No.003
プロに応える多彩な撮影機能をもつ
AX700の長時間イベント収録での活躍
株式会社OUNCE
JACK 林/ JACK HAYASHI
1980年新潟生まれ。現在はOUNCEにてブライダルを中心に撮影。個人では10年近く劇団による公演、ダンスといった舞台、イベント撮影、学校教育関係の映像やバイクレースの撮影まで幅広い分野を手掛ける。
No.003
株式会社OUNCE
JACK 林/ JACK HAYASHI
1980年新潟生まれ。現在はOUNCEにてブライダルを中心に撮影。個人では10年近く劇団による公演、ダンスといった舞台、イベント撮影、学校教育関係の映像やバイクレースの撮影まで幅広い分野を手掛ける。
普段から映像制作をしているプロフェッショナルは、4KハンディカムのFDR-AX700をどう使うのか?イベント記録の仕事の多いJACK林さん(ONUCE)に、AX700の活用事例をお聞きした。
土日のブライダル撮影が中心です。その他に企業系のPVやインタビュー、劇団の舞台公演、クラシックバレエやジャズダンスなどの撮影・編集を行なっています。また、教育分野でも、英会話学校等の依頼で英語教材の撮影・編集を行なったり、保育園の発表会、卒業式なども撮影します。
もちろん性能を重視しますが、物理的なコンパクトさや、コストパフォーマンスを大切しています。普段1人で電車や車で移動して撮影することが多いので、持ち運ぶ機材をコンパクトにまとめられることをとても重要視しています。また急な機材トラブルや撮り逃しというリスクに備えて、撮影するカメラの台数を増やしてカバーすることがあります。そのために同じ性能の機材を最低2セット揃えることを考えると、コストも大事なポイントですね。
高校生くらいの時にHi8のCCD-TRV92というビデオカメラを買って使い始めてからずっとソニーのビデオカメラを使用していまして、操作性や色の質感が気に入っています。
まず1.0型センサーを試してみたかったということがありました。これまでのイベント撮影時は、1/2.3型センサーのHDR-CX560というハンディカムで引きの押さえ映像を撮影しているのですが、センサーサイズの違いで画質や感度性能、色再現にどこまで差が出るかを確認したいと思いました。
また、ハンディカムなら4Kを安心して長時間録画できますし、AX700だったらS-LogやHLG(Hybrid Log-Gamma)で撮影ができるというのも、今回使用した大きな理由です。最近カラーグレーディングを本格的にやってみたいと思っていたので。
あとはやはり価格面でしょうか。これだけの機能を搭載したビデオカメラが、業務用ビデオカメラの半分近いくらいの価格で手に入るという点も使ってみたかった理由です。
たしかにデジタル一眼カメラで撮影することが増えてきましたね。レンズと本体の組み合わせで被写界深度、奥行きの深さを調整できますし、記録された映像はかなりキレイで、“ぼけ”も美しく表現できます。
しかし、イベント・舞台撮影になると“ぼけ”はあまり求められません。人物とか、場所とか、そこで行われていることをすべてしっかり記録する、ということが重要視されます。そのため約2時間近く続く舞台公演を、途切れずに撮影できることも必要な条件なので、ハンディカムなら安心して撮影に挑めます。
カメラはFDR-AX700を3台、大容量バッテリーNP-FV100A、ACアダプター/チャージャーAC-VQV10、XLRアダプターキットXLR-K2M、リモートコマンダーRM-VPR1、三脚がザハトラー システムAce M GS アルミ3段三脚システム、ベルボンEX547ビデオ三脚、NEEWERカーボン三脚、TASCAMのPCMレコーダーなどです。
今回のポイントはAX700を3台使えたことです。AX700のこのサイズ感だからこそペリカンケース1つに3台収納して一人で会場に持ち込むことができました。従来だとZ5J 1台をメインに、もう1台小型のハンディカムを収納するとケースがいっぱいになるので、この差は大きいです。
