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映像演出家 スミス
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α Universe editorial team

スミスさんがミュージックビデオの世界に携わるようになったきっかけは何ですか? もともと映像の仕事をしたいと思っていて、大学も映像学科を出たのですが、ちゃんと就職活動もせずにアルバイトをしていたところ、友人が竹内芸能企画(制作会社)を見に行くというので、一緒についていきました。のぞいてみたら、けっこう楽しそうな雰囲気で、「遊びに来るならいつ来てもいいよ」っていう感じだったので1〜2カ月間毎日通いました。入り浸って、仕事にするしかないなと思って。 やがて、会社にマックを導入することになったときに「ぼくはマックを使えますよ」と言ったんです。使えるといっても、編集する技術などはなく、ただ触ったことがありますという程度だったんですが。その頃はまだのん気なもので、「へえ、じゃあマックの管理を頼むよ」という話になったんです。

竹内芸能企画といえば、ミュージックビデオの制作会社の草分け的存在ですね。 そうですね。ウルフルズやスピッツなどのMVをバンバンつくっていました。CMや映画の第一線で活躍するためには、下積み期間を経て40歳くらいになってやっと監督になれるイメージがあったのですが、竹内芸能企画の作り手はけっこう若くて、MV監督ならすぐになれそうだったんです。ミュージックビデオは作品の尺が5分くらいなので、尺の短さも性に合っていました。

仕事をはじめた当時は、アナログフィルム時代ですね。 ぼく自身、フィルム時代も知っていますし、ビデオ第一世代というか、デジタルビデオの発達とともに今まで仕事してきました。性能はどんどんよくなり、価格は安くなる。今では、素人でも100万円あれば撮影から編集までの機材がすべて揃います。撮ること自体は、プロも素人も同じスタートラインに立っているんですね。差が出るのは、演出や内容だけ。

ソニーのαシリーズをはじめ、新しいテクノロジーをもったカメラを積極的に活用していますね? ディレクターとして新しいカメラで何ができるのかを知ることはとても大事だと思っています。たとえば、スチール用のレンズが使えてフィルムライクな映像が撮れるα7が出たときは、このカメラを4台借りて360度撮影にチャレンジしました。四方に向けたカメラをくっつけて360度映るようにセッティングするのですが、カメラの横幅が短ければ短いほど都合がいいんです。おかげで、業務用の大きなムービーカメラでは撮れないシーンが撮れました。α7S IIは高感度できれいに撮れますね。しかも、これまで求められていた「高感度」のレベルを大きく越えた感度の高さ(動画撮影時:ISO100-102400相当<拡張:上限ISO409600>)です。だったら、これをアイデアにして何かシーンをつくってみようと。

夏の魔物「東京妄想フォーエバーヤング」では、α7S IIで夜の街に出て撮影しました。人物には手前側から照明を当てましたが、α7S IIでなかったら背景の灯りはクリアに映りませんでした。公共のビルやネオンの灯りはこちらでコントロールできないですし、背景の灯りをコントロールできるように自前でつくろうとするととんでもなくお金がかかってしまう。昔ならできなかった夜の撮影が、テクノロジーの進歩で撮れるようになったわけです。

制作=祭 プロデューサー=中村卓郎 監督=スミス 撮影=中尾浩継 照明=合田崇 プロダクションマネージャー=家泉英明

一眼のサイズ感は、やはり強みです。狭い場所に入ることもできますし、被写体の近くに寄ることもできるし、機動性もいい。電車やバスに乗っていて咄嗟にいいシーンに出合っても、撮ろうと思えばこのカメラなら簡単。大きなカメラを背負って、撮るとなったら電源も必要で、フォーカスを送るのにもアシスタントの助けがいるという状況とは、まったく違う種類の映像が撮れると思います。実際、仲のいいアーティストと打ち合わせしながら盛り上がっていたときに手元にあったα7S IIで撮影したこともあります。まだ本番前でしたが、本番よりも気軽に素の表情が撮れました。より日常的で、生々しいものを。

テクノロジー以外に、演出のヒントはどこから得るのでしょう。 美術館に足を運ぶのは好きですね。アートは、どう見えるかという表面的なあり方よりも、物の本質的な部分に触れている気がします。その根本的なところにぼくの仕事のヒントがある気がするので、美術館はとてもいいと思います。最近はあまり行けていませんが。でも、行きたい気持ちはすごくあります。

スミス 武蔵野美術大学卒業後、竹内芸能企画にてミュージックビデオの第一人者である竹内鉄郎に師事。2000年から演出家として活動。近年では、でんぱ組.incの夢眠ねむとの映像ユニット“スミネム”を結成し、活動の幅を広げている。
http://smith0204.com/

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