2015年に花を撮るフォトグラファーとして独立。年間150回の写真教室やSONYへのレンズ作例写真の提供などをメインに活動中。著書に「花をながめて大切なことに気づく100の言葉」(かんき出版)・「最高の1枚を撮る・仕上げるで生み出す超絶写真術」(インプレス)がある。
2015・2016・2017、東京カメラ部コンテスト入選。
幻想的な花の写真を撮影している北村佑介さん。普段はα7IIに望遠レンズを付けて撮影することが多いという北村さんが、小型軽量コンパクトRX100 IIIを使ったとき、その写真はどのように変わるのだろう。お気に入りの作品をご紹介していただきながら、その撮影に使用したRX100 IIIの機能や撮影術をお伺いしました。
普段はα7IIに135mmの単焦点レンズを付けてボケが豊富な作品ばかり撮っているので、最初にRX100 IIIを手にしたときは若干戸惑いました。24-70mmの画角で1インチのセンサーサイズなので、いつものような写真は撮れないかも、と思ったんです。でも徐々にこのカメラの特徴を理解し、それを活かすことができてくると、RX100 IIIで撮った写真が自分の見せたい作風とマッチしてきました。
RX100 IIIを使って思ったのは、撮って出しの色がズバ抜けて好きということです。クリエイティブスタイルの「ディープ」に設定して、WBをカスタムで少し下げて、カラーバランスをブルーとマゼンタに少しずつ寄せています。その組み合わせで出る色が物凄く好きなんです。特に青と緑の色がいいですよね。花ってどうしても緑とセットになるので、そこの色で差が出ると思うんですが、ソニーさんの色は自分にとってドンピシャでしたね。
RAW現像で空の色を調整するため、撮影時はグレーの空を狙うんです。なので意外とどんよりとした空も好きで、曇りや雨の日にも撮影できるのはラッキーだなと思いますね。RAW現像で暗い部分を持ち上げたり明るい部分を落としたりする際に、想像以上に破綻がなくて驚きました。自分の理想とする色に容易に近付けられたので、レタッチがしやすく、かかる時間も短かったですね。
24-70mmの画角なので、折角なら花畑を広く撮ろうと思ったんです。僕は遠景も開放で撮ることが多いのですが、ピントのピークが来ているところ以外は緩やかにボケていることに驚きました。RX100 IIIが一台あれば、遠景も撮れるし花にクローズアップしても撮れる。使っていて面白いなと思いますね。
コスモス畑に形のいいコスモスがあったので、ストレートに青空を入れて撮影しました。少し角度が違うと花の形が伝わらなくなるので、花びらの形がわかるように真後ろから撮ることを意識しました。この場合、花びらが交差して影になっているところが一番ピントの山が掴みやすいので、DMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)でピントを合わせました。オートフォーカスでピントを合わせたあとに手動でピントを微調整できるのが便利なので、DMFを使うことが多いですね。
約5cmまでグッと被写体に近付けるので、コスモスを接写で撮影してみました。これだけ寄れればマクロレンズもいらないんじゃないかなと思いましたね。
朝日が強い時間に逆光で撮った一枚です。太陽の光がほぼダイレクトに入っていたのですが、これくらいコントラストが出てくれれば充分ですよね。あと驚いたのは、こんなに強い逆光でもAFが問題なく合ったこと。AF速度も速いですし、満足です。こういった自由なアングルで撮るときだけでなく、前ボケを作りたいときにもチルト式液晶はすごく役に立つんです。ボケを作るためにできるだけ枯葉の奥の方までカメラを埋めたいので、片手で操作できるこのサイズは魅力的ですね。
こちらもチルト式液晶を活かし、自分の足が入らないように注意しながら真上から撮りました。自分は画角やセンサーサイズで作風を決めているところがあって、短い焦点距離でアングルが自由に効くカメラを使うとローキーの写真になりやすいんです。だから今回はこういったテイストの写真はすごく撮りやすかったですね。写真右のシャドウ部も、黒つぶれせずに草や石のディテールが残っているところは見事だと思います。
こんなに小型軽量であれば、持ち運ぶときにカバンすらいらないですよね。今の時期は朝日がとてもきれいですが、起きた直後でもアウターを羽織ってRX100 IIIをポケットに入れるだけで瞬時に写真を撮りに行ける。
僕は普段から景色を見ながら散歩をするのが好きで、写真を始めるなら散歩をしているときに自然と目に入ってくる花を撮ろうと決めていました。そんな自分のスタイルにもRX100 IIIは合っていると思いますし、α7IIでは普段撮らないような風景や食べ物の写真なども撮るようになって、自分でも驚いています。今ではα7IIもRX100 IIIも両方とも使うのが楽しいですね。