ネイチャー&ワイルドライフ
フォトグラファー 野村哲也氏
究極の絶景 〜地球の息吹を求めて〜(アイスランド編)
全世界の踏破を目標に、滞在する国々で出会う自然や動物、人を撮り続ける野村哲也氏。第2回目は、同氏がアイスランドにおいて撮影した絶景や動物とともに、撮影エピソードをご紹介いただいた。
野村哲也/ネイチャー&ワイルドライフフォトグラファー
1974年、岐阜県生まれ。“地球の息吹”をテーマに、北極、南米、南極などに被写体を追い求める。2007年末から南米チリのパタゴニア、2010年から富士山&熱海、2012年から南アフリカ&イースター島と2年ごとに住処を変える移住生活を開始。現在までの渡航先は120カ国以上に及び、世界193カ国踏破を目指す。秘境ガイドやTV出演、マスコミのアテンドなどに携わり、国内では写真を織り交ぜた講演活動を精力的に続けている。著書は多数で、13作目となる最新刊は「ナミブ砂海 世界でいちばん美しい砂漠(福音館書店)」
NATIONAL GEOGRAPHIC Travel Photographer of the Year Contest 2017 People's Choice 第2位。
http://www.glacierblue.org/
時代が変わった。
アイスランドでオーロラを撮影しているときに、そう確信した。
今までの撮影技法から、今だから出来る撮影技法に切り替えるとき。
一般的に、オーロラは白い雲のような感じで出現することが多いが、今までであれば、いちいち三脚を立てて、スローシャッターを切り、雲に色が付いていないかを確認した。だが、ダイナミックレンジが広くISO 5万レベルの高感度撮影時のノイズも少ないαであれば、手持ち撮影が可能となり、オーロラなのか雲なのかが一瞬で判別できる。機動性が高くなることで、早めに準備も完了し、突然オーロラが舞いだしても、慌てずに対処できるのだ。
ピント拡大とピーキングのお陰で、オーロラや星にも完璧にピントが合わせられるようになった。ピントリングを無限遠に固定し、動かないようにテープで固定して撮影するというのが通例だったが、実はレンズによって、無限遠とピントが合う位置に、僅かに“遊び”がある。無限遠からほんの少しだけ戻したところ、そここそがピントの合う点となるが、それらをピーキング機能(ピント面の色付け)によって、ピント拡大(5倍)して微調整出来るのだ。フィルム時代は、高感度が1600〜3200(増感)までしか上げられなかったため、明るい広角レンズで絞りを開放にして、出来るだけ速いシャッターを切らなければならなかったが、現在はオーロラにも大地にもピントが合わせられる時代。ISOを1万以上に上げて、F8まで絞れば、どちらもクリアに写し撮れるのだ。
氷河のトンネルを撮影した時は、多くの観光客が画面に映り込んでしまうことに頭を悩ませた。どうやったら、より氷河を蒼く、人を少なく出来るのか? チルト可動式液晶モニターを下に向け、トンネルの天井付近まで右手をあげて撮影。ひと昔前であれば、こんな暗い場所では、三脚を立てて、ファインダーを覗き、スローシャッターで撮影するほかなかった。決して撮れなかったものが、今は撮れる時代になった。
初夏のアイスランドを1カ月かけて撮影した時は、虹と滝、鳥と動物たちがメインとなった。滝を写す時は、シャッタースピードを何秒にしようか迷い、一眼レフを使っていた時はいつも段階的に撮影していた。1/8000秒から徐々に遅くしていき、最後は1秒くらいまで。そして家に帰ってから一番良いものを抽出した。でも、今はそれらを現場で全てまかなえる。まず動画モードにして、1/8000秒からどんどんシャッタースピードを遅くしていく。そこで最も流れが美しいと思ったところで、写真モードに変えてそのシャッタースピードで撮影する。一日の中で本当に太陽光が美しい時間は、朝夕の各2時間ほどしかない。そうであれば、時間を有効に使い、ひとつの場所で出来るだけ効率的に、短時間で撮影し、新たな場所へ向かいたい。それが「α」に替えてからの自分の撮影スタイルになった。
海を悠々と泳ぐクジラやシャチは、αのコンティニュアスAFで殆ど食いついてくれるが、宙を弓矢のように飛んでいくパフィン(ツノメドリ)は、なかなか合わせるのが難しい。それであれば、機能を組み合わせれば良い。DMFモードにして、絞りをある程度上げて、宙を飛ぶ鳥にピーキングで色付けし、範囲に入った瞬間に連写だ。
これからは、撮影対象によって、新たな方法や組み合わせが多く出てくるだろう。今までの「セオリー」が弊害になることだってある。だからこそ、初心者にこそ、αでカメラライフを始めて欲しい。柔軟な感性で今まで誰も見たことがない視点で切り取って欲しい。 「α Universe」を訳せば「αの宇宙」。全世界中の人々が、ドキドキ、ワクワクしながら写真を写し、それらをアップロードする。
「写真世界のオープンソース化」
ここを訪れると、どの段階の人でも学べ、次へ生かしていける場になる。 僕も微力ながら、持っている情報や撮影技術などを、この連載「究極の絶景」を通して出し切りたいと思っている。
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