α Universe editorial team
「撮影記」
こんにちは。ネイチャーフォトグラファーの柏倉陽介です。
第二回となる今回は、本編で流れた6枚の写真それぞれについて、私が撮影時に感じたことや思ったこと等をお伝えさせていただきます。
またCM本編では流れなかったのですが、他にも厳寒の道東で遭遇した様々な光景を捉えていますので、そちらも併せてご覧いただきたいと思います。
「SCENE 1」
今回の撮影で、初めて大雪山の雪紋を見た私は、これは普段は目に見えない風が、その姿を現したのだと感じました。凍てつく寒風が雪面にその痕跡をカタチとして残していく……。自然が生み出した造形美を、余すことなく見たままそのままに残すこと。それが私の命題でした。この紋様を立体的に描写すべく、何度も露出値を試しながら撮影に臨みました。またダイナミックな構図にしたく、この写真は身体半分、雪の中に埋まりながら狙った構図です。
「SCENE 2」
大雪山には場所によっては広い雪原が広がっています。雪原の向こうには山脈が連なる光景も見ることができます。強い風のせいなのか、気が付くと空には雲ひとつ無くなり、突き抜けるような青空が広がっていました。そして眩いばかりの太陽が煌めいていました。
こうした構図の場合、三脚を立ててじっくりと撮影するのがセオリーなのかもしれませんが、この大雪山の雪質は驚くほど柔らかく、三脚など立てようものならズブズブと雪の中に埋もれてしまいます。ここで、前回の西表島でカヌーに乗りながら手持ち撮影ができた5軸ボディ内手ブレ補正機能に、またもや助けられることとなった一枚です。
「SCENE 3」
この写真は大雪山から移動して、野付半島で撮った写真です。到着した時はまだ日の出前だったので太陽が昇る方向に向かって歩いていくと、なんと地面だと思っていたところが海で、シャーベット状に凍ってうねるように動いていました。もし朝陽が綺麗に昇ってくれたなら、きっとこの海がキラキラと輝き感動的な光景になるだろうと考えた私は、そのまま朝陽を待つことにしました。そして太陽は昇り私の眼の前には、これまで見たことも無い 光景が広がっていました。私はきっと自分の想像をカタチにしたくて写真を撮り続けているんだと強く実感した一枚です。
「SCENE 4」
今回の撮影の目的は、大自然ともうひとつ、そこで暮らす野生動物を捉えることです。一瞬たりとも逃すことが許されない、そう思った私はカメラをα7R IIからα6500に持ち替えて動物撮影に臨むことにしました。狙うはキタキツネです。足跡には何度も遭遇するものの、なかなか出会うことができず少し休憩していた時です。凄まじい突風が雪を舞い上げ思わず身を縮めた私の目に、私と同じように突風の中を、片目を閉じながら懸命に進んでいくキツネの姿を発見したのです!そうして慌ててカメラを構えた私は、その瞬間を捉えることに成功しました。α6500のAFは舞い上がる雪煙にも迷うことなく、キツネの顔にフォーカスを合わせ続けてくれました。キツネが現れたことに気付き、慌ててカメラを構え、ピントを合わせ、構図を整え、シャッターを切る。この私の一連の動きに全くズレ無く呼応してくれたα6500にも感心した一枚です。
「SCENE 5」
キタキツネを追いかけながら知床半島を移動している最中、その川沿いでまさかの出遭いが私を待っていました。ヒグマです。撮りたいと願っていたヒグマです!!
ちょうどサケを捕まえているところでした。その姿に暫し見とれてしまった私は、自分の安全確保を考え対岸に移動し、そこからヒグマ撮影に臨むこととしました。α6500にSEL70200GMと2倍のテレコンという撮影装備です。これでフルサイズ換算でおよそ600mmという超望遠域が狙えることになります。それが片手でも持てるくらいの軽さでです。決定的瞬間と思いながら観察し続けていたその時、豪快に水しぶきを上げながらサケを捕え始めたのです。私は夢中でシャッターを切ったのですが、後から自分が600mmの超望遠域を手持ちで、しかもAF(追従モード)もカメラ任せで撮っていたことに唸ってしまいました。こうした被写体は、やっぱり一眼レフ機だよね!
と言われる方もいらっしゃいますが、でも如何でしょう?
少なくとも私は、もうそんなことを言っている時代では無くなったんだなぁと実感しました。
「SCENE 6」
いよいよ撮影スケジュールも終盤に差し掛かり、東京へ戻る日が明日と迫った、その日の夕暮れ時に驚くようなことが起きました。まさに太陽が沈もうとしているその時、私の視界の中にヒョコヒョコと動くものが飛びこんできました。太陽を背に、その動物は周りを警戒するように急に小走りになったり、止まっては忙しなく周囲を見渡したりを繰り返していました。そう、キツネです。何とか撮りたいと思った私は、無意識に夕陽を背にしたキツネに向かって歩き始めていました。逃げられたらそれはそれで仕方が無い。そう思いながら太陽とキツネに向かって歩を進めるとキツネが私に気付きました。その時です。キツネは逃げるどころか私の方をじっと見つめてきたのです。私がカメラを構えても一向に逃げる気配も無く、ただただ私を真っすぐに見つめているのです。シャッターを切りながら全身が感動で震えるのを感じました。CM本編にも、この時のことが映っています。是非ご覧ください。
「OTHERS」
CM本編には使われませんでしたが、厳寒の北の大地は、私に感動の瞬間を数多く見せてくれました。是非こちらからご覧ください。
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