高品質化した最新4Kテレビでコンテンツの魅力をほぼ十全に引き出すためには、「画」の力に負けない「音」も必要です。そんな中、今、一般家庭を中心に注目を集めているのが、テレビの前などの、わずかなスペースに配置できるサウンドバー。これさえあれば、映画やドラマ、音楽番組、スポーツ中継など、どれも圧倒的な臨場感で楽しめるようになります。
この3月に発売されるサウンドバー最新モデル『HT-MT500 / HT-MT300』は“コンパクトであること”を重視した、シリーズ最小モデル。その狙いと実力を、開発者にききます――。
もっと小さな
サウンドバーが
ほしい
という声に
応えたい
―まずは『HT-MT500 / HT-MT300』が、どのような意図で企画されたのか、その背景について教えてください。
藤原 大二
(企画マーケティング部門 商品企画部)
藤原:近年、テレビがどんどん大画面化・高画質化していく中、薄型化によってスピーカーが小さくなってしまうなどの影響がありました。お客さまの中には、液晶テレビに買い換えたら声が聴き取りにくくなったとか、迫力がなくなったと感じられた方もいるかもしれません。
サウンドバーは、テレビと接続するだけで音質や迫力を大きく底上げすることができます。本格的なホームシアターセットと比べて狭いスペースに設置できることから、幅広い層に支持されており、現在ではホームシアター市場の7〜8割を占めるほどになっています。
ソニーでも『HT-NT5』など、さまざまな製品を出していますよね。
藤原:ただ、ホームシアターセットと比べ省スペースとは言え、それでもサウンドバーの横幅は約1m前後あり、テレビ台のサイズによっては設置できないということがありました。低音を補完するサブウーファーについても同様です。調査によると、サウンドバーを検討したお客さまのおよそ25%がサイズを理由に購入を断念していることが分かりました。
今回、『HT-MT500 / HT-MT300』を企画したのは、そうした方にも使っていただけるコンパクトなサウンドバーが必要だと感じたから。置き場所に悩むことなく、普段のテレビ生活を豊かにしてくれるものを提案したいと考えたのです。
『HT-MT500 / HT-MT300』ではサウンドバーとしては驚くほどコンパクトな幅50cmを実現しています。このサイズはどのように決定したのでしょうか?
藤原:店頭やカタログで商品を一目見た時に、これなら自分の家にも置けそうだと思っていただけるサイズ感を目指しました。それには中途半端な小型化ではインパクト不足。一気に半分くらいのサイズにしなければならないと考えました。
また、ワイヤレスサブウーファーについては、ソファの下にも置けるサイズを目標に、幅(高さ)10cm以下としています。実は、近年のソファはロボット掃除機人気を受けて、それに対応したサイズになっているものが多いのです。実際、家具店を回って、ソファの脚の長さを調べてみたのですが、およそ6割のソファが脚下に高さ10cm以上の空間があり、それ以下のサイズなら無理なくサブウーファーを置けることが分かりました。
編集部もHT-MT500を使って、ハイレゾ音源を視聴体験させていただいた。ソファー下にも設置できるコンパクトなサブウーファーだが重低音の迫力は予想以上。ソファー全体が揺れるような印象すら受ける
『HT-MT500 / HT-MT300』の商品の位置付けを教えてください。
藤原:サイズも重要だけど音質には妥協したくないという人のための選択肢が『HT-MT500』。特にハイレゾ対応は大きなアドバンテージと言えるでしょう。対する『HT-MT300』は、音質も大事にしつつ、より購入検討しやすい価格にすることも重視しています。
もっと小さなサウンドバーがほしいという声に応えたい にいいね
『HT-MT300』は
インテリアに
よくなじむ
カジュアルな
選択肢
北戸 英理
(V&Sプラットフォーム開発部門 サウンドシステム開発部)
『HT-MT300』で特に力を入れた点を教えてください。
北戸 英理
(V&Sプラットフォーム開発部門 サウンドシステム開発部)
北戸:先ほど藤原が話したように、『HT-MT300』は購入検討していただきやすい価格を目指して開発しています。ですので、リッチなパーツをふんだんに盛りこんで音質を向上……というアプローチは取っていません。また、本体の高さを抑えているため、小さなスピーカーしか組み込めないという課題もありました。しかし、だからといって音質を軽視したわけではありません。
小原 拓
(V&S商品設計部門 ホーム商品設計部)
例えばスピーカーについては、円型ではなく、トラック型のスピーカーを採用することで表面積を大きくし、大音量を鳴らせるようにしました。
サブウーファーのスピーカーも『HT-MT500』のものより小さいのですが、こちらもフロント側の低音増強用ダクトの長さを1mm単位で調整してベストな長さを探すなど、さまざまな試行錯誤を行ない、良い音を追求しています。ユニークな所ではスピーカーの取り付け位置を側面グリルの中央部ではなく、少し下にずらしました。こうした方が低音が良く響くんですよ。
小原:電気基板についても、シンプルな構成にしつつ、電源のコンデンサーは大きなものを使うなど、要所要所で良いパーツを使うようにしています。そのほか、配線パターンを伝達誤差のないよう左右対称にするなどの工夫で音質向上を心がけました。
上位モデル『HT-MT500』にない特長としては、2色のカラーバリエーションがありますね。デザインについてはどのような取り組みをされていますか?
