完全ワイヤレス型ヘッドホン
新フラッグシップモデル
『WF-1000XM5』が変える
ライフスタイル
ノイズキャンセリング性能と高音質にこだわった「1000X」シリーズの完全ワイヤレス型ヘッドホン新モデルがいよいよ登場。音質から形状、操作性など全ての点が大幅にアップデートされたという『WF-1000XM5』の魅力について、開発に携わった7名のメンバーが前編・後編の2回に分けて、お話しします。
後編は大きさからデザインまで一新されたボディの秘密と、オンライン会議などの新たな用途で注目を集めている通話品質の向上、そしてより快適になった使い心地について解説します。
本坊:楽しむコンテンツが音楽から動画、SNS、ポッドキャストなどに広がっているほか、使われる場面も大きく変わってきているように感じています。また、コンテンツを「楽しむ」用途だけでなく、オンライン会議など「仕事で使う」ケースが増えてきました。そうした中、当然、ヘッドホンに求められる機能も変わってきており、長時間使い続けられる快適さや、通話品質、PCとの接続のしやすさも非常に重要視されてきているように感じます。
小澤:ヘッドホン本体のサイズは『WF-1000XM4』と比べて、体積で約25%、重量で約20%の小型・軽量化を実現しています。特にこだわったのが耳に対して正面から見た際のサイズ感ですね。小型化することで耳との干渉が減り、快適な装着性につながりますから、開発当初より小型化には特に力を入れて取り組みました。ただし、「1000X」シリーズは音質、ノイズキャンセリング性能に妥協のないフラッグシップモデルですから、その点に影響があってはいけません。そのため、設計初期段階から音響設計・デバイス開発チームと協業し、部品レイアウト効率を重視した開発を行っています。
小澤:例えば、ドライバーユニットとバッテリーを重ねて小さなボディに収める内部構造を初期から見据え、音響性能を向上させながらも配置効率のよいドライバーユニットの開発を音響担当と進めてきました。また、デバイス面では『LinkBuds S(リンクバッズ エス)』で初採用のSiP(System in Package)技術を進化させて、小型化を実現しています。SiPは超薄型基板や超高密度実装などの半導体製造技術を駆使して一つの小型モジュールへ凝縮する技術です。小型化を目指す上で、最適な形状になるようにSiPの形状を作り込みました。
塚本:具体的には『LinkBuds S』のSiPはほぼ真四角なのですが、『WF-1000XM5』のSiPはヘッドホン本体の形状に合わせて円形に近い形になっており、より内部スペースを有効活用できるようにしています。さらに、FPC(フレキシブルプリント基板)をヘッドホン本体の形状に合わせて折りたたみながら這わせることで、ドライバユニットとバッテリーを積み重ねることができ、なんとかこのサイズを実現することができました。
小澤:はい、その通りです。そして、小型・軽量化は装着感の向上にも繋がっています。小型化することで耳との干渉が小さくなり、快適な装着性に繋がりますが、もちろんただ小さくしただけでは装着感は改善されません。
その点、『WF-1000XM5』は、世界各地で採寸して得た耳型や耳形状のスキャンデータを活用し設計しています。耳の内側にフィットする曲線形状を作り、多くの人にとって心地よい形状を模索。デザイン担当と相談しながら、調整した形状を試作し、フィッティングテストを重ねることで、形状を突き詰めています。デザイン面の検討も含めると100パターン以上は試作したと記憶しています。
小澤:もちろん、快適な装着性を実現するために、耳との干渉については過去モデルでも気を遣ってきた部分であり、「エルゴノミック・サーフェス・デザイン」と名付けて取り組んできたのですが、『WF-1000XM5』ではそれをさらに進化させる挑戦をしています。
例えば、先代モデル『WF-1000XM4』では耳の内側に向けてかなり大きな面積を占めていた装着検出センサーを、『WF-1000XM5』では技術開発を行うことで、4分の1程度にまで小型化しています。こうした工夫によってボディ形状の設計自由度が増し、より耳に心地よくフィットする形状を実現できたというわけです。
小澤:より耳の奥までしっかりフィットし、外側の飛び出しを抑えたことで重心が内側に寄り、安定性も大きく向上しているんですよ。
