実践型ワークショップ
ソニー CREATORS’ CAMPに密着
今、クリエイターといえば「映像クリエイター」?
動画が“新しい言語”となりつつある現在、それくらい撮影や編集を仕事にしたいと考えている人が増えています。
「どうすれば良い映像を作れるのか」「どうすれば早く一人前のクリエイターになれるのか」といった疑問や課題を抱えて試行錯誤している人はきっと少なくないはず。
この記事は、そんな方々のヒントとなるであろう、プロの映像クリエイターを目指す高い志と熱い心を持った者たちがソニー主催の「CREATORS’ CAMP」に集い、3日間で得た経験と成長の記録です。
みんな初対面。
3人の駆け出しクリエイターがチームを組んだ
彼らは別々の街に住む、初対面の若手クリエイターたち。
でも今、彼らは3人で一本の映像作品に取り組んでいます。
映像の道に入ったきっかけ、向き合い方も三者三様。
一人はフォトグラファーとして仕事をする中、クライアントから映像制作を求められるようになったことから映像の世界へ。
もう一人は映像系の学生。そしてもう一人は前回の「CREATORS’ CAMP」からのリピーターです。
「ずっと独学でやってきたから、きちんと技術や制作現場での動きを学びたかった」。「プロの方々の仕事の仕方を間近で見て成長したかった」「前回の『CREATORS’ CAMP』で気づけた今の自分の課題を解決したい」。
彼らがやってきたのは、和歌山県の南紀白浜。その目的は、この地で開催される「CREATORS’ CAMP」です。
「CREATORS’ CAMP」 とは、ソニーが主催となり株式会社AOI Pro.と共同企画で開催される3日間かけてチームで地域PR映像を制作するイベント。
総勢約23名の参加者は多種多様。すでに映像制作の仕事をしている人から、副業のクリエイター、学生まで、その経験や技術レベルもさまざま。でも、みんなここからさらなるステップアップを目指しプロの技術を習得せんとする「駆け出しクリエイター」たちです。
そんな駆け出しクリエイター3〜4名で構成されたチームに、映像制作会社やYouTubeなどのフィールドで活躍しているプロクリエイターが講師として参加。各チームは彼らのアドバイスを受けながら、3日間で企画〜撮影〜編集〜審査・講評までを行なっていきます。
たった3日間。しかし、これがクリエイターにとってはかけがえのない成長につながっていく。
そんな3日間を見ていきましょう。
地域の魅力発見と課題解決が、クリエイターとしての自分探しや成長につながっていく
「CREATORS’ CAMP」 第3回開催となる今回の舞台は、和歌山県にある動物園・水族館・遊園地が一体となったテーマパーク「アドベンチャーワールド」。
制作する映像作品のテーマも、この「アドベンチャーワールド」のPRです。
つまり、現実のプロクリエイターと同じように、クライアントの要望や課題に応える映像作品の制作が実践できるイベントとなっているわけです。
イベント初日、チームメンバーや講師の先生と顔合わせや自己紹介を早々に済ませると、早速ロケハンがスタート。
参加者は「アドベンチャーワールド」のスタッフの方々に園内を案内してもらい、この施設が持っている他にない魅力を探りながら、撮影に使えそうな場所を探していきます。
これは3日間という限られた時間を有効に使うための、企画とロケハンを同時並行する特殊な進行です。
しかし、これがプロのクリエイターに求められる「どこにリソースを割き、何の作業に集中すべきか」というシビアな判断を行なうための勘を養う、何より大切な「経験」となっていくのです。
「動画素材としてどのようなものを撮っておくべきか、ロケハンでは何を見て何を考えるべきかといった考え方に始まり、ジンバルの使い方やカメラワークなど具体的なテクニックまで、講師としてできるだけ多くのことを教えたいと思っています。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
そう、この「実践」こそが、クリエイターとして成長する大きな鍵なんです。
「自分が作っている映像と講師の人たちの映像とでは、全くレベルが違う。何もかも勉強になります。」(参加者 Keitaさん)
成長の鍵は「一人じゃない」。仲間がいるから倍速でトライ&エラーできる
実践に加え、クリエイターが成長するためのもう一つの鍵。それは他のクリエイターと出会って一緒に制作すること。
この「CREATORS’ CAMP」で特に強く感じたのは、そんな「ひとりじゃない」強さです。
もちろん、ソニー主催イベントですので、制作用のカメラ「FX30」やソニー最高峰のレンズ「G Master」など豊富な撮影機材が貸し出され、それらの基本的な使い方がレクチャーされます。
しかし、それはスタート地点にすぎません。
他のクリエイターはどのように考えるのか? そして、彼らはどのように現場で動くのか?
