上左:ワイヤレスノイズキャンセリングゲーミングヘッドセット 『INZONE Buds』
下右:ワイヤレスゲーミングヘッドセット 『INZONE H5』
ゲーミングギアブランド「INZONE(インゾーン)」に、ヘッドセット「INZONE Buds(インゾーン バッズ)」「INZONE H5」が加わる。世界的eスポーツチーム「Fnatic(フナティック)」 が監修し、プロプレイヤーとソニーの共通する想いをカタチにしたゲーミングギアの誕生において、両者が共鳴した瞬間や、開発思想の裏側をのぞき見る。
Fnaticとの協業で生まれた、「勝てるギア」。
「プレイ環境に特化した発想」と「当たり前への疑問」。
長時間のプレイを支える。
「自分専用のサウンド」が勝者への近道。
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「勝利への渇望」に“音”の装備で応える。
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プロ×プロの共鳴の瞬間。Fnaticとの協業で生まれた、「勝てるギア」。
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快適性の鍵は「プレイ環境に特化した発想」と「当たり前への疑問」。
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積み重ねてきた技術と逆転の発想が長時間のプレイを支える。
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相手の位置も距離もアイテムも、音で知る。「自分専用のサウンド」が勝者への近道。
装備で応える。
多様なプレイスタイルに、
選択肢を広げるギアを。
「家で楽しめる最先端のエンタテインメント」として、ゲームをプレイする人が増えている昨今。好みのプレイスタイルやゲーミングギアのタイプは人それぞれ。
広がりを見せるゲームの中でも特に盛り上がりを見せるのは、世界的人気ジャンルのFPSゲーム(First-Person Shooter/一人称視点シューティングゲーム)やTPSゲーム(Third-Person Shooter/三人称視点シューティングゲーム)。「音」で状況を判断できるかが勝敗を大きく左右する。
「INZONE Buds」「INZONE H5」の使命は、好みに合わせて使い分けられる選択肢を、高クオリティで用意し、すべてのプレイヤーに「究極の集中・没入状態=ゾーンに入る(Into Zone)」ゲーム体験を届けることだ。
「INZONE Buds」はシリーズ初の完全ワイヤレスタイプのゲーミングヘッドホン。リスニング用とは違い、ゲームに特化した高品位な音響を体験できるよう設計。
ヘッドバンドタイプを愛用するプレイヤーに応えているのが「INZONE H5」。既発売の「INZONE H7」での高評価ポイントを維持し、装着性、軽量化など、あらゆる面をアップグレードした。
Fnaticとの協業で生まれた、
「勝てるギア」。
数多のタイトルを手にするプロも
コラボレーションを待望していた。
「勝ち」を追求するゲーミングギア開発には、プレイヤーの生の声が欠かせない。そこで取り組んだのが、イギリスを本拠地とする世界的eスポーツチーム「Fnatic」との協業だ。今回の開発では、日本拠点の「Apex Legends」とイギリス拠点の「VALORANT」の2部門の選手が監修に参画している。
顔合わせセッションでは、Fnaticの選手が真っ先に監修参画への期待と喜びをコメント。ソニーから伝えようとしていたことを先にコメントされ、担当者もその熱量に圧倒されるほど。選手としての経験と知見を持つプロと、エンタテインメントの知見とギアを開発するテクノロジーを持つソニー。両者が手を取り合い、共に待望していたツールの開発が実現した。
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商品企画担当 松本
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「VALORANTチームとの初のセッション時、ある選手が『自分たちの経験やパフォーマンスにソニーの技術が組み合わさって新たなものが生み出されることに喜びを感じる』と話してくれたんです。想いの合致、方向性の一致を感じた瞬間でした」
「プロプレイヤーの経験」と「ソニーの技術」
濃密なセッションの果てにある完成度。
Fnaticとは、日本国内外問わず対面で何度もセッションを行った。実際にデモ機を試用し、音質、装着性、遅延感の有無を確認。日頃から長時間プレイするプロだからこそ出てくる意見、INZONEが目指すヘッドセット像への共感の数々。その共通の視点は多岐にわたる。
そうして重ねたセッション。その結果、あらゆるポイントでお互いが納得できるレベルに仕上がった。
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商品企画担当 松本
