認知特性プロセッサー「XR」が
生み出す映像美と
「画音一体」を
実現する感動の音体験
「ブラビア A95K」シリーズ
圧倒的なコントラストと鮮烈な色再現性能によって、映画ファンを中心に支持を集めている有機ELテレビ。次世代「QD-OLED」パネルを搭載したソニーのフラッグシップ有機ELテレビ「ブラビア A95K」シリーズは、認知特性プロセッサー「XR」によって有機EL由来の高画質をさらに次のレベルへと押し上げたと高い評価を受けています。もちろん同様に進化した音質やデザインも好評です。その全方位の進化がどのように実現したのかを、開発を担当した中核メンバーたちが語ります。
塩月:簡単に言いますと、液晶テレビは極めて明るい映像表示が可能なテレビ、有機ELテレビはコントラスト感に優れた映像表現が可能なテレビとなります。この違いは液晶パネルと有機ELパネルの構造の違いによるもので、どちらが優れているというものではありません。ソニーは2017年から有機ELを用いた大画面テレビを販売しており、「ブラビア A95K」シリーズはその一番の強みである画質、音質、そしてデザインを着実に進化させた有機ELテレビのフラッグシップモデルとなります。
塩月:先代フラッグシップモデル「ブラビアA90J」シリーズで好評だった認知特性プロセッサー「XR」を継承・発展させつつ、「QD-OLED」と呼ばれる次世代の有機ELパネルを新たに導入したことが画質面での最大の特長となります。詳しくは後ほど説明しますが、QD-OLEDパネルを採用したことで、従来の有機ELテレビを大きく上回る、より深い発色やより明るい発色が実現できるようになりました。
また、音質面ではソニー製有機ELテレビが他社に先駆けて実現し、磨き上げてきた、画面そのものを振動させて音を奏でる独自機能「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」も引き続き搭載。これは映画館にいるかのような音場を家庭で再現する機能で、ブラビアがかねてより重視してきた「画音一体」の体験をさらに高いレベルで実現できるようにしています。
さらに「ブラビア A95K」シリーズだけの新機能として、テレビ上部に取り付ける「ブラビアカム」を標準搭載しました。専用カメラユニットがお客さまの視聴環境を正確に把握して映像や音を自動で最適化し、より良い体験を味わわせてくれます。
村井:「QD-OLED」についてご理解いただくために、まず従来の有機EL(W-OLED)テレビがどのような仕組みだったかを説明します。これまでの一般的なテレビ向け有機ELパネルは、白く発光する有機EL素子から出た光を、白(W)はそのまま、赤(R)、緑(G)、青(B)はカラーフィルターで色付けして4色で映像を表現していました。これに対し、QD-OLEDでは青く発光する有機EL素子を光源とし、青(B)はほぼそのまま、赤(R)と緑(G)は「量子ドット(Quantum Dot=QD)」という、光の色を変える特性を持った極めて微細な素材を用いて波長変換し3色で映像を表現するという仕組みになり、色彩輝度が大きく向上しました。
もちろん、パネルを変えただけで画質が良くなるわけではありません。「QD-OLED」のパフォーマンスを十全に引き出しながら、過度な負荷によって寿命を縮めることがないよう上手にコントロールしてあげる必要があります。ソニーは初代有機ELブラビア以来蓄積してきたパネル駆動の知見や、強みであるプロセッサーの処理性能の高さによって、この新しいパネルに起因する課題を上手く乗り越え、フラッグシップと呼ぶにふさわしい高画質を実現しています。
村井:認知特性プロセッサー「XR」の機能として「XR トリルミナス マックス」と名付けた高画質化機能を新搭載しました。これは、QD-OLEDパネルならではの純度の高い発色によって拡張された色再現領域を適切にコントロールし、自然界にある色をリアルに、繊細に再現できるようにしたものです。
村井:その通りです。加えて、「ブラビア A95K」シリーズでは、「XR OLEDコントラスト プロ」「XR HDRリマスター」といったソニー独自の高画質化機能も搭載。暗所の映像を黒つぶれさせずに表現しつつ、明るい場所は鮮明に表現できるようにしています。
村井:高コントラストを謳うテレビの映像美を説明する際、よく闇夜とそこに浮かぶ明るい月の映像をどのように再現できるかが引き合いに出されるのですが、「ブラビア A95K」シリーズではそうした月の微妙な色味をさらに精緻に再現できるようになりました。月のわずかな赤みなどが感じられるのは「ブラビア A95K」シリーズならではの強みだと考えています。