それらをリアルに体験できるのが、何よりもこの「CREATORS’ CAMP」が提供している価値とチャンス。参加者を見ていて、強くそう感じました。
「基本的に一人でしか映像制作をしたことがないので、チームで取り組むことは初めてでした。いつもは自分さえ完成作品をイメージできていればいいけど、複数人での仕事だと自分が考えていることを伝えなくちゃいけない。その難しさややりづらさを感じました。その一方、仲間が助けてくれる心強さもあって、すごく新鮮な経験でした。」(参加者 蓬台祐希さん)
講師からレクチャーを受けるのはもちろん、自分と同じ志を持つ仲間たちと共に作品を作ることで、メンバーの失敗も成功も自分の経験にできるのです。
「私は学校でもグループワークを経験していますが、やっぱり学校では友だち感覚の延長になってしまいがちなんですよね。『CREATORS’ CAMP』では普段フリーランスで活動されている方々の仕事ぶりが見られて、思ったよりもトリッキーな撮影をする方が多く、すごく勉強になりました。私は絵コンテや構成を作るのが好きで、あまり撮影や編集はしないのですが、現場でどのように臨機応変に対応するのかを学べたのがよかったです。」(参加者 藤尾日万理さん)
そして、この3日間最大のドラマは、まさにそんな「失敗」にありました。
作品最大の見せ場として、ダイナミックなカメラワークを使ったイルカショーのシーンを盛り込むことを計画。ショーはわずか数分と限られた時間のため、チームは入念なリハーサルを経て、一発勝負の撮影に臨みます。
しかし、撮影した映像を何度確認してみても、撮影したはずの映像がありません。
「逆RECだ……」。
逆RECとは、撮影ボタンの押し間違えによる初歩的な撮影ミスのこと。FX30は逆RECが起きにくい作りになっているのですが、慌ただしい進行と失敗できない場面というプレッシャーが災いしてしまいました。
けれどもこれも大きな経験。プロの現場では大事故につながる失敗をここで経験できたことは、これからのキャリアにおいて重要な機会です。
そして大切なのはこの失敗をどうリカバーするかです。
自分はどんなクリエイターなのか。チームだからわかること
どんな失敗をしても時間は止まってはくれない。今できる何よりも大切なことは、プロの仕事を意識してスケジュールを再構成しいかにリカバーするかを考えること。刻限までに案件を完成に持っていくことにこだわること。講師のKai Yoshiharaさんはチームへそう発破をかけます。
チームは、撮影班を二手に分け素材を効率的に撮っていく判断をしました。
失敗の後に待っていたのは、それぞれが自分にできることを再発見しながら、映像に向き合っていく時間でした。
こうして香盤の余白を自分たちの力で生み出し、彼らは撮影に失敗したイルカのシーンに再び挑む時間を確保しました。
しかし先ほどとは違って今はショーの時間ではないため会場は空席。お客さんが居らず見せ場のシーンに必要不可欠な「熱狂感」が無くなっていたのです。
彼らはチームで意見を出し合い「お客さんが入っているカットは素材としてある。それを編集で巧妙に繋ぎ、当初狙っていた映像表現まで到達させよう」と決意。
再撮影した映像を確認する3人。
こうして臨んだ再撮影。
ジンバルを使った非常にダイナミックなカットですが、今回は3人で協力してチャレンジを繰り返すことで無事撮影に成功しました。同じクリエイター仲間がいたからできた再チャレンジを、みんなの力でかたちにした瞬間でした。
イレギュラーが起こっても冷静に対処し現場の状況と環境から今できることを柔軟に発想する。そして形にすること、表現を高めることに何よりもこだわり貪欲になる。これは失敗を経験したからこその発見と言えるかもしれません。
この経験を乗り越え、その後は勢いに乗って撮影を完了。
「今回僕が担当を受け持った3人は、はじめは積極性が足りない印象もあったのですが、撮影をしていくうちに作りたいものがイメージできてきて、すごく良い動きができるようになっていきました。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
「編集は3人で朝まで粘って、見事に仕上げてきた。尺も条件として提示された2分以上を確保していましたし、これは本当にすごいことだと思います。大きな経験となったんじゃないでしょうか。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
