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02 FILMMAKER/FILM DIRECTOR 山田 智和氏

現場で起こる奇跡も捉えてくれそうなFX6の機動力。
シネマの表現と最先端技術で美しき世界を追求したい

Tomokazu Yamada × FX6 × SHORT FILM

時代のアイコンとなる有名ミュージシャンのMVを数多く手がけ、MTV VMAJ 2020では最優秀ビデオ賞を受賞するなど、いま波に乗っている気鋭の映像作家・山田智和氏。さまざまなカメラを使って独自の映像表現をする山田氏が、Cinema Line カメラ「FX6」で作品を制作予定。今回はこのカメラを手にした印象や期待感をはじめ、自身がつくり出す映像世界について語ってもらった。

PROFILE

山田智和/映像作家・映画監督 東京都出身。日本大学芸術学部映画学科映像コース出身。TOKYO FILM主催。Caviar所属。2013年、映像作品「47seconds」がWIRED主催WIRED CREATIVE HACK AWARD 2013グランプリ受賞、2014年、同作品が国連が共催する世界最大規模の国際コンテスト、ニューヨークフェスティバル2014にて銀賞受賞。同年、映像作品「A Little Journey」がリコー主催のGR Short Movie Awardにてグランプリ受賞。MTV VMAJ 2020では「最優秀ビデオ賞“Best Video of the Year”」を受賞し、SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2019において、最も優れたミュージックビデオ・ディレクターに授与される「BEST VIDEO DIRECTOR」を受賞した。シネマティックな演出と現代都市論をモチーフとした映像表現が特色。

自身の感性に触れる「美しいもの」を作品に。
映像から何かを受け取ってもらえるとうれしい

――山田さんの主な活動内容と、作品に対する考えなどを聞かせてください。

ショートフィルムやMV、CFの映像監督をメインに、写真での作品制作もしています。僕は美しいものが好きなので、作品制作では僕自身の「感性に触れるもの」にしっかりと向き合うことを心掛けていますね。もちろん「美しい」と感じるものは人それぞれです。僕の中でもその時々で「美しい」と感じるものは変わっていて、雑多なものも含めて美しいと感じる時もある。だから、どんな作品でもその瞬間に「美しい」と感じたものを、逃さずに追いかけていきたいと思っています。また、作品を撮るたびに毎回チャレンジがあり、変わっていく中で新しく何かを獲得できることは非常にうれしいことです。同時に、苦労して1つのものをつくり上げたという充実感もありますね。 実は僕、映像の仕事やカメラをもって撮影することだけが唯一続けられていることなんです。もちろん今の仕事では撮影をカメラマンにお願いすることもありますが、根本的には「カメラを持って何かに向ける」という行為が自分にとっては楽しかった。だから唯一続いたのだと思いますし、素直に「カメラと出合えてよかった」と思っています。

――映像作品を通じて、世の中に届けたいメッセージなどはあるものですか?

実はあまりなくて(笑)。せっかく見てくれたのだから、何かを持って帰ってほしいという思いはありますが、正直その「何か」は何でもいいと思っています。例えば「出演している女の子がかわいい」とか、「写っている景色や光がきれい」、「カメラの画質が美しい」とか。何か心に響くものを受け取ってもらえればうれしいですね。

現場で起こる奇跡に瞬時に反応できる機動性が重要。
説明書どおりよりも「想定外でできたもの」のほうが面白い

――ご自身がカメラを回すこともあるそうですが、機材に対してのこだわりがあれば教えてください。

作品の3〜4割は自分で撮影していますが、僕個人で考えると重要なのは機動力。瞬時に撮りたいものに反応できるカメラです。ドキュメンタリー性も大切にしているので、現場で起こった奇跡など、想定外のことにも瞬時に反応できる自分でいたいと思っていますから。そんな自分にしっかりついてきてくれる機材がいいですね。 普段は監督という立場なので、カメラマンを選ぶ時は「その場の奇跡」まで逃さず撮れるように意思疎通がしっかりとれる人を選ぶようにしています。共通しているのは、その奇跡に共に反応して、その瞬間を楽しんでくれる人。仕事でしか会わないけれど人間性が好きで、「心の友」と思っている人が同世代で何人かいるので、その人たちにお願いするようにしています。

――山田さんの作品は、アーティストが自由に動いてそれを撮っていく、というスタイルが多いように思いますが、事前に動きの打ち合わせなどはするのですか?

