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背面開放型音響構造専用開発ドライバーユニット
ヘッドホンでの立体音響制作を高い次元で可能とする優れた空間表現と超広帯域再生を実現。常に変化し続ける制作環境に対応するべく、クリエイターとの密なコミュニケーションと音質調整を通じて、制作意図を正確に再現する音質を目指しました。
スエード調イヤーパッド
肌触りが良く、長時間使用に適したスエード調人工皮革をイヤーパッドに採用。これまでの数々のヘッドホン開発で得られた知見を活かした軽量設計により、長時間の試聴を伴うコンテンツ制作でも快適な装着感を実現しました。
Φ6.3mmステレオ標準プラグΦ3.5mmプラグアダプター付属
ケーブルプラグは、制作現場で広く使われるΦ6.3mmステレオ標準プラグを採用。付属のプラグアダプターを使用することで、Φ3.5mmステレオミニジャックを備えた機器との接続も可能です。ポータブル機器等、リスナー環境での試聴にもお使い頂けます。
レコーディング・エンジニア
ギタリスト/プロデューサー
映像作家
ヘッドホンにこだわるソニーストアのスタイリストがわかりやすくレビューしています!
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本ページは「PHILE WEB」の記事を一部編集し転載しております。転載元:https://www.phileweb.com/review/article/202304/12/5113.html
ソニーから開放型モニターヘッドホン「MDR-MV1」が登場。その一報に意外さを覚えた方もいるだろう。というのもソニーは数年前に、レコーディングからミキシング&マスタリングまで幅広い用途に対応する新世代の密閉型モニターヘッドホン「MDR-M1ST」を発売している。すでに音楽制作の全領域に対応するモデルを持ちながら、さらなる新モニターヘッドホンを追加してきたのはなぜか? 実はソニーのその狙いこそが、音楽制作のクリエイター側だけでなく、我々オーディオファンもこのMDR-MV1に大いに注目するべき理由となる。MDR-MV1は、立体音響制作を強く想定し、これまで以上に優れた空間表現と超広帯域再生を提供する、そのために開発されたモニターヘッドホンなのだ。であればそれは我々リスナーにとっても、立体音響を制作側の意図により近い形で受け取るための最適解になり得る。またその性能は当然、ステレオ再生の精度も高めてくれる。実際ソニーが示すすMDR-MV1の想定用途は、ステレオも含めた「ステレオ/立体音響のミキシング&マスタリング」だ。ヘッドホンからの音漏れが問題になるレコーディング・モニターとしては推奨されないが、そのほかにおいてはMDR-M1ST以上にオールラウンダー。結果としてMDR-MV1は、立体音響のモニター云々を抜きに単に開放型ヘッドホンのハイエンドとして見ても、魅力的な仕上がりになっているわけだ。
ステレオのみを前提としたこれまでのモニターヘッドホンとは生まれから違うMDR-MV1。開発目標として設定されたのは「ヘッドホンでの立体音響制作を高い次元で可能とし、ステレオ音源制作の質を高める、優れた空間表現と超広帯域再生」だったという。 前者「優れた空間表現」のために採用されたのが背面開放型の音響構造。ドライバーからの音をハウジング外に素直に逃し、ハウジング内での反射を低減させ、音源の空間情報を正確に再生する狙いだ。しかし開放型は一般に、低域再生能力の確保が特に難しく、後者「超広帯域再生」との両立は容易ではない。そこで開放型向け新型ドライバーユニットだ。開放型に搭載した際に低音域の再現性、超高音域までの伸び、高感度を実現できるよう、シミュレーションと試作を重ね最適化した振動板を搭載。ドライバー前面/背面の通気を最適化する背面ダクトで、低域から中域の明瞭度を確保しつつ、低域の量感とレスポンスを充実させている。プロの制作ツールとしての作業性の面においては装着の安定性や快適性も必須となる。