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「セッションは常に活気がありました。彼らは毎回、感じたことをすべて伝えようとしてくれて、プロとしての熱量が互いに上がっていきました」
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INZONE H5
音響設計担当 高瀬 -
「普段は有線ヘッドホンを使用している選手も『無線接続でも遅延は全然気にならず、プレイに集中できた』と。それを聞いたときは、ガッツポーズでした」
「プレイ環境に特化した発想」
と「当たり前への疑問」。
完全ワイヤレスヘッドホンの
常識から見直し。室内で長時間プレイ
する
環境に合わせた装着性。
リスニング用の一般的な完全ワイヤレスヘッドホンは、通勤や通学の間に音楽を聞くなど、動き回りながらの使用が想定されている。そのため、装着時の見た目の自然さや外れにくさを考え、ヘッドホン本体が耳の内側にすっぽり収まる形状が採用されることが多い。
一方、完全ワイヤレスタイプのゲーミングヘッドホンを使うのは、動き回ることの少ない室内環境だ。そこで「INZONE Buds」は、従来とは逆転の発想で、マイクなど一部のデバイスを耳の外側(下側)にレイアウト。ヘッドホン上部の空間をあけ、耳に収まる部分を極力小さくしている。それにより、圧迫感が軽減し、長時間装着しても違和感を抱かせない。プレイヤーとギアが一体化したような装着感を生み出した。
快適なつけ心地のもう一つのポイントは「エルゴノミック・サーフェス・デザイン」。耳の形にフィットする曲線でヘッドホン本体を“面”で支える。装着が安定し、耳への引っ掛かりが少ないため、つけていることを忘れそうなほど自然な感覚が得られる。
「INZONE Buds」の装着性と形状は、従来の「完全ワイヤレスヘッドホン」というカテゴリーに縛られることなく、どのような場面で使用するかという根本から向き合ったからこそ生み出されたのだ。
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INZONE Buds
メカ設計担当 古泉 -
「『快適に長時間プレイできるには?』を第一に考え、たどりついた形状です。ソニーではこれまでに多様な耳型を取っており、現在は3Dでデータベース化・分析しています。それらのデータと筐体の3Dデータ、そしてこれまでのヘッドホン開発における知見を活用して、装着時にギアと一体化したような快適さを得られる最適な形状を導き出しました」
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INZONE Buds
デザイン担当 野久尾 -
「装着時のフィット感とデザイン性の両立の追求により、スタイリッシュで特徴的なシルエットが生まれました。多数の耳形状データを参考に、設計者と共に試行錯誤を繰り返しながらデザインできた結果です」
装着する瞬間から
「勝ち」は始まっている。
快適性の追求は、装着中だけにとどまらない。「充電ケースを開けてヘッドホンを取り出す瞬間」もプレイヤーのモチベーションに作用する。
ケースから本体をつまむように取り出し、装着前に一度持ち直す手間。あるいは本体が滑ってケースからさっと取り出せない、操作面に触れてしまい誤操作につながる、……そんな面倒な経験はないだろうか。そうした細かなストレスが「勝利」を遠ざける要因にならないとは言い切れない。
そこで、「INZONE Buds」は本体の上部に角度をつけ、それらの煩わしさを解消した。ケースから取り出しやすく、装着もスムーズかつ誤操作を起こしにくい。
充電ケースは机の上に置いて使用することを想定し、自立する形状に。片手で簡単に開けられるようにデザインしている。
USBトランシーバーはスマートフォンでのプレイも想定し、USB Type-Cを採用。持ち運びの煩わしさを考慮し、ケース内にUSBトランシーバーの収納部を確保。その配置は、取り出す際の指の角度や必要なスペースを計算し、プレイヤーにとって気持ち良い使い勝手を追求したレイアウトだ。
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INZONE Buds
デザイン担当 野久尾 -
「充電ケースの設計は、バッテリーの位置、各部品の収納位置……すべてを計算してパズルのように組み替えます。取り出しやすさは、親指と人差し指に必要なスペースを設計図上に円を描いて計算。コンパクトかつ指にとって十分に余裕ある形を目指し、角度をつけるなど創意工夫を凝らしました」
逆転の発想が
長時間のプレイを支える。
合言葉は「丸一日プレイできる」
小さなボディで強スタミナを
実現する新技術。
身軽で自由度の高い完全ワイヤレスヘッドホンだが、その小型さゆえにバッテリー容量が小さく、この点が長時間動作が求められるゲーミングギアにおいては弱点と思われてきた。「INZONE Buds」は、この不安を解消し、「丸一日プレイできること」を合言葉に生まれた。
