2015年春、ソニーはホームシアター製品の中でも高いシェアを誇るサウンドバーと台座型スピーカーのラインアップを一新する。その背景には、映像の4K化や音源のハイレゾ化など、ソースのクオリティアップがあり、リビングでもより手軽に新次元のAVエクスペリエンスを届けるのが狙いだ。
バータイプと台座タイプのラインアップは従来の6モデルから8モデルへと拡充されるが、トピックはなんと言っても上位モデルを中心とした4Kおよびハイレゾへの対応である。特にバータイプの「HT-ST9」と「HT-NT3」および台座タイプの「HT-XT3」は、4Kとハイレゾのみならず、HDCP2.2にも対応。今後続々と登場するであろう4Kコンテンツ時代においても、高品位なサウンドを約束してくれる。さらに、ソニー独自の高音質BluetoothコーデックであるLDACに対応し、ワイヤレス再生時でも高音質を実感できる。
4K&ハイレゾ時代に相応しい音質と機能性を追求しつつ、リビングで求められる設置性や使い勝手の良さを両立し、オーディオの新しい“カタチ”が結実されたのだ。
ラインアップの最上位にあたり、ソニーのオーディオ技術を結集させたプレミアムモデルが、7.1chバータイプの「HT-ST9」だ。バー部に搭載された7つのドライバーユニットは、従来モデルの磁性流体スピーカーをベースに、新たに高剛性で軽量なカーボンファイバー振動板を採用。左右のチャンネルにはハイレゾの超高域再生に対応したトゥイーターを同軸配置。更にセンターの同軸スピーカーをバイアンプ駆動するという凝りに凝った構成を採る。ワイヤレス接続のサブウーファーも、振動板のリブ形状を見直して、剛性の向上やフルデジタル駆動化など、より豊かで良質な低域表現を目指した改良が加えられた。
サラウンドを司るソニー独自の波面制御技術も、新アルゴリズムにより、音場の広さ、サラウンド効果、そしてその効果がより広いエリアで体感できるスイートスポットの拡大も図られている。
機能面では、HDCP2.2の対応が意義深い。それは実の所、4K映像のためではなく、むしろHDコーデック音源に欠かせない。具体的には、HDCP2.2に非対応のオーディオを用いる場合、ソース機器と4Kテレビを直接接続する必要があり、結果、オーディオへはテレビからダウンコンバートされた音声信号を戻すことになる。この場合、ドルビーTrueHDやDTS-HDマスターオーディオなどのHDコーデック音源が活かせない。オーディオがHDCP2.2に対応すれば、こうしたジレンマから解放され、ハイレゾ音声と4K映像が同時に楽しめるのだ。
また、ハイレゾオーディオとしての新たな用途も面白い。バー部の側面に設けられたUSB端子を利用すれば、USBメモリーあるいはハイレゾ対応のウォークマンを接続して、ハイレゾ再生が楽しめる。ほか、LDAC対応のウォークマンをBluetooth接続すれば、手軽なワイヤレス接続でありながらハイレゾ音源を高品質のまま再生できる。
新波面制御技術を搭載
従来機「HT-ST7」からアルゴリズムを見直すとともにパラメーターの精度や純度を高め、新たに開発。より広い音場を実現し、後方にも回り込むサラウンドを体感できる。さらにスイートスポットの広さも向上し家族など大人数で映画を楽しむのにお薦めだ。
振動板にカーボン
ファイバーの素材を使用
従来機「HT-ST7」で採用された磁性流体スピーカーに、軽量で剛性に優れたカーボンファイバー振動板を新たに採用。これにより、音の立ち上がりが早まり、1音1音のクオリティが格段に向上した。
映画は『スパイダーマン3』で試聴。「Movie」モードは、音場が濃密でリッチ。特に前方方向は映像の世界の空気に満たされ、効果音の距離感や移動の様も目に見えるかのように鮮明だ。「Movie2」では、効果音がサイドから後方へ回り込む様子が明確になり、アトラクション的にサラウンド効果が楽しめた。
USBメモリーのハイレゾファイルは「Music」モードで試聴。ピュアな2.1ch再生で、程良くタイトな低域が、ボーカルを浮かび上がらせる。静けさによる空間表現力も、ハイレゾクオリティだ。
ウォークマンを用いたLDACの再生音は、USBのハイレゾ再生と音質面でのギャップを感じさせず、手軽なBluetooth接続をより活かすための好機能に感じた。ほか、本機では、銅ビスの扱いやヒートシンクの鳴き止めなど、オーディオのノウハウを駆使して、細部まで入念に仕上げられているのも興味深い。映画を知りオーディオを知るソニーならではの音をぜひ体験して欲しい。
ソニー大崎の試聴室にて、鴻池賢三氏が「HT-ST9」の開発陣の方々からお話しを伺った。
上位モデルの「HT-ST9」と同等に、4K/HDCP2.2およびハイレゾ再生に対応した2.1chサウンドバー。バー部は奥行き65mmの薄型設計で、省スペースを実現。音質面では昨年の最上位機「HT-ST7」と同等の磁性流体スピーカーを採用しつつ、トゥイーターを同軸配置し、ハイレゾの超高域再生にも対応したのがポイントだ。
USBメモリーを接続してハイレゾ音源を試聴した。バー部は薄型ながら充分な剛性が確保され、パワフルでボーカルの明瞭度も上々。真摯な音作りで、ナチュラルでハイファイライクな音調が楽しめた。4K映像を引き立て、リビングのオーディオとしても相応しい品位を備える実力機だ。
「HT-ST7」の磁性流体スピーカーと、同軸スピーカーを搭載しながらも、65mmのスリムボディを実現。薄型の筐体ながらもハイレゾを高音質で再現する。
省スペースに有効な台座タイプでありながら、4K/HDCP2.2およびハイレゾ再生に対応した2.1chスピーカー。組み合わせるテレビは最大65インチ程度を想定し、耐荷重は50kgを誇る。天板には強化ガラスを採用し、高級感のある佇まいと耐久性を両立している。機能面ではLDACに対応し、ワイヤレス接続でも高音質が楽しめる。
サブウーファー内蔵タイプながら、110mmの大口径ドライバーを底面に2基搭載し、ゆとりのある低域を再現。総じてクリアで、ハイレゾの魅力を引き立てている。