『グランツーリスモ』シリーズは、美しい映像とリアルなドライビングフィールにより、多くのゲームファンだけでなく、普段はゲームをしないクルマやモータースポーツのマニアまでも魅了し続けてきました。その7作目となる最新作『グランツーリスモSPORT』は、最先端の映像技術を駆使し、最もリアルに肉薄する表現を実現。プレーヤーを壮大な“クルマの旅”へと導いてくれます。
『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサー山内一典さんへのインタビュー後編では、最新作の検証用モニターとして、ブラビア「Z9D」を選んだ理由や、ブラビアと『グランツーリスモ』との親和性について、興味深いお話をうかがいました。
ポリフォニー・デジタル『グランツーリスモ』シリーズ・プロデューサー
山内一典さん
全世界での累計出荷本数が7600万本を超えるドライビング&カーライフシミュレーター『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサー。2001年から日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員。2010年以降、ニュルブルクリンク24時間レースには、ドライバーとして参戦している。
前編では、山内さんをはじめとする『グランツーリスモSPORT』に関わるクリエイターたちが、クルマを美しく見せるために、リアルな描写にどれほど心血を注いできたのか、その裏舞台を教えていただきました。そんな力のこもった最新作の検証用モニターには、ブラビアの「Z9D」がメイン機として使われていたそうです。その理由をうかがいました。
「理由は実にシンプルです。“HDR(ハイダイナミックレンジ)(→Keyword 05)”で、求めるリアリティーを正確に描写してくれるテレビは、世界中のテレビの中でZ9Dしかないと感じたからです。私たちは“HDR 10”フォーマットの上限の数値である“1万nit”という明るさまで、ゲーム内部で表現する準備を整えています。ゲーム画面を映し出すさまざまなテレビと、その性能に応じ、ゲーム側から出力する信号のHDRを変えられるよう仕込んでいるのです。そして、いくつものテレビで試してみた結果、最も広い範囲の輝度を表現できたのが、『Z9D』だったのです」(山内さん)
HDRの表現力が、他のテレビと比べてケタ違いに高かったという「Z9D」。初めて『グランツーリスモSPORT』を映し出してみた時、山内さんは純粋に感動したといいます。
「『グランツーリスモSPORT』では、クルマがあって、その背景に美しい景色が広がっています。当然、クルマのボディには、太陽や周囲の空が、輝きを伴って映り込むわけです。もしくは、ヘッドライトなどのように、ダイナミックレンジが広く、輝度の高いものが、ひとつの画面の中にギューっと収まっています。クルマのゲームというのは、HDRの技術が活きるコンテンツなのです」(山内さん)
白飛びの寸前から黒つぶれの一歩手前まで、より広い明暗差の幅=広いダイナミックレンジを使えれば、ユーザーは肉眼で見た現実に最も近い、“超リアル”な映像体験を楽しめます。そして現状では、ブラビアの「Z9D」が、最もその再現性が高いと語る山内さん。確かにポリフォニー・デジタルの開発現場には、最高峰モデルの「Z9D」だけでなく、たくさんのブラビアが並んでいます。改めて、ブラビアを選ばれている理由とは?
「おそらくソニーというのは、世の中にある森羅万象、光や色というものを、どうやって再現するかということだけを考えてきた会社だと思うんです。そういったこれまでの歩みの最先端に、ブラビアがあるのだと思っています。そして、『グランツーリスモ』シリーズもまた、生まれた時から“世の中の光をどうやってリアルに表現するか”ということだけを考え、進化してきました。『グランツーリスモ』とブラビアの親和性の高い理由は、両社の思いや“夢”が共通しているからだと思うんですね」(山内さん)
「High Dynamic Range」(ハイ・ダイナミック・レンジ)の略。旧来の方式(SDR)に比べ、より大きな明暗の差をより正確に表現できる新しい映像技術。例えば光るライトやそれに照らし出されるその他の物体など、輝度差や色彩をより豊かに表現できるようになり、実際の風景を目の当たりにしたときのような自然界の輝度をなるべくそのまま表示できるようになります。
『グランツーリスモ』とブラビア。ふたつのブランドがそれぞれの誕生以来、追い求めてきた共通項が「光をどのように表現し、忠実に再現するか」だったと語る山内さん。その言葉を耳にし「まさにそうなんです」と大きくうなずいたのは、ブラビアの画質エンジニア・古字(こじ)です。
「液晶テレビが民生品として大型化してきたのは、2000年代前半くらいからです。『グランツーリスモ』シリーズもその時からありました。その頃から、液晶テレビは急激に進化し、表現できる輝度は明るく、色は鮮やかになっていきました。それに対して、映像の規格の一部は古いままとなり、テレビの表現できる実力と規格が釣り合わない状況になっていきました。」(古字)
例えば、輝度の高さでいえば、HDRの規格では映像信号の最大値を10,000nitとして規定していますが、従来のSDRでは100nitとみなされていました。これはテレビがブラウン管だったころに規定された規格だからです。
一般的な液晶テレビは優に100nitを超える表現力をもっているのです。色域に関しても同様のことがいえるそうです。
ソニービジュアルプロダクツ株式会社
TV事業部 画質エンジニア 古字