命題は全体の消費電力削減。そこで「INZONE Buds」に特化した低消費電力プロセッサーL1を新開発。使用シーンに合わせた最適化により、低電圧駆動かつ高効率化を達成、動作電流を抑えることができた。
同時に、バッテリーそのもののパワーも重要だ。 「INZONE Buds」では、最新の完全ワイヤレスヘッドホンのフラグシップモデル「WF-1000XM5」で採用した新規大容量バッテリーを取り入れている。
これらの工夫により、USBトランシーバーによる2.4GHzワイヤレス接続時は、本体バッテリーと充電ケースからの充電を合わせて24時間。LE Audio対応スマートフォンとのBluetooth®ダイレクト接続では、合計48時間を達成した。
「INZONE Buds」の丸一日プレイできるスタミナは、使用シーンへの特化を突き詰めた開発姿勢と、ソニーがこれまで培ってきた技術の合わせ技によって達成されている。
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INZONE Buds
設計
プロジェクト
リーダー 金子 -
「ゲームに没入し、勝利に導く。低消費電力プロセッサーL1の開発と、大容量バッテリーの導入は、そのために絶対にクリアする必要があるポイントでした。ぜひ、バッテリー切れを気にせずに使用していただきたいです」
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INZONE Buds
電気設計担当 斎藤 -
「徹底的に『INZONE Buds』の使用シーンに特化して作り込み効率化した新開発のプロセッサーL1によって、音響等のクオリティへの影響なく低消費電力を実現。さらに『WF-1000XM5』の新規大容量バッテリーを採用することで、デメリットなく、ケースからの充電を含めて丸一日使えるバッテリー持ちを生み出しました」
部品を「なくす」という発想。
当たり前を疑い実現したスリムさ。
「INZONE Buds」のシャープな印象を作る、パーツを分割するライン。この耳に沿うように描かれたラインは、表面的なデザインにとどまらない。大容量バッテリーを搭載しながら、プレイヤーと一体化するスリムな本体を実現する重要なポイントだ。
最小サイズを実現するため、開発ではバッテリー周りの構造を大きく見直した。これまで必須と思われていたバッテリーを固定する内部部品をなくしたのだ。それを実現したのは、外装パーツを3つに分け、組み立て手順を改良しバッテリーを外装パーツに直接固定するという新たな発想だ。
どこでパーツを分ければ、大容量バッテリーを搭載しながらコンパクトになるのか。設計とデザインで綿密に連携をとって調整を重ね、最小のサイズを実現する形状にたどりついた。
スマートなデザインは、機能の追求と新たな発想で生まれた美しさなのだ。
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INZONE Buds
デザイン担当 野久尾 -
「このスリムさと、アクセントになっている耳に沿うラインは、外装パーツを3つに分けたことで生まれたもの。最小サイズを実現するにはここで部品を分けるしかない、機能と美しさを両立するキャラクターの一つになっています」
「小さくなっても、大きくする」
反対の発想を組み合わせた設計。
「INZONE H5」もスリム化を目指し、約260gを実現。長時間プレイでも頭部に負荷がかかりにくく、側圧を低減したため締め付け感が軽減された。
一方で、コンパクトさの追求がつけ心地の良さにつながるとは限らない。
例えば、イヤーパッド部分。本体を小さくすれば必然的にイヤーパッド部分も小さくなるが、そうすると耳が窮屈に感じてしまう。そこで「INZONE H5」では「外観は小さく、内側は広く」という反対の発想を組み合わせて設計。耳周りの空間を大きく取り、十分な余裕を生み出した。
スライダー部分は楕円型にして細身に。重量を軽くするだけでなく、見た目から軽やかに感じられるようデザインした。使い勝手も追求し、滑らかな無段階調整にしている。
軽量さと装着時の安定性を両立する上で特に試作を重ねたのが、ヘッドバンド部分。スポンジの厚みや柔らかさを変え、合皮の種類や張り具合を変え……と、大量にサンプルを作成した。
軽くてコンパクトながら快適なつけ心地は、細部の検討とすべてのバランスで生み出されている。
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INZONE H5
メカ設計担当 林 -
「ヘッドバンドはスポンジを2mm高くしてみる、4mm高くしてみる……とミリ単位で調整したサンプルや、合皮の貼り具合を変えたサンプルを作りました。例えば、スポンジが柔らかすぎると、上から張った合皮がシワになってしまうことがあります。これらは計算だけではわからないこと。トライアンドエラーで最適解を導き出しました」
音で知る。「自分専用の
サウンド」が勝者への近道。
情報を正確に感じる立体音響が
あらゆる場所をゲーム空間に。
