α Universe editorial team
「撮影記」
こんにちは。ネイチャーフォトグラファーの柏倉陽介です。
第二回目となる今回は、本編で流れた5枚の写真それぞれについて、私がその場で感じたことや思ったこと等をお伝えしていきたいと思います。
またCM本編では流れませんでしたが、西表島の素晴らしい瞬間を残すべく、他にも様々な光景を撮りましたので、そちらの写真も何枚かご覧いただけたらと思います。
「SCENE 1」
この滝は、ピナイサーラという名前の滝です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ピナイは“ひげ”、サーラが“滝”という意味です。つまり「ひげのような滝」ということになります。
沖縄県で最大の落差を誇る滝ですから、最初は広角で滝全体を収めようと考え試行錯誤したのですが、流れ落ちる水が岩肌に当たっては砕け弾ける様と岩肌の質感を見ている内に考えが変わり、望遠レンズに付け変え、自分が感銘した要素にフォーカスすることにしました。結果として、ほとばしる滝の水滴、岩肌の立体感、私が感銘を受けたポイントを克明に描写してくれ、この構図で追い込んで良かったと思いました。
「SCENE 2」
密林の中で見つけた鍾乳洞です。少し洞窟内に歩を進めると外の熱気が嘘のようにひんやりとした空気が流れていました。
振り返って見ると、差し込む陽の光によって内部の壁面が外から内に向かって微妙な諧調で浮かび上がっていることに気付きました。
私が申し上げるのもおかしいですが、人間の目はとても優秀です。
このように明るい部分と暗い部分が混在していても、明暗どちらかに引っ張られること無く見せてくれます。
しかしこれを写真で残そうとすると、明暗どちらかに引っ張られてしまい、これまではなかなか難しいことでした。
真夏の強烈な日差しに照らされた外の密林と洞窟内部の輝度差が激しい状況でしたが、私の目に映ったそのままの光景を見事に捉えてくれました。
「SCENE 3」
絶滅危惧Ⅱ類に指定されている美しい鳥。エリグロアジサシです。
熱帯や亜熱帯域の海洋に生息しており、海面スレスレを飛びながら獲物を探し捕食します。
エメラルドグリーンの美しい海上を飛翔する姿を、今回はなんとしても撮りたい!と思い、西表島に隣接するサンゴの欠片でできた小さな無人島、バラス島に赴きました。
警戒心が強く無闇に近づくことは出来ないため、ゆっくりと海の中を進み私の身体の半身が海の中に浸かるくらいのところまで進んだところで、まさに思い描いた海面スレスレを飛翔し、羽根を拡げたその瞬間を捉えることに成功しました!
限られたチャンス、まさに一期一会の状況下でのトライでしたが
半身を海に浸かりながら、このカメラのAFにつくづく感謝した瞬間でもありました。
「SCENE 4」
次の撮影地へ向かうためにカヌーを漕いでいると、キラキラと輝く水面と夕陽を浴びたマングローブのシルエットが眼前に現れました。
このシーンを事前に狙っていたわけでは無かったのですが、そのあまりに印象的な光景に感動し、急遽、この光景を追いこむことに決めカヌーに乗りながら手持ちで撮影に臨みました。暮れなずむ空に輝く水面をとても美しく撮影することができました。
それから余談になりますが、シルエット状のマングローグ、そして後方の山々が、一見すると真黒な面なのに、それらが立体的に描写されていたことにも驚きました。何故か?と思い、写真の中央部、当該部分だけを切り取って拡大したものがコチラです。分かり易いように明度を極端に上げてあります。一面が黒の筈が、マングローブの葉も後方の森と山もちゃんと写っていたことが判ります。帰宅して画像チェックをしていて気付き、これには 思わず声を上げました。
「SCENE 5」
ずっと、いつかは撮ってみたいと想像していた、私の記憶の中だけで存在していた光景です。
記憶の中。つまりこの光景は初めて見たわけではありません。実は過去に見てはいるのです。見てはいるのですが、写真に残すことは出来なかった光景なのです。
そして今回、その夢がようやくカタチになりました。
天空に浮かび上がる天の川と水面に写り込む星々。双方を同時に写しとめる。このカメラとレンズが私の想いをカタチにしてくれた、私にとっては記念すべき1枚です。
「OTHERS」
撮影期間中、とにかくシャッターを切り続ける毎日でした。それほどにこの島は美しい光景に溢れていました。
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