藤原:これまでのサウンドバーは、テレビのデザインとのマッチングを主に考えてデザインされていたのですが、今回はリビングに溶け込むように、インテリアとのマッチングについても重視しました。黒くて四角い大きな塊だという理由で、NGを出されてしまうことも多かったんですよ。こんなものをリビングに置きたくない、って(笑)。
そこで『HT-MT300』では、黒モデルに加えて、白モデルも追加しました。しかも、それぞれチャコールブラック、クリームホワイトという、少し暖かみのある色合いにし、本体形状も丸みを帯びた、違和感なく部屋の中に溶け込むようなデザインにしています。
北戸:真っ白ではないクリームホワイトはかわいくて、女性の私の目から見ても、これならリビングに置いても良いなって思えます(笑)。
『HT-MT300』はインテリアによくなじむカジュアルな選択肢 にいいね
映画から音楽まで
あらゆる“音”を
高品質に、
大迫力に奏でる
『HT-MT500』
上位モデル『HT-MT500』では高音質と小型化という相反する条件を見事に両立させています。これにはどういったご苦労がありましたか?簡単なことではありませんよね?
久保田 和伸
(V&Sプラットフォーム開発部門 サウンドシステム開発部)
木村:はい、正直、大変でした(笑)。サイズを半分にしてしまうと、電源部分を入れる場所がありません。そこでまず、電源部分をACアダプターにしたのですが、そうすると、電源の応答性が下がり、音質に悪影響が出てしまうのです。特にハイレゾ音質を目指していた『HT-MT500』ではこれを無視できませんでした。
そこで、『HT-MT500』では、昨年発売したコンパクトオーディオシステム『CAS-1』で採用し、好評だったコンビネーション電源回路を採用。本体内にレギュレーター回路を組み込むことで電源を安定化させ、音質への悪影響を排除しています。
木村 誠良
(V&S商品設計部門 ホーム商品設計部)
久保田:音質だけでなく、音量についてもたくさんの苦労がありました。小さいスピーカーからは大きな音が出せないというのは、どうしようもない事実ですからね。『HT-MT500』ではこの壁を乗り越えるため、スピーカーに使う素材を徹底的に吟味しています。
具体的には電気を振動に変えるマグネットを、一般的なフェライトマグネットから、より強い磁力を持つネオジムマグネットに変更し、小型でも大きなパワーを出せるようにしています。その上で、振動板にはソニー独自の発泡マイカを採用。これによって小さくても、高域40kHzの再生に耐えうる、ハイレゾ品質の小型スピーカーを作り出すことができました。
なお、ネオジムマグネットも、発泡マイカも、ソニーの従来製品で使われていた技術。コンビネーション電源の組み込みもそうですが、これまでのソニー製品で培った技術とノウハウがしっかり活かされているんですよ。
サブウーファーの薄型化ではどのような苦労がありましたか?
