ムービーカメラマン
竹内卓彌
SIDE STORY
映像ディレクターの岩元康訓氏による岩元映像製作事務所は、岩元氏とフリーランスカメラマン数名で構成され、カメラマンはそれぞれの得意分野の撮影を行っている。岩元氏がディレクションに専念するときは、カメラマンとして映像撮影を行っているという竹内卓彌氏にα7S IIの使用感を聞いた。
業務放送用(ENG)カメラからα7S IIへ
僕はテレビ技術の出身なので、肩にかつぐスタイルの業務放送用ENG(エレクトロニック・ニュース・ギャザリング)カメラをメインに使っているのですが、一眼ムービーのムーブメントが起きたとき、ENGカメラの感覚がしみついていたので使いづらく感じていました。α7Sが発売され、ゼブラ機能やピーキング機能やフォーカスマグなど、我々からすると当たり前に使用していた機能が、感覚的に使え、一眼での撮影にストレスがなくなりました。とても使いやすいですね。周りのカメラマン達もビデオカメラ感覚で使用できることからαに移行した人が多いです。なかでも気に入っているのは、全画素超解像ズーム。本当はもう一歩詰めたいなと思うときに、解像感度を高く保ったまま約2倍までスッと寄れる。 私はC1ボタンに割り当ててすぐ使えるようにしています。あと、レンズを交換する時間がない時など、24-105㎜のレンズでも実質24㎜から200㎜くらいズームできるので、とても心強いです。
パプアニューギニアの民族祭りでα7Sの高機能を実感
パプアニューギニア政府観光局から依頼を受けて撮影した昨年の7月16日〜19日の3日間に行われたパプアニューギニア最大の祭典「ナショナル・マスク・フェスティバル」のオフィシャル映像です。
1995年、パプアニューギニア政府が、島の異なる文化と言語を持つ部族のお互いの文化をアピールする場としてフェスティバルを開始しました。ひとつの公園に全国から各部族の代表者が5〜10人ほど民族衣装を持ち寄ります。大きなフェスティバルなのですが、司会もおらず、突然に始まり突然に終わり、そしてしばらくしてまた違う部族が出てくるといった感じで進みます(笑)。このような撮影でいつも苦労するのは、部族とのコミュニケーションです。言葉も通じず彼らは秘密主義なので、なかなか撮らせてもらえません。このときも、撮影の許可を得るために、部族の一員になることが必須で、木の根っこのようなもので背中をおもいっきりたたかれるという通過儀礼を経て撮影許可を得ました。α7Sの小型かつコンパクトさは、身構えることなく現地の人との距離を縮めてくれたと思います。 日が暮れ夜になるとバイニン族によるファイアーダンスが行われ、火の中に飛び込み炎を蹴散らし踊ります。当然神聖な儀式の中でライティングはできません。焚き火のみの明るさのなか、高感度であることも本当に役立ちました。しかも明るい部分から暗い部分、細かい煙のディテールまで、見事な再現力です。これまでの超高感度カメラは高価な実験機器のようなカメラやナイトショット(緑のモノトーン)でしか表現できなかったものが、ミラーレスサイズでその場で体感した感動をストレートに表現できること、これには新しい可能性を感じました。
タイムラプスでリアルを超えた美しさを表現したい
アリラ・ホテルズのプロモーション映像です。オープニングをタイムラプス(一定の時間の間隔をあけて撮影した静止画を動画の一コマとし、パラパラ漫画のように連続して見せることによってつくる動画)から始めているのは、ホテルのロケーションと一日の始まりを期待感を持って見せたいためです。現地宿泊先で体感した時間軸を、短い動画の中で魅惑的に見せるのにタイムラプスを多用しています。朝日、夕日は1日に1回のチャンス。雲がかってしまうことも想定されるので、複数箇所で行います。
タイムラプスが難しいのは、明るさが複雑に変わっていくことです。太陽が昇る間に薄い雲や濃い雲を出たり入ったり、を繰り返すこともあります 僕はソニーのPlayMemories Camera Apps『タイムラプス Ver.3.0』というアプリをカメラにダウンロードしていますが、アプリ上でAE(自動露出)を「追従」にすると明るさが1枚撮影するごとに、露出を周囲の明るさの変化に追従させてくれます。これ自体は大変便利なのですが、撮影シーンによっては露出がばらつき、タイムラプスの映像結果がちらつくことがあります。でも、2、3段くらいなら現像で気になるカットを後から調整できるので、この時はAEの「追従」を使用しました。これはRAWで撮影しています。
