フォトグラファー/ビデオグラファー
中西学氏
FEレンズの魅力
〜SEL55F18Z,
SEL1635Z, SEL90M28G〜
プロフェッショナルにとっての、「FE(Full-Frame E-mount)レンズの魅力」とは? 風景写真を中心に写真家としてのキャリアをスタートし、近年では写真家目線での動画撮影/編集や、ドローンを使用しての空撮なども数多く手がけるなど、α7RⅡをメインカメラとしてマルチに活動なさっている中西学氏。 販売店/ソニーストアでもセミナー講師を行っていただいている同氏に、今回は実際に撮影現場においても使用頻度の高いFEレンズの中から、SEL55F18Z, SEL1635Z, SEL90M28Gの3本について、その魅力を語っていただいた。
手軽にもっていける。しかも描写が良い
α7シリーズにベストマッチな1本
SEL55F18Z
Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
α7シリーズはもともとボディが小さくて軽量なので、レンズを含めたパッケージングというのは非常に重要です。 そういった面で、SEL55F18Zは小型ボディに適した軽さで手軽に持って行けるレンズ。しかも描写に優れるということで、まさにα7シリーズにベストマッチな1本だと感じています。
ツァイスの特性でもあるかと思いますが、このレンズは非常に高コントラストで発色がよく、風景でも特に構造物や町並み、個人的には色が多い洋風なもの…例えばレンガとか、ブロックなどの構造物などをぱっきり写したい時に、よく使用します。 また、海と空の色を撮って出しで出せるというのが、このレンズの魅力。あとで色調整をしなくても、目で見たままの色が最初からのってくれるという意味で、安心して使えると感じます。
さらに、このポートレート写真のように、後ろにレンガという強めの背景を入れての撮影の場合でも、レンガの色をぐっと引き出しつつも、人物も引き立てることができます。
ポートレート撮影時は、周りの景色を入れながら…というよりは、「人物を立たせる」ために、背景や周りは大きくぼかしてしまうことも多いと思うのですが、そうではなくて、周りの雰囲気を出すことも大切にしながら、ポートレートが撮れる。そういう1本だと思います。
あと、このレンズでの撮影の時は、基本絞らない。 AFに関しては、一般的なレンズの場合、開放だとピントのズレがよりシビアになって使い勝手が悪い…といったことを耳にすることもあります。 例えばポートレート時に、目にピント合わせたいのに、目の近くの髪の毛の方にピントがあったりするのもそうで、被写界深度の差が気になってくる。だから絞ってしまおう、と。
でも、開放の描写はメーカーが一番力入れてるところでもあるわけで、私はあえてそこを攻めます。
この写真は、逆光の中で太陽の中にモデルの方が収まるように構図を作りましたが、レンズにも非常にコントラスを要求する状況ですし、迷いなく瞳にAFを当てるのは難しいシーンです。でも、このレンズはコントラスを失うことなく、豊かな諧調を再現してくれました。
そして、このレンズは、目にピタッと非常に速く正確にピントが来る。それが絞り開放の時に、特に効力を発揮してくれます。
すぐピントが来る、AFが迷わない…SEL55F18Zに関しては、そこが信頼できるポイントです。特に、α7RⅡとの組み合わせでは、そのセッティングの良さを感じますね。
そういった理由で、α7RⅡとSEL55F18Zでのポートレート撮影は、それまでの撮影と比べてテンポが良くなりましたね。撮影時間も半分くらいに短縮された。AFが思うように合ってくれなくて、イライラして結局MFに切り替える、ということが無くなりましたからね。全部AFでもいけるようになった。 どこの現場に行っても「仕事速いですよね」と言ってもらえるんですが、それって重要だと思っていて、例えばモデル撮影なら、撮る方も撮られる方も撮影が短い方が疲れないし、何よりモデルさんが良い表情をする瞬間に集中することができるんですね。 他にも、料理の物撮りの時なども鮮度は重要ですし、仕事が速いとシェフも喜んでくれるんですよ。
抜群の安定感。どの現場にも必ず持って行く
手放せないレンズ
SEL1635Z
Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS
一言で言うなら「歪まない」レンズ。広角だったら表れがちな歪みが非常に起こりにくい。当然周辺の減光も少なくて、コントラストも落ちないので、とにかく抜群の安定感です。
広角レンズは、周辺に多少のズレやにじみが出ても仕方ないかなと思っていましたが、このレンズを使い始めて、その辺の描写力、シャープさは本当にすごいと感じました。α7RⅡの4,240万画素との組み合わせで撮影した時の、周辺までの緻密な描写は格別ですね。
また下の写真のように、あえて効果として太陽の反射光を取り込んだようなケースでも、逆光耐性が良いためゴーストが出ることもなく、狙った通りに風景を描きだしてくれました。
風景以外の用途という意味では、たとえば建物を撮影するような場合でも、SEL1635Zなら、水平をとって撮影しさえすれば、後でのパース処理などはほぼ行わなくてもよいくらい、歪みの少ない画像が撮影できると感じています。 さらに私の場合は、このレンズを動画を撮影する際に使用することもあります。 もちろん、FEレンズには動画撮影にマッチするPOWER ZOOMレンズのラインアップもあるのですが、個人的には手動でも滑らかにズームが出来るところなど、非常に気に入っています。以前は、動作時のノイズなども多少は入ってしまうものだと思っていましたが、このレンズはそういったことも少なく、驚きました。 静止画も動画も撮影する機会のある場合に、一本でカバーできてしまう利便性も含めて、SEL1635Zにはメリットが揃っており、私にとってはもう手放せないレンズです。 どの現場でも必ず持っていくし、最もよく使っています。
いろんな距離感でぼけ味の違いを楽しめる。これが面白い
SEL90M28G FE 90mm F2.8 Macro G OSS
「マクロレンズ」というと、接写=小さいものを撮るイメージが強いかもしれませんね。
もちろん、ピントを合わせる幅が広くて、ピント合わせや微調整がしやすいので、私も料理などの撮影の際には重宝しているわけですが、実はこのレンズ、ポートレートで使うのも面白いんです。
90mmでF2.8 というのはとても面白くて、基本的に私はこのレンズも開放でしか撮らないのですが、設定はずっと同じF2.8でも、寄れば寄るだけ後ろは沢山ぼける。で、引いて撮れば、後ろはそこまで大げさにはぼけない。
つまり、ポートレートで使う時は、中望遠で背景を自然にぼかすこともできながら、そこからモデルさんへ寄っていく中でぼけ感を変えていく…1本のレンズの撮影でも変化が起こせると思っています。
また、ぼけ味だけでなく解像感にも優れていて、たとえばこの写真に関して言えば、モデルの方の目に射し込んだ光を、透明感を持って表現したかったのですが、その期待にしっかりと応えてくれました。 こういった構図は前ボケも後ろボケもあって、うるさくならないようにするのは意外と難しいのですが、被写体との「距離感」でいろいろと違ったぼけ味を楽しみながら、狙ったポイントの描写とのバランスを追い込んでいく…というのが、このレンズを使う醍醐味と感じています。
技術者の志が伝わる、こだわりのレンズ
今回は、現場でよく使うレンズの中から、3本を選んで紹介しましたが、これらのレンズに限らず、Eマウントレンズはどれもこだわって作られている、と私は感じています。「かゆいところに手が届く」というか、技術者の志がすごく伝わるんですよね。一見無駄とも思えるようなとこまでこだわりながら、1本づつちゃんと作られていて、しっかりしてるな…というのが使ってみると良くわかります。 しかも動画に使えるわけで、1本で動画レンズ・静止画レンズの2役をこなしてくれる。 仕事のことを考えると、もう今使っているレンズ達は手放せないですね。 αシステムには今後も将来性を感じられますし、「次、何がくるんだろう」とすごく楽しみにしています。
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