2019年2月に携帯電話の世界的展示会MWC19 Barcelona(以下、MWC)で発表された、ソニーモバイルコミュニケーションズの新フラッグシップスマートフォン「Xperia 1(エクスペリア ワン)」。縦に長い21:9型ディスプレイやトリプルレンズカメラなど、シリーズ初の試みが際立つ本機は、世界中のメディア・識者から注目を集め、国内でも「日本ではいつ買えるようになるの?」「早く触ってみたい!」と、1日も早い国内投入が期待されていました。そんな中、2019年4月16日に報道機関向けの「Xperia 1体験会」が実施されました。ここではその様子を速報レポートいたします。
イベントが行われたのは東京品川のソニー本社・大会議室。今回は前評判の高い「Xperia 1」国内初お披露目ということで、テレビ、新聞、雑誌、Webニュースら、さまざまなメディアが集まっていました。
冒頭に行われた、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長・岸田光哉氏による挨拶では、この期待の新モデルがどのような想いをもって生み出されたかを、コンセプトムービーの映像と合わせて解説。これが『1から生まれ変わったXperia』であることを熱弁します。
その開発コンセプトは、『テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニーであるソニーが、薄型テレビ「ブラビア」や、デジタル一眼カメラ「α」で培った技術を惜しむことなく盛りこむ』(岸田社長)こと。Xperiaでは、これまでもそうした“One Sony”的な試みを積極的に行ってきたのですが、今回はその輪に、ソニーグループでプロ向け映像機材を開発してきたチームのノウハウを新たに投入し、『ソニーだけが実現できる想像を超えたエクスペリエンスを実現すること』を目指したそうです。
そして、気になる発売時期は「初夏以降」と改めて言及。
この夏、いよいよ新しいXperiaが動き出します!
続いて壇上に上がったのは、「Xperia 1」の商品開発リーダーである、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 企画部門 企画部コミュニケーション戦略課 課長 染谷洋祐氏。岸田社長の掲げたXperiaの新しいコンセプトを踏まえ、「Xperia 1」にどのような新機能が盛りこまれたのかを丁寧に説明してくれました。
まず第1に紹介された新機能が、『この製品最大の特徴』(染谷氏)である21:9の縦長ディスプレイ。この21:9という数値は、映画の画面比率とほぼ同じ数字。これによって「Xperia 1」では、数々の映画コンテンツを画面一杯に拡げて大画面で楽しむことができるようになりました。
そして、その上で、ディスプレイでは『TVとマスターモニターを手がけるソニーならではの、色を表現する2つの“哲学”』を体現。ブラビアの知見を活用し、インターネット動画なども含む、あらゆるコンテンツの輝度表現を拡張、高画質化する「HDRリマスター」と、多くのクリエイターが映像作りの“基準器”として利用しているソニーのマスターモニターの画作りを再現する「クリエイターモード」によって、ソニーの哲学に基づく、美しい映像表現を実現していくと語りました。
こうした映像美は、映画などの動画コンテンツだけでなく、ゲームでも威力を発揮します。染谷氏は『表示領域の拡大によってゲームの世界が拡がり、プレイが快適になる』と言い、すでに「ASPHALT 9」「FORTNITE」「伝説対決 ARENA OF VALOR」といった、世界中のゲームファンから強い支持を集める人気タイトルが、「Xperia 1」の21:9ディスプレイに対応していることを紹介。『これまでになかった全く新しいゲーム体験を実現しています』と強い自信をにじませます。
続いてディスプレイと並ぶ、もう1つの大きな特徴となる、Xperia初のトリプルレンズカメラについても、その狙いを紹介します。近年、複数の異なる画角のレンズで得た画像を組み合わせることで、高画質な写真撮影を可能にするマルチレンズカメラが人気ですが、「Xperia 1」では、そこにソニーのデジタル一眼カメラ「α」の技術とノウハウを盛りこみ、スマートフォンとして世界初の「瞳AF」や、ソニー独自のアルゴリズムを採用した「ハイブリッド手ブレ補正」、従来モデル(Xperia XZ3)比で約4倍という高感度撮影を可能に。これによって、さまざまな被写体をより高画質に撮影できるようになったそうです。
そして、こうした撮影機能の向上に加え、デジタルシネマ業界の先駆者としてプロフェッショナルに重用されてきた映像機器ブランド「CineAlta(シネアルタ)」の開発チームが「Xperia 1」の開発に協力。スマートフォンで映画のような動画撮影を可能にする「シネマプロ」アプリを新開発しています。
