伊藤様：「清澄白河BASE」は2022年2月、“先端技術とクリエイティブが出会い、新たな表現手法を追求、想像を超えるコンテンツと感動を生み出す拠点”をコンセプトに開設されました。この新たなクリエイティブ拠点の主な機能のひとつとして、ソニーPCLが2020年より実証実験を開始した「バーチャルプロダクション」の常設スタジオがあります。昨今、人が集まることや移動が制限されるなか、時間や場所の制約にとらわれず撮影できるバーチャルプロダクションへの期待が映像制作業界において高まっています。

私たちがソリューションとして提供しているのは、LEDウォール型のバーチャルプロダクションです。なかでも「In-Camera VFX」は大型LEDディスプレイ、カメラトラッキングシステムとリアルタイムエンジンを組み合わせた撮影手法で、3DCGを中心としたバーチャル背景を大型LEDディスプレイに表示し、その手前にオブジェクトや人物を配置してカメラで撮影します。被写体の動きに合わせてカメラを動かすと背景のCGも追従するので、あたかもロケ地で実際に撮影したかのような、リアリティーのある映像を制作できます。こうした新たな映像表現の実現のためには、高精細・高輝度・広色域・広視野角・低反射など、さまざまな特長を併せ持つソニーの『Crystal LED』の導入は、必然だと感じています。

また、これまでのブルーバックやグリーンバックを使ったクロマキーという手法は、撮影後のポストプロダクションプロセスにおいて合成作業が必要になりますが、Crystal LED を使用したIn-Camera VFXの場合は、カメラで撮影した時点ですでにCGと実写の合成処理がほとんど終わっていることになります。映像制作全体のフローとしてプリプロダクションでの背景CG制作が必要となりますが、撮影後のポストプロダクション処理が軽減されるため、LEDウォール型のバーチャルプロダクションにとってスタジオに設置する大型ディスプレイには、映像制作のワークフローの効率化に貢献する役割もあるのです。

実際にその場所で撮影しているかのようなリアルな背景を表示可能

小川様：今回、清澄白河BASEに導入したCrystal LED Bシリーズは、その圧倒的な高輝度と広色域による華美になり過ぎない自然な色合いと暗部階調のなめらかさに、初めて見た瞬間から思わず目を奪われました。また、従来よりも照明の表面反射をさらに軽減させる低反射コーティングと広い視野角が、より自由なカメラワークでの撮影を可能にしています。そのCrystal LEDを曲面状に配置し、バーチャルプロダクションに最適な高精細な映像を描き出して活用しています。

伊藤様：ソニーPCLは2020年より、CM、映画、ドラマ、ミュージックビデオ、企業プレゼンテーション、オンラインイベントといったさまざまなコンテンツ制作において、すでに数多くのバーチャルプロダクション活用実績をあげています。Crystal LED以外のパネルを使用したこともありますが、映画監督などの映像制作者やクリエイターの皆様からのCrystal LEDへの信頼は厚く、「クリエイターが頭に思い描くイメージをそのまま表現できるディスプレイ」として、非常に高い評価をいただいています。

小川様：また、清澄白河BASEへの導入以前から、当社ではCrystal LEDを活用したイベント・プロモーションソリューションを国内外の大型案件で提供しています。たとえば、国際スポーツ大会のパブリックビューイングイベントやB2B向け大型展示会の企業ブースなどにおいて、超高精細映像が持つ凄みをCrystal LEDとともに伝えています。

高品質かつ高効率な映像制作の実現に貢献するCrystal LED

伊藤様：今後はより高い解像度、より高いフレームレートでの映像表現の追求や、より効率的なバーチャルプロダクション映像制作のフローを検討していきたいです。また、LEDとAR（拡張現実）の合成や配信など、Crystal LEDを活用した新しい映像表現を検討し、実用化していきたいと思っています。さらに、高精細映像へのニーズが高いエンタープライズ領域と呼ばれるデザイン部門やマーケティング部門向けのコンテンツ制作、バーチャルプロダクションにおいて重要かつ不可欠な背景アセット制作にも、引き続き取り組んでいきます。

バーチャルプロダクションを使った映像制作や表現手法は、日々進歩し続けています。私たちは、エンジニアはもちろんクリエイターの方々とも連携し、今後もCrystal LEDを駆使したバーチャルプロダクションをはじめとする映像制作の先端技術とクリエイティブワークを提供することで、クリエイターの思いやつくりたいものを形にし、新たな映像表現や多彩なユーザー体験で次の感動を生み出していきます。