α Universe editorial team
「前回」
こんにちは。鉄道写真家の中井精也です。
瞬く間に季節は秋、そして冬へと移っていきますね。この連載を始めたのが9月15日でしたから、もう2ヶ月が過ぎました。
さて前回は、私の想い出の旅にお付き合いいただきましたがご覧になっていただけましたか?
撮影に赴いたあの日、記憶の中の光景を再現したかのような美しい夕陽になったこと、今も信じられない気持ちです。
■前回 本誌に掲載された広告
「Beautiful TRAIN Journey 第四弾」
さて、今回の旅は北海道です。太平洋に面した釧路とオホーツク海に面した網走を縦に結ぶ釧網本線。日本全国の鉄道路線を旅してきた僕ですが、日本でもっとも美しい絶景はどこかと訊ねられたならば、釧網本線だと答えるでしょう。
そんな釧網本線の中でも、僕が最も大切にしている場所があります。中学二年のときから何度も通っている釧路湿原を眼下に走る姿が写せる高台です。
「朝陽と共に」
この日、僕は早朝4:00にホテルを抜け出して、まだ辺りが暗い中、高台へと登りはじめました。
始発列車がこの場所へとやって来るのは6:30前。季節は秋とはいえ、北海道はもう冬の装いです。三脚にカメラをセットすると朝陽が輝きはじめました。太陽の温もりに自然の恵みを感じます。すると眼下の釧路湿原からは幻想的な朝霧が立ち込めはじめたのです。もう何度もこの場所を訪れている僕ですが、こんなに美しい朝霧が出たのは初めてのことです。
「霧がある内に早く来てくれ!」と、何度も腕時計を目にしながら、その瞬間を待ちわびました。
そして僕の願いは叶い、この絶景の中を走るキハ54形を写すことができたのです。α7RIIとSEL50F14Zが捉えた素晴らしい瞬間は11/20発売のデジタルカメラマガジンで是非ご覧いただけたら嬉しいです!
今回の旅では、僕には珍しくSEL50F14Zというツァイスの単焦点レンズで臨みました。普段あまり使わない焦点距離の50mmですが、僕はすっかり、このレンズの描写力に驚き魅了されました。
とにかくボケが美しい。そして抜群のキレ味。立体的な写り。このレンズだけは焦点距離に関わらず長く愛用したいと思いました。
さて朝陽の写真は本誌でご覧いただくとして、今回の旅では他にも何枚か撮影しましたので、そちらをお見せしますね。
先ずは1枚目。ボケの美しさ、凄いと思いませんか?僕特有の
画面いっぱいに大きなボケを配置した構図です。
ボケがとろけるように写っています。
そして2枚目は、JR北海道の根室本線、初田牛駅です。周囲に人家はほとんど無く、また廃止候補にもなっている駅です。駅名はアイヌ語の「オ・ハッタラ・ウシ(河口に深い淵のある所)」からきているそうです。
もうすぐ日が沈みきる時間帯にホームから撮ってみました。いかがでしょう、この立体的な描写力。そしてススキの切れ味のある写り。
きっと僕に限らず、50mmの単焦点レンズを携えて撮影に臨む鉄道写真家は稀だと思いますが、このレンズは今回の旅の
お伴に連れていって大正解でした。
それでは来月も、またこの場所でお会いしましょう。
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