その実現に貢献しているのはまず、単純に物理的な軽さだ。40mm以上の大型ドライバーを搭載した開放型ハイエンド機としては最軽量級の223gという軽さを達成している。実際の装着感も軽い。 イヤーパッドの貢献も大きい。スエード調人工皮革は肌触りも心地よく、径の大きさと十分な厚みによる、耳周りに余裕のある着け心地も特徴だ。イヤーパッドは、ユーザーが交換できる(購入店、またはソニーの修理相談窓口へご相談ください)ので、長期の使用に向けても安心できる。数時間連続して作業するプロユースを想定したこの快適な装着性は、リスニングにおいても大変に嬉しいものだ。同じくリスニング機としての観点からは、低インピーダンス/高感度仕様なのも嬉しい。ハイパワーなDAPやアンプを特別に用意せずとも支障なし。プロユーザーのリモートワークを想定した仕様と思われるが、我々にも都合が良い。ケーブルはプラグ6.3mm/長さ2.5mのプロ仕様。しかも3.5mmへのプラグアダプターも付属し、DAP等との組み合わせにも不自由はない。なおこのケーブルはMDR-M1STのそれと同じもの。ということは着脱式であることもMDR-M1STと同じくで、着脱プラグもそれと同型のスクリュー固定式3.5mm/4極だ。
ここからは音質インプレッションをお伝えしたい。最新ウォークマン「NW-ZX707」との組み合わせにて試聴した。 先にまとめると、開放型ハイエンドのジャンルにおけるMDR-MV1の強みや個性は「開放型のなかでも特に優れた立体感」と「開放型にしてはという断りなど不要なほど充実した低音」と感じた。以下、具体的に説明していく。 星街すいせい「Stellar Stellar」は無数の音を緻密に配置して構築されたエレクトリックなポップスであり、こういったサウンドの表現は開放型全般が得意とするが、MDR-MV1の表現力はさらに格別だ。音の配置の立体感に加え、音像ひとつひとつの立体感までもが際立つ。音が頭の中に「浮かび上がる」快感を改めて味わえるヘッドホンだ。歌詞「その手を伸ばして」「誰かに届くように」の語尾のエコーの再現には感動を覚えた。本機で聴くとエコーが左右に回る動きの幅の広さ、徐々に小さくなっていく音量変化の滑らかさにより、何とも美しい余韻が生まれるのだ。音源をハイレゾからサブスクのロッシーに変えるとそれが一気に乏しくなることから、本機がハイレゾの真価を引き出してくれていることも確認できる。 Robert Glasper Experiment「Human」の5弦ベースによる超低音の描写には、本機の低音再生の充実と個性が強く現れた。ベースの音像それ自体はもちろん、そこから音場全体に広がる低音の響きを豊かに描き出してくれるのだ。包み込むようなその響きは、R&B的な雰囲気の「Human」には特にフィット。バラード系にも合う。 しかしホセ・ジェイムズ「Bag Lady」などヒップホップ的な感触の曲だと、同じ5弦ベースにも、音像自体の力感や沈みの方をもっと求めたくなる。そこでMDR-M1ST用市販リケーブルを流用してのバランス駆動を試した。すると狙い通り、空間表現のさらなる向上と共に、ベースの力強さと沈み込みを補強できた。本機の活用においてはバランス駆動も有効な手法になりそうだ。 最後に忘れてはならない立体音響を、360 Reality Audioのサンプル音源、YouTubeで公開されている体験 MVなどでチェックする。ここでは本機の空間表現の強みのうち、「純粋に広い」が特に発揮される印象を受けた。用意される空間が広いほど、距離感や移動感の表現はより大きくよりわかりやすくなるというわけだ。
現在において、エレクトリックサウンドで特に顕著な超現実的なほどの空間表現や、5弦ベースやシンセベースによるサブベース帯域の低音は、あらゆる音楽ジャンルで普通に用いられている。その状況下で開放型ヘッドホンは、前者に強みを持ちつつも後者への対応が課題だった。なればこそ、前者を伸ばし後者もクリアしたこのMDR-MV1は、開放型ハイエンド新世代の先駆けと言える。ぜひいち早く体感してほしい。
MDR-MV1
NW-ZX700