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ネイチャー&ワイルドライフ
フォトグラファー 野村哲也氏

世界を旅するフォトグラファーが
FEレンズに惚れ込む理由
〜SEL1635Z、SEL70200G〜

α Universe editorial team

全世界の踏破を目標に、滞在する国々で出会う自然や動物、人を撮り続ける野村哲也氏。時間があればとにかく撮っていたい、多くのものを撮りたいと強く望む。その撮影スタイルを実現すべくFEレンズ『SEL1635Z』、『SEL70200G』を愛用しているという。直近の世界旅行で撮影された作品とともに、その魅力について伺った。

野村哲也/ネイチャー&ワイルドライフフォトグラファー 1974年、岐阜県生まれ。“地球の息吹”をテーマに、北極、南米、南極などに被写体を追い求める。2007年末から南米チリのパタゴニア、2010年から富士山&熱海、2012年から南アフリカ&イースター島と2年ごとに住処を変える移住生活を開始。現在までの渡航先は120カ国以上に及び、世界193カ国踏破を目指す。秘境ガイドやTV出演、マスコミのアテンドなどに携わり、国内では写真を織り交ぜた講演活動を精力的に続けている。著書は多数で、13作目となる最新刊は「ナミブ砂海〜世界でいちばん美しい砂漠(福音館書店)」
http://www.glacierblue.org/

どういう目的を果たすために
生まれたレンズなのかが伝わってくる

――ボディと合わせてFEレンズをお使いいただいているようですね。 まだ使い始めて2年なのですが、日々使っていて思うのは、どのような撮影のために作られたのか伝わってくるレンズが多いなと。特に50mmのマクロレンズ(SEL50M28)は顕著でした。90mmのマクロレンズ(SEL90M28G)と比べると、安いですよね。正直に言うと、オートフォーカスも遅いって言われているし、安いから描写がイマイチなのかなって決めてかかっていて(笑)。そしたら、描写は90mmのマクロレンズを凌ぐんじゃないのかなっていうぐらい、驚くべき描写力で。僕はマクロでオートフォーカスを使わないので何も問題ない。「安いからといって描写力は一切妥協しません」という作り手の気持ちが鮮明に伝わってきました。何を重視して作られたのかがハッキリしているので、僕はFEレンズを買うときに迷うことはありません。

現像する時間がもったいない。
撮ったときに色を完全に合わせたい

――海外での撮影が多いそうですが。 今、42歳で120カ国まで訪れていて、なんとか50歳までに残り72カ国を踏破したい。そうすると、できるだけ短期間に多くのものを撮っていく必要があります。機材も環境も整っている今だからこそ、時間があれば撮りたいところに行って、ずっと撮っていたい。プロとアマチュアの差がどうのこうの言っているけど、一番大事なのはその現場に「いるか、いないか」なんです。アンテナを常に張っていれば、面白いものに出合えるけれど、そういうときにすぐに行ける状態を作り出しておくことが最重要です。そして撮影するときは、その場で見ている状態に明るさや色をできるだけ合わせて撮影します。そんなときに、色味や露出が反映される電子ビューファインダーと液晶は非常に役立ちます。

――その撮影スタイルを貫くために、レンズには何を求めますか? 周辺解像の良さ、逆光やフレアに強いことです。僕は写真家としては現像時間がものすごく短いと思います。そのかわり、撮っているときには完成をイメージして、現場でその色に完全に合わせます。周辺解像が悪くて1枚1枚をパソコンで補正しきゃいけないなんて時間がムダですから。後処理の工程をなるべく省きたい。そういう意味では、FEレンズは描写に癖がなくて、周辺解像も良いので重宝しています。

Gマスターに引けをとらない
トップクラスのレンズ〜SEL1635Z〜

――いつも付けているレンズはありますか? 『SEL1635Z』です。初めて使ったときは、あまりの小ささに「大丈夫か?」って思いましたけど(笑)。それまでは、いかにも「写るぞ」っていう感じの一眼レフ用の巨大な超広角レンズを使っていたので不安でした。前玉も出ていないし。ところが、実際に撮ってみたら周辺部の流れが驚くほど少ないことがわかって、良いレンズだなって感心しました。それからは僕の定番レンズです。

――なぜ、定番レンズになったのですか? 一番の理由は、寄った写真も、遠景も撮れるから。マクロレンズのように寄って撮影もできるし、画角そのままで風景も撮れます。下の写真はニュージーランドの森で撮影しました。屋久島のように深い森があるんです。

SEL1635Z,16mm,F11,1/60秒,ISO-1250

他のレンズは端に行けば行くほど湾曲するし、像が流れることがよくあるのですが、これはほとんどない。非常に流れやすいところも、流れない。だから、ダイナミックな構図も撮れるんです。大きな一眼レフ用の広角レンズでも、こういう構図は苦手なことがままあります。このサイズで、こうした構図でも撮れることに驚きました。
二番目の理由は、逆光耐性。このレンズを使って、太陽を焦点距離16mmから35mmまで2mm刻みで、絞りをF4からF22まで、全部撮ってみたこともあります。ゴーストが出ずに一番まとまっているなと思ったのが、20-22mmで、F14-18の間が非常に良かった。下の写真を見てください。これは34mmですが、これだけ強い逆光でもゴーストやフレアが本当に出ないんです。仮にゴーストが出ても、αならファインダーでも液晶でもどう出るのか、それが絞りでどう変化するのか見えるから、カメラの位置を少し変えるだけで、フレアがない写真を簡単に撮ることができます。