180席くらいの小劇場で、(株)オフィス上の空という舞台プロデュース会社の協力の元、彼らがプロデュースする「トルツメの蜃気楼」の舞台公演を2チーム分、撮影しました。
まず舞台後方に、引きの固定用とズームでの操作用で2台を設置。残りの1台を中央下手に設置しました。
中央下手の1台は三脚に固定し、バッテリーを使用して1チーム約2時間分を長回ししました。バッテリーは最大サイズのNP-FV100Aです。事前のテストで3時間程度は回るということを確認していたのでバッテリー切れの心配はありませんでした。
舞台後方に設置した2台はACアダプターを使用して電源を取りながら撮影しました。
AX700は2つのメディアスロットを搭載していているのも助かります。今回は「リレー」設定し、記録時間を気にせず撮影に集中できました。
途中三脚から外し、屋外で劇場の外観や、劇場内に飾られた花を撮影しました。あと手持ちでインタビュー撮影も行いました。AX700は本体が小型軽量なので、Z5Jクラスの業務用ビデオカメラよりもフットワーク良く持ち出せることを実感しました。
そうです。4Kでの舞台撮影は初めてだったので、事前の準備段階で256GB、128GBの大容量のSDカードを用意していました。64GBのカードを使用する場合は、デュアルスロットを利用して「リレー」記録にしました。
「XAVC S 4K 30p 60Mbps」という設定だと256GBで約8時間ほど記録できたと思います。100Mbpsも選択できるのですが、今回は編集のことも考え、少しでも余裕をもてるよう60Mbpsを選びました。
画角については編集時クロップすることを想定し、意識して少し引き気味に撮影しました。
実際にクロップしての編集は20〜30%くらいの拡大に抑えましたが、画質は充分保っていましたので、4K撮影のメリットは充分にあると実感しました。
業務用ビデオカメラと同じメニュー構成で使いやすかったです。実はジョイスティック操作というのがZ5Jにはありませんでしたが、これが暗い劇場内で撮影中でもスムーズに操作できたのに驚きました。非常に便利ですね。
基本的に、舞台ではマニュアルフォーカス(以降MF)を使用しています。舞台では点光源が多かったり、いきなり暗くなる暗転や急に明るくなる明転することが多いので、オートフォーカス(以降AF)だとピントが迷ってしまうことが少なくありません。
今回はテストを兼ねてAFで撮影してみました。屋外での撮影、人物撮影、屋内でも狙った被写体にちゃんと合ってくれました。劇中の重要なシーンが暗かったので、そこだけMFで撮影しましたが、それ以外はAFで撮影しています。被写体を認識する精度や、追随する性能がすごいなという印象です。全体の80%くらいはしっかり被写体に焦点が合っていたと思います。
AF追従範囲を「広い」から「狭い」、乗り移り感度を「敏感」から「粘る」と調整できるのも便利ですね。今回はグループ会話劇だったので追従範囲は「広い」:5、乗り移り感度は「粘る」:1という設定で撮影しました。たとえば動きのあるダンスステージや、殺陣などのアクションが多い舞台などは、乗り移り感度を「敏感」:5にするなど、被写体によって変更できそうなので今後の撮影で使用するのが楽しみです。
今回は約180席規模の劇場でAX700を使用しましたが、光学12倍ズームで充分寄れました。全画素超解像ズームをオンにして、4K撮影で最大18倍になる(522mm相当)ズームを試したのですが、役者のアップ画もキレイに撮れていました。
操作面ではズームレバーだけではなくリングも使えるので、“ここぞ!”というときにマニュアルズーム感覚で一気に寄れるメリットも感じました。
S-Log/HLGの撮影は今回初めてでした。舞台の演出家さんの中には編集を側で見ながら、映像の加工、例えばここは思い出を語るシーンだからセピア調に近い色にとか、細かくディレクションしたいかたがいます。もちろん現場の照明もそういう風に設定しているのですが、映像でよりわかりやすいようにと依頼されることがあります。今回使ってみてS-LogやHLGはそのような演出家さんの思い描く世界観に近づけられる、素晴らしいツールだと感じました。