準備はしっかりとするタイプですが、現場では「それを一回忘れたい」という別の欲があります。ただ単に「プラモデルを組み立てる」ことにはまったく興味がないんです。もちろん、説明書どおりに組み立てた美しさはありますが、僕の場合、一度説明書を忘れて「できてしまったもの」のほう好きなんです。そうなると、コンパクトで動かしやすく、起動が速く、暗いところでも照明を入れずに撮れるカメラにアドバンテージがありますから。正直なところαなどのミラーレス一眼カメラもいいわけです。αも進化を続けて5年くらい前からは、あの感度で、あの小型でムービーが撮れるとなるとゲームチェンジになるな、自分のつくりたいものがより撮れるようになるな、と感じていましたからね。手持ちでもジンバルに載せても撮れるので選択肢が広がり、表現の可能性が広がることは大きな魅力です。

ビデオカメラとしての意地が詰まったFX6。
FX6での撮影をとおして新しい技術に向き合いたい

――FX6のスペックを見て、実際に操作してみた率直な感想を聞かせてください。

サカナクションの『years』や水曜日のカンパネラの楽曲など、僕がMVデビュー時によく使っていたカメラが FS7だったので、個人的にこの系譜のカメラには愛着があります。だから、自分がデビューの時にお世話になったカメラをアップデートさせた進化版が出た、ととても興味をそそられましたね。と同時に、なんとなく懐かしい感覚もありました。僕のバックストーリーに欠かせない「FS7など業務用カムコーダーの遺伝子を受け継ぐカメラ」なので、本格的に撮影するのがとても楽しみです。 ドキュメンタリーのビデオカメラとしてはスタンダードかもしれませんが、このボタンの配置は非常によく考えられていますよね。とても持ちやすいし、バッテリーのスタミナも十分。しかもシュッとしている感じでデザインもかっこいい。あと、小さすぎずバランスがいいのも扱いやすいポイントです。僕にとってはある程度の重さがあってちょうどいいくらいですから。ガジェット男子的にはちょうどいい無骨さがあり、「撮るぞ」と気合が入る重さも僕好みです。

――FX6はαで培った技術を搭載した動画専用カメラになりますが、気になる機能はありますか?

僕はMFで撮ることが多いですが、αで実力が証明されているAFを使うことでの表現の可能性は気になるところです。フォーカスは演出のひとつの手法であり、フォーカスが合っていくことが一種のタイムラインになるもの。その部分をカメラ任せにできることは、とても今風というか、必然の流れだと思っていて。その中で、普段MFを使っている僕が、AFを使うことの意味性をどう落とし込んでいくかは非常に難しいところです。 でも、瞬間を逃さず撮りたい、ワンオペで撮りたい、という時はかなり実用的に使えそうですよね。特にドキュメンタリーなどでは使う機会が多くなるのかな、と思っています。MFではフォーカスにひと手間かかってしまい、瞬間を逃してしまう可能性もありますから。今はまだAFという機能に追いつけていない自分がいるので、撮影を通してAFと仲良くなって、楽しめるようになりたいと思っています。

――FX6で撮影した映像には、どのような印象をお持ちですか?

撮影した画を見ると「シネマティック」を目指していることがとてもよくわかり、その方向に振ってくれていることがとてもうれしいですね。例えば「光と影」を表現する時も、ダイナミックレンジが広いので非常に豊かな階調で写し出してくれます。新しい機種ではどうしても画素数などの数値を追ってしまいがちですが、つくり手にとっては「トーン」という感性も大事な部分ですからね。その方向も突き詰めてくれているのはありがたいことです。

今までになかった中間層を埋める価格と性能。
手にする人が増えることでクオリティの底上げにも期待

――このカメラが出たことによって、山田さんの作風に何か変化はありそうですか?

