全ての人に使ってほしい
4K放送のポテンシャルを十全に引き出す
新時代のブルーレイディスクレコーダー
2018年12月にスタートした新4K8K衛星放送(以下、4K放送)によって、テレビ放送がついに4K画質対応になりました。そして2019年11月、いよいよソニーから、4K放送の録画に対応したブルーレイディスクレコーダーが登場。その開発者インタビュー後編では、4K放送対応だけでない、「これまで以上」のよろこびについて聞いてみました(全2回・後編)
4K放送の高精細映像に
相応しいサウンドを実現
前編では「これまで通り」の使い勝手を実現するためのこだわりや工夫をお伺いしましたが、後編では「これまで以上」の使い勝手を実現するためにどのような工夫をされたかをお聞きしたいと思っています。いかがでしょうか?
電気設計担当 木下:ハードウェアでは、今回も、音にとてもこだわっています。特に人の話し声ですね。4K放送では音質面も大幅に向上していますから、その効果は絶大です。話し声と環境音・BGMがしっかり分離して聞こえるようにすることで、単純に聴き取りやすいだけでなく、没入感も大きく増します。
それはどのようにして実現したのですか?
木下: 音声の分離感はHDMI出力のジッター成分に大きく左右されます。そこで、従来モデルからグランドの設計思想を一から見直し、ノイズ成分が原理的には、HDMIラインに乗らないような改善をしています。こうしたグランド周りの改変はなかなか勇気の要ることだったのですが、今回、より高音質な4K放送に対応するということでチャレンジしました。
なお、この効果は4K放送だけでなく、従来のハイビジョン放送でもはっきりわかります。また、シアターバーなどの本格的な音響システムがなくても、テレビの内蔵スピーカーでも違いを感じていただけるはずです。
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ブラビアはもちろん、
古いフルHDテレビでも
これまで以上の高画質が楽しめる
今、音質面での改善についてお話しいただきましたが、画質面についてはいかがでしょうか? 新モデルで何か改善されたことがあったら教えてください。
4Kブラビアと接続することで、より高精細な映像を楽しめる
木下:4K放送では映像面ががらりと変わっていますから、当然、新しい取り組みも多数行っています。大きなものは2つあって、1つ目が「4Kブラビアモード」の改善です。これまではブラビアと接続した時に限り、映像をアップコンバートせずフルHD画質のままテレビに送出していた(4Kへのアップコンバートをブラビア側に任せていた)のですが、今回は4K映像を4K映像のまま送出するのはもちろん、フルHD映像もレコーダー側で4Kにアップコンバートして送出するようにしています。この際、ブラビア側の映像エンジンが最も効果を発揮できるよう、超解像のかけ方などを最適化。もちろん、この機能の実現に当たっては、ブラビアの画質担当者と密接に連携しています。
そしてもう1つ、HEVCの画質に最適化した画作りにも対応しました。HEVCは、それまでのテレビ放送で使われていたMPEG-2やAVCとは画の出方がだいぶ異なっているんです。とても素性がよく、美しい画を出せるコーデックなんですけども、映像の動きが激しくなると画が崩れることがあります。反面、静かな画だとビットレートが低くてもとてもきれいに映ります。そこで今回は従来からのMPEG2/AVCに加え、HEVCのビットレートとジャンル情報を取得してきて、それに応じたノイズリダクションのかけ方をするよう工夫しています。具体的には、音楽番組など、映像がキラキラしていてよく動くものはHEVCだとブロックノイズが出やすいので、ノイズリダクションを強めにかけ、ドラマのように動きがゆっくりしているものはあまりノイズリダクションをかけるともったいないので、その辺りを巧みに調節しながら高画質化しています。
4Kブラビアと接続することで、より高精細な映像を楽しめる
なるほど。そのほかに画質面で工夫されていることはありますか?
木下:これは最新の4Kテレビを持っている方には関係のないことなのですが、新モデルでは、古いフルHD画質のテレビでも4K放送の恩恵を受けられるようにしています。具体的にはHDRですね。4K放送ではHDR非対応のSDR(Standard Dynamic Range)との互換性を保った、HLG(Hybrid Log Gamma)方式で輝度情報を取り扱っているのですが、単純にHLGをSDRに変換すると画のメリハリが大きく損なわれてしまうんです。そこで今回の新モデルでは画のメリハリを保ったままSDRに変換できるような変換処理を行っています。
それともう1つ、4K放送はフレームレート・映像の量子化ビット数が60P・10bitとなっており従来ハイビジョン放送の60i・8bitと比べて垂直解像度・階調表現が上がり、格段に美しい映像が楽しめるようになっています。フレームレート・ビット数の優位性は解像度をフルHDに変換してもそのまま変わりませんので、フルHDテレビでも美しい映像を楽しむことができます。
HDR非対応の4Kテレビに接続した場合も、
コントラストに優れた階調感のある映像に変換
※画像はイメージです
つまり自宅に4Kテレビがなくても、このレコーダーを介して4K放送を見るメリットはあるということですね。
竹内:その通りです。ですので、今、持っているテレビが4Kテレビではない方にもぜひ、本製品をご検討いただきたいと考えています。
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ソニーの4Kレコーダーは
長時間録画モードも実用的!