音はゲームの重要要素。特に対人戦のFPS・TPSでは、音一つが勝敗に直結する。音で敵の位置や使用している武器の種類を把握できれば有利にゲーム展開できるからだ。音楽のリスニングでは「音の響き、楽曲のハーモニーに包まれること」が重視されるのに対し、ゲーミングでは「音から自身が置かれた環境がマップを描くように把握できること」が求められる。
「INZONE Buds」「INZONE H5」では、これまでのINZONEで評価されてきた音質を引き継ぎ、より微細な音まで正確に聞き取れるように音質設計を重ねた。
さらに、立体音響機能をオンにすると、よりゲーム世界に没入したような感覚が得られる。ソニーがこれまで培ってきた立体音響の技術を土台としながら、ゲーミングに特化したチューニングを施した。
前、左右はもちろん、背後や上下まで。敵の動きを感じられる音で、プレイヤーを勝機に導くギアだ。
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INZONE Buds
音響設計担当 吉良 -
「土台となる技術は共通していても、どんな場面で使うかによって求められる音響体験は変わります。『INZONE Buds』『INZONE H5』の立体音響は、これまであった技術をただ“応用する”のではなく、プレイシーンやそこで求められるものを意識して開発することでつくり出された音です」
耳の外側と内側、2つの個人最適化で
一人ひとりに特化した音を。
音の聞こえ方には、耳の形が違うように、個人差がある。正確な情報を得られる音を再現するには、一人ひとりに合わせた調整が必要だ。「INZONE Buds」は耳の外側(耳介)と内側(外耳道)から、音場(サウンドフィールド)と音質(サウンドトーン)の最適化をしている。
音場の調整は「外側」から写真を使ってアプローチ。耳を撮影したデータを元に、聴感特性を分析する。サウンドトーンは「内側」から音で計測。本体を装着した状態で鳴らした音がどのように耳の中で反響しているのかで、耳の入り口から鼓膜までの空間の特徴を把握し、最もプレイヤーにとって優位となる音響環境を整えている。
まさにゲーム空間に入り込む聞こえ方は、細やかな個人最適化から生み出されている。
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INZONE Buds
音響設計担当 吉良 -
「立体音響の個人最適化は、これまでのソニーのヘッドホンでも取り入れられてきました。その技術を土台に、より音の位置情報が正確にわかるような、ゲームに特化したチューニングでさらに向上しています」
気づいていなかった室内のノイズまで
カットしてゲームに集中できる音を。
もし今あなたがこの記事を自宅で読んでいるのであれば、一度目を閉じて耳を澄ませてみてほしい。冷蔵庫や空調、PCのファンの音など、さまざまな音が聞こえてこないだろうか。私たちの身の回りには音が満ち溢れている。普段は気にしていない音も、ゲームプレイ時にはノイズとなるかもしれない。そこで『INZONE Buds』に搭載したのが、ノイズキャンセリングモードだ。
ノイズキャンセリングモードは、モニターの向こう側にいる対戦相手を感じられるぐらいの臨場感とゲームの世界への没入感を体験できる。より世界へ没入できるようゲームプレイには欠かせない機能だ。
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INZONE Buds
設計
プロジェクト
リーダー 金子 -
「ぜひ、ノイズキャンセリングモードで『INZONE Buds』の音を体感いただきたい。一方、例えば宅配の予定があるなど周囲の音にも気付く必要がある時に便利なアンビエントサウンドモードも搭載しています。ゲームプレイ時の使用環境により、便利に使い分けていただければと思います」
フラグシップモデルの技術を取り入れ
ゲーミングに最適化した高音質
リアルで没入できる音の実現に大きな役割を担うドライバーユニット。
「INZONE Buds」には、完全ワイヤレスヘッドホンのフラグシップモデルである「WF-1000XM5」にも搭載している8.4mmの独自開発ドライバーユニット「ダイナミックドライバーX」を採用。豊かな音表現を生み出すドライバーユニットに、ゲームに合わせたチューニングを掛け合わせ、ゲーム空間で必要な情報となる微細な音までが逃さず再現される。
「INZONE H5」では、通気孔に一工夫。一見どこに通気孔があるのかわからないスリムなデザインだが、ハウジングの側面に設けている。これによりINZONEのフラッグシップモデルである「INZONE H9」と同様の構造で、迫力ある低音を再現。
見えない箇所にまで技術が行き届いているからこそ、「勝てる音」が生まれている。
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INZONE Buds
音響設計担当 吉良 -
「『ダイナミックドライバーX』は、沈み込む低音域の表現と、伸びのある高音域を再生できるのが特徴です。この低音がゲームに没入できる音質を、そして高音が微細な足音の表現を実現しています」