そう、今回の「CREATORS’ CAMP」では2分以上の映像作品という条件があったのですが、やってみるとこれが至難の業。
2日目、撮影直後の編集では1分程度にしかならず、頭を抱えた3人は宿で朝まで作業を行ない、最終日の朝方にようやく2分以上のバージョンが完成しました。
クリエイターが集まることで生まれるエネルギーを体験できる場
昨晩の絶望的な状況からの完成。
これには講師のKai Yoshiharaさんも驚き、褒め称えます。
あとはタイムリミットまでひたすら細部の修正を繰り返す時間。
会場には3日間の疲労の色と、もう少しで完成という高揚感の両方が漂っています。
初対面同士でぎこちなかった初日が嘘のように、息のあった動きでディテールをチェック&修正。たった3日間ですが、ずいぶん遠くに来た感じがします。
そして作品は無事に完成。
結果的には多くのチームが2分に満たない作品を提出し、2分未満の作品も認められることとなりました。
「半日の撮影で2分以上の映像作品を作るのは、正直すごく難しい。だからほとんどのチームは1分程度の作品になったんです。」(講師Kai Yoshiharaさん)
「最初の1分程度のバージョンの方がスッキリまとまっていたので、講師として僕が運営に掛け合うべきだったと反省しています。でも、本番のクライアントワークを想定すると、彼らがしっかり条件内で作品を完成できたのは本当に素晴らしいことだと思います。」(講師Kai Yoshiharaさん)
結果としては、残念ながら3人の作品は入賞しませんでした。
しかし彼らが得たものは、このキャンプに参加しなければ、何年もかからないと得られなかった経験ではないかと思います。
チームメイトはもちろん、それ以外のクリエイターたちと知り合う機会。
新しい機材に触れ、これまで知らなかったテクニックを学ぶこと。
失敗と、その挽回の経験。
最終的には1人の作業になりがちな映像制作。
だからこそ感じる、仲間の大切さ。
私たちソニーはいろんなイベントでプロクリエイターを目指す方々とお話しする機会があるのですが、みなさん共通の悩みを抱えていることがわかりました。それは、一人で活動されている方が多く他のクリエイターと知り合い刺激し合える機会がないということなんです。だからこそ私たちの『CREATORS’ CAMP』では、実践的チームオペレーションの体験、プロクリエイターがチームに密接に寄り添いサポートする体制、この二つにこだわってイベントを設計しています。」(「CREATORS’ CAMP」運営 ソニーマーケティング 新井さん)
ソニーがフルサイズミラーレス一眼α7シリーズを通して推し進めたカメラの小型化、そしてオートフォーカス精度の向上、高感度時の高いノイズ耐性など性能の飛躍的な進化によって、従来は大人数でしかできなかった映像制作というものがたった一人、ワンオペで可能になったのは、映像文化の発展において非常に大きな進歩だったと思います。
しかし、それによって起こったのがクリエイターの孤立化。“たった一人でも映像が撮れてしまう”現象。
そんな副作用を解消するかのように、または、ワンオペの映像表現をさらに高み引き上げるために、ソニー自らがクリエイター同士を繋げる機会を作る。「CREATORS’ CAMP」にはそういった新しい映像文化の醸成につながるであろうわくわくするストーリーを感じました。
「クリエイターの仲間がいると『負けたくない』と思えるし、同じ熱量で『あの映像見た?』なんて話をするのもクリエイティブなことだと思うんですよ。一人だとやり方も固まっちゃうから、できるだけクリエイター仲間を作ってほしいなと思います。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
「みんなでやることで、自分には思いつかなかったアイデアにたくさん触れることができて、自分の得意なことも苦手なことも見えてきました。いろんな視点から物事を見ることを学べたと思います。」(参加者 藤尾日万理さん)
技術の進歩で次々と新しいクリエイターが生まれていく現代。彼らがこうしたイベントでつながって、化学反応を起こし、成長していく。
そして、誰も見たことのない作品を創り上げていく。
映像が新たな言語となりつつある今、とてもポジティブなサイクルが始まっているのを感じる3日間でした。
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ソニー CREATORS’ CAMPに密着
今、クリエイターといえば「映像クリエイター」?
