商品情報・ストアデジタル一眼カメラ αα Universe

01 DIRECTORYP氏

アイデア次第で
シネマカメラの表現を悠々と超越する。
α7S IIIはクリエイターの表現に
「自由」をもたらすカメラ

YP × α7S III × MUSIC VIDEO

名だたるアーティストや企業の映像ディレクションを手がけ、熱視線を浴びている新進気鋭の映像ディレクターYP氏。
「α7S IIIで実験的な作品をつくりたい」と語っていた彼が今回手がけたのは2人組のラップユニットGorilla Attackの新曲『Gorilla Step』のMVだ。CG表現を用いた作品において、α7S IIIの性能はどのように生かされたのか。撮影、編集の裏側も交えて語ってもらった。

MUSIC VIDEO Gorilla Attack "Gorilla Step"

INTERVIEW MOVIE

PROFILE

YP/映像ディレクター Forbes が選ぶ【業界を代表する30歳未満のイノベーターにインタビューを行う「NEXT UNDER 30」】に選出
MV、ショートフィルム、WEB CMなど多岐にわたる界隈を横断しながら映像のクリエイティブディレクションを行う。また最先端の映像ディレクションを学ぶオンラインサロンYP映像大学を開校し150人近くのメンバーと共に制作活動を行う。
https://twitter.com/yp_________

素材の良さがクオリティーを引き上げる、
とあらためて実感した

今回、『Gorilla Step』のMVをα7S IIIで撮影しました。スタッフクレジットを見ていただくとわかるように、CG制作は3人、照明は1人というミニマムな現場でした。僕が素材をほぼ撮って、オフラインを組み、CGのワークフローに移行しました。結論をいうと、シネマカメラで撮影するときと同じような使いかたができて、今まで以上のクオリティーが出たので驚きました。

α7S IIIの最大の進化ポイントは性能と機動力だと思います。最初に聞いていたステータス値どおりの性能で「優秀で、いい子だな」と思いました(笑)。今回は、Gorilla Attackのアート性を拡張して表現したかったので実験的なCG表現を採用しました。そのワークフローでは、グリーンバックでダンサーを撮って、その動きを切り抜いて合成する編集作業が肝でした。 α7S IIIのフォーマットである4:2:2 10bitはとても有効で、Adobe Premiere Pro(アドビ プレミア プロ)で試しに処理した時に、プラグインを入れていない状態でもきれいにグリーン抜きができました。影もすごくきれいに抜けましたね。ライティングに関しても、通常は相当明るくしないとスローモーション撮影でシャッタースピードの設定に苦しむことになるのですが、α7S IIIは高感度なので余裕でした。 CG制作チームにも「今回の素材のクロマキー処理どう?」と聞いたら、「抜きやすい」と。グリーンを濃くして抜きやすく撮影した後、編集時にグリーンを選択して抜くわけですが、その際に素材の色が壊れないし、グレーディングもきれいにできるんです。「抜きやすい」というのは、最大の誉め言葉だと思います。

グリーンバックで撮影した元データ。フルHD 240fpsで撮影し、特に画のきれいさが際立った。

素材を切り抜いたのち、簡易的な絵コンテと合成したところ。
細かなところまできれいに抜かれているのがわかる。

最終的に太陽の背景と合成され、印象的なシーンとなった。『Gorilla Step』3:19より

こうしたきれいなグリーンや影抜きはシネマカメラなどの上位のカメラでももちろんできますが、同じクオリティーが出せるのならば、小回りの効く小型カメラのほうが絶対に良いですよね。 今回のMVではカット数を増やすことが大事だったので、毎回「ちょっと寄りで撮ります」とか「次は高いところから撮ります」と、カットが変わるたびにオペレーターが三脚を立て直してカメラを備え付けてレンズを替えてといった作業が、機動力のあるカメラであればそれが必要がなくなります。 シネマカメラで撮影するときと比べると、オペレーターの人数は絞って、現場に入る人数は大幅に減らせました。スタッフと同時に機材も減って、現場でのフットワークが良くなって、回転数が飛躍的に上がりました。とにかく、今までだったら時間的に諦めていたような、いろいろなシチュエーションを撮影することができた。現場で実現したコストダウン分は、CG制作に回せるし、素材がたくさん撮れた分、編集の段階で徹底的に凝ることもできました。 実はこの作品とは別に、ほかのアーティストのMVでもα7S IIIで4K撮影したことがあるのですが、そちらは実写撮影がメインで、また違った性能の良さが見えました。色がものすごくきれいに出たのと、AFの優秀さに驚きましたね。 色に関しては、どんなに編集しても全然壊れない。これは高感度の強さとダイナミックレンジの広さのなせる業ではないかと。AFに関しては、6〜7人がひとつの画角の中でめまぐるしく動いてもリアルタイム瞳AFのおかげでピントをはずさないんですよ。フォーカスマンはいませんでしたからね。というか、フォーカスマンよりもピント合わせが速くて、正確(笑)。映画のような意図のあるシーンではもちろんフォーカスワークは必要ですがシチュエーションによってはかなり力になると感じました。

