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フォトグラファー
星野尚彦 SIDE STORY

まだ誰もやったことのない
モノクロデジタルへの探求

α Universe editorial team

α7R ⅡでHDRを駆使し、表現したい思いをかたちに

「温室 -Greenhouse-」シリーズをどんな思いで撮影しているのかを教えてください。
「温室」というテーマで20年くらい前にフィルムで撮っていたんですが、その時は自分の表現したい思いを写真に表現しきれなくて断念しました。今α7R ⅡとHDRの組み合わせなら8×10のモノクロームのようなものが撮れることが分かって以来、もう一度突き詰めようと挑戦しています。

京都府(京都市左京区) 京都府立植物園

この写真は「温室-Greenhouse-」シリーズの撮影を開始するきっかけになった写真です。
僕らは地球、日本、会社、家庭など、いつも何かの枠の中で生きています。時にその枠の存在に息苦しさを覚えたりしながら生きているわけですが、実際にそれらが全部取っ払われてしまうと、何をしていいのかわからなくなると思ったんです。そのなかで、人間が作り出した枠の一つである「温室」で育つ植物たちは、閉じ込められていてもすごく自由にのびのびと暮らしている、その生命力を緻密に写しとってみることにしました。現実感のないつくりもののような世界である温室を、写真に置き換えることで、生き生きとしたリアリティを持つ生命力を表現できるのではないかと考えたんですね。
そのためには、解像感が高く階調表現が豊かなα7R Ⅱが最適で、HDR合成によってさらにそのトーンが深まる。
解像感がすごく高くて濃密で、実際に両目で現物を見るより、3次現的な感じというか、立体感といったリアリティを感じる作品に仕上がったと思っています。

台湾(台中市) 国立自然科学博物館/植物園

台湾へ別のプロジェクトの撮影に行ったとき、せっかくなら植物園にも行きたいと思い、妻を3時間も待たせて魚のタイミングをはかって撮影をしました。魚は動くのでHDRに向いてないのですが、ズレを消すやり方があって、魚の部分はうまく処理しています。実際泳いでいる古代魚は水槽に植物はガラスに仕切られ捉えとらえられているのに、こんなに自由に見えている。僕らも枠の中に生きているけれど、互いに協調して生きることのすばらしさを表現できたように思います。

茨城県(つくば市) 筑波実験植物園

この作品は大判の8×10のモノクロフィルムから作るファインプリントであるかのような表現を目指しました。そのために選択したHDRという手法ですが、上手くはまったと思います。これが、この手のひらサイズのカメラで表現できるのですから、すごい。エイトバイテンって簡単に言ってますが、僕らは実際にやってきているから、大判の解像力がどれだけすごいことかっていうのがよく分かります。この写真からは、民生用のデジタルカメラでここまでのモノクロのファインプリントの表現ができるのかという驚きがこれまで大判をやってきた人にもよく伝わると思います。

圧巻の階調再現
モノクロデジタルの表現技巧

それぞれの作品のみどころ

暗部での微妙なトーンはカメラの性能が如実に現れるところで、ごまかしが効かず、一般的なカメラだとのあたりのトーンは表現できず黒潰れしてしまいます。7R IIはもともとダイナミックレンジが広い上にHDRで階調をさらに広げているので、なんともいえない諧調豊かな深みのあるトーンが出せ、ノイズも少ないのが特徴です(上図参照)。

使用カメラ:α7 Ⅱ

使用レンズ:COSINA SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5

動いている魚の部分だけはズレをHDRソフトphotomatix上で調整しています。photomatixで16bit Tiffでアウトプットしてからは、photoshopではトーンなどの調整はしていませんが、深みのあるモノクロ表現となっていることがお分かりいただけると思います。

使用カメラ:α7R Ⅱ

使用レンズ:SEL1635Z

モノクロフィルムの持っている階調よりもさらに隙間の階調が出ているような気すらします。アナログの階調はなだらかな線。デジタルの階調は極端に言うと階段状になるのですが、α7R IIと組み合わせたHDRだとアナログのような表現になり、さらに密度が深くなっている気がします。また、周辺部の像のゆがみが一切気にならないのもFEレンズを使ったときの特長として、大変気に入ってます。植物園では人工的な直線が多く、周辺部の歪みがあると一発でわかってしまいます。この作品では人工的な直線美と自然の曲線美がうまく融合していますがこれは周辺部の像の歪みがなくて初めて実現できていることだと思います。

使用カメラ:α7R Ⅱ

使用レンズ:SEL2470Z

これらの作品はこうして出来上がった

■HDRの制作工程
露出を変えて5〜9枚を撮影し、HDR合成ソフトPhotomatix Pro5を使用しています。輝度比が高いときは9枚、そうでないときは5枚としています。α7R IIではオートのブラケットで9枚を選べるのが便利ですね。カメラ内のHDR機能ではなく露出をブラケットで撮影しています。RAWでもJPEGでも解像度は変わらないのでこれらの写真はすべてJPEGの撮って出し。RAWは使っていません。HDRソフトで合成することを前提でバラして撮っているのでJPEGで十分。その方が撮影後のハンドリングも良く効率的な作業が可能です。モノクロにするのはPhotoshopではなくPhotomatix上で作業します。僕はモノクロのファインプリントをつくりたいというところから始まっているので、結論としては今HDRという手法が一番合っています。

Photomatix上では、あらゆるパラメーターの調整は試してみます。
ある程度決まっているパラメーターもありますが、
細部コントラスト
ホワイトポイント
ブラックポイント
ガンマ
シャドウクリッピング
などの調整は写真ごと細かく調整をします。この点においては決まった方向性はありません。

ちなみに、温室内は三脚禁止のところが多いので、小さなスタンドが付いている自立式一脚(SIRUI P-424S)を使って撮影しています。一脚ですが、α7R IIにはボディ内5軸手ブレ補正もついていることもあり、ぶらさずに撮ることができています。

ほしの・なおひこ
1983年 日本大学芸術学部写真学科卒業。サントリー宣伝部制作室に入社、サントリーの広告制作全般に携わる。2006年2月「ホシノ★カメラ」を設立。

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