動画が“新しい言語”となりつつある現在、それくらい撮影や編集を仕事にしたいと考えている人が増えています。
「どうすれば良い映像を作れるのか」「どうすれば早く一人前のクリエイターになれるのか」といった疑問や課題を抱えて試行錯誤している人はきっと少なくないはず。
この記事は、そんな方々のヒントとなるであろう、プロの映像クリエイターを目指す高い志と熱い心を持った者たちがソニー主催の「CREATORS’ CAMP」に集い、3日間で得た経験と成長の記録です。
みんな初対面。
3人の駆け出しクリエイターがチームを組んだ
彼らは別々の街に住む、初対面の若手クリエイターたち。
でも今、彼らは3人で一本の映像作品に取り組んでいます。
映像の道に入ったきっかけ、向き合い方も三者三様。
一人はフォトグラファーとして仕事をする中、クライアントから映像制作を求められるようになったことから映像の世界へ。
もう一人は映像系の学生。そしてもう一人は前回の「CREATORS’ CAMP」からのリピーターです。
「ずっと独学でやってきたから、きちんと技術や制作現場での動きを学びたかった」。「プロの方々の仕事の仕方を間近で見て成長したかった」「前回の『CREATORS’ CAMP』で気づけた今の自分の課題を解決したい」。
彼らがやってきたのは、和歌山県の南紀白浜。その目的は、この地で開催される「CREATORS’ CAMP」です。
「CREATORS’ CAMP」 とは、ソニーが主催となり株式会社AOI Pro.と共同企画で開催される3日間かけてチームで地域PR映像を制作するイベント。
総勢約23名の参加者は多種多様。すでに映像制作の仕事をしている人から、副業のクリエイター、学生まで、その経験や技術レベルもさまざま。でも、みんなここからさらなるステップアップを目指しプロの技術を習得せんとする「駆け出しクリエイター」たちです。
そんな駆け出しクリエイター3〜4名で構成されたチームに、映像制作会社やYouTubeなどのフィールドで活躍しているプロクリエイターが講師として参加。各チームは彼らのアドバイスを受けながら、3日間で企画〜撮影〜編集〜審査・講評までを行なっていきます。
たった3日間。しかし、これがクリエイターにとってはかけがえのない成長につながっていく。
そんな3日間を見ていきましょう。
地域の魅力発見と課題解決が、クリエイターとしての自分探しや成長につながっていく
「CREATORS’ CAMP」 第3回開催となる今回の舞台は、和歌山県にある動物園・水族館・遊園地が一体となったテーマパーク「アドベンチャーワールド」。
制作する映像作品のテーマも、この「アドベンチャーワールド」のPRです。
つまり、現実のプロクリエイターと同じように、クライアントの要望や課題に応える映像作品の制作が実践できるイベントとなっているわけです。
イベント初日、チームメンバーや講師の先生と顔合わせや自己紹介を早々に済ませると、早速ロケハンがスタート。
参加者は「アドベンチャーワールド」のスタッフの方々に園内を案内してもらい、この施設が持っている他にない魅力を探りながら、撮影に使えそうな場所を探していきます。
これは3日間という限られた時間を有効に使うための、企画とロケハンを同時並行する特殊な進行です。
しかし、これがプロのクリエイターに求められる「どこにリソースを割き、何の作業に集中すべきか」というシビアな判断を行なうための勘を養う、何より大切な「経験」となっていくのです。
「動画素材としてどのようなものを撮っておくべきか、ロケハンでは何を見て何を考えるべきかといった考え方に始まり、ジンバルの使い方やカメラワークなど具体的なテクニックまで、講師としてできるだけ多くのことを教えたいと思っています。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
そう、この「実践」こそが、クリエイターとして成長する大きな鍵なんです。
「自分が作っている映像と講師の人たちの映像とでは、全くレベルが違う。何もかも勉強になります。」(参加者 Keitaさん)
成長の鍵は「一人じゃない」。仲間がいるから倍速でトライ&エラーできる
実践に加え、クリエイターが成長するためのもう一つの鍵。それは他のクリエイターと出会って一緒に制作すること。
この「CREATORS’ CAMP」で特に強く感じたのは、そんな「ひとりじゃない」強さです。
もちろん、ソニー主催イベントですので、制作用のカメラ「FX30」やソニー最高峰のレンズ「G Master」など豊富な撮影機材が貸し出され、それらの基本的な使い方がレクチャーされます。
しかし、それはスタート地点にすぎません。
他のクリエイターはどのように考えるのか? そして、彼らはどのように現場で動くのか?
