昨年、ソニーモバイルコミュニケーションズの新たなフラッグシップとして登場し、スマートフォン市場に驚きをもたらした『Xperia 1』から1年。この6月に、いよいよその後継機『Xperia 1 II』が登場します。「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というビジョンをさらに深く体現するこの新モデルがどのようにして生み出されたのか。インタビュー前編では、より一層進化したトリプルレンズカメラと、Xperiaスマートフォンとして初めての5G対応について担当エンジニアが語ります。
MEMBER
- ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
企画部:渡邊
- ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
商品設計部門:和久
- ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
商品設計部門:池田
- ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
ソフトウェア技術部門:戸田
- ソニー株式会社
クリエイティブセンター:日比
『Xperia 1 II』は「好きを極めたい人々」にお送りする新フラッグシップモデル
まずはスマートフォンの最新市場動向について教えてください。
渡邊(商品企画):現在のスマートフォン市場は大きく二極化が進んでいます。高級なフラッグシップ機か、安価なハイコストパフォーマンス機か、というのが世界的なトレンドだと思います。そんな中、2020年から次世代通信規格である「5G」が国内でも正式スタートし、より大容量のコンテンツをよりハイスピードに楽しめる状況が生まれつつあります。この6月に発売される『Xperia 1 II』はそうした最新トレンドを踏まえて開発された「Xperia 1」シリーズの新しいフラッグシップモデルとなります。
『Xperia 1 II』の開発コンセプトについてもう少し詳しく聞かせていただけますか?
渡邊:一言で申し上げますと、「ソニーの技術を結集した5G対応のフラッグシップスマートフォン」となります。昨年発売した『Xperia 1』は、ソニーモバイルコミュニケーションズのコーポレートビジョンである「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」のもと、我々が「Community of Interest」と名付けた、カメラやオーディオ機機などの「好きを極めたい人々」に対してお届けしてきましたが、『Xperia 1 II』でもそれを継承し、特に写真を撮影するフォトグラファー、動画を撮影するシネマトグラファー、映画を好むシネファイル、音楽を好むオーディオファイル、そしてゲームを愛するモバイルゲーマーの5つのCommunity of Interestをターゲットに定めています。
そして『Xperia 1 II』では最新の5Gに対応することで、クリエイターに対しては、撮影した高品位な写真や動画を元にクリエーションしたコンテンツを5Gのスピードで瞬時にネットワークにアップできるようにし、シネファイル、オーディオファイルの皆さんに対しては、高品位な4Kコンテンツやハイレゾコンテンツを出先でもストリーミングでリアルタイムに楽しめるようにしました。
今回、製品名が『Xperia 2』ではなく、『Xperia 1 II(マークツー)』となったのはなぜですか? そこにどのような想いが込められているのかも教えてください。
渡邊:ネーミングに関しては、昨年ブランディングを新しくしました。「1」はシリーズ名、「II(マークツー)」は世代を表します。昨年発売した『Xperia 1』はXperiaの最上位フラッグシップ機シリーズと位置付けています。今回の『Xperia 1 II』は「1」シリーズの第2世代目ということでマークツーと名付けました。
ちなみにシリーズを表す算用数字、世代を表すローマ数字という命名ルールは、ソニーのデジタルカメラのネーミングルールと同一のものになっています。ソニーのデジタル一眼カメラの「α™(Alpha™)」や、コンパクトカメラの「RX」シリーズは、『α7 III(マークスリー)』や『DSC-RX100 V(マークファイブ)』といった名称を付けていますよね。
スマートフォンでありながら一眼カメラに迫る“撮るよろこび”を体現
ここからは『Xperia 1 II』の機能についてそれぞれ深掘りさせてください。まずは、多くの人が注目しているトリプルレンズカメラについて、開発のコンセプトをお話しいただけますか?