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INZONE H5
音響設計担当 高瀬 -
「基本は従来のINZONEシリーズを踏襲しつつ、今回のモデルに合わせてさらに音の再現性を向上しています。Fnaticによるテストでも好評で、私たちの考える音の方向性はゲームに適したものだとわかり、より自信を持っておすすめできるようになりました」
モノづくりには物語が生まれるもの。
ここまで「INZONE Buds」「INZONE H5」を徹底解説してきた開発チームに、
開発の様子や印象的なエピソードをガジェット系ライターの照沼健太が聞いた。
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ライタープロフィール照沼健太
編集者/ライター/カメラマン。MTV Japan、Web制作会社を経て、独立。2014年より2016年末まで音楽メディア「AMP」の編集長を務め、現在は音楽・カルチャー・広告等の分野を中心にコンテンツ制作全般を行っている。
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商品企画担当
松本 -
INZONE Buds
設計プロジェクト
リーダー
金子 -
INZONE Buds
音響設計担当
吉良 -
INZONE Buds
電気設計担当
斎藤 -
INZONE Buds
メカ設計担当
古泉 -
INZONE Buds
デザイン担当
野久尾 -
INZONE H5
設計プロジェクト
リーダー
渡辺 -
INZONE H5
音響設計担当
高瀬 -
INZONE H5
メカ設計担当
鈴木 -
INZONE H5
メカ設計担当
林 -
INZONE H5
デザイン担当
平野
「Fnaticとの協業」は、ゲーム好きにとって注目のポイントだと思います。Fnaticと取り組んできた中で、どんなことが印象的でしたか?
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商品企画担当 松本
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VALORANTチームのみなさんが来日された際のセッションが忘れられないですね。これからこのプロジェクトについて話そうとした場面で、ある選手が「ちょっと待って!」と言って立ち上がったんです。「こういう機会を得られて、我々もうれしい。私たちの経験やパフォーマンス、アイデアなどがソニーの技術と組み合わさって、新しい製品が生み出されることに喜びを感じています」と。熱いメッセージをいただきました。
Fnaticもソニーと組むことに可能性を感じていたのですね。
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松本
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彼の言葉はまさにそのとき我々がお伝えしようとしていた言葉だったんです。なので、本当に驚いたし、感動しました。カットインして話してくださった姿勢からも、彼ら自身が本心でこの協業を望んでいるのだと感じました。Fnaticとソニーの想いが合致していると確信した瞬間です。
それは、開発チームの皆さんの気持ちも一気に上がったでしょうね! 選手たちは普段は海外にいると思うのですが、その後のセッションはどのように行ったのでしょうか?
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松本
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試合に合わせて来日された際にスケジュールの合間を縫ってオフィスにお越しくださいました。ほかにも、海外で試合があるタイミングでデモを行ったこともありました。
開発中のやりとりはどんな感じでしたか?
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松本
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白熱しすぎて、終了予定時刻をオーバーすることも多々あるほど。それでも彼らの熱量は変わらないんですよ。疲れた顔ひとつせず、積極的に意見を出し続けてくださるんです。そのフィードバックも一つひとつが丁寧で細やか。開発で狙った小さな音の表現の違いにも気づいてくださり 、本当にプロはここまでアンテナを張っているのだと、改めてプロのすごさを感じました。
また、彼らの発言には、プロプレイヤーならではの直感的、感覚的な言い回しやニュアンスも多く、細かな表現やニュアンスを共通認識にするのが難しいところは、何度でも言い直したり言い換えたりして伝えようとしてくれました。最後まで自身の感じたことを伝えて、より良いものをつくろうという強い意志を感じました。
実際に設計されたみなさんは、Fnaticからの声を聞いて、どう感じましたか?