小澤:はい。実は『WF-1000XM5』本体の進化に合わせて付属のノイズアイソレーションイヤーピースも進化しています。具体的にはイヤーピースのポリウレタン部 形状を変更しています。根元部のポリウレタン厚みを薄くすることで、装着時の圧迫感軽減と快適性向上を実現しています。さらに、サイズバリエーションとして、新たにSSサイズを追加し、SS、S、M、Lの4サイズを揃えました。お客様の手元で選べるサイズの選択肢を増やし、耳穴が小さい方でも快適に使えるようになっています。
小澤:それぞれのイヤーピースは皆、同じ形状ではなく、サイズごとに微妙に形状を変えています。たとえばSSサイズのイヤーピースは先端に向けてポリウレタン部がより小さくなるような形状になっており、耳穴が小さい方でも装着しやすいようにしています。
本坊:「1000X」シリーズはコンテンツ聴取を何より大切にしており、ユーザーが疲れや痛みを感じることなく音楽や映画を楽しめるということは重要です。その結果、お仕事での利用など、より長時間、さまざまな場面で使う際にも装着性向上は効いてきます。特に長時間のオンライン会議などで、その違いを感じていただけるはずです。
大西:優れたノイズキャンセリング性能を追求する「1000X」シリーズでは、これまでノイズレスなデザイン、装飾的ではない機能からくるミニマルなデザインを目指してきました。そうした中、『WF-1000XM5』ではここまででお話ししたよう、先代モデルと比べて大幅な小型化・軽量化が実現されたため、それを包む曲面も従来モデルからさらに心地良く耳の内腔にまでフィットするエルゴノミックな形状を生み出すことができました。装着した際に見える部分も、顔に沿った自然な傾きで納まって突出して見えないように、という点は外観面をデザインしていく上でこだわったポイントです。
大西:はい。耳の内腔に沿う光沢部分とマットなタッチ操作部との質感を分けることで、機能的な住み分けを表現しました。これには指先の触感でタッチ部分がどこかを判別できるようにしたいという狙いもあります。また、この光沢面とマットな面を一つの部品でシームレスなデザインとすることで、高品位なイメージを持たせつつサイズを抑えることにも成功しています。装着した際にもマットな面と光沢面のコントラストがアクセントとなることでよりシャープに、コンパクトに感じられ、軽快な印象を与えてくれるはずです。
大西:そうですね。『WF-1000XM4』の外側のマイクは、樹脂パーツによる彫りの深い造詣でオーナメントとして見せていたのですが、『WF-1000XM5』ではマイク部をアルミニウムを微細加工したパーツで周囲となじむ曲面で覆い、ボディとの一体感を持たせながら、精緻なつくりや輝度で象徴的に見せるようにしています。
大西:そうなんです。中にマイクが入っているので音を通す必要がありますが、マイク周囲の構造が空気の対流をつくって風切り音に影響することが開発過程でわかってきました。そこで、対流を小さくするよう形状や素材の試行錯誤を重ねました。また、精度感の高い表現にしたい意図もあって、非常に微細な加工ができるアルミニウムを採用し、なんと1つの孔の直径が約0.15mmとなっています。
大西:そうなんです。ちなみに付属する充電ケースにも同じくらいのこだわりが込められているんですよ。
大西:まず、厚さが従来モデルと比べて3mmほど薄くなっています。また、角を落として、本体同様、手に馴染む曲面を実現することで、体積も減らしてさらにコンパクトになり、ポケットの中にすっと収まる形状を追求しています。充電ケース内側の質感も品位のあるマット加工となっています。
小澤:もちろんそのためにワイヤレス充電や総再生時間などの機能を断念したということもありません。本体サイズが小さくなったことで、ケース内部のレイアウトの自由度が増したため、配置の工夫で薄型化を実現しています。
また、メカ設計としてアピールしておきたいのがふたの開閉動作の気持ちよさです。従来モデル『WF-1000XM4』ではふたを開ききるには最後に一押し必要だったのですが、『WF-1000XM5』は新しい構造を導入することで開け始めに少し力を入れるだけで自動的にふたが開ききるようにしました。
大西:このふたの部分にはもう一つ工夫があります。本当に分かりにくいところなのですが、『WF-1000XM4』の充電ケースではふたの裏側が樹脂そのままであったのに対し、『WF-1000XM5』の充電ケースのふたの裏側の本体を受ける部分はシリコン部品となっていて、本体天面を保護する素材となっています。
大西:そう言っていただけると無理を言ってやらせてもらった甲斐があります(笑)。
