写真家 染瀬直人 ×
RX100 IV〈前編〉
新しい表現の開拓者、RX100と出会う
いま世界中が注目するVRなど、写真と動画の新しい表現手法の最先端で活躍する写真家・映像作家、染瀬直人。どこの国に出かけるときも、RX100 IVをいつも下げているという。表現の開拓者は、RX100を使って何を撮るのか。〈前編〉
写真家/映像作家
染瀬直人
1964年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。ハナエモリ・インターナショナル「流行通信」THE STUDIOを経てフリーランスで活動。
コマーシャル、雑誌、ポートレート撮影などで活躍。近年は4K動画撮影なども手がける他、360°パノラマVR、360°動画、ギガピクセルイメージ、タイムラプス、シネマグラフなどの作品を発表。静止画と動画の狭間における新表現に取り組む。2014年ソニーイメージングギャラリーで個展「トーキョー・バーチャル・リアリティー」開催。プロフェッショナル・デジタルフォトを学ぶための勉強会「電塾」運営委員。VRなど新分野を考察するセミナー「VR未来塾」主宰。仏Kolor社Autopano Video proの国内唯一の公認アンバサダー認定エキスパート・トレーナー(Level3)。YouTube Spase Tokyo 360度動画インストラクター。2016年の受賞作品に、オーストラリア政府観光局 プロモーション「G!GA Selfie」、カンヌライオン(カンヌ広告賞)サイバー部門:金賞 ダイレクト部門:銅賞モバイル部門:銅賞第69回広告電通賞イノベーティブ・アプローチ優秀賞 コードアワード2016 ベスト・イフェクティブ賞。
http://www.naotosomese.com/
従来の写真の形にとらわれない表現法を追究
ーー360度パノラマVRなど新しい写真の表現法を駆使して多彩な活躍をされていますが、いま活動の中心はどのようなものでしょうか。 私はスチルのカメラマン出身ですが、もともと動画も撮っていましたし、パノラマVRなど、従来の写真の形にとらわれない表現法に注目していました。デジタルの写真はアナログとの比較で評価されてきましたが、そうではなく、デジタルでなくてはできないことを肯定的に捉えるべきだと思って、7〜8年前ごろからそうした新しい表現手法に積極的にかかわるようになったのです。2014年にはソニーイメージングギャラリーで「TOKYO VIRTUAL REALITY」という作品展を開催しました。360度パノラマVR、360度動画、タイムラプス、ギガピクセルイメージ、シネマグラフなど、作品をすべて4Kのブラビアで映し出すものでした。いま興味を持って取り組んでいる仕事も、そうした新しい手法を使ったものがメインです。
ーーこれは見ていてとても楽しくなるパノラマイメージですね。 これは「TOKYO VIRTUAL REALITY」で展示した作品です。東京のキッチュで密度のある空間と個性的な人々、でもどこかリアリティーの希薄な空気感を、360度パノラマVRという手法で表現しました。この方法で、軍艦島、広島の原爆ドーム、二条城、世界遺産など様々な場所で撮影しています。ソニーのα7やα6000にフィッシュアイコンバーターや魚眼レンズをつけてパノラマ雲台に取りつけ、回転させながら撮影し、撮影後にステッチングして360度の画にするのです。また、動画の360度VRコンテンツの場合は、カメラを同時に複数台使って撮影します。たとえば、4台のαをリグで保持して阿波踊りの動画を撮りましたが、ヘッドマウントディスプレイを使えば、祭りの会場にいるかのような体験ができます。
「新しいものが見たい」。人間の欲求は変わらない
ーー新しいものだけに、まだ課題も多いのではないでしょうか。 たしかに、VRには難題もあって、視差やローリングシャッター現象、同期などの課題を克服する取り組みが世界中で行われています。360度内の視線を向けた方向に音が追従する空間音声の研究も進んでいます。こうした技術開発に取り組むエンジニアや研究者の方々と交流することも、とても面白いものです。あとはそれを使ってどう表現するかですね。ストーリーテリングも従来の映画とは違うものが求められます。
ーーいまなぜ新しい表現法の写真や動画が注目されているのでしょうか。 人間は常により高品質なものを見たいという欲望を持っています。360度の写真や映像にしても、120年も前から行なわれていた試みです。ただ当時は装備も大がかりで万博レベルのものだった。それがいまではデジタルの技術で導入しやすくなって、また人の「見たい」という気持ちも湧き上がっているのだと思います。ギガピクセルイメージという表現もあります。望遠レンズを使って何百枚何千枚という写真を撮影し、ソフトウェアでつなぎ合わせて超高画素のパノラマにします。写真をどんどんズームアップすれば細部のディティールがありありと見えるというものです。チェコ在住のパノラマ作家ジェフリー・マーティンに協力して手がけた六本木ヒルズからの360度パノラマでは、拡大していくと東京タワーの展望台にいる人影まで見ることができます。この「細部」をみたいという欲求も、人間がもともと持っていたものでしょう。
直感的に撮れ、クオリティーが満たされるRX100
ーーお仕事では大掛かりな機材で撮られることが多い染瀬さんが、コンパクトなRX100シリーズを使うようになったのはどのような経緯ですか。 写真にはきっちりセッティングして撮る手法と、皮膚感覚的に瞬間を切り取っていくスタイルとがありますが、後者のスタイルで撮る場合、しっかりしたクオリティーを満たしつつ、より直感的に撮影できる携帯性や機能を備えたカメラがほしくなります。このRX100シリーズが出たとき、それらを可能にするコンパクトカメラだと感じて、すぐに購入して使い始めました。実際、ボディーの大きさ、センサーのサイズ、駆動の速さ、シャッターのフィーリングなど、ここまでのものはなかったなと思えるカメラでした。そして、やはり使っているうちにどんどん欲張りになってきて、RX100 IIやRX100 IIIをソニーさんからお借りして試していたのですが、RX100 IVが出たときついにまた購入しました。使っている私の求めるものとカメラの進歩のタイミングが合ったのだと思います。ファインダー、フォーカスの速さ、4K対応動画、高速シャッター。そしてこの小さな筐体でスーパースローモーションまでできてしまう。少し前なら業務用のカメラでしかできなかったようなことが可能なのですから、すごいことです。新時代のニーズを捉えたカメラだなと思います。使ってみて、満足度が非常に高いカメラだと感じていますね。
染瀬直人×RX100 Part1-1
旅先で、仕事先で。いつもRX100 IVを携えて歩く
ーーRX100 IVは、どのような用途にお使いなのですか。 仕事で海外に赴くことが多いのですが、人と出会ったときに写真を撮っておこうとか、あるいはロケ先で仕事の撮影以外に、スナップ的な写真を撮りたくなることがあります。そんな時かさばらず手軽に持ち歩けるRX100やRX100 IVは最適ですね。ここにあげた写真も、好きな場所、空間や瞬間を、気の向くままに撮影したものばかりです。ランドスケープやスナップ、人物のポートレート、動画、その何れにも機動的に対応できて、直感的に撮影できる点が気に入っています。撮影しているときのフィーリングや画質など、プロの要求にも応えてくれるカメラだと思います。この別売りの革のケースもとても気に入っています。ちなみにこのケースは外国の方にもよく褒められますよ(笑)。RX100 IVを首から下げて旅先や仕事先、そして日常もほとんど毎日のように持ち歩いています。
染瀬直人×RX100 Part1-2
★次回〈後編〉では、染瀬氏のRX100 IVの使いかた、そしてRX100 IVで撮影いただいた動画とともに、染瀬氏が提唱する動画の楽しみかたをご紹介します。ご期待ください。
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