久保田:従来型のサウンドバー、例えば『HT-CT790』では、サブウーファーに奥行き9.75cmのスピーカーを使っているのですが、当然そんなに大きくては幅(高さ)9.5cmのボディには入りません。そこで、このサイズを実現できるスピーカーを新規に開発しています。
一般的に薄型スピーカーは強度が弱く、物理的に振幅=空気を動かせる量も減ってしまうのですが、設計や素材を吟味することで、最終的にはお客さまに満足いただける迫力ある低音を再現できたと自負しています。
音作りについてはいかがでしょうか? 今回、特に意識したことがあれば教えてください。映画やドラマなどの映像コンテンツと、ハイレゾなどの音楽コンテンツは、だいぶ性格が異なるように感じるのですが……。
木村:私は、基本的な音作りに関しては映画も音楽も変わらないと思っています。まず音楽でディテールを突き詰めていくというやり方を採用しています。
久保田:映画の音声と異なり、音楽は連続して音が流れていますし、音の種類も幅広いですから、音楽を使ってまず音をまとめていくというのが適切なアプローチだと思っています。この作業で基本的な設計が完了すれば、ソニー独自のフロントサラウンド技術「S-Force PRO」を最大限に活用でき、映画向きのサラウンドサウンドを実現することができます。
木村:ちなみにその「S-Force PRO」も、今回かなり苦労したところ。この技術で最大の効果を生み出すためには、スピーカーの左右の間隔に合わせてアルゴリズムを最適化しなければいけないのですが、『HT-MT500』はサウンドバーの幅が非常に狭いので、アルゴリズムをほとんど最初から見直すことになったんです。ただ、苦労の甲斐あって、このサイズからは想像できないほどのサラウンド感を生み出せるようになりました。これはぜひ店頭で体験してみていただきたいですね。
『HT-MT500 / HT-MT300』では、小型化したサブウーファーをソファの下に設置した時に使う「ソファモード」が新設されました。これはどういったものなのでしょうか?
藤原:普通のサブウーファーは、ユーザーとの間に遮蔽物がないことを前提に作られています。ソファの下にサブウーファーを置くというのはその前提を覆す行為です。しかし、だからといって「音が悪くなるのは仕方ない」と諦めることはしたくありません。そこで、専用の音質モードを用意することにしました。それが「ソファモード」です。
久保田:「ソファモード」では、サブウーファーをテレビの横の、本来あるべき位置に置いた時の音をリファレンスに、音質の最適化を行っています。サブウーファーがソファのぶ厚い座面の下にあることで減衰されてしまう音や、逆に強調されてしまう音を補正しているほか、視聴距離の最適化も行っています。もちろんソファの素材や形状によって微妙に聞こえ方は変わってくるのですが、多数のソファで実験を行い、見つけ出した“最大公約数”的な解を盛りこみました。
映画から音楽まであらゆる“音”を高品質に、大迫力に奏でる『HT-MT500』 にいいね
“つなげる”ことで
さらに実用性が
アップ!
『HT-MT500 / HT-MT300』では、スマホとの連携機能も強化されているようですが、このあたりをもう少し具体的に教えていただけますか?
藤原:まず、スマートフォンとBluetoothで接続してワイヤレススピーカーとしても使っていただけるようにしています。NFCにも対応しているので、NFC対応Androidスマートフォンをタッチするだけでペアリングと接続が完了します。
その上で『HT-MT500』はホームネットワーク上の複数スピーカーをスマートフォンから一括管理できる「SongPal Link」にも対応。TuneIn Radioなどのインターネットラジオや、Google Play MusicやAWA、Spotifyといった音楽配信サービスも楽しめるようにしました。こうしたさまざまな音楽ソースに対応していることも『HT-MT500』の強みですね。
外部機器連携と言えば、『HT-MT500』は、別売のワイヤレススピーカーをサラウンドスピーカーとして使えるようにする「Wireless Surround」機能にも対応していますよね。これはどういった機能なのですか?