画質についてもう少し聴かせてください。録画データのサイズが従来の倍以上になる4K放送では、長時間録画モードの重要度がこれまで以上に大きくなりますが、このあたり、新製品ではどのようになっているのでしょうか?
竹内:4K放送の長時間録画モードで難しいのは、いったいどこまでの画質劣化を許すか。1番下のモードに最高の画質を期待する方はいらっしゃらないとは思うのですが、とは言え4Kを謳うわけですから崩れすぎてはいけません。ここはチーム内でも議論になりました。私がなるべく長時間録れるようにしたい派で、木下が低画質なモードは入れたくない派でした。
ソフト設計担当 工藤:ソフトウェア担当としては早く決めて欲しかったんですが、本当にずーっと議論してましたよね(笑)。
木下:最終的にはEER(11倍)モードまで入れることになりました。ここまでなら一応、4K画質である意味があるかな、と。SR(3倍)モードまでならDRモードと比べても遜色ない画質を保てます。
UX/仕様設計担当 別所:ちなみに、長時間録画モードの細かなところでは、録画予約時や「おまかせ・まる録」のデフォルト設定を従来ハイビジョン放送と4K放送で別個に設定できるようにしています。これは、従来放送はLR(5倍)モードで良いけど、4K放送はDRモードで録りたいというような声に対応するためです。
7つの長時間モードを搭載。
番組によって、お好みの録画モードをお選びいただけます。
なるほど、確かにそのニーズはあると思います。そういうところもきちんと汲み取った製品作りをされているんですね。
竹内:なお、長時間録画モードについては、もう1つ大きな議論がありました。従来モデルでは長時間録画モード録画時にリアルタイムに映像を変換しながら録画していたのですが、4K放送ではさすがにそれができないということで、一旦、DRモードで録画してから、自動で設定した録画モードに後変換するということをやっています。
ソフト設計担当 松本:ハードウェアリソースの問題で、変換しながら記録するとほかに何もできなくなってしまうんです。従来モデルでも、長時間録画モード時にBD-ROMを再生する場合などそういう挙動になるケースがありましたが、今回もその仕組みを導入しました。
竹内:というと簡単に聞こえるんですが、「ワイヤレスおでかけ転送」用のデータを作る場合は、1つの録画で2回の変換作業を行わねばなりません。そのスケジューリングをどのようにしていくのかを決めるのがとても大変でしたね。
別所:さまざまなケースを検討し、どのように処理していけば破綻しないかをひたすらシミュレートしました。結果的に、このかたちだったら破綻しないやりかたを導き出して搭載しています。
スマートフォンやタブレットに番組データを保存し、
パケットを消費することなく視聴できる
「ワイヤレスおでかけ転送」
ところで、今回の新モデルでは、4K放送のDR録画時に放送波そのままの「MMT」方式ではなく、従来から使われてきた「TS」方式に変換して記録していますよね。これにはどういった狙いがあるのですか?
松本:これは「これまでのハイビジョン放送と同じ使い勝手を実現する」という方針を重視した結果ですね。もし、「MMT」方式と「TS」方式を混在して記録することになると、録画リスト画面でそれがわかるようにアイコンなどを付けねばなりませんし、番組結合などの編集時にも不便があります。利用感を複雑にしたくなかったので、ソニーの4K放送対応レコーダーではDRモード時でもTS方式で統一して記録するようにしています。なお、一部では、MMTからTS方式に変換する際に画質が劣化するのではという不安の声も上がっているようですが、決してそんなことはありません。画質・音質は全く変わりませんのでご安心ください。
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ソニーの最新レコーダーで、
新時代の4K放送をもっと楽しんでほしい
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
木下:今回のレコーダー新モデルは、4K放送初対応ということもあって、ハードウェアの面でも画音質など全ての点にこだわりました。4Kテレビをお持ちの方はもちろん、今はまだフルHDテレビでも充分だと考えている方にもメリットのある製品ですので、ぜひ全ての方にお使いいただきたいです。
工藤:開発中につくづく思ったのですが、4K放送って本当に映像がきれいで、仕事中、つい見入ってしまうことが何度もありました。安くはない製品だとは思うのですが、買っていただいた方には絶対に損をさせない仕上がりになったという自負があります。機能的にもソニーユニークな面白いものになっていますので、まずは店頭などで実際にリモコンを手に取っていろいろ試していただければ。
松本:4K放送はまだ始まったばかりで、これからどんどん面白くなっていきます。このレコーダーは、従来と全く変わらない利用感で新しい4K放送を楽しんでいただけるのが売り。我々、レコーダーチームの自信作です。
別所:このレコーダーは、4Kチューナー搭載や、4K放送のダブル録画など、開発要件として定めたことだけでなく、実に細かいところまでこだわり抜いた製品。全体的な使い勝手がこれまでとは別次元に仕上がっているので、4K放送には興味がないという方にも使っていただきたいと思っています。
竹内:ソニーは長らく、テレビ番組を自由に録画し、思い通りに楽しめるレコーダーを開発してきました。奇をてらわず、日本のテレビ放送をしっかり楽しめるよう作り込んでいきました。自分たちでも驚くほど速くなった操作感など、日常的に使う機器として非常に良いものになったと思っています。ぜひお試しください。
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