QD-OLEDの映像美を引き出すための、
ソニー独自の高画質化機能
村井:これまではリビングなど明るい場所で見るなら液晶テレビの方が向いているという評価が一般的でしたが、色彩輝度を大きく高めた「ブラビア A95K」シリーズなら昼間のリビングなどでも十分な明るさでお楽しみいただけます。映像のコントラストが極めて高いため、没入感、立体感もこれまで以上に感じていただけるはずです。
村井:はい。「ブラビア A95K」シリーズは広視野角でもあるので、明るいリビングルームに置いて、家族みんなでテレビを見るという用途にもぜひお使いいただければと思っています。
松尾:「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」は、有機ELパネルの裏側に配置されたアクチュエーターでパネルを振動させることによって“画面そのものから音を出す”システムです。
松尾:私たちは、何か物体を見たとき、物体から鳴っている音も合わせてその物体の存在を認識しますよね。ブラビアでは、テレビ視聴においてもそれと同じ体験=臨場感を生み出したいと考え、物体が映し出されている画面そのものから音を出すこの機能の実現にこだわりました。
松尾:はい。そうすることで、あたかもその場にいる感覚になり、映像体験に没入感が生まれるのです。特に人の声については、その人の口のあたりから音が聞こえることで臨場感が大きく高まります。
一般的なテレビは画面の下側にスピーカーが付いている製品が多く、映像とは違う場所から音が聞こえてくるため、どんなに音質が良くても臨場感が薄れてしまうという課題がありました。その点、画面から音が聞こえてくる「ブラビア A95K」シリーズなら、映画や音楽ライブといったコンテンツの視聴時だけでなく、ニュース番組などでも、話者から直接声が届くため、より自然な感覚でコンテンツに没入できます。「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」はテレビとして重要な「画音一体」を高いレベルで実現できるスピーカーシステムだと考えています。
松尾:今回、「ブラビア A95K」シリーズでは、新たにQD-OLEDパネルを搭載していますが、このパネルは従来の有機ELパネルと材質が大きく異なるため、音の響き方が独特で、クリアな音を実現するには調整が必要でした。また、パネル自体の重量もあり、これまでのアクチュエーターでは十分に震わせることができません。
そこで私たちは、音の発信源となるアクチュエーターの改良に挑戦しました。先代モデルで使っていた同軸構造アクチュエーターの内側ボイスコイルを大きくしてパワーを稼ぎ、さらに外側ボイスコイルとのバランスも最適化することで重いQD-OLEDパネルでも高音域まで十分に再生できるアクチュエーターを作ることに成功しました。この改良により音が画面からはっきりと出てくるだけでなく、従来モデルよりも楽器の音の伸びなどが強く感じられるようになり、コンテンツの奥行き感まで表現できるようになりました。
画面そのものから高音質を創出する
ソニー独自のアコースティック技術
松尾:音質の工夫はアクチュエーターの新開発だけではありません。従来モデルではパネルの裏側に制振テープを貼ることで振動を抑え込み、音像を最適化していたのですが、「ブラビア A95K」シリーズではこのテープの一部をあえて取り除くことで、重いQD-OLEDパネルでも画面一杯に広がる音場を作り出しています。合わせて中低音域も厚くなっており、人の声の聞き取りやすさも向上しています。
松尾:はい。このテープの扱いにはソニーが歴代モデルで培ってきた設計ノウハウが活かされており、画面内での振動を制御してステレオ感をさらに高めることにも貢献しているんですよ。
そしてこれらハードウェアの工夫に加え、認知特性プロセッサー「XR」による信号処理でも音質を大きく底上げしています。「XR」にはスピーカーの周波数特性を整えるイコライザーだけでなく、ノイズ源となってしまう特定の帯域だけを入力信号レベルに応じてカットできるフィルターなど、高度なデジタル信号処理機能がいくつも実装されています。「ブラビア A95K」シリーズでは、これらを丁寧にチューニングし、高音質で臨場感のある音を作り出しました。