藤原:ソニー製の対応ワイヤレススピーカーを、後ろ側に2台配置・連携することで、よりリアルなサラウンド空間を構築できるというものです。「S-Force PRO」のフロントサラウンドを試していただいた上で、更に本格的なサラウンド感を楽しみたいと思った場合にはぜひお試しいただきたいですね。
“つなげる”ことでさらに実用性がアップ! にいいね
ただコンパクトなだけではない
たくさんのこだわりが凝縮
『HT-MT500』と『HT-MT300』、それぞれのターゲットユーザー像を教えてください。
藤原:『HT-MT500』は、映画好きはもちろん、音楽好きにも楽しんでいただきたいと考えています。過去のアンケートでは、サウンドバーをテレビのスピーカーとしてだけでなく、純粋なオーディオ機器としても使いたいという方がとても多かったので、その期待に応えられるようなものを目指しました。
『HT-MT300』については、冒頭で述べたような、サイズが理由でこれまでホームシアターやサウンドバーの購入を躊躇されていた方々に楽しんでいただきたいですね。黒い四角い塊がテレビの前にあるのがイヤだという、インテリアにこだわりがある人にもご満足いただけるはずです。
最後に、エンジニアの皆さんが、それぞれの立場で言っておきたいことなどありましたら、ぜひ。店頭などでここをチェックしてほしいという部分をアピールしてください。
北戸:『HT-MT300』では、サウンドバーの幅が狭いことで音が縮こまってしまわないように、理想の広がり感が実現できるまで、振動板の形状やメカ部品の形状などを何度も試作・検討したので、ぜひ聴いてみていただきたいですね。
小原:『HT-MT300』は機能も構造もシンプルなのですが、それゆえに、回路もシンプル化でき、ナチュラルなサウンドになっています。また、小さくても意外と大音量が出るよう設計しました。ぜひ、映画はもちろん、普段のテレビ視聴でも使っていただきたいです。機構設計担当が試行錯誤で作り上げた革シボのような外観もポイントです。
木村:『HT-MT500』では、サウンドステージを強く意識して設計しました。音がテレビの画面から出ているように感じられる“高さ”のほか、“奥行き”もきちんと出るように苦心しています。このサイズからは想像できないような立体感や密度を感じていただきたいと思います。
久保田:先ほどサブウーファーのソファモードについて説明しましたが、その根底にあるのは、サブウーファーをどこに置いても使えるようにするということ。そこで本機では、これまでのサウンドバーに載せていなかったサブウーファーの距離補正機能をあえて追加しました。それぞれの置き方に合わせて、ベストな音で楽しめるようにしています。
ただコンパクトなだけではないたくさんのこだわりが凝縮 にいいね
サウンドバーの実用性をアップ!
スマートフォン・アクティブスピーカーとの連携機能
XperiaなどのAndroidスマートフォンとワンタッチで接続
『HT-MT500 / HT-MT300』はテレビ以外の機器・サービスなどとの連携機能も充実。たとえば、スマートフォンとBluetooth接続して外部スピーカーの代わりに使うことができます。もちろんNFC対応ですので、対応Androidスマートフォンならタッチするだけでペアリング完了。お気に入りの音楽をワイヤレス・高品質(『HT-MT500』とLDAC対応Xperiaならハイレゾ音源の伝送にも対応)でお楽しみいただけます。
家じゅうどこでもWi-Fi経由で音楽を楽しめる「SongPal Link」に対応
『HT-MT500』は、ホームネットワーク上の複数スピーカーをスマートフォンから一括管理できる「SongPal Link」にも対応。TuneIn Radioなどのインターネットラジオや、Google Play MusicやAWA、Spotifyといった音楽配信サービスも楽しめるようにしました。
ソニーのワイヤレススピーカーとつないで、サラウンドでコンテンツを楽しめる
『HT-MT500』では、別売のワイヤレススピーカーをサラウンドスピーカーとして使えるようにする「Wireless Surround」機能にも対応。『h.ear go(SRS-HG1)』など、ソニー製ワイヤレススピーカーを後ろ方向に2台配置・連携することでよりリアルなサラウンド環境を構築することができます。
コンパクト&スリムなサウンドバーと、つながる関連商品はこちら
ソニーショールーム・
直営店舗ソニーストアでの展示紹介
ソニーの直営店舗・ソニーストアでは、実際に商品を体感いただけます。
お持ちのスマートフォンの楽曲をサウンドバーでぜひ一度ご試聴ください。