『スマートフォンとして世界初の4K・有機ELディスプレイ搭載、瞳AFへの対応、そして、映画のような撮影を実現する「シネマプロ」アプリの搭載など、ソニーの総合力で作りあげた、1から生まれ変わった全く新しい「Xperia 1」』(染谷氏)。続いては、体験会場で国内初展示された実機のパフォーマンスをレポートします。
ここでは、国内初となる「Xperia 1」の実機展示でアピールされた各種機能を紹介します。なお、今回展示されていた端末はいわゆる「グローバルモデル」となるため、各キャリアから販売される国内向けモデルとは細部が異なる可能性があります。
大画面化によって危惧された本体サイズの大型化ですが、実際に手に取ってみると思った以上にコンパクト。一般的なスマートフォンと変わらない約72mmに押さえられた横幅や、約178gの軽量ボディによって、充分なポータビリティを確保しています。
薄さも約8.2mmとスリム。カバンのスリットなどにも入れておきやすいフラット形状となっています。
「Xperia 1」は、世界初の4K・HDR表示に対応した有機ELディスプレイを搭載。4K/8Kテレビ時代に向けて規定された色空間規格「ITU-R BT.2020」や、より幅広く精緻な10bit信号に対応した独自の画像処理によって、クリエイターの意図した色味を忠実に再現することができます。「HDRリマスター」の展示では、鮮やかで美しい緑の表現など、SDR表示(写真左下)と明確な違いを感じられました。
「Xperia 1」が新対応した立体音響技術「Dolby Atmos」をヘッドホンで体験。デモではこの機能をオン/オフして、その違いをダイレクトに感じることができました。音の位置関係だけでなく、精細感など、全ての点がアップデートされ、サウンドが凄まじい臨場感を持って迫ってきます。なお、ざわつく会場では試せませんでしたが、もちろん内蔵スピーカーでも「Dolby Atmos」による臨場感を体感できるとのことです。
21:9の大画面は普段使いでも役立ちます。その一例が、2つのアプリを同時に表示できる「マルチウィンドウ」機能。動画を見ながらメールを書いたり、Webブラウザで調べ物をしながら地図を見たり、さまざまな活用が可能です。分割比率は仕切り部分をスライドさせることで変更できました。
「マルチウィンドウ」機能は、デスクトップの「マルチウィンドウ」アイコンをタップし、使いたいアプリを2つ指定(タップ)するだけの、簡単3タップ操作で利用可能。直観的に使えます。
一般的な16:9表示を横に大きく拡げた21:9表示によって、ゲームの迫力・臨場感が大幅アップ。周囲の情報量が拡がったことでプレイ的にも有利になるかも?
「Xperia 1」、もう1つのゲーム向け新機能となる「ゲームエンハンサー」では、パフォーマンスの最適化や情報通知のカスタマイズ、静止画・動画撮影などのコントロールを一元化。インカメラを使ったゲーム画面+自撮り動画の撮影・配信もお手軽に楽しめます。
Xperiaシリーズ初となるトリプルレンズカメラ。本体上端中央に配置されているため、レンズやフラッシュ部に指がかかってしまいにくくなっています。
スマートフォンとしては世界初となる瞳AF機能のデモ。従来モデル(写真右)では顔認識まででしたが、「Xperia 1」(写真左)では瞳にしっかりフォーカスが合うため、より顔に寄ったポートレート撮影時などに重宝するでしょう。認識速度・精度も極めて優秀でした。
まるでフィルム映画のワンカットのような撮影を手軽に楽しめる「シネマプロ」アプリ。「Look」と呼ばれるプリセットで、やや青みがかったフィルムライクな映像や、落ち着きのあるモノクロ映像(写真)、温かみのあるウォームな映像などを自在に切り替えることができました。フィルム映画と同じ24fpsというコマ数も雰囲気をかき立てます。
近年のスマートフォンは画面全体を覆う全画面ディスプレイや、多数のカメラを搭載するマルチカメラ搭載がトレンドとなっていますが、「Xperia 1」は、そこにマッチアップしつつ、“ソニーらしさ”も追求。コンテンツ表示を不自然に阻害するノッチなどは設けず(そのため「Xperia 1」では画面上下にわずかにスペースがあります)、本当の意味でユーザーに価値ある機能を厳選搭載し、差異化をはかっているように感じました。
その代表例と言えるのが21:9サイズと超ワイドな、世界初の4K・HDR対応有機ELディスプレイ。こうした注目機能は「21:9」という数値や「世界初」という冠ばかりが先行しがちですが、その一目で分かるワイド感、高精細感、発色の良さは、撮影から再生、そして普段使いまで、現実のあらゆるシーンで役立ちます。
そのほか、「Xperia 1」はハードウェアからソフトウェアまで、ほとんどの点を一新。その多くに、ソニーならではの、ソニーにしかできないエッセンスが盛りこまれており、差異化が難しいとされるスマートフォン市場において、しっかりとXperiaならではの魅力を生み出していました。プレゼンテーションでは、岸田社長、染谷氏両名が「1から生まれ変わった」ことを強調していましたが、まさにその言葉に相応しい、Xperiaの新地平を体現・象徴する端末だと言えるでしょう。