渡邊:昨年の『Xperia 1』から引き続き、「撮る」の好きを極めたフォトグラファーにも満足いただけるカメラ性能を目指すにあたり、改めてカメラ好きの方が一眼カメラでどういったレンズを使っているのかを調べ直しました。ご存じの方も多いと思いますが、カメラ業界には「大三元レンズ」と呼ばれる、一眼カメラを買った方が必ず揃えたくなる、ズームレンズの定番の組みあわせがあるんですね。その画角(焦点距離)が広角ズームはf=16〜35mm*、標準ズームはf=24〜70mm*、望遠ズームがf=70〜200mm*となります。『Xperia 1 II』ではその大三元レンズの構成を参考に総合的に判断して、f=16mm*、24mm*、70mm*というトリプルレンズの搭載を決定しました。『Xperia 1』のトリプルレンズ(f=16mm*、26mm*、52mm*)とは若干異なりますが、実際に一眼カメラを駆使して作品を撮影しているフォトグラファーが日常的に使っている、慣れ親しんだ画角を採用することにしました。
* 35mmフィルム換算
レンズの組みあわせ1つとってみても、深い意図があるのですね。
渡邊:レンズにはソニーファンおなじみのツァイスレンズを採用。ツァイスはドイツの名門光学メーカーで、これまでもソニーのデジタル一眼カメラ「α」シリーズやコンパクトカメラ「RX」シリーズのレンズを共同開発してきた実績があります。
ツァイスのレンズの特性は、階調表現力や色再現性の高さに加え、透明感や立体感、ぼけ味など被写体の微細な質感を表現できること。さらにここにT*(ティースター)と呼ばれるツァイス独自のコーティングを施すことで、画質低下の原因となるフレアやゴーストを最小限に抑え、クリアな画質を実現しました。
戸田(カメラ設計):スマートフォン内蔵カメラの開発では、画質をチューニングするために多くのテスト撮影を行うのですが、レンズの設計が詰められていない初期段階では、逆光での撮影時に光の筋が画面を横断してしまうなどといったことがあります。しかし、ツァイスレンズを採用した今回は、当初からそういったことがほとんどなかったという実感がありますね。
渡邊:さらに、標準画角のカメラについてはセンサーサイズを大型化。『Xperia 1』では1/2.6型センサーだったのですが、『Xperia 1 II』ではこれを一回り大きな1/1.7型センサーに変更しています。これによって、Xperia 1比で+50%程度の感度の向上を実現しました。
1/1.7型センサーというと、一般的な手頃な価格帯のコンパクトカメラに搭載されている1/2.3型センサーよりも大きなものになりますね。
渡邊:もう1つ、『Xperia 1』からの大きな進化として、3D iToFセンサーを新搭載しました。3D iToFセンサーとは、被写体に対して4万本以上のレーザーを照射し、その反射によって物体の位置と形を立体的に検知できるようにするというもの。これによってオートフォーカスの精度や速度が大きく向上します。なお、レーザーは赤外光なので、暗めのシーンでも問題なく動作します。
戸田:3D iToFセンサーが搭載されたことで、ユーザーが狙った被写体により確実にフォーカスを合わせることができるようになりました。昨年の『Xperia 1』もデュアルフォトダイオード(デュアルPD)AFという仕組みで高速・高精度なピント合わせを実現していたのですが、どうしてもデプス(深度情報)がうまく取れないケースでは中ヌケ(ピントが背景に合ってしまうこと)を起こしてしまいがちでした。その点、『Xperia 1 II』では3D iToFセンサーでデプスをきれいに取得する事ができ、さらにこれに主要被写体認識という新機能を組み合わせる事で、ユーザーの意図する通りにAFを動作させることが可能になりました。なお、3D iToFセンサーの動作距離は5m程度となります。
3D iToFセンサーは「Xperia」としては初搭載とのことですが、他社製スマートフォンやカメラに搭載されたことはあるのでしょうか?
戸田:スマートフォンに関しては、ToFセンサーは他社でも搭載されているモデルが増えてきていますが、AFのためではなくボケ処理のために使用しているケースが多いです。一眼カメラでは、私の知りうる限りでは搭載されたことはないです。
進化したAFについてもう少し教えてください。先ほど、主要被写体認識という新機能がAF精度を高めているとおっしゃられていましたが、これは一体どういうものなのですか?
戸田:プレビューに映っている画から、AI技術を使って主要な被写体の位置を検出するというもので、AFのほか、AEにも使われています。
カメラ機能の進化について更に教えてください。今回、『Xperia 1 II』では、新たに「Photography Pro」という機能を追加しましたよね。
渡邊:はい、『Xperia 1 II』では、フォトグラファーの皆さんにも満足いただくためには従来のカメラアプリを1から刷新する必要があると考え、「Photography Pro」を新開発して搭載しました。これは実際に見ていただければすぐに分かると思うのですが、UX(ユーザーエクスペリエンス)が「α」シリーズに非常に近いものになっています。これによって、普段、デジタル一眼カメラを使っているようなユーザーが、これまで通りの使い方、セッティングで撮れるようにしているほか、今までスマートフォンのカメラでは撮れなかったような写真を撮れるようにしました。
※「Photography Pro」やその他の一部のカメラ機能はソフトウェアアップデートにて対応予定
「今までスマートフォンのカメラで撮れなかったような写真を撮れるようにした」という部分をもう少し詳しく教えてください。
戸田:大きな違いはAFの部分ですね。『Xperia 1 II』はシャッターボタン(サイドボタン)が半押しに対応しているので、カメラと同じような操作で動いている被写体を狙い続けることができます。また、そもそも他社スマートフォンのカメラにはAF-S(シングルAF)、AF-C(コンティニュアスAF)という概念がなく、また、連写中にAFが追従することもありません。我々は以前から、連写中のAF追従をやっていますが、『Xperia 1 II』ではさらにAF枠の表示も実現し、よりユーザーが狙っている被写体がどれなのかを分かりやすくしています。AF性能そのものの向上もあって、自転車のような高速な被写体もしっかり追うことができるようになりました。
連写中のAF追従についても詳しく聞かせていただけますか?