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INZONE Buds
音響設計担当 吉良 -
「INZONE Buds」は、INZONEブランドはじめての完全ワイヤレスタイプのゲーミングヘッドホンです。そのため開発では「INZONE H9」を参考にしつつ、試行錯誤しながら音質を調整しました。ヘッドバンドタイプとは装着性が違い、音質の印象が異なるため、自分で聞いては調整し、他の人に聞いてもらっては調整し……を何度も繰り返す。そうしてたどりついた音質が、Fnaticのみなさんに好評いただけて、たいへんうれしいですね。
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INZONE H5
音響設計担当 高瀬 -
「INZONE H5」も音質は「INZONE H9」を参考にしています。構造部分でメカ設計の鈴木さん・林さんと音質に影響する部分を熟成させ、そこから音質調整をしていきました。その結果、低域を含め満足のいく音質をつくれたと思っています。Fnaticのみなさんから「clear & crisp」「バランスが良い」といったコメントをいただけたときは、好評いただいたこと、世界で活躍するプロプレイヤーと共感できたこと、その両方がうれしかったですね。私たちが考え、目指した方向性は彼らも求めていたのだと、自信になりました。
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INZONE H5
設計
プロジェクト
リーダー 渡辺 -
装着性や快適性の面でも、試合前など本当に長時間プレイをしている彼らの声はリアルで、非常にワクワクしたのを思い出します。
それだけ熱量の高いセッションが生まれたということは、そこに至るまでの開発の中でもさまざまな積み上げやストーリーがあったのでは?
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松本
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もちろんです。
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INZONE Buds
デザイン担当 野久尾 -
「INZONE Buds」のデザインでは、とにかく耳に収まる部分を最小化することを目指して、沢山試行錯誤しましたね。
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INZONE Buds
メカ設計担当 古泉 -
なにか大幅に小型化する方法が無いかと考えていた時に、バッテリーを固定する内部部品をなくして外装部品に直接接着する手法を思いつきました。
従来は当たり前だった部品に疑問を持ったきっかけは、なにかありますか?
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古泉
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私はもともとウォークマンの開発をしていて、ワイヤレスヘッドホンを設計するのは初めてでした。だからこそ、フラットな視点で構造を見ているときに、「なんでこの部品があるんだろう?」と単純に気になって。一度気になると「無くしたいな、絶対に無くしてやろう」と考えるようになりました。そうして、外装部品に直接接着する方法にたどりついたんです。
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野久尾
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設計の大胆な小型化の手法や、バッテリーの組付け条件、それらを踏まえ設計条件をクリアしながらも、耳に沿うようなパーティングラインをデザインし、キャラクターとすることによって機能とデザインの美しさを、設計と共に作り上げました。
ちょっとした発想の転換で、大きな変化を生み出せるんですね。
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古泉
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反対に、野久尾さんから相談を受けたのが充電ケースのヒンジ部分。ヒンジが外からは見えず、本体と蓋のラインが一直線になるよう、設計しました。
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野久尾
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車のドア等でみられる、ヒンジの切り欠き部分が見えないような構造を充電ケースのヒンジ部分でも実現できないかと開発初期から相談し、ようやく実現できました。細かい部分で気が付きにくいのですが、こだわりの一つです。
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古泉
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操作面部分も、かなり試しましたね。
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野久尾
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マイク穴と操作部が一枚の部品になっています。この微細なマイク穴を開ける難易度が高いため通常は別部品に分けるのですが、一枚の樹脂の部品で実現できれば、仕上がりも美しくなると思い取り組みました。
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古泉
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金型による成形を試したり、レーザーで開けてみたり、素材の厚みを変えてみたり……さまざまなパターンを試作して、やっと実現しました。
チーム内の連携と、細部まで込めた魂の賜物ですね。「INZONE H5」の開発では、印象的な出来事がありましたか? デザインは一見すると、前モデル「INZONE H7」を引き継いでいるようにも感じますが……。
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INZONE H5
メカ設計担当 鈴木 -
それが、実は違うんです。
そうなんですね……!
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鈴木
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2つを見比べてもらうとよくわかるのですが、そもそものサイズが大きく異なる。「INZONE H5」はかなりコンパクトになっています。それに合わせて、デザインも新たになっているんですよ。特に特徴的なのがスライダー部分。楕円形で細身にしながら強度を保っただけでなく、上からヘッドバンド部分が重なるデザインにして軽やかさと安定感のどちらも表現しました。
なるほど!
