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パーソナルオーディオが辿り着いた新たな音楽体験 音楽プロデューサー小林武史

 パーソナルオーディオが辿り着いた新たな音楽体験 音楽プロデューサー小林武史

2016年に発売され多くの話題を集めたSonyのフラッグシップ・ヘッドフォン&ウォークマン。
CDを遥かに越えるハイレゾ音源のクオリティを徹底的に引き出すために開発された
最先端のパーソナルオーディオ機器の音を、音楽プロデューサー小林武史が体験する

PHOTOGRAPHY:GOTO TAKEHIRO
 TEXT:SUGAWARA GO

*出典 「SWITCH Vol.36 No.1」より

━━ 音楽プロデューサーとして日々レコーディングスタジオやライブ会場で音楽に触れている小林さんですが、プライベートな時間ではどのように音楽を聴かれているのですか。リスニングの際のこだわりのようなものがあれば教えてください。

それは聴く時の機器やシチュエーションによって変わってきます。近年はReborn-Art Festivalの関係で東北に行ったり、また別の仕事で関西方面に行ったりと、地方に行くことが多いんですね。しかも日帰りとか一泊じゃなく、何日か滞在することも多い。そうなるとどうしても気軽にBluetoothで聴けるヘッドフォンや再生機器を選びがちになります。とはいえ単に手軽であればいいというわけではもちろんなくて、その音楽が持っている"響き"をしっかり再生できているかどうかが、機器を選ぶひとつの基準としてあります。当然だけど一般的なスマートフォンレベルの再生機器でボトムの効いたロックやアナログ感にこだわった音の作品を聴いても、本来その曲から得られる快感の半分どころか10%も得られない。いくらポータブルとはいえ、それではさすがに厳しいですから。

━━ 普段ご自宅にいる時はスピーカーを鳴らして音楽を聴かれることが多いですか。

実は今ちょうど自宅の音響環境を変えたいなと思っているんですが、オーディオに関して言えばアナログからハイレゾまですべてを同じシステムで聴けるような状態、聴き比べができる環境にしたいと思っています。

━━ 聴き手として、そして音楽の作り手の立場として、ハイレゾ音源についてはどのような印象をお持ちですか。

最新のハイレゾの音が、質の高いアナログの音と遜色のないものだということは実感しています。その場で切り替えながら聴き比べればそれぞれの違いもある程度わかるけれど、ちょっと時間を置いてあらためて聴くと、その差はほとんどわからない。しいて言えば、音の密度感がグッと高まった時にアナログはどうしてもブースト気味になるように感じます。音が飽和してくるとレコードの溝を切るのが難しいのかな。ちょっと詰まった感じがどうしてもあるんだけれど、ハイレゾはどれだけ音が密集してもどこか余裕があって、ちゃんとそこに空間を感じられるんです。それから、本当に質の高いアナログの音はかなり音量を上げても全然耳に痛くなくて、逆に気持ちが良いからどんどん上げてしまうものなんだけれど、このヘッドフォンとウォークマンで聴いたハイレゾ音源もまさにそうした音でした。だからつい音量を上げすぎてしまうのが難点かも(笑)。さすがに飛行機や新幹線で使うことはためらわれるけれど、移動中の車の後部座席で一人で集中して音楽を聴きたい時なんかはぴったりだなと思いました。

profile 小林武史
1959年山形県生まれ。音楽プロデューサー、「ap bank」代表理事。多くのヒット曲を生み出す音楽プロデューサーとしての活動の傍ら、震災復興支援をはじめとする様々な社会活動に積極的に取り組んでいる。

━━ そういったアナログ、ハイレゾそれぞれの音の豊かさや緻密さというのは、ご自身が実際に手掛けられた作品で感じられたこともありますか。

自分の手掛けた作品で言えば、YEN TOWN BANDの最初のアルバムはレコーディングから一切デジタルを使っていない完全なアナログサウンドなんですが、それを去年初めてアナログ盤にしたんです。その音を聴いて思ったのは、アナログとデジタルというのは一見正反対なんだけれど実はそんなことはなくて、ハイレゾまで行くと実はデジタルもアナログも同じ方を向いているんだなということ。このSonyのヘッドフォンとウォークマンで今回いくつかハイレゾの音源を聴いて、そのことをあらためて実感しました。キース・ジャレットの『ザ・ケルン・コンサート』なんかはいい例ですよね。これだけ再生音のクオリティが高ければ、作り手が作品に込めた思いや、やろうとしたことがそのままの形で伝わってくる。それは僕らとしてはとても望むべきことだし、ちゃんと伝わるのは嬉しいことですから。

━━ 聴き手の再生環境というものは常に意識されていますか。

それについては今よりも若い頃のほうが強く意識していたと思います。たとえばモノラルで聴いた時にどう聞こえるか、小さなラジカセで聴いたとしてもその曲の魅力はちゃんと伝わるのか、その曲を好きになってもらえるのか、そんな視点も大事にしていました。

━━ それは徐々に変わっていったのでしょうか。

そうですね。今は昔と違って聴き手の音楽体験も遥かに多様になっているので、かつてのようにシンプルなアウトプットで確認する必要もなくなってきたと感じています。たとえばの話ですが、もし僕が手掛けたSalyuの新しい作品が、ものすごく音質にこだわって作ったものだと言ったら、ちょっと興味を引かれませんか?