偶然のシーンを、α7S IIIは必然にできる

スタジオ撮影だけでなく、屋外での撮影でもα7S IIIの機動力に助けられました。今回の作品に登場する「エスカレーター」(MV 1分30秒〜)も、あらかじめロケーションして狙っていたわけでなく、たまたま歩いていたら「あ、めっちゃいいエスカレーターがある」と発見して、首から下げていたα7S IIIでささっと撮りました。

YP氏が撮影したエスカレーターの元素材。

実際に素材が使われているシーン。グリーンバックで抜いた素材と実写を組み合わせて、
CGソフトで回転や角度を模索しながらつくった。『Gorilla Step』 1:30より

これ、シネマカメラだったらあり得ないですよね。カメラを立てるのも一苦労ですし、そもそもカバンに入らないので持ち歩いていませんからね(笑)。下の「階段」のシーン(MV 32秒〜)も同様に実写です。起動して、すぐに撮れる。構図を細かく決めるのも苦じゃない。このスピード感は、シネマカメラでは出せないので嬉しいですね。

『Gorilla Step』 0:32より

α7S IIIを駆使して、
バーチャルミクスチャーな表現を突き詰めていきたい

今回、編集の段階で変わったこと、わかったこともいくつかあります。まず、リモートワークになったこと。コロナの影響で密な状況は避けなければならないという事情はありますが、以前だったらスタジオにこもって作業していたのを、リモートで作業しました。編集作業は、夜な夜なCG制作チームと作業画面を共有しながら進めた感じですね。このように、これからもどんな状況下でも、「環境に最適化していく」というアクションを積極的に行っていきたいです。 自分としては、これからもα7S IIIを使ってバーチャル×リアルな表現を突き詰めていきたいです。『隔世Gorilla』のMVのように、実写とバーチャルがリアルタイムで融合していくような、バーチャルとリアルの交差点に立つようなディレクションをしていきたい。 今、テクノロジーが目まぐるしく進化を遂げていく中で、クリエイティブの現場も目まぐるしく変化していかなくてはならない。NEWを捉えながら歴史もリスペクトして過去と未来を往来しながら物づくりをしたいです。その距離が長くなればなるほどシャトルランが大変ですが、現代クリエイターの豊かさでもあるので楽しんで行き来したいです。 α7S IIIも進化を遂げて、夜でも明るく撮れる、ノイズも乗らない、4Kでも120fspでも撮影できるし、グレーディングもきれいにできるし、バッテリー持ちも良い、小さいので場合によってはアクションカムのような使いかたもできる。これだけの性能ですから、実写にCGを乗せる作品以外にも短編映画や実写のMV、WEB CMと、あらゆる現場で使用されていくと思います。α7S IIIは、時代のクリエイティブにおいて力になってくれるはずです。 最後に、前回のインタビューでも触れましたが、これだけ優れたカメラが現れたわけですが、クリエイターは「カメラに使われない」ことを心がけなくてはならないと思います。映像の枠の中だけで映像をつくろうとしても、進化はしない。映像以外の分野から自分の好きな「点」を見つけて繋いで「線」にしていくことが大事だと思います。繋がってる「点」が多ければ多いほどいい。その「線」が繋がり続ければ「面」になって立体に進化していく。それを映像に落とし込んでいく工程がクリエイターとしての進化だと思います。 カメラを武器にたとえるならば、シネマカメラは大剣。肩から降ろして大仰に振り回して闘いますが、α7S IIIは短剣。小回りが利いて、いつどんな敵が現れても戦いかたを工夫すれば勝てる。アイデア次第です。「この自由度の高い短剣をどう使ったら最大限のポテンシャルを引き出せるんだろう」と柔軟なアイデアを導き出せるクリエイターが、これからの時代で戦える。僕自身も、そのアイデアと向き合いながらクリエイティブを行っていきます。

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