大西:「1000X」シリーズの初期からブラックと暖色系の明るいベーシックカラーというコンセプトを一貫しています。もちろん、製品ごとにリサーチは重ねており、最近では装着時に目立ちすぎず、より顔になじむ質感が好まれることが分かってきているため、今回は輝度や彩度はほどよく抑えた成熟した印象の色相やフィニッシュを採用しています。よく見ていただくと分かるのですが、プラチナシルバーは先代モデル『WF-1000XM4』のものよりも、黄色みを抜いたニュートラルな色味になっています。
塚本:ヘッドホン本体と充電ケースのボディの一部に再生樹脂を採用しています。また、パッケージにつきましても、先代モデルから引き続き、プラスチックを一切使用しない、サトウキビや竹、市場で回収したリサイクル紙を由来とするオリジナルブレンドマテリアルを使用しました。ソニーでは「新たに設計する小型製品のプラスチック包装材全廃」を環境中期目標「Green Management 2025」として掲げており、今後も環境に配慮したパッケージに切り替えていく予定です。なお、『WF-1000XM5』ではそれに加えパッケージサイズをよりコンパクトにしており、輸送時のエネルギー削減なども狙っています。
本坊:ありがとうございます。実際、かなり好評で、国内外でさまざまな賞をいただくなど、大きな反響がありました。昔はお店の棚でいかに目立つかが大切だったのですが、今はもうそういう時代ではありませんよね。こうした新しいパッケージが自然と受け入れられているのを見て、時代が変わってきていることを実感しています。
長谷川:「骨伝導センサー」と「AIによるノイズ抑制技術」を組み合わせることで、高度な「ボイスピックアップテクノロジー」を実現しています。骨伝導センサーは装着者の体内の振動(声)を拾うセンサーのことで、周囲の騒音や風による影響を受けずに発話信号を得ることができます。このセンサーとマイクで得た音声をAIによるノイズ抑制技術と組み合わせることで、周囲の騒音の状況・装着者の発話の有無を的確に捉えることができ、環境ノイズを抑制しながら装着者の声「だけ」をより高品質に相手へ届けられるようになります。
長谷川:周囲の雑音が大きい環境でより快適に会話が可能になりました。自分の発話音声をクリアに相手に届けるボイスピックアップテクノロジーと、相手の発話音声をクリアに聴取できるノイズキャンセリング機能によるためです。周りに同じようにオンライン会議をしている同僚がいるオフィスや、混み合った喫茶店など、うるさい場所でもスムーズな会話が可能です。
本坊:先代モデル『WF-1000XM4』が2023年2月にアップデートで対応した「マルチポイント接続」に初期状態から対応しています。これは、スマートフォンとPCなど、2つの対応機器を同時接続し、簡単に切り換えられるというものです。
例えばPCでオンライン会議に参加する場合、これまではスマートフォンのペアリングしている状態からPC設定画面を通じてヘッドホンをつなぎ直す必要があったのですが、マルチポイント接続を使うことで、PCにも同時に繋いでおくことができるので、スマートフォンとの接続を切断する必要はありません。元々スマートフォンの音声を聴いていても、PCでオンライン会議へ参加すると自動的に音声が切り替わり、切り換えを意識することなくそのまま使い続けることができます。またマルチポイント接続ではスマートフォンやPCのOSに寄らず使うことができるので、多くのデバイスでお楽しみいただけると思います。
佐藤:仕事とプライベートで別のOSを使っていても、2台の機器間でシームレスに切り替えできますよね。また、「Headphones Connect」アプリを使えば、音楽再生する機器を手動で切り替えたり、固定したりといったコントロールが可能です。また、3台目以降の機器とのペアリングや、接続機器の切り替えも簡単にできるので、仕事用とプライベート用でPCとスマートフォンを使い分けているなど、さまざまなシチュエーションで便利にご活用いただけます。
他にも、片耳でのご利用の利便性も向上しています。これまでの製品では、Auto Play*等のサービスとの連携を有効にすると、片耳だけで使う際は右側しか選べませんでした。しかし、「WF-1000XM5」では左右両方にセンサーを搭載したことにより、左右どちらの耳でも単独でお使いいただけるようになりました。例えば仕事で使うときには片耳装着で使いたいけれども、右側から声をかけられることが多いので、右を開けておいて左側だけ装着したい、というシチュエーションに対応できます。
*行動に合わせて音楽再生をコントロールするソニー独自機能「Auto Play」