それらをリアルに体験できるのが、何よりもこの「CREATORS’ CAMP」が提供している価値とチャンス。参加者を見ていて、強くそう感じました。
「基本的に一人でしか映像制作をしたことがないので、チームで取り組むことは初めてでした。いつもは自分さえ完成作品をイメージできていればいいけど、複数人での仕事だと自分が考えていることを伝えなくちゃいけない。その難しさややりづらさを感じました。その一方、仲間が助けてくれる心強さもあって、すごく新鮮な経験でした。」(参加者 蓬台祐希さん)
講師からレクチャーを受けるのはもちろん、自分と同じ志を持つ仲間たちと共に作品を作ることで、メンバーの失敗も成功も自分の経験にできるのです。
「私は学校でもグループワークを経験していますが、やっぱり学校では友だち感覚の延長になってしまいがちなんですよね。『CREATORS’ CAMP』では普段フリーランスで活動されている方々の仕事ぶりが見られて、思ったよりもトリッキーな撮影をする方が多く、すごく勉強になりました。私は絵コンテや構成を作るのが好きで、あまり撮影や編集はしないのですが、現場でどのように臨機応変に対応するのかを学べたのがよかったです。」(参加者 藤尾日万理さん)
そして、この3日間最大のドラマは、まさにそんな「失敗」にありました。
作品最大の見せ場として、ダイナミックなカメラワークを使ったイルカショーのシーンを盛り込むことを計画。ショーはわずか数分と限られた時間のため、チームは入念なリハーサルを経て、一発勝負の撮影に臨みます。
しかし、撮影した映像を何度確認してみても、撮影したはずの映像がありません。
「逆RECだ……」。
逆RECとは、撮影ボタンの押し間違えによる初歩的な撮影ミスのこと。FX30は逆RECが起きにくい作りになっているのですが、慌ただしい進行と失敗できない場面というプレッシャーが災いしてしまいました。
けれどもこれも大きな経験。プロの現場では大事故につながる失敗をここで経験できたことは、これからのキャリアにおいて重要な機会です。
そして大切なのはこの失敗をどうリカバーするかです。
自分はどんなクリエイターなのか。チームだからわかること
どんな失敗をしても時間は止まってはくれない。今できる何よりも大切なことは、プロの仕事を意識してスケジュールを再構成しいかにリカバーするかを考えること。刻限までに案件を完成に持っていくことにこだわること。講師のKai Yoshiharaさんはチームへそう発破をかけます。
チームは、撮影班を二手に分け素材を効率的に撮っていく判断をしました。
失敗の後に待っていたのは、それぞれが自分にできることを再発見しながら、映像に向き合っていく時間でした。
こうして香盤の余白を自分たちの力で生み出し、彼らは撮影に失敗したイルカのシーンに再び挑む時間を確保しました。
しかし先ほどとは違って今はショーの時間ではないため会場は空席。お客さんが居らず見せ場のシーンに必要不可欠な「熱狂感」が無くなっていたのです。
彼らはチームで意見を出し合い「お客さんが入っているカットは素材としてある。それを編集で巧妙に繋ぎ、当初狙っていた映像表現まで到達させよう」と決意。
再撮影した映像を確認する3人。
こうして臨んだ再撮影。
ジンバルを使った非常にダイナミックなカットですが、今回は3人で協力してチャレンジを繰り返すことで無事撮影に成功しました。同じクリエイター仲間がいたからできた再チャレンジを、みんなの力でかたちにした瞬間でした。
イレギュラーが起こっても冷静に対処し現場の状況と環境から今できることを柔軟に発想する。そして形にすること、表現を高めることに何よりもこだわり貪欲になる。これは失敗を経験したからこその発見と言えるかもしれません。
この経験を乗り越え、その後は勢いに乗って撮影を完了。
「今回僕が担当を受け持った3人は、はじめは積極性が足りない印象もあったのですが、撮影をしていくうちに作りたいものがイメージできてきて、すごく良い動きができるようになっていきました。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
「編集は3人で朝まで粘って、見事に仕上げてきた。尺も条件として提示された2分以上を確保していましたし、これは本当にすごいことだと思います。大きな経験となったんじゃないでしょうか。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