かなりあると思いますよ。自分でカメラを回す「ショートフィルム」のような作品がものすごく増える気がします。FX6が一年中自分の家にあることを想像したら、とてもハッピーですね。常にFX6が手元にあって、日常に映像表現が入り込んでくれば、作品がガラリと変わってしまうかもしれません。以前、雪の日にMVを撮影したことがありますが、あの時もたまたま事務所にカメラがあったから撮れたようなもの。常に手元に「撮りたい」と思わせる道具があったら最高です。 雪の日のMVは急遽撮影が決まったのですが、ちょうど手元にジンバル付きの小型カメラがあって。雪の日という特別なシチュエーションで撮れたのは、テクノロジーのおかげというか、やはり小型カメラだからこそ反応できたのだと感じます。 「今撮りたい」と思えることは、とても幸せなことですよね。好奇心に駆られたり、モチベーションが生まれたりすることは、やはり幸せじゃないですか。グルメや旅行で、「あそこに行きたい」「あれが食べたい」というモチベーションと同じようなものですからね。それがあるだけで他の事も頑張れたりしますし。1人で扱えてハイクオリティの画が撮れるFX6があれば、「あれを撮りたい」と思った時に撮れる機会が増えると思います。

――FX6は映像業界において、どのような立ち位置のカメラになると考えていますか?

今までのシネマカメラは非常に高価で、個人では手が届かないものでした。一方で一眼カメラは手が届くけれど、クオリティはシネマカメラに及ばない。つまり価格的にも性能的にも、この中間のカメラがなかったのです。しかしFX6は多くの人が望んでいたカメラの印象ですからね。 今までは一眼カメラで我慢していたユーザーが、一気にこのカメラを使うようになると思うとめちゃくちゃ夢がありますよね。表現の自由度も上がるだろうし、照明いらずで暗いシーンも撮れる。若い世代のクリエイターが一眼カメラではなく、デジタルのビデオカメラを使うのも面白そうだし。そう考えると、プロとアマチュアの境界線がなくなり、映像業界全体のクオリティが底上げされると思います。いろいろな意味で、業界に与えるインパクトは大きいはずです。

ビデオ屋のこだわりを見せながら、
ワンオペで撮れるFX6ならではの作品を目指して

――これからFX6を使って作品を撮影していただきますが、試してみたいこと、撮ってみたいものなどがあれば教えてください。

ただのドキュメンタリーではなく、しっかりとしたストーリーがある作品にしたいと考えています。つくられたフィクションの世界に、ロケーションや撮りかたなどでドキュメンタリー性を感じさせるような作品。せっかくワンオペレーションでいけるカメラなので、FX6だからこそ撮れる作品を目指したいですね。

――具体的に、構想はあるのでしょうか?

今の段階では、YouTuberの豪華版みたいなものでしょうか。ショートフィルムで、監督、脚本、カメラ、編集、カラコレ、全部僕、みたいな(笑)。一人ではつくれないと一番わかっている人間が、ちょっとした実験で、あえてそれをやるのは面白いかなと思います。 あとはスチールカメラを持っていく感覚で、いろいろな所に持って行きたいですね。そこで何が撮れるかはわかりませんが、このトーンで収録できるので、例えば常にカメラを回してつくる「2021年の旅ムービー」みたいなものもいいかもしれません。今はあえてスマートフォンで撮るのがかっこいい、みたいな風潮がありますが、そこをスルーしてFX6でいくというビデオ屋のこだわりも見せたいところです。移動もままならないご時世なので、どんな作品が完成するかわかりませんが、ぜひ公開を楽しみにしていてください!

*画像はILME-FX6VとFE 16-35mm F2.8 GMの組み合わせです

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