設定のインターバルは撮る内容によって変えています。タイムラプスのわかりやすい設定メニューがあるので撮影間隔、トータルの記録枚数、好みのテーマ(「夜景」や「ミニチュア」等)を設定します。露出の追従具合も追従感度「高」、「中」、「低」と追従速度を選べます。これまではレリーズタイマーなどで一定の秒数を開けて撮影した静止画をPC等でつなげて動画ファイルに変換しなければいけなかったのですが、このアプリがあればこの作業をカメラ本体内で行い動画ファイルとしてメモリカードに保存してくれます。RAWと動画ファイルを同時に保存できるので動画ファイルで満足できない露出のブレなどがあった場合、後からRAWで作り直すこともできます。
テーマセレクションで撮影モードにし、カスタムを選択。撮影間隔や撮影枚数、撮影時間の設定を行います。トラッキングで露出を自動的に追従してくれる機能(AE)もあります。
PlayMemories Camera Apps『タイムラプス Ver.3.0』はこちらから デジタルカメラ内にインストールして使うアプリ。カメラの機能を強化したり、撮り方のバリエーションを増やすことができる。
“PlayMemories Camera Apps”について、詳しくはこちら
https://www.playmemoriescameraapps.com/portal/
海外の夜のホテル内はとても暗くて普通なら明るい単焦点レンズを用意して開放で明るく撮らないと写らないところをα7S なら高感度なので夜でも絞っても撮れる点がお気に入りです。流行りの被写界深度の浅い画も素敵ですが、ホテルの部屋やアメニティーなどカタログのような雰囲気に撮りたい時は5.6か8まで絞ってカッチリ見せたいんです。そうすると、ノーライトなのにホテルも高級なイメージになります。
タイムラプス撮影にお役立ち周辺機器はこれ
★SunSeeker
SunSeekerという有料アプリで太陽の軌道を調べます。スマートフォンのカメラをかざすと、夜でも太陽の通る軌道を表示。グーグルマップと連携して任意の日時の太陽の方角を表示してくれます。日の出が何時でどの方向に出るかなどを調べたいときはこのアプリを使います。
★電動パノラマヘッド Sevenoak SK EBH01
Sevenoakというメーカーの SK-EBH01。星空やタイムラプスの撮影で、ボディの下に設置すると、指定した時間で指定した角度に回ります。耐荷重が1.5kgなので、レンズの重量を考えると小型軽量のカメラでないと使用できません。小型であることは使える機材の幅がぐっと広がるということです。さらに雲が流れているシーンや夜景など、どんなシーンでも使えて便利。ちょっと動いている映像を挟むだけでも飽きのこない映像がつくれます。
小型軽量を生かし、常に使いやすいギアを探し続ける
「ワンマンオペレートでもクオリティやアイディア、見たことがない新しい映像を求められる中、基本を守りながらも面白い機材は探求したい」と語る竹内氏。彼の撮影スタイルでもあるギアを見せてもらった。
■カラーチェッカー
FS7とαでも微妙に色が違ってくるのでX-Riteのカラーチェッカーパスポートビデオを使用しています。X-Riteのホームページからプラグインをダウンロードし、DaVinchiでカラーグレーディングします。複数の機種の違うカメラで撮影する場合など、このカラーチェッカー(下のイメージ参照)を映しながら露出を合わせておけば後処理でグレーディングする際に、色を簡単に揃えられます。X-Riteは 複数機種を用いたLog撮影では私には必須。これは本当にすごく活躍しています。
■マイク
マイクはドキュメンタリー撮影でははずせません。これまでほかの一眼カメラを使用しているときは、カメラのタッチノイズも拾ってしまうことがあったので苦労しました。これは純正のプロ用マイク対応XLRアダプターXLR-K1Mです。2チャンネルのマイク・ライン入力もでき、かなり役立っています。
■ゲージ
ゲージがあれば、マットボックスもフォロフォーカスもつけられる。普通にシネマカメラとして使えるから便利ですね。あと、ドキュメンタリーカメラマンは、走って追いかける場面が多いので、片手持ちができるハンドルはけっこう必須です。ローアングル撮影のときも役立っています。
■スライダー
映像に流れるような雰囲気が出て、ラグジュアリー感も演出できますね。小型で軽いカメラだからこそ、小さいスライダーでもバランスが取れて装備がコンパクトにまとめられるのがいいですね。
竹内卓彌
たけうち・たくや
1980年生まれ北海道出身 フリーランスカメラマン
中学高校時から放送部にて番組制作、放送機器の扱いを学ぶ専門学校を卒業後、報道の撮影部にてTV番組制作の技術に注力する。現在はTV番組を中心にドキュメンタリー、広告、VP、イベント撮影等で活動中。
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