そう、今回の「CREATORS’ CAMP」では2分以上の映像作品という条件があったのですが、やってみるとこれが至難の業。
2日目、撮影直後の編集では1分程度にしかならず、頭を抱えた3人は宿で朝まで作業を行ない、最終日の朝方にようやく2分以上のバージョンが完成しました。
クリエイターが集まることで生まれるエネルギーを体験できる場
昨晩の絶望的な状況からの完成。
これには講師のKai Yoshiharaさんも驚き、褒め称えます。
あとはタイムリミットまでひたすら細部の修正を繰り返す時間。
会場には3日間の疲労の色と、もう少しで完成という高揚感の両方が漂っています。
初対面同士でぎこちなかった初日が嘘のように、息のあった動きでディテールをチェック&修正。たった3日間ですが、ずいぶん遠くに来た感じがします。
そして作品は無事に完成。
結果的には多くのチームが2分に満たない作品を提出し、2分未満の作品も認められることとなりました。
「半日の撮影で2分以上の映像作品を作るのは、正直すごく難しい。だからほとんどのチームは1分程度の作品になったんです。」(講師Kai Yoshiharaさん)
「最初の1分程度のバージョンの方がスッキリまとまっていたので、講師として僕が運営に掛け合うべきだったと反省しています。でも、本番のクライアントワークを想定すると、彼らがしっかり条件内で作品を完成できたのは本当に素晴らしいことだと思います。」(講師Kai Yoshiharaさん)
結果としては、残念ながら3人の作品は入賞しませんでした。
しかし彼らが得たものは、このキャンプに参加しなければ、何年もかからないと得られなかった経験ではないかと思います。
チームメイトはもちろん、それ以外のクリエイターたちと知り合う機会。
新しい機材に触れ、これまで知らなかったテクニックを学ぶこと。
失敗と、その挽回の経験。
最終的には1人の作業になりがちな映像制作。
だからこそ感じる、仲間の大切さ。
私たちソニーはいろんなイベントでプロクリエイターを目指す方々とお話しする機会があるのですが、みなさん共通の悩みを抱えていることがわかりました。それは、一人で活動されている方が多く他のクリエイターと知り合い刺激し合える機会がないということなんです。だからこそ私たちの『CREATORS’ CAMP』では、実践的チームオペレーションの体験、プロクリエイターがチームに密接に寄り添いサポートする体制、この二つにこだわってイベントを設計しています。」(「CREATORS’ CAMP」運営 ソニーマーケティング 新井さん)
ソニーがフルサイズミラーレス一眼α7シリーズを通して推し進めたカメラの小型化、そしてオートフォーカス精度の向上、高感度時の高いノイズ耐性など性能の飛躍的な進化によって、従来は大人数でしかできなかった映像制作というものがたった一人、ワンオペで可能になったのは、映像文化の発展において非常に大きな進歩だったと思います。
しかし、それによって起こったのがクリエイターの孤立化。“たった一人でも映像が撮れてしまう”現象。
そんな副作用を解消するかのように、または、ワンオペの映像表現をさらに高み引き上げるために、ソニー自らがクリエイター同士を繋げる機会を作る。「CREATORS’ CAMP」にはそういった新しい映像文化の醸成につながるであろうわくわくするストーリーを感じました。
「クリエイターの仲間がいると『負けたくない』と思えるし、同じ熱量で『あの映像見た?』なんて話をするのもクリエイティブなことだと思うんですよ。一人だとやり方も固まっちゃうから、できるだけクリエイター仲間を作ってほしいなと思います。」(講師 Kai Yoshiharaさん)
「みんなでやることで、自分には思いつかなかったアイデアにたくさん触れることができて、自分の得意なことも苦手なことも見えてきました。いろんな視点から物事を見ることを学べたと思います。」(参加者 藤尾日万理さん)
技術の進歩で次々と新しいクリエイターが生まれていく現代。彼らがこうしたイベントでつながって、化学反応を起こし、成長していく。
そして、誰も見たことのない作品を創り上げていく。
映像が新たな言語となりつつある今、とてもポジティブなサイクルが始まっているのを感じる3日間でした。