本坊:『WF-1000XM5』では、標準の状態でタップ操作による音量調整ができるようになりました。これまでは「Headphones Connect」アプリから「再生コントロール」「外音コントロール」「音量コントロール」のうち、2つを選んで左右に割り振る必要があったのですが、多くのお客さまから、この3つを全て使えるようにしてほしいという声をいただいており、何とかこれを実現することができました。
本坊:右側のタップエリアを4連続以上タップし続けると音量アップ、左側のエリアだと音量ダウンという操作になります。いろいろな操作法方を検討したのですが、これが最も直観的で覚えやすいのではないかという結論に至りました。
佐藤:「Headphones Connect」アプリに練習モードも用意しましたので、ぜひこちらで操作を覚えていただき、ふだん使いしていただければと思います。かなりお客さまから要望の多い機能だったので、やっと実現できて胸をなで下ろしています(笑)。ぜひお試しください。
佐藤:あります。『WF-1000XM5』では、新たに「ヘッドジェスチャー」という機能を追加し、タップすら不要のハンズフリー操作を実現しています。
佐藤:ヘッドジェスチャーという名前の通り、うなずく動作で電話に出たり、首を振る動作で着信を拒否したりといったことができます。両手に荷物を持っている状態で電話がかかってきた際でも荷物を降ろさずに対応できます。こちらは『WF-1000XM5』から搭載したセンシング専用のIPコアを用いて実現しました。
それ以外ですと、「自動アップデート」にも対応しました。これまでの製品では、アップデートする際は、最後に必ず手動の操作を必要としました。しかし『WF-1000XM5』からは条件を満たしているときは、ヘッドセットを使用していない夜間を目途に自動でアップデートを開始する機能を追加しています。より快適にソフトウェアを最新の状態にすることができます。
塚本:この製品はかなり長い年月をかけて作り込んできたモデルなのですが、「お客さまが何も感じない」部分に最も多くのリソースと情熱をつぎ込んできました。しっかりできているほどお客さまに伝わらないというのは何とも歯がゆいところなのですが、それがうれしくもあるところです(笑)。この装着感をぜひ、実際に体感してみてほしいですね。
小澤:本体の小型化、装着性の向上はメカ設計だけで実現できるものではありません。開発チーム一丸となって取り組んで実現してきたものですので、ぜひ音質、ノイズキャンセリング性能だけでなく、ユーザビリティの進化についてもご注目いただければと思います。
大西:そのためにもぜひ実際に店頭で手に取って、装着してみていただきたいと思っています。シームレスで美しい質感を追求したデザインはもちろん、チーム全体でこだわり抜いた装着性を皆さんご自身の耳でお試しいただきたいです。
長谷川:通話機能についても妥協せず、いろいろなシチュエーションでの検討を行ってきました。その結果、周囲の騒音を気にせず使用していただける品質に仕上げられました。ぜひ、プライベートの電話、仕事の会議問わず相棒のように使っていただければと思います。
佐藤:今回お話しした主にUXに関わる部分以外にも、小型化しても性能を大きく向上させるために、ソフトウェアの面からもチーム一丸となってさまざまな改善に取り組んできました。その結晶をようやく発表できたことをうれしく思っています。なお、先代モデル『WF-1000XM4』がそうであったよう、『WF-1000XM5』も使っていただきながら進化していくのを楽しんでいただきたいと考えています。ご期待ください。
本坊:『WF-1000XM5』はフラッグシップの名にふさわしく、音楽体験のみならず、通話性能から使い勝手まで全ての点で性能を大きく向上させています。仕事でも、プライベートでもより人生を快適にするための相棒として使っていただければうれしく思います。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット
WF-1000XM5
世界最高ノイキャン(*1)と高い装着性を実現する小型設計のハイレゾ音質完全ワイヤレス(*2)
*1 左右独立型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2023年4月10日時点、ソニー調べ、電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る
*2 ハイレゾコンテンツをLDACコーデックで最大転送速度990kbpsで伝送する場合。「Headphones Connect」アプリから操作が必要です