戸田:昨年の『Xperia 1』では最高10コマ/秒だった連写機能が、『Xperia 1 II』からは「Photography Pro」での撮影で最高20コマ/秒に強化されました。撮影中は60回/秒のAF/AE演算処理を行っているため、動きに緩急のあるような被写体でも高い精度で追従し続けます。
正直なところ、最高10コマ/秒で充分のような気もするのですが(笑)、最高20コマ/秒になるとそんなに違うんですか?
戸田:実は、同じ事を『Xperia 1 II』のテストに協力してくださった写真家の方にも言われました(笑)。でも、実際に撮り始めたらやっぱり20コマ/秒がほしくなると言ってくださいました。動物が跳ねたり、ボールをキャッチするような瞬間などは、10コマ/秒だと決定的な一瞬を撮り逃してしまうことがあるんですが、60回のAF/AE演算処理のおかげもあって、より精度高く撮影できるようになりました。身近なケースでは運動会の撮影などでも役立つと思います。まばたきなども避けられるでしょうしね。
渡邊:ちなみに『Xperia 1 II』ではシャッター音も「α」シリーズに近い音を新たに作って採用しているのですが、特に連写時のパパパパパパ……という音がとてもかっこいいので、ぜひ聞いてみていただきたいです(笑)。
さて、こうした『Xperia 1 II』のカメラ機能の開発に、ソニーのデジタル一眼カメラ「α」シリーズを開発したチームが関わっているとのことですが、具体的にはどのようなコラボレーションが行われているのですか?
戸田:「α」シリーズを担当しているエンジニアの方にお越しいただき、密接にやり取りをしながら悪いところを洗い出し、改善方法をヒアリングするかたちで設計を詰めていきました。特に苦労したのは、先ほどお話ししたAF枠の表示の部分ですね。『Xperia 1 II』ではシャッターボタンを半押しした時に、「α」シリーズのように緑色のAF枠が表示されるようになっているのですが、これを正しく表示するのがとても難しく……特に周辺部の光量が落ち込みがちな広角レンズが大変でした。これを「α」開発チームの協力のもとで再設計し、AFの演算性能を高めるなどして、「α」シリーズに近い利用感を実現しています。
AFと言えば、今回、『Xperia 1』の人気機能の1つである「瞳AF」機能が、「Photography Pro」で動物にも対応しましたね。
戸田:それも「α」開発チームとの協業で作りあげた機能の1つですね。動物瞳AFは、瞳をロストしたときに復帰させるのが難しかったのですが、今回は、たとえ瞳を見失っても、身体をトラッキングして、さらにAF枠表示も付けることで、撮影者に動物をずっと追っているというユーザー体験を実現することができたと思っています。
逆に『Xperia 1 II』の開発を通して、「α」開発チームにフィードバックできたことなどはありますか?
戸田:3D iToFセンサーと主要被写体認識は、「α」シリーズにない『Xperia 1 II』独自の機能なので、面白いと思ってもらえていたら嬉しいですね。
ここまでのお話で、『Xperia 1 II』のカメラ機能が画質から使い勝手まで、全方位に進化していることが分かりました。皆さんは、このカメラをどのように使ってほしいと考えていらっしゃいますか?