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INZONE H5
デザイン担当 平野 -
INZONEシリーズのこれまでのデザインイメージを踏襲するか、新しさやコンパクトさを強調するか。一時は迷って、今とはかなり異なるデザイン案もありました。
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渡辺
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ああでもない、こうでもないとみんなで話しているうちに、現在のデザインの方針に収束していきましたね。
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平野
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INZONEシリーズのファミリー感を出しつつ、細部で見た目からも軽さを感じられるようにしています。
最初からこのデザインを目指していたわけではないんですね。
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平野
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はい。でも、一度まったく違う方向性を試してみたからこそ、確信を持って生み出せたデザインだと思います。
「INZONE H7」から大きく変わった点はありますか?
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高瀬
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「INZONE H5」「INZONE Buds」ともに、AIによる高精度ボイスピックアップテクノロジーを搭載しています。周囲のノイズを抑制して、口からマイクまでの距離がある場合でも声を拾い上げてクリアに届けてくれます。通話性能の良さは、チーム戦で他のプレイヤーと連携を取る際のコミュニケーションに直結するので、勝利につながる重要な要素の一つなんです。
話を伺っていると、かなりの数の試行錯誤を重ねているなと感じます。
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INZONE Buds
電気設計担当 斎藤 -
納得するまで自らの手で試す文化は、強いかもしれません。例えば「INZONE Buds」のアンテナ部品は何度も試作して一番性能が出るものを選んでいます。アンテナにはレーザーを用いて樹脂部品に回路パターンを形成するLDS (Laser Direct Structuring)を使用しているのですが、試作品の中には自身で銅箔をはんだ付けをして検証したサンプルもあるんですよ。
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INZONE H5
メカ設計担当 林 -
手作りでの試作は、ソニー内ではどの技術者もやることだと思います。私も「INZONE H5」の開発で使用したヘッドバンド部分のモックを今日は持ってきているのですが、これはほんの一部なんですよ。開発中は、机の上にこういったサンプルが山のように積まれていました。一つずつ、スポンジの厚みがミリ単位で違ったり、柔らかさや革の張り具合を変えたりしています。
これでほんの一部! 私たちには、どれがどう違うのか見た目では判断がつかなさそうですが、細部こそ大切なんですね。
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林
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そうなんです。ユーザーが気づくかどうかわからないような部分でも、納得がいくまでつくり続けます。それは、良いものをつくりあげたいというチームの志と連携があってこそできることでもあります。
今回のように、開発の当初からデザインが設計に入ることは、あるのでしょうか?
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鈴木
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はい。ソニーでは、ごく普通の環境です。性能に合わせてデザインも変える必要がありますし、最初から共に取り組むからこそ、最適な機能とデザインの両立を追求できると思っています。
「WF-1000XM5」などの他製品で開発されたパーツを取り入れているのも、印象的でした。元の開発チームからは「持っていくなよ〜」なんて言われたりすることは、ないんですか?
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INZONE Buds
設計
プロジェクト
リーダー 金子 -
(笑)。そんなことは全然なくて、ウェルカムですよ。一つのチームですからね。むしろ、改良に向けたアイデアやヒント、他製品の開発で培った知識を伝えてもらえることも多いです。
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渡辺
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ソニーには「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスがあります。どの製品に携わっていても、目指す先は同じ。だからこそ、長く培ってきた技術や発想が活かせる土壌があります。
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松本
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これは、私たちソニーがゲーミングギアに取り組む意義でもあります。Fnaticとの協業も、たどればやはりこの想いに行きつく。時代の一歩先を目指して、感動体験を生み出す挑戦をしていくのがソニー。新たな完全ワイヤレスタイプのゲーミングヘッドホン開発はまさに挑戦でした。この2製品を通して、クリエイターとプレイヤーに寄り添い、ゲームの世界に感動を生み出していきたいですね。
商品企画担当 松本
「今後は完全ワイヤレスタイプのゲーミングヘッドホンが浸透していくと見ています。一方でバッテリーが持つか、遅延がないかなど不安を抱いている人も少なくありません。INZONEは、徹底的にその不安と向き合って開発しています。好みのプレイスタイルに合わせて選んでいただきたいですね」
より詳しい開発者の声を見る