があればいろいろなことにトライしたいと思います。
高倉: そう思ってもらえただけで、今回一緒に撮影した甲斐がありますね。僕にとっても6151さんのいいところを盗めるいい機会でした。6151さんの動画、楽しみに待っています!