印象としてHLGのほうがアンダー側のノイズなども軽減でき、カラコレ作業も不要なくらい簡単な作業だけで肉眼で観たのに近いくらいのトーンに仕上げることができました。
ノイズが少なく、人物はもちろんのこと、舞台上の美術や大道具のディテールがちゃんと細かく表現できていると感じました。最終的にはHDRではなくSDRで仕上げるので、本来の使いかたとは異なりますが、撮って出しが中心でトーンなどもこだわる舞台撮影向けには、カラコレ作業を最小限に抑えて作りたい映像に仕上げることができる、使い勝手の良いピクチャープロファイルだと思います。(上の作例動画参照)
編集ソフトはEDIUS Pro 9を主に使用しているので、早速カラーグレーディングにもチャレンジしました。最終的にはSDRにするので、LUTを当てて処理することが必要です。プライマリーカラーコレクションというカラーエフェクトでLUTをあてる作業から始めてみましたが、ちゃんと素材を自動で認識してLUTを当ててくれることに感動しました。
今回固定して撮影した1台はAEで撮影したのですが、通常の撮影モードであれば、白トビを起こしてしまうシーンでもHLGであれば白トビせずに収まっていました。LUTを当ててからさらにコントラストや色味の変化がつけやすい印象でした。
ただ私が普段使っている4コアのCore i5 メモリ16GBのノートパソコンでは、3840×2160、30pのプロジェクトはスムーズに再生できず、一旦フルHDの1920x1080に変えてやっと再生できるようになりました。書き出し時にプロジェクトを戻すという作業をしています。
高性能のガンマイクを使用できるのもメリットですが、舞台撮影に関してはステージ上にあるマイクの音は音響卓を通じてライン音声としてもらえることもあり、ガンマイクとラインの音を入れました。XLR入力が業務用機のように拡張できるというのは便利でした。
業務用ビデオカメラではリングでズーム操作をすることもありますが、今回はリモートコマンダーを三脚のパン棒につけて録画スタート/ストッップ、安定したズーム制御ができるのは便利でした。
1.0型CMOSセンサーで4K収録ができるカメラがどんどん発売され、小型化も進んでいます。例えばAX700をメイン機にし、同じく1.0型のCMOSセンサー搭載でコンパクトなボディのサイバーショットRX0 IIをサブ機として活用できるのでは、と考えています。例えばRX0 IIは定点カメラとして固定。AX700を手持ち撮影用として使用するといった使い方ですね。これなら持ち運ぶ機材がコンパクトになり、例えばワンマンで臨む撮影現場では準備をスムーズに進められ、かつ高画質な映像を残せる機材構成となります。
またAX700のようなビデオカメラとαのようなデジタル一眼を同じ現場に持ち込んで、より大きな“ぼけ”を生かす形でインタビューだけαで撮るという使い分けもあるかと思います。
AX700は業務用ビデオカメラ並みの機能と操作性を持ちながら、大きな投資をせずに手に入れられます。しかも画質は4KもHDも選択できるなど、幅広いフォーマットを必要に応じて選べます。またサイズ面でも業務用ビデオカメラに対してコンパクトなので、三脚から外した手持ち撮影でも持ち運びしやすくアングル決めも楽にできました。ロケ撮影やインタビュー用のディレクターカメラとしても使えるビデオカメラですから、コストパフォーマンスが非常に高いと思います。
撮影後の編集を考えるとしっかりLUTを付けた映像を確認できる4K表示に対応した外部モニターと、快適にプレビューでき、実時間並みに書き出しができるレベルのパソコンは必要だと感じています。早く環境を整えて使いたいと思いました。
安定した長回しができ、しかもHLGで撮れるので、作品性にもこだわりを持ちたいという人にもマッチします。こらから動画を本格的に始めたい人の選択肢として、AX700は一つの大きな候補になると思います。