━━ とても聴いてみたいです。

とにかく音質に徹底的にこだわって、ひとつひとつの音像や音の定位、空間にひたすら気を配って緻密に作り上げた作品だと言ったら? 実際にそういった新しい方向性の作品も、ポップスという表現の中に生まれてきている。それは、聴き手の音楽体験が多様化する中で、そうした音質にこだわった作品を受け入れられる聴き手が増えてきているということの現れなんだと僕は思います。かつてのようにひと括りにして"大衆"と呼べるようなキャパシティの広いリスナーでは、もはやなくなってきている。そんな状況の中で、こういったハイエンドのポータブル製品を体験すると「さすがSonyだな」と思いますね。まずこのプレーヤーのとんでもない重さ、そしてこのごついケーブル。「一体何を考えて作ったんだろう?」という驚きがありました(笑)。それで実際に音を聴くと、これはかなり新しい体験だと感じられるんですね。新しさという感覚は人それぞれかもしれないけれど、少なくとも僕にとってこれは新しい音楽体験でした。

━━ 小林さんが感じたその「新しさ」とはどういうものですか。

言葉にするのはなかなか難しいんだけれど、音楽へと引き込まれる感覚というか、その世界へ没入していくアイソレート感というか、それはこれまでヘッドフォンでは感じたことのない体験でした。ヘッドフォンにしてもイヤフォンにしても……イヤフォンは僕はあまり好きじゃないんだけれど、どうしても"点から点へ"みたいな音に感じられてしまって。そうすると結局音楽がどんどん情報になっていってしまう。メロディも情報、歌詞も情報、何もかもが情報として「はいはい、こういうことね」みたいな聴き方についついなっていってしまう。そうではなくて、確かに耳元で鳴っているんだけれどそこにちゃんと音楽の世界を形成することができるポータブル機器というのは、他に無いんじゃないですか。音楽が好きな人やオーディオに興味がある人は、ぜひ一度は体験してみてほしいですね。音楽を志す人にとっても貴重な経験になると思うし、もちろん音楽の作り手にしてもリスナーにしても、誰もがこうした新しい音楽体験を望んでいるだろうから。

ハイレゾで聴きたい
5枚のアルバム selected by Kobayashi Takeshi

ピアノの音に透明感や瑞々しさを感じたいと思ったら、『ザ・ケルン・コンサート』はまず聴いてほしい作品ですよね。アナログ盤とハイレゾを聴き比べてみたけれど、どちらも本当に素晴らしかったです。『マイ・ソング』はCDで聴くと少しハイ上がりなアルトサックスがハイレゾだとどう聴こえるのか興味があって。確かに少しキツめではあるんだけれど、イコライジングで少しだけボトム(低域)を上げたらとても気持ちよく聴けました。それは『ジギー・スターダスト』も同様でした。レコーディング・エンジニアのケン・スコットは僕が大好きなエンジニアの一人で、分厚く密度のある鳴りっぷりのいいギターだったり、デッドなんだけれどすごく良い音のドラムだったり、どの楽器の音も本当に素晴らしい。『Aja』は言うまでもなくスティーリー・ダンの代表作ですが、これもやはりハイレゾで聴くべきアルバムだと思います。CDではすごく定位に広がりを持たせた音作りだと思っていたんだけれど、実際は意外とそうでもなかったというのがこのヘッドフォンで聴いた時の発見でした。『ゴールドベルク変奏曲』は最初のキース・ジャレットとは正反対なデッドな音だけれど、その分グールドのものすごいテクニックが手に取るように感じられます。指の置き方のタッチでサスティーンをコントロールしている様子が、今回聴いてみてより鮮明に聴き取れましたね。

  • 1.『The Koin Concert』Keith Jarrett
  • 2.『My Song』Keith Jarrett
  • 3.『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』David Bowie
  • 4.『Aja』Steely Dan
  • 5.『Bach: The Goldberg Variations, BWV 988 (1981)』 Glenn Gould
  • 1.『The Koin Concert』Keith Jarrett
  • 2.『My Song』Keith Jarrett
  • 3.『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』David Bowie
  • 4.『Aja』Steely Dan
  • 5.『Bach: The Goldberg Variations, BWV 988 (1981)』 Glenn Gould

今回試聴していただいたウォークマンとヘッドホン

ウォークマンWM1シリーズ(メモリータイプ)

NW-WM1Z

高音質を追求したこだわりのパーツで構成されたウォークマン・フラッグシップモデル

ステレオヘッドホン

MDR-Z1R

空気感を表現するためソニー最高峰の技術を投じたフラッグシップヘッドホン

別売ケーブル

MUC-B20BL1

(2.0m 3極ミニプラグバランス接続対応)

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