渡邊:すでに一眼カメラを愛用している「Community of Interest」の皆さんには、『Xperia 1 II』をサブのカメラとして使ってほしいと考えています。スマートフォンは常に持ち歩いている機器なので、カメラを持ち歩いていないときに素晴らしい被写体に出会ってしまったとしても大丈夫。最高20コマ/秒のAF/AE追従高速連写などを駆使して、決定的な一瞬を逃さず美しく撮影することができます。
また、まだカメラを持っていない方々に対しても、『Xperia 1 II』を通してカメラの面白さを伝えてきたいと考えています。『Xperia 1 II』を使って「写真撮影ってこんなに面白いんだ」と思ってもらえれば、それに勝る喜びはありません。カメラとスマートフォンの架け橋になってもらいたいですね。
自慢のシネマ撮影専用機能がさらに高性能に、より使いやすく
さて、ここまで静止画撮影の話をたくさん聞かせていただきましたが、動画撮影機能についてはいかがでしょうか? 『Xperia 1』では、21:9アスペクト比で映画のような質感や色表現で撮影できる「Cinematography Pro(Cinema Pro)」機能が大変な話題になりましたが、『Xperia 1 II』ではこのあたりはどのように進化していますか?
渡邊:動画撮影機能の進化点は大きく2つ。表現力と使い勝手が向上しています。まず、表現力の向上については、最も目立つところでは120fpsのハイフレームレート撮影に対応しました。これによって、2〜5倍のスローモーション撮影が可能になりました。こうした表現は近年、映画やドラマの世界でよく使われており、「Cinematography Pro」にシネマティックスローモーションという形で追加されています。
ほか、細かなところではフレームレートの設定をより自由に変更できるようになりました。『Xperia 1』では24コマ/秒か30コマ/秒しか選べなかったのですが、『Xperia 1 II』では新たに60コマ/秒と25コマ/秒を選べるようにしています。
Xperia 1 IIで撮影
もう1つの使い勝手の進化についても聞かせてください。
渡邊:「Cinematography Pro」は、ソニーのプロフェッショナルカメラ開発チームの監修のもと、映画撮影などに使われているデジタルシネマカメラの色相やユーザーエクスペリエンスを再現しているのですが、やはりスマートフォンのカメラである以上、そういった機材に触ったことのない人でも使いやすいようにするべきだろうと考え、タッチAFや電子水準器、適正露出を表示して設定できるメータードマニュアルなどといった機能を追加しています。
そうした、本来デジタルシネマカメラに搭載されていない機能を「Cinematography Pro」に追加しようと思ったのはなぜなんですか?
渡邊:実は昨年、プロの映画監督に『Xperia 1』の「Cinematography Pro」だけで映画を撮るということをお願いしたことがあったのですが、そこで監督に「せっかくスマートフォンなのだから、タッチAFがあった方がいいよね」というフィードバックをいただいたんですよ。タッチAFや水準器などの便利機能はそれを踏まえて実現したところがあります。
プロも、いやプロなればこそ、便利な機能はどんどん使いたいということなんですね。その他に、「Cinematography Pro」で注目すべき新機能はありますか?
渡邊:画質以外のところで、録音性能も大きく向上しています。具体的には今回、新たにインテリジェントウィンドフィルターという機能を搭載しました。これは、ソニー独自のAIによる音源分離技術を駆使して、風の雑音のみを除去するというもの。たとえば海辺で撮影しているとボコボコという耳障りな風のノイズが入ってしまいがちなのですが、『Xperia 1 II』では、これを自動で取り除き、撮影者が記録したい人の声や環境音だけをクリアに録音できるようにしています。
戸田:もちろん『Xperia 1 II』のハードウェア的な進化点、高性能レンズや大型化したセンサー、3D iToFセンサーなどは動画撮影時にも威力を発揮してくれます。
渡邊:『Xperia 1 II』では、静止画撮影同様、動画撮影機能も大きく進化しているので、ぜひお試しいただきたいですね。
次世代通信規格「5G」対応で「Xperia」は次なるステージへ
『Xperia 1 II』は、「Xperia」シリーズとして初の5G対応スマートフォンです。昨年後半あたりからからよく聞くようになった「5G」という言葉ですが、これはどういったものなのでしょうか?
渡邊:「5G」は5 Generation、即ち第5世代の次世代通信技術を示します。そのメリットは大きく3つ、高速/大容量・低遅延・多接続で、これによって既存の「4G」ではできなかったさまざまなサービスを受けられるようになると言われています。今回、『Xperia 1 II』は、5Gの通信で使われる2種類の周波数帯のうち、「Sub 6」と呼ばれる4Gに近い帯域に対応しており、3つのメリットのうち、主に高速/大容量を享受するかたちとなります。
それによって具体的にはどういったことができるようになるのでしょうか?