中でも、音作りの要となるイコライザー調整は特にこだわり、一般的に扱われる振幅特性だけでなく位相特性や群遅延特性にも気を配りながら調整することで、立体的で広がり感のある音作りを徹底的に追求しました。「XR」の処理能力があったからこそ、細かな音のニュアンスまで作り込むことができたのだと考えています。
松尾:はい、そのように自負しています。ちなみに「アコースティック サーフェス」搭載ブラビアが登場したのは6年前(2017年)ですが、ソニーはそれよりもはるか昔、2008年に有機ガラス管を振動させて音を出すスピーカーシステム「サウンティーナ」を発売しています。つまり、私たちには15年も前から、ガラスを振動させて“良い音”を鳴らすことに取り組んできた実績があるのです。
松尾:「まさにそこで人が話しているようだ」という感想をいただけたのがうれしかったですね。「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」だからこそ出せるリアルな映像体験がきちんと届いているんだ、と。音が画面から飛び出してくるイメージを大切にして音響設計をしているので、想いが伝わっていることに感動しました。
松尾:「アコースティック センター シンク」は、『HT-A7000』などのソニー製サウンドバーやシアターシステムの利用時に「ブラビア A95K」シリーズのスピーカーをセンタースピーカーとして利用できるようにする機能です。この機能によってセンター音の定位が上がって画面から音が聴こえるようになり、映像と音にさらなる一体感が生まれます。映画館ではスクリーンの裏にスピーカーが配置されており、セリフや効果音などが映像と重なって聞こえるように設計されているのですが、これを家庭でも体験できるようになるので、ぜひ、お試しいただきたいですね。
テレビをセンタースピーカーとして使用できる
「アコースティック センター シンク」対応
桑尾:発想のきっかけは「こういう構造はどうだろうか?」と、あるエンジニアから持ち込まれたアイデアでした。壁に寄せて設置できるスタンド構造の提案で、もちろんその時からデザインには大きく手を入れていますが、基本的な考え方は最終製品にそのまま引き継がれています。
我々が「バックポジションスタイル」と呼んでいる設置スタイルでは、スタンドの先端に重りを入れることでテレビの重心位置を手前側に移動させました。こうすることで通常のテレビスタンドにある背面側の出っ張りを、安全性を保ちながら大幅に削減して、壁から画面までの距離を壁掛け設置時に匹敵するほど近づけられるようにしています。
日本のようにリビングスペースが限られる国では大画面テレビを置くとどうしても圧迫感が強くなってしまいます。壁掛け設置はそうした圧迫感を軽減してくれますが、特に賃貸住宅では壁掛けのハードルが高いことが問題でした。「バックポジションスタイル」には壁掛けテレビに近い体験をもっと気軽に楽しんでいただきたいという想いが込められています。
村井:実は私、個人的に「ブラビア A95K」シリーズを購入し、2018年モデルと置き換えたのですが、バックポジションスタイルで画面の圧迫感が軽減され、部屋が広くなったように感じられとても気に入っています。
桑尾:その上で、実は「フロントポジションスタイル」はスタンドを前後ひっくり返すと弊社の4K有機ELテレビの初代モデル「ブラビア A1」シリーズに近いデザインもできるのではないか、と後から思い付いたアイデアでした。
なお、フロントポジションスタイルとバックポジションスタイルどちらがおすすめなのかとよく質問されるのですが、我々としてはどちらも自信をもっておすすめできるスタイルだと考えています。それゆえに「デュアルスタイル」と名付けたのです。
塩月:「ブラビア A1」シリーズの前方からスタンドが見えないデザインは市場からの評価がとても高く、またあれをやらないのかという声をよくいただいていました。今回、その進化バージョンとして、発展させたアイデアを提案できたのは良かったです。
桑尾:「ブラビア A1」シリーズからの進化点で言うと、スタンドの奥行き自体もかなり縮めておりフロントポジションスタイルでも壁に寄せた設置ができるようになっています。また「ブラビア A1」シリーズで圧迫感を低減するために付けていた画面の傾斜角も再検討し、床に対してより垂直に近くなるように調整を入れています。
桑尾:スタンド部分はもう一つ工夫があって、リビングに馴染むように石のような質感に仕上げています。その質感を実現するためのオリジナルのシボパターンを、この製品のために新規で開発しました。
