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動物写真家 小原玲 氏〜前編〜報道写真家から動物写真家へ。
美しさよりも感性が生きる
世界の最前線

〜撮りたいものがそのまま撮れるRX10 IVの魅力〜

α Universe editorial team

動物写真家の小原玲さんは、2021年11月17日お亡くなりになりました。 小原さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

天安門事件、湾岸戦争の現場から芸能人のスキャンダルまで、日本屈指の報道カメラマンとして名を轟かせていた小原氏。ところが、今、最も情熱を注ぐ被写体はアザラシや小鳥、リスなどの野生動物だ。愛らしいアザラシの写真集は多くの人の目に留まり、たちまち話題となった。なぜ報道写真の最前線から、動物写真の最前線に転身したのか。そして、カメラに求めることとは。作品とともに、自身のバックストーリーを語っていただいた。

小原玲/動物写真家 1961年生まれ。群馬県立前橋高校在学中に「第3回高校生フォトグランプリ」(旺文社)のグランプリを受賞したことから写真家を志す。茨城大学人文学部卒業後、写真プロダクションを経て、フリーランスの報道写真家に。『LIFE』、『TIME』、『Newsweek』、『PARIS MATCH』、『ASIAWEEK』など世界中の雑誌で活躍する。北海道で暮らす小鳥・シマエナガの愛らしい姿を収めた写真集『シマエナガちゃん』の続編『もっとシマエナガちゃん』(講談社)が好評発売中。

周りの人が笑顔になるスナップ写真が原点

自分が初めてカメラを持ったのは中学2年生のとき。亡くなった父親の形見として一眼レフをもらったのがきっかけでした。高校生になって写真部に所属。このとき、教育系出版社主催の高校生を対象にしたフォトコンテストでグランプリを獲ってしまった。応募作品の「休み時間」は同級生を撮ったもの。ユーモアには自信がありましたが、作品としては、ピントは甘くて、シャープな写真が好まれるコンテストでははじかれるだろうと高をくくっていました。ところが、選ばれてしまって逆にびっくりというか、審査員の方々に見透かされてしまったような気がしてちょっと悔しかった。ちなみに、このときの次点だった人は高校生離れした上手な方で、今では広告写真家になられています。

画質や構図よりも「いいぞ」と思ったときに
シャッターを押せることが大事

報道カメラマンとして一番評価された写真もブレているんです(笑)。アメリカのグラフ雑誌『LIFE』に掲載されたその作品は、天安門事件(1989年)で学生たちが戦車の前で手をつないでいる写真でした。日の出前の少し明るくなりはじめたタイミングで、学生たちの姿を手持ちで<1/8秒、F2>の条件で撮影しました。当然ブレていて、しかもISO400のカラーポジを1600以上に増感してプリントしたので粒子も荒かった。でも、臨場感が評価されたんですね。 高校生のときから変わっていませんが、この姿勢が自分の原点なんですね。写真で一番大事なのは、自分がこの目で見て感動した光景がしっかり伝わるかどうか。きちんと機材をセッティングして、露出やピントをしっかりコントロールして撮る写真は、確かにきれいだけど、どこか写真家の腕比べを見ているような気がするんです。

伝えたいことが伝わらないジレンマを
解き放った、写真家冥利に尽きる出来事

天安門事件の写真は、学生たちが戦車の進攻を止めている抵抗の写真として流通しました。でも、本当は非暴力の象徴的なシーンだったんです。自分としては、学生たちが非暴力にこだわっていたことを伝えたかったのに、報道では中国政府の残虐さだけが強調されていく。意味が歪曲されて伝わってしまったわけで、『LIFE』に載ったとはいえ、自分としては素直に喜べなかったんです。 そんなジレンマを抱えていたとき、カナダのアザラシの赤ちゃんの写真に出合って、「こんなに可愛い生き物がいるんだ」と素直に感激したんです。実際に撮影してみると、これがもう楽しくて仕方ない。それまでは、人間の悲しい部分だけを撮っていた人間が、無垢な生き物を前にして目が覚めたというか、ものすごく興奮したんです。しかも、帰国後に撮った写真が人に伝わる瞬間に幸運にも立ち会えました。作品は女性月刊誌に掲載されましたが、電車の中で女性がアザラシの写真が掲載されたページをじっと眺めていたかと思うと、おもむろに定規を使って写真を切り抜いて、手帳に挟んだんです。写真家人生でこれほど嬉しかったことはありません。 やっぱり写真は、自分が見て感じたことが人に伝わるから撮りたいんだ。どうせ撮るんだったら、人に大事にされる写真を撮りたいって。それからアザラシを28年間追っています。

報道写真、動物写真、どちらも共通して
カメラに求めることは“機動性と静かさ”

撮影する道具であるカメラに求めるのは、被写体にプレッシャーを与えないような静かなカメラ。持ち運びに便利なできるだけ軽いカメラ。そして、すぐに撮影できる機動力のいいカメラ。思えば、今までそんなカメラばかり選んできました。
ほら、お母さんがスマホで撮る子ども写真はどれも素晴らしいでしょ。ぼくはどんな立派なカメラや機材を用意して撮影しても、お母さんのスナップ写真にはかなわないと思います。子どもの表情って、ちょっとした角度の違いでものすごく変わりますよね。こっち側がいいかな、それともあっち側かなっていろいろ試して、ここぞってタイミングを逃さない。お母さんが捉える子どもの一瞬の表情は、撮る人の経験と気持ちが乗り移ったようで輝いています。

ぐっと寄ることで、これまでにない1枚に

被写体に近寄れない動物写真は、さすがにスマホでは撮れません。「RX10 IV」は動物写真をスマホのように気軽に撮れる唯一のカメラです。 浜辺の堤防から「RX10 IV」を使って、30〜40m先のアザラシを狙いました。彼らは敏感なので、三脚立てて群れにレンズを向けているとすぐに気づいて、半分くらいいなくなっちゃったり。だから、今回は手持ちにして撮影するときだけカメラを堤防の上に出してこっそり撮影しました。

RX10 IV,24mm,F5,1/3200秒,ISO400

引きの写真は24mmの広角。アザラシがはるか遠方にぽつんといるのがわかりますよね。それが<全画素超解像ズーム>を使って実質1200mmの焦点距離にすると、こんなに寄れる!

RX10 IV,1200mm(超解像ズーム使用時),F5,1/1250秒,ISO400
RX10 IV,1200mm(超解像ズーム使用時)F5,1/2000秒,ISO400

ひとつのカメラでこれだけの広い範囲をフォローできるんですから、驚きです。 波しぶきがかかって水浴びしているような寄りの写真は、アザラシがリラックスした様子でとても自然な感じですが、今まではこんな瞬間を捉えることはできