日本と香港を拠点としながら、写真家、CM監督として広告や雑誌、ミュージックビデオなど幅広く活躍されているMiss Beanさんですが、今回はα7CRで作品を撮り下ろしていただきました。小型・軽量でありながら、有効最大約6100万画素の高画質も得られるα7CRはいかがでしたでしょうか。
韓国の済州(チェジュ)島を友人と旅しながら10日間、他にも香港で3日間、撮影しましたが、α7CRは身軽でとても便利なカメラでした。私は今まで旅をしながら作品制作をしたことがあまりなかったのですが、その理由のひとつは、やっぱりカメラってどれもすごく大きくて重いからなんです。
スナップショット用の小さなカメラは持っていますが、α7CRのような画質や機能は望めません。機材が小さくて軽いことは私の制作意欲と大きくつながっていて、身軽であればあるほど、撮れるものも多くなる。自分に合っているカメラだなと思いましたね。
身軽さ以外にも、旅先で使いやすいと感じた点はありましたか?
後ダイヤルに加えて前ダイヤルが搭載されたところです。親指と人差し指の両方でコントロールできる位置に配置されているので使いやすく、片手で調整することができました。これはコンパクトなボディのカメラにとって重要なことだと思います。他にもフォーカスの速さや軽さ、いろんなアングルを試すときのバリアングル液晶モニターがすごく役立ちました。
美しい風景描写が印象的な作品ばかりですが、画質の良さは特にどんな場面で感じられましたでしょうか。
ある日、大雨のなか車を運転していると、雲の隙間から光が差し込む光景を目にしました。晴れ間が差し込む貴重な瞬間で、急いで車を停めて撮影したんです。海はどこまでも遠くまで広がっていました。その時撮影した写真は、悪天候にも関わらず、画質に影響がなく、細かくて穏やかな海の波がはっきりと見えました。作品を拡大しても縮小しても、どんなサイズで見てもそれは変わりませんでした。これは高画質なカメラのおかげですね。
レンズは何を使われましたか?
FE 35mm F1.4 GMとFE 70-200mm F2.8 GM OSS II です。FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは、レンズ側に絞りリングがあるのが便利でした。これによりフォーカスを合わせると同時に絞りも早く調節することができますし、スイッチでスムーズとロックの切り替えもできます。
でも私の理想は35mmの単焦点レンズ1本で撮影することなんです。今回は車で移動することが多く、車窓からもたくさん写真を撮りましたが、距離感としても35mmが自分に一番合っている気がしました。それに何より身軽でいたいので、できるだけ限られたレンズだけで行動したいんです。α7CRなら高画質で撮れるので、35mmで撮影して、後で少しトリミングしてもそれほど大きな影響が出ないのはありがたいですね。
線を描く光やにじむようなぼけ、海や空や草花の色彩を見ていると、写真から音楽が聴こえてくるように感じました。作品のステートメントにも「メロディー」という言葉が記されていましたが、本作のアイディアのきっかけを教えてもらえますでしょうか。
ちょうど今回のお話を頂いたときに、「人生を現わす1曲を選ぶとしたら、どんな曲を選ぶ?」という話を友人としていて、その時に思い浮かべたのが「Wolf Girl」という曲でした。初めて聴いたのは10年前ですが、今でも時々思い出して、将来、映画を撮る機会があったらどこかのワンシーンで使いたいと思っている曲なんです。
歌詞の内容はオオカミの女の子に惹かれた男の子が、その子を追い求めていくストーリー。女の子は意識的に思わせぶりな仕草をしていて、男の子は女の子がわざとそうしていることを知っていますが、それでも女の子に惹かれていくというお話です。
その「Wolf Girl」という曲が本作の発想のもとになっているのでしょうか?
そうですね。私がこの曲を聴いて思ったのは、追いかける対象は必ずしも女の子というわけではなく、目の前にある、不思議で解釈できないような、心惹かれるエネルギーのようなものでもあるということ。そしてそれは私が撮影するときの感覚とすごく似ています。目の前にある「ときめき」のようなものに突進していったり、ゆっくり見つめながら向かっていったり。この感覚はすごく動物的で、本能的なものなんです。
この曲がきっかけとなって、頭の中にある“夢の輪郭”をなぞって描き出そうと思いました。自分はそのオオカミの女の子なのか、もしくは追いかけている人なのかわかりませんが、その関係性を掘り下げるような作品になっています。
旅先で「ときめき」のようなものを追い求めながら、“夢の輪郭”をなぞって描き出したのですね。行き先はどのように選ばれたのですか?
実は友人と一緒に旅したのですが、出発の日まで自分がどこに行くか知らなかったんですよ(笑)。前日まで仕事が忙しくて旅の計画はまかせっきりだったんです。済州島に着いた1日目に、何を感じて何を撮りたいのか初めて考えました。
でも私は旅の写真を撮りたかったわけではなく、自分の頭の中にずっとある“夢の輪郭”を描こうと思っていたので、どこに行くか知らなくても問題ありませんでした。いつも未知のものを発見したいという気持ちが大きいんです。
普段の仕事や作品はモデルのポートレートを撮影することが多いと思うのですが、今回、自分でコントロールできない自然を相手に撮影する体験はいかがでしたか?
確かに自然は自分でコントロールできませんが、行くしかない、撮るしかないって、前に進んでいったときに、ぴったり気持ちが合う瞬間があるんです。昔見た風景も感じられるような視覚を超えた写真を撮りたくて、行動しながら絵を描く感覚で撮影しました。目を開いたらものを見ることはできますが、目を閉じた方がたくさん見えることもあります。そんな幻想的なイメージを表現するために、スローなシャッタースピードの写真も多く撮りました。色も極端だったり繊細だったり、さまざまですが、カメラ内部の色彩設定を活用し、多くはあとで調整する必要なく、気に入った色を得ることができましたね。
作品のセレクトの中に一枚だけ入っていた人物も不思議な写真でした。
未知なる生き物を発見した、というイメージで撮影しました。女性はいつもよく撮る好きな被写体です。でも描きたかったテーマは夢の輪郭なので、夢の中で出会った人の顔をあまり思い出せないような感覚で撮影し、多くは入れずに1枚だけにしました。写真を選びながら発見したり、掘り下げていったりする作業が一番楽しいです。
今回の作品はこれで終わりではなく、これからももう少し続けられるプロジェクトになるのではないかと思います。今はまだ“句点”ではなく、“読点”で終わっているような作品です。
どのようなストーリーに完結するのか、続きも楽しみにしています。最後に、Miss Beanさんが今後挑戦してみたいことについて教えてください。
15分くらいの映画のようなショートフィルムを撮影してみたいと思っています。みんな強がらないといけないことが多い毎日だと思うので、見た人の心が柔らかくなって、波紋のように体の中へ広がっていくような作品が撮りたいですね。来年はまた違うことを言っているかもしれませんが、今はそう思っています。
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「Creative Gallery on BRAVIA」
- タイトル
- Miss Bean「Wolf Girl」
- 期間
- 2024年2月29日(木)15時 ~ 2024年4月17日(水)15時
- 閲覧料
- 無料
- 閲覧方法
- Android TV™ 機能搭載のテレビ ブラビアをネットワークに接続し、リモコンの「ホーム」ボタンからお入りください
「Creative Gallery on BRAVIA」とは
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