また、この製品では画面下部の金属製のベゼルに赤外線リモコンの受光部などが組み込まれているのですが、金属は赤外線を通さないので、その部分だけ半透明の樹脂のパーツをはめ込んだ、異素材を組み合わせた構造になっています。その際、2つの素材の質感を徹底的に合わせ込み、あたかも1つのパーツのように見せているところもこだわった部分ですね。
桑尾:はい、担当エンジニアにはかなり無理をお願いしてしまったのですが、その甲斐もありきれいに仕上がったと思っています。
村井:ここ数年でリモートワークが大幅に加速したことなどを受け、今後、テレビにもカメラを搭載して大画面で快適にコミュニケーションをとりたいというニーズが増えていくだろうと予測しています。しかし、だからと言って、ただカメラを載せただけでは面白くありませんよね。どうせやるならソニーらしい付加価値を付けたいと考えました。
村井:はい。ブラビアカムではさまざまなことができるのですが、まず大きなものとして最適な視聴環境を実現するための機能(自動画音質調整機能)があります。これまでも環境光センサーを利用して画面の明るさと色味を最適に調整する機能を搭載していたのですが、ブラビアカムではそれをさらに一歩先に進め、テレビの前に座っているユーザーをカメラが認識し、その位置や距離に合わせて画質と音質を自動的に補正するようにしました。
塩月:「ブラビアカム」を標準搭載することで、我々が最高だと考える画質と音質を、どのような視聴環境でも手軽にお楽しみいただけるようになりました。
松尾:例えば画面の中央からずれた位置にユーザーが座っていた場合、自動でLRの音場補正を行います。また座っている位置が遠ければ、ボイスズームを行い、常に聞き取りやすい音声をお届けするようにします。
村井:それ以外にも、小さなお子さんが画面に近付きすぎるとメッセージで報せ、お子さんに画面から離れることを促す「近すぎアラート」といった機能も用意しています。
桑尾:本体同様、こだわって作り込んでいます。内部の基板を2つに分割し、L字形状とすることで多くの部分を背面に回し、正面から見える部分を可能な限り小さくしました。
桑尾:はい。「ブラビアカム」も設計の初期段階から関わることが出来たので一体感を高めることが出来ました。また「ブラビア A95K」のみの仕様として、マグネット式のコネクタを採用しました。ケーブルレスなのでテレビに装着するだけですぐにお使いいただけます。なお、スライド式のレンズカバースイッチを内蔵していますので、不使用時にカメラがこちらを向いているのが気になる場合は物理的にレンズ部分を塞いでおくことが可能です。
村井:新たにQD-OLEDパネルを搭載したことによって、発色からコントラスト、そして視野角まで、「ブラビア A95K」シリーズは、全方位で圧倒的な高画質を実現することができました。店頭で見ても、一目で違いが分かるレベルの進化を遂げているので、ぜひこのテレビで映画などお好きなコンテンツを楽しんでください!
松尾:今回、画質の美しさに見合った音を届けたいという想いで、「ブラビア A95K」シリーズの音作りに取り組みました。この製品にはスポーツや音楽、映画に特化した音質モードも備わっているので、コンテンツに応じて設定をいろいろと変更してみていただきたいですね。「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」が生み出す圧倒的な定位による没入感を、ぜひ一度体感していただければと思います。
桑尾:デザインをするにあたり試作を見る機会があったのですが、エンジニアではない私の目から見てもこれまでとは比較にならないものだと直感しました。開発期間中は塩月や村井らと徹底的に議論しながらデザインを仕上げていきましたが、打ち合わせ回数だけで、普段の3倍くらいやっているんじゃないかな(笑)。それくらい情熱を傾けて作りあげたモデルですので、ぜひこのインタビューでお話しした私たちのこだわりを実際に確認してみてください。
塩月:冒頭の繰り返しになってしまいますが、「ブラビア A95K」シリーズは、画質、音質、デザイン、全てにこだわった有機ELテレビのフラッグシップモデルです。映画から音楽ライブ、そしてゲームまで、あらゆるコンテンツを最高の環境で楽しめるものに仕上がっていますので、特にエンタテインメント好きな人にはこの製品を検討していただきたいですね。よろしくお願いいたします!