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抜群の機動力でカオス東京の魅力を引き出す 『東巨女子』 PIECE OF TOKYO Vol.1/3

α7シリーズが支える新しい映像制作と
映像表現とは。自主制作コンテンツ「PIECE OF TOKYO」の作品を通して、映像ディレクター
松 宏彰氏、カメラマン Haya氏に語ってもらった。

α Universe editorial team

TVCM・WEBなど、すべての広告コンテンツの戦略企画制作を手掛けるクリエイティブ・エージェンシー「TYO」。社名は、航空会社の業界団体が「東京」を表すために用いる都市コード「TYO」に由来している。

その、東京を看板に掲げた会社が生み出す自主制作コンテンツ群。それが「PIECE OF TOKYO」。東京の魅力を国内外に発信していくというクリエイティブプロジェクトだ。

自主制作という手段で、何を伝えたいのか。このプロジェクトでなぜα7S IIとα7R IIが撮影機材に選ばれたのか。制作を担当したディレクター松氏とカメラマンHaya氏に、その真意を語ってもらった。

ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
松 宏彰氏
1969年神戸市生まれ。TVCMをはじめとする広告映像の企画・演出からWEB、アニメなどを幅広く手がける。WEB広告『WWF I』で2002年カンヌ国際広告祭サイバー部門金賞を受賞。世界各国で上映された押井守監修作品 『東京スキャナー』では監督を、天野喜孝氏の画集をアニメ化した『やさいのようせい N.Y.SALAD』では脚本・総合演出を務め、国内外で数多くの賞を獲得。

株式会社グーゴルプレックス・エンタープライズ所属 カメラマン/シネマトグラファー Haya氏 1972年鎌倉生まれ。CM、ミュージックビデオ、映画、ドラマ等、多方面で活躍中。海外のクルーとも仕事をしてきた経験から、グローバルな考え方で仕事を楽しみながら真剣に取り組んでいく事がモットー。

多彩なクリエイターが映像・ビジュアル化する東京の魅力

――まずは「PIECE OF TOKYO」のコンセプトを教えてください。

松:東京のさまざまな情景をクリエイティブな視点や感性で切り取り、映像で表現するというコンセプトで進めているプロジェクトです。「PIECE」には多面的な大都市・東京の欠片という意味が込められています。弊社の社名が東京の都市コードなので「TOKYO」をテーマに選びました。海外の方が観ても「TYOという会社のクリエイターたちが東京の映像を作っている」ということで、わかりやすいだろうと。さまざまな個性を持つクリエイターが、それぞれが思い描く東京の魅力を「PIECE OF TOKYO」で発信していく、というのが本来の構想です。このプロジェクトがクリエイターたちの、ひとつのポータルになってくれればうれしいですね。

――「PIECE OF TOKYO」は自主制作コンテンツだそうですが、なぜ自主制作にしたのですか?

松:弊社は元々TVCMのプロダクションからスタートした、広告映像を制作する会社です。30年以上、クライアントやエージェンシーがいて、そこから仕事を受注するというスタイルを続けてきました。でも、30年も続けていると時代も変わってきますよね。とくに今はWEBやSNSが盛んで、仕事の流れもどんどん変わってきている。そんな中で発注者が「この仕事、どこの会社にお願いしようかな」って考えた時、やっぱり自分たちで作品を発信しているところが魅力的に映るんじゃないかと思ったんです。制約がないところで、クリエイターとして情報発信する。それが会社の広告・宣伝にもなりますから。正直なところ、最終的にはこれをきっかけして新たなビジネスに繋げることも理由のひとつです。

東京に巨大な女の子が出現する映像をさまざまな手法で

――第一弾として作られた『東巨女子』は、どのようにして生まれたのですか?

松:東京に暮らす女の子×東京の情景や風景、というのが『東巨女子』の基本コンセプトです。女の子を巨大化させたら面白いんじゃないかというアイデアが共同クリエイティブ・ディレクターの岡村さんから出てきたとき、僕も特撮マニアなので、即賛同しました。ルールは「東京の街にでっかい女の子がいる」ということだけなので、それ以外のことは作品ごとに極力雰囲気や形を変えて作っていきました。ムービー、スチール、シネマグラフなど、違う手法でも成立するので、できるだけいろいろな可能性を試した作品群になっています。

『東巨女子 ジャンパー篇』 https://piece.tokyo/TGG/girls/19/
『東巨女子 遊園地篇』 https://piece.tokyo/TGG/girls/18/
『東巨女子 カレー篇』 https://piece.tokyo/TGG/girls/20/
『東巨女子 歩道橋篇』 https://piece.tokyo/TGG/girls/17/
※『東巨女子 ジャンパー篇』、『東巨女子 遊園地篇』、『東巨女子 カレー篇』 撮影:カメラマンHaya氏

作品の狙いは、東京はすごくカオスで面白い街だと知ってもらうこと。そして、そこでモノを作っているヤツらは面白そうだなと思ってもらうこと。一般的な人たちには「東京に行ってみたいな」と思って欲しいし、同業の方には「この人たちと仕事したいな」と思ってもらえたらうれしいです。

カメラ選びでは機動力の高さと小型ならではのアングルの自由度を重視

――撮影ではどのような点を重視して撮影機材を選んだのですか?