「長らく、製品としてのテレビの能力は、映像の規格を超越していたのです。そのため、映像コンテンツをきれいに見せる「画づくり」がテレビ内部で行われています。それがいま、HDRと広色域(BT.2020)の登場によって輝度も色域も、規格がテレビの能力を大きく逆転しました。ブラビアでは今回、特に輝度の差を埋めるため、以前から採用していた“バックライト部分駆動”(→Keyword 06)に磨きを掛けることにしました。これは液晶テレビの弱点のひとつであるコントラストを高めるための技術で2000年代半ばから開発を行っていますが、今回の『Z9D』で採用されたバックライトマスタードライブにより、更に輝度の表現力を高めることが出来ました。」(古字)
ブラビアの「バックライト部分駆動」は、映像に合わせて最適なバックライトの明るさをエリア毎に制御することで光漏れを最小限にします。また、暗いエリアでバックライトを抑えた分の電力を、明るいエリアへと回し、明るい部分をより明るく照らせるようにしています。HDR映像の再現性が高いのは、そのためなのです。
液晶テレビのバックライトを複数エリアで分割して制御し、点灯させる明るさを各エリアで変える技術。液晶テレビは、液晶パネルのバックライトから光が漏れてしまい黒をうまく表現できないことが弱点とされていました。ブラビアのバックライト部分駆動は、映像に合わせて最適なバックライトの明るさをエリア毎に制御することで光漏れを最小限に。また、暗いエリアでバックライトを抑えた分の電力を、輝度の明るいエリアへと回す独自技術「X-tended Dynamic Range PRO」と組み合わせることで、明るい部分をより明るく照らせるようにしている。
もちろん、「Z9D」をはじめとするブラビアが優れているのは、HDRの表現力だけでありません。精細感についても、4K 60fpsに加え、ゲームモードも搭載。さらに、ゲーム用の“超解像処理”(Keyword 07)も施され、より解像感の優れた映像を堪能できるのです。
「HDRや広色域規格より以前の映像では、テレビ側で画づくりした方がよりきれいな映像を映し出せました。ただし、先程話したとおり、HDRや広色域の規格はテレビの能力を超えており、これらに対応した映像は非常に優れた画質となります。特に『グランツーリスモSPORT』のようにしっかりと最初からHDRやワイドカラー前提で創られている作品ですと、クリエイターの方々からは「テレビ側で画づくりをしないでほしい!」と言われると思います(笑)。ですので、HDRにおけるゲームモードではクリエイターの意図を最優先にしつつ、超解像処理による映像の補完などを行うことで、よりきれいに見られるようにしています。」(古字)
「確かに以前は、テレビメーカー各社とも、画づくりが少し過度でした。でもHDRのテレビでは、各社ともプレーンな映像を映し出せています。特に、『Z9D』をはじめとするブラビアは、素直な色でプレーンな絵を出せるため、こちらが出したい色が、素直に、自然に見えて気に入っています」(山内さん)
『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサーである山内さんとブラビアのエンジニアであり『グランツーリスモ』シリーズのファンでもある古字。「光をどうやって美しく表現するか」を追い求めるという、ソニーの遺伝子を受け継ぐふたりは、まさに同志のような間柄なのかもしれません。
『グランツーリスモSPORT』は素材集めから映像の出力まで一貫してHDRで作っている、ゲーム業界では珍しい作品となりました。そうした制作を可能にしたのが、開発チームが目指した“光”、そして映像美を、より忠実に映し出したブラビアなのです。
「『グランツーリスモSPORT』の開発には、4年間の歳月がかかっています。そしてシリーズ史上、初めてアートと呼べるものになったと感じています。映像はもちろん、音にもこだわり、“Hi-Fi感”を感じられる仕上がりとなりました。そこから出てくる映像や音をただ眺め、耳を傾けているだけでも飽きずに楽しめるんじゃないかと思います。このHi-Fi感を、ぜひ目だけではなく肌で感じて欲しいです。今回は今ある制作環境で出来るだけのことはしたと思っています。でもまだ理想は遠いです。その理想に近づけるために、できればゲームとテレビを完全に連携させて開発していきたいですね。これからも、よりきれいな光を映し出せるよう、いっしょに協力していきましょう。」(山内さん)
1秒当たり30〜60枚の画像で構成されている映像を1枚ずつ解析し、映像信号パターンを判断した上で、データベース化された膨大な組み合わせの中から最適な処理をピックアップすること。ゲームモードでの超解像処理では、過度なノイズ除去、被写体の輪郭強調などを抑え、ゲームそのものの表現で楽しめるようにしています。
※ご紹介した『グランツーリスモSPORT』はPlayStation®4でお楽しみいただけます。
※HDRをブラビアで視聴する際にはブラビアのHDMI信号フォーマットの設定変更が必要です。
※本ページに掲載している情報は2017年11月6日現在の情報であり、予告なく変更される場合があります
『グランツーリスモSPORT』プロデューサーが語る、精緻を極めた色と光の表現。
『グランツーリスモSPORT』は、最先端の映像技術を駆使し、最もリアルに肉薄する表現を実現。プレーヤーを壮大な「クルマの旅」へと導いてくれます。今回はシリーズを通して『グランツーリスモ』の世界をプロデュースする山内一典さんに、飽くなきリアリティーへのこだわりを聞いてきました。ピーター・バラカンさんが語るブラビアと音楽の楽しみ方(前編)
ブロードキャスター”のピーター・バラカンさんにブラビアとサウンドバーの画質や音質、デザイン、実際に使った感想などをお話しいただきました。食育インストラクター和田明日香さんのブラビアでの動画の楽しみ方(前編)
ブラビアで見られるインターネット動画、ハンディカムやブルーレイディスクレコーダーを使った動画の楽しみ方を、3児の母であり、食育インストラクターの和田明日香さんにお話しいただきました。