渡邊:それについては「リアリティ」、「リアルタイム」というのが1つのキーワードだと考えています。「リアリティ」というのは、我々の製品で制作した高品質なコンテンツのこと。ソニーのさまざまな技術を継承・結集させて作った『Xperia 1 II』は、これ1台で美しい写真や高品質なシネマ動画などを生み出すことができます。そして、それら高品位なコンテンツを即座にクラウドにアップロードして、「リアルタイム」にユーザーに届けられるようにするというのが、ソニーの目指す未来です。
また、コンテンツを受け取る側としても『Xperia 1 II』は重要な存在。6.5型の21:9シネマワイド 4K HDR対応有機ELディスプレイや高品位なスピーカーなどで、受信したコンテンツを最高の品質で楽しむこともできるのです。
スマートフォンを新たに5Gに対応させるにはどういった苦労がありましたか?
和久(開発リーダー):『Xperia 1 II』は、カメラセンサーの大判化や3D iToF の新規搭載、3.5mmオーディオジャックやワイヤレスチャージの復活など、「Community of Interest」のニーズを満たす方針で設計されています。そこに、さらに5G対応のための回路やアンテナを追加したり、消費電力増大を見込んだ大容量バッテリーなどを搭載していくというのは、モビリティの観点からは相反する話で……それを従来『Xperia 1』と同等以下のサイズで実現するというのだから、そのスタックアップにはとても苦しめられましたね。
しかも5Gという技術は、10年に1度の革新で、まだまだ技術自体が黎明期という段階。業界団体の策定する無線仕様であるとか、通信事業者のネットワーク構築、端末のハードウェアプラットフォーム、そしてできあがった端末を試験するための測定機器類……全てにおいて手探りでやっている状態でした。ですので、開発に際したパートナー企業との協力体制作りは、過去の製品と比べてもかなり慎重に進める必要がありました。
設計的に高難度なだけでなく、黎明期ならではのご苦労もあったということなんですね。今回、5Gで使うもう1つの周波数帯である「ミリ波」に対応しなかったのも、その辺りが理由なのでしょうか?
渡邊:いいえ、今回、『Xperia 1 II』でミリ波に対応しなかったのは間に合わなかったというような理由ではありません。Sub 6とミリ波はかなり特性の異なる電波で、広い範囲をしっかりカバーできるSub 6に対し、ミリ波は超高速な反面、届く範囲が短く、直線的で、障害物があるとすぐに減衰してしまうという弱点があります。
ではミリ波はどういうユースケースを想定されているんですか?
渡邊:局地的な使われ方とは相性がいいとされていますね。例えば、スタジアムでライブビューイングを配信する際、指向性の強いミリ波ならビームフォーミングという技術を使って、事業者がカメラで撮った映像を瞬時にサーバーにアップロードすることができます。現時点においては、そういうビジネスの現場で使われるのがメインのユースケースだと考えているため、コンシューマー向けの『Xperia 1 II』ではミリ波を非搭載にしました。
和久:ここで1つ補足させていただくと、我々は2019年時点でミリ波のトライアルを実施しており、技術的にはすぐにでも導入できる状態にあります。実際、『Xperia 1 II』と同時発表された『Xperia PRO』は、Sub 6とミリ波に両対応しています。
なるほど、あえて搭載していないということなんですね。では、それ以外の通信機能についてはいかがでしょうか? Wi-FiやBluetoothなどは『Xperia 1』から進化していますか?
渡邊:Wi-Fiについては、新たに「Wi-Fi 6」に対応しています。これは、非常に高速なWi-Fiの最新規格で複数人が同時に利用するような混雑時の接続性も高く、5GだけではなくWi-Fi接続時にも高品質なネットワーク環境を実現します。
またBluetoothについても「aptX Adaptive」という新規格に対応しました。従来のBluetoothは遅延が大きく、ラグを気にするゲーマーから不評だったのですが、「aptX Adaptive」で接続すれば、この遅延をかなり小さくすることができます。もちろん、せっかく3.5mmオーディオジャックを追加したのですから有線ヘッドホンを使っていただくのが一番なのですが、完全ワイヤレスヘッドホンがここまで流行っている今、それでも最高のゲーム環境を実現していただくために搭載しています。
Xperia 1 IIにおすすめヘッドホン
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いい音には、静寂が要る。完全ワイヤレスに、業界最高クラス*1ノイキャン
* 完全ワイヤレス型ノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2019年12月1日時点、ソニー調べ、電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る
WF-1000XM3
製品サイトへ -
ノイキャン性能の新たな到達点。研ぎ澄まされた高音質に浸る
WH-1000XM3
製品サイトへ -
いい音には、静寂が要る。ハイレゾを、業界最高クラス*ノイキャンで。
* 完全ワイヤレス型* ネックバンド型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2019年9月5日時点、ソニー調べ、電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る
WI-1000XM2
製品サイトへ