SEL1635Z,34mm,F8,1/5000秒,ISO-800

次の写真は、F22まで絞ったときの1枚。光芒(こうぼう)は綺麗だし、フレアも出ていません。開放から周辺が流れなくても、絞ったときに解像感がなくなってしまってはダメです。でも、このレンズは絞っても解像感を失わない。周辺の解像感も良い。

SEL1635Z,16mm,F22,1/60秒,ISO-1600

逆光にも強い、フレアにも強い、ゴーストもでない。おかげで360度全方向どこからでも撮れて本当に重宝しています。しかも、この小ささで周辺解像も落ちない、ズーム全域で周辺部も潰れませんからね。ソニーのレンズ群の中でトップクラスだと僕は思っています。このレンズを、将来出るであろう大口径広角ズームがどうやって追い抜いていくんだろう? と思うと、想像できません。そう思うくらい、とんでもないレンズです。

見た目通りの色を再現してくれる
〜SEL70200G〜

――『SEL70200G』もお使いとのことですが、印象はいかがですか? 『SEL70200G』も次いで出番が多いです。他のメーカーよりも小さいなと思いましたが、『SEL1635Z』のときのような不安はありませんでしたよ(笑)。70-200mmはどこのメーカーでも一番力を入れる大切なレンズですからね。そのレンズがイマイチだったら、そのメーカーはもうダメですから。『SEL70200G』は写りが良くて、見た目通りの色が忠実に出てくる、ニュートラルなレンズでした。癖がなくて自分好みです。下の写真は、イタリアのランペドゥーザ島で撮った写真です。船影が海底に映り込むくらい、透明感のある水質なんですが、それをヌケの良い忠実な色合いで再現してくれました。

SEL70200G,104mm,F20,1/160秒,ISO-400

動きの速いものも、ディテールまで描写して、ぼけも美しいんです。 下の写真はオートフォーカスで撮影しましたが、AF速度も速いみたいで、しっかり追従してくれました。そのときの写りが、癖がなくてニュートラル。とても良いんです。しっかりと解像しているし、くどくないし色合いも綺麗なんで、自然な立体感が出るんですよね。

SEL70200G,200mm,F4,1/1600秒,ISO-200

以前、ハワイでロケハンをしたのですが、ロケハンだから軽くて小さいこのレンズを持って行ったんです。そうしたら、この1本で全部撮れてしまって驚きました。そのときに撮っていたのはカウアイ島の森やヘリコプターからの空撮。シーンや場所に合わせてレンズを替える必要がない。効率良く撮影できて助かりました。

――望遠レンズについては何を求めますか? ぼけが大きくなるので、ぼけ味が丸いものは丸く、綺麗に写ること。それから、周辺の解像感を特に重視しています。 圧縮効果が高いので肉眼とは異なる見え方になりますよね。被写体と背景の距離感を縮めて、迫力ある描写ができます。あるものを、あるままに色を出すというのは写真の使命ですが、被写体を引き立てて肉眼とはまったく違う世界を見せることができるのも望遠の魅力だと思っています。 下の写真を見てください。前ぼけも後ろぼけもありますが、とろけるように綺麗なぼけ味で、F4であることを忘れさせます。ぼけがきれいだから、結果として被写体が引き立つんですね。

SEL70200G,200mm,F5.6,1/800秒,ISO-200

――このレンズで動画も撮りますか? 撮ります。太陽がゆっくりと落ちていくシーンは、ゴーストがすごく少なくて素晴らしい写りです。それはこのレンズならではの特長というか、非常に素敵なところだと思います。

この2本があれば何でも撮れる
オールマイティなレンズです

――今挙げていただいたレンズを購入しようか迷っているα Universe読者に一言お願いします。 人間の目は120度くらいの視野で見ていますから、肉眼で見た通りの風景を押さえたいと思うなら必然的に広角レンズが必要です。『SEL1635Z』なら広角だけでなく、寄って撮ることもできます。風景を撮る方にこそオススメしたい1本です。

SEL1635Z,16mm,F16,1/60秒,ISO-160

『SEL70200G』は、描写に癖がないうえに、静止画も動画も撮れて表現の幅が広がるハイブリッドなレンズです。無限遠〜3m、3m〜最短への切り替えレバーが付いていて、手ブレ補正も付いていて、非常に使いやすい。よく考えられています。 これはレンズをお持ちの方へのアドバイスですが、フィルターを外して使ってほしいですね。保護フィルターを付けると途端にフレアに弱くなるんです。もともとレンズの前面には保護フィルターのような役目が備わっているので、フィルターを付けなくても大丈夫なんです。ソニーのレンズはものすごく良いレンズなので、そのレンズの特性を最大限に生かしてあげてください。

常識をくつがえすようなレンズを作って
もっとワクワク、ドキドキさせてほしい

――今後、ソニーのレンズに期待することは何ですか? ボディのときにもお話しましたが、もっとワクワク、ドキドキさせてほしい。びっくりするような、既存の画角にはないものが見てみたいですね。魚眼ズームがあったら面白いと思います。あとは500mmの超望遠は早く出してほしいですね。そのときはテレコンを付けてほしい。誰も見たことのない世界を見せるというのがカメラマンの一番の役目だと思っています。小さなカメラにフルサイズセンサーを入れて驚かせてくれたソニーさんなら、それを実現するのにふさわしい、常識をくつがえすようなレンズを作ってくれると期待しています!

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