松:まず「PIECE OF TOKYO」の新作はデジタル一眼カメラで撮影しようというコンセプトが先にあったんです。限りなくミニマムな構成で、どこまで機動力をあげて、どこまでスタッフの人数を減らして、合成の特撮映像ができるものだろうかと。そう考えた時、α7シリーズのサイズ感はとても魅力的だったんです。

撮影に使われた機材例。

カメラがこれだけ小さいと、極端に狭いスペースや低いところにも入りやすいんですよ。カメラがちょっと大きいだけでアングルに自由がなくなって、思い通りの映像が撮れなかったりしますから。省スペースでも奥行きがある映像が撮れるところが『東巨女子』の撮影では頼りになりました。

Haya:お台場の『ジャンパー』篇でもそうでしたよね。冒頭、足元で靴の紐を結んでいるところを地面スレスレから撮れましたから。とにかくボディが軽くて小さいのに表現力豊かに撮れるところが他のカメラにはない魅力ですね。機動力があるし、小さいレンズを付ければ片手でバッと撮れるし。

東巨女子『ジャンパー』篇の冒頭シーンより。まるで地面から見ているような迫力。
背景は地面に近いアングルから撮影。小型だからこそ実現できた。

あと、高感度でダイナミックレンジが広いところもα7を選んだ理由のひとつです。『東巨女子』は合成映像なのでグリーンバックで撮影したんですけど「Adobe After Effects(アドビ アフター エフェクツ)」(アドビシステムズ社が販売しているビデオエフェクト用ソフト)に取り込んだとき、細かな選択をしなくても女性の髪の毛1本1本まで一発で細かく切り抜けたのには、本当にビックリしました。

人物はグリーンバックの前で撮影。東巨女子『カレー』篇より。

合成時の自由度を高めるため、4K撮影が必要だった

――撮影では4Kも使われたのですか?

松:はい。『東巨女子』は、いわば特撮映像なので合成や後処理が重要になってきます。そのため、背景は4K、人物のほとんどはフルHDのハイスピード撮影です。巨大感を出すためにノーマルではなくコマを上げて撮っています。そして合成するときに4Kで撮った背景映像を、フルHDの画質に寄せていくという作業をしています。

Haya:4Kで撮っておくことで、合成するときに自由度も高くなるんです。あとで動かすことを考えて、背景撮影時は引き目の画で撮影しておきます。

松:合成画像って普通にやるとデジタル感が出てしまうのですが、そこをどう工夫してアナログ要素を入れていくか。そこが僕らの腕の見せどころなんです。

ピクチャープロファイルから微調整して思い通りの映像に

――Hayaさんは以前からお仕事でα7シリーズを使っているそうですが、プロならではのαの便利な活用術・撮影術があれば教えていただきたいのですが。

Haya:個人的には、ファンクションボタンがとても使いやすいですね。頻繁に切り替えるISO感度やホワイトバランス、ピクチャープロファイルなどの設定変更が素早くできるので。上段はよく使う項目、下段は現場のコンディションによって切り替えが必要そうなものを選んで設定しています。あと、何かしらのガンマ設定を行うので、ピクチャープロファイルがいろいろ揃っているのはものすごく助かります。

Haya氏のファンクションボタンの設定例。下段は現場によって変更している。

僕の場合、ガンマは「Cine1」から「Cine4」すべてをよく使っていて、たまにS-Log3も使います。『東巨女子』もピクチャープロファイルの「Cine2」で撮影しました。S-Log3は実は最低ISO感度がちょっと高いんです。ISO3200をデイライトで撮る時なんかはNDフィルターを何枚も入れることになるのでせっかくの機動力も台無しになっちゃうんです。なので屋外で撮るときは「Cine」にして、ISO100か200で撮って切り抜けています。

あとは、黒潰れしないようにブラックレベルをちょっとプラスにして撮影して、後でカラーグレーディング(撮影終わりの段階で映像の色彩を補正する作業)で色を調整しやすくする、というのが僕の手法。あまりプラスに傾け過ぎると黒が浮いてしまうので、撮影条件によって+1〜5くらいの間で現場で調整します。Cineの中でも「Cine2」はわりと明部と暗部の表現をきっちり収めてくれるのでロケ先の撮影条件が、明暗が激しい場合は「Cine2」。撮影条件が良ければもう少しコントラストをつけたいということで「Cine3」や「Cine4」を使っています。

『東巨女子』を撮影したときの設定を再現。PP1はデフォルト設定ではなく、カスタマイズしたものを設定しておく。

重装備=美しい映像ではない――小型の利点を活かした撮影法

――「遊園地」篇ではアトラクションに乗りながら撮影していたとのことですが、あれはどのように撮影したのですか?

Haya:最初はMoVI(3軸カメラジンバル装置)に取り付けて撮影したんですけど、風圧でカメラが持って行かれちゃうんですよ。さらに重力もかかるので、どうしても制御しにくい。いろいろ試してみた結果、軽いに越したことはないってことになってすべて取り外してレンズとカメラのみのスチールカメラの手持ちスタイルで撮影しました。第三者の見た目の目線の意識とカメラの縦ブレを消してなるべく合成しやすいように追求を繰り返していたので、なんだかんだで15回くらい乗りましたけどね(笑)。

松:こういうことって割と象徴的なことなんですよね。ちゃんと撮るために何か付けようかと思ったら、逆にうまく撮れなかったということはたくさんありますから。大きいカメラに必要な周辺機器を付けると取り回しが大変になってしまうけど、α7R IIやα7S IIならコンパクトだし、5軸ボディ内手ブレ補正も搭載されていて、カメラ1台でできることが多い。これからの映像撮影では、ちゃんと撮るために何かを付けようではなく、シンプルな装備で撮る、こういう発想の転換がポイントになってくるんじゃないかと思います。

次回、Vol.2では「PIECE OF TOKYO」シリーズの第二弾『東京音℃』の撮影の裏側に迫ります。

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