ディレクター 柘植泰人
SIDE STORY
企業CMやミュージックビデオ、プロレーサーのプロフィールムービーなど、幅広い分野で独自の映像世界<柘植ワールド>を追求している人気クリエーター。「反射神経が大事」と語る彼が求めるカメラとは。
柘植泰人/映像作家・ディレクター
1983年愛知県生まれ。大阪芸大映像学科中退。 2012年、草津・京都・美濃など日本の風景を収めた映像が大きな話題を呼び、以後、広告をはじめとした数多くのプロジェクトに参加。 代表作に、「真夏の通り雨 / 宇多田ヒカル」などがある。
http://yasuhitotsuge.com/
御陣乗太鼓 - のとつづり
松波酒造 - のとつづり
――石川県能登地方の各地をめぐるドキュメンタリー作品集『のとつづり』は、昨年(2016年)からスタートし、これまで(2017年5月現在)に36本の作品(すべて『α7S II』で撮影)にまとまっており、『のとつづり』のWebサイトにて発表しています。1分ほどの作品から10分を超える作品まで長短さまざまですね。 もともとの企画は、1年間能登に通ってそこで出合った風景や、人と会って交わした言葉などを撮りためて1本の映像を作ること。それが途中から、短くてもいいからテーマごとに発表することになったんです。このシリーズの撮影では、行く場所や会う人はあらかじめ決めていますが、何を撮るか、どんな話をするかはその場の流れ次第で、事前に下調べもしません。毎回、どんな作品になるかは、行ってみないとわからないという状況なんです。でも、実際にやってみて、これが自分のやりたかったことだと気づきました。撮る前にあれこれ考えるのではなく、撮ってから考えるという楽しさを『のとつづり』で知ったんです。
――撮影中は、どんなことを考えながら撮っているのですか? 無心です。というか、あまりなにも考えてない(笑)。美しく撮りたいとは常々思っていますが、その場では忘れているし。あ、でも編集のことを考えて「このカットとあのカットはつながるな」とか「これはファーストカットでいけそうだ」と構成しながら撮っていることもありますね。
――実際、柘植さんの映像では美しい一瞬を見事に捉えていますが、なにかコツがあるのですか? たぶん、みなさんがスマホで「きれいだな」って思って撮っている感覚と同じです。ただし、ずっとやっているうちに、ある種の勘が働くようになったかもしません。「あれ、何かが起こりそうだ」っていう気配を感じられる。嗅覚っていうんですかね。アシスタントに撮影を任せていると、「何で今、回してないの? もっと撮ってくれればよかったのに」ってことがよくあるんです。あと、反射神経は大事だと思います。気配を察知して、さっと素早くカメラを向ける。
――使っているのは『α7S II』ですね。 セットアップに時間がかからない『α7S II』は助かります。あとは機動性。手持ちで撮影することが多いので、『α7S II』の軽さは強みです。重いカメラだと「もう、いいや」と撮影を切り上げてしまうところでも、けっこう粘って回し続けられるので、不意に訪れる美しいシーンを撮り逃すことも減るでしょう。ボディ内の手ブレ補正機能も重宝しています。手持ちによる緩やかなブレは気にならないんですけど、レンズ内の補正などによる機械的な細かいブレは、音もカタカタうるさいし嫌なんです。『α7S II』の補正機能にはまったくストレスを感じません。あと、カメラ本体に直接接続できるXLRアダプターキット『XLR-K2M』も便利ですね。2チャンネルまでのマイク・ラインへの直接入力ができるので、ケーブルを持ち歩かなくてもよくてフットワークが軽くなる。スイッチ類の配置も分かりやすくて使いやすいです。」
XLR-K2M
信頼性・運用性・耐久性に優れたXLR端子対応アダプターキット。細かなオーディオセッティングの調整ができ、L字ブラケットを使用せずに、直接MIシューに接続が可能。
――これからどんな映像を撮っていきたいですか? そうですね。やはり10年後に見てもいいなと思える映像を作りたいです。たとえば広告CMだと、3カ月で消えてしまうじゃないですか。将来、孫にも見てもらえるような普遍的な映像を撮りたいですね。ミュージックビデオは宇多田さんの作品(『α7S II』で撮影)でチャレンジしましたが、このジャンルではまだいろいろな撮り方ができると思います。またやってみたいけど、なぜか話が来ないんですよね(笑)。あと、最近の自分のなかの流行りをいうと、広角レンズできっちり撮ること。望遠レンズで被写界深度を浅くして背景をぼかす撮り方は、誰が撮ってもなんとなくきれいに映りますが、情報も少ないし、どうだろうかなって。もちろん、今でもピントの浅い絵を使いますが、できれば広角レンズで映っているもの全部にピントが合っているような映像が撮りたい。こっちの方がパワーがあると思うんです。なかなか難しいけれど、見る人の印象に強く残るような映像を広角レンズで撮っていきたいです。
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