2019.5.22
音楽家のharuka nakamuraさんによる、RX100ダイアリーの後編。大分でつくったばかりの曲を、レコーディングするために山梨へ。信頼を寄せる音楽仲間のもとへと向かう旅は続きます。そうした旅の中に身を置くことによって、思い出す情景や聴こえてくる音楽がある。自分のペースで移動しながら、曲のイメージが醸成されていく。急ぐことのない旅から、音楽が生まれます。
「大分の『カテリーナの森』での曲づくりを経て、いったん東京の自宅に戻りました。つい最近、友人から預かったピアノがやってきたばかりなのですが、家にあまりいないので、なかなか弾く機会がなくて。このときもまたすぐに、baobabの2人とレコーディングをするために、山梨にある『スタジオ キャメルハウス』に向かいました。ここは、いつもレコーディングをお願いしているエンジニアの田辺玄くんの自宅兼スタジオ。小高い場所にあって、見晴らしもすごく気持ちいい。こうしていろんな場所に行っていますが、僕にとっては、移動する時間そのものが大切だったりします。電車の窓から見える風景を、写真に撮るのも楽しい。だから、少しでも余裕があったら、単線を走る列車や、各駅停車の便に乗りたいですね。飛行機もなるべく使わないようにしています。移動が早すぎると、どうしても心が追いつかないので」
「機材に囲まれて作業をしている玄くんの姿は、スタジオでのいつもの光景。ここで一緒に音を聴いて、確かめながらレコーディングを進めています。こうした音楽をつくっている現場で撮影するときには、カメラのシャッター音が気になるのですが、このデジカメはあまり気にならないタイプの音でよかった。起動も速いので、使いやすかったです。夜景も、遠くの明かりまできれいに写っていて。目に見えているものがそのまま残るという印象。フィルムカメラで撮ると思い出の風景になるけれど、デジカメで撮った写真の中には、『いま』があるなと感じます。レコーディングの合間にはあちこちを散歩して、甲府駅の近くにある『六曜館珈琲店』という大好きな喫茶店にも行きました」
「ピアノを弾いている動画は、窓からの光で撮ったものです。手前にきた指先にピントが合ったり、こういう奥行きのある動画をきれいに撮れるのは、すごくいいですね。音そのものも、よく録れていると思います。今回はbaobabとのアルバムづくりのためのレコーディングでしたが、僕自身は、ピアノ・アンサンブル(haruka nakamura PIANO ENSEMBLE)としてツアーを終えたあと、昨年から仲間たちとバンドを編成しようと動き始めました。それもゆっくりと、2年くらいかけるつもりで(笑)。日本各地にいるメンバーの一人ひとりと会って、バンドとしての音楽をつくろうとしています。これまでのようなインストゥルメンタルの作品とは対照的に、いまは自分で作詞もしていて、歌に意識が向かっている。あらためて、歌というものを探しているところです」
「電車で旅をしていると非日常な時間を過ごすことができて、そういう状況でこそ、日常のことを思い返します。ふと、何気ない日々が愛おしくなるというか。日常から生まれる音楽が浮かんでくるんです。旅をする中で、最初は断片として現れてきた音や言葉が、時間をかけて、帰りの電車でひとつの曲としてつながっていくことも多い。そうやって、帰り道に旅を完結させているようなところがあって。旅のあいだにできた曲のアイデアを整理するときに、自分の好きな写真をヴィジュアルとして組み合わせてみると、さらにイメージが膨らんできたりもします。そして東京に帰ってくると、もう次の旅に向けて気持ちが切り替わっている。旅先で会って、旅先で別れる。そういう出会いを繰り返すことが、自分にはあっているんでしょうね」
【RX100ダイアリー編集部より】
風景と音楽はもともと一体のもの。インタビューの中に出てきた「音楽のある風景」という曲に耳を澄ませていると、その言葉のとおり、どこかの風景が心に浮かんでくるようです。これからも、バンドをともにする仲間たちのもとを訪ねて、歌や詞を見つける旅が続いていく。その長い旅の途中で撮ってきてくれた写真の数々は、たしかにharukaさんの曲へとつながっているようで、音楽とともにある風景のように感じられました。
※haruka nakamuraさんには、デジタルカメラ「DSC-RX100M5A」を使って撮影していただきました(インタビュー時の写真は除く)
※本ページに掲載している情報は2019年5月22日時点のものであり、予告なく変更される場合があります
haruka nakamura(はるか なかむら) 音楽家。青森県出身。ソロ名義のほか、自身の率いるピアノ・アンサンブル編成など、さまざまなユニットでオリジナルアルバムを数多く発表。東京カテドラル聖マリア大聖堂や、広島県の世界平和記念聖堂をはじめとした日本各地の重要文化財でコンサートを開催してきた。その後、FEEL KIYOMIZUDERAプロジェクトに参加し、京都・清水寺成就院における演奏会をライブ配信するなど、新たな活動として継続中。CM、WEB、TV番組等の音楽、プラネタリウムの劇伴音楽、ファッションブランドとのコラボレーションによる楽曲なども制作。早稲田大学交響楽団OBとの共演や、Aimerや坂本美雨といったアーティストへの楽曲提供、プロデュース、リミックスも手がける。翻訳家の柴田元幸による朗読や、画家・絵本作家のミロコマチコによるライブペインティングと、ピアノ演奏でセッションに取り組むなど、活動の幅をさらに広げている。2019年8月からは、京都・福岡・東京にて、バンド編成による「STARDUST」ツアーを敢行する予定。
haruka nakamura オフィシャルホームページ
https://www.harukanakamura.com/
インスタグラム
https://www.instagram.com/_casa/
Edit by EATer / Photography by Kiyotaka Hatanaka(UM)[interview] / Design by BROWN:DESIGN
撮影協力:Hummingbird coffee
料理家 冷水さんが撮る、日々の風景「RX100 ダイアリー」
旬の食材を活かした、やさしい料理がファンの多い冷水希三子さん。定期的に更新している彼女のインスタグラムには、日々の料理が並び、その料理を楽しみにしているフォロワーの方がたくさんいらっしゃいます。そんな冷水さんがRX100M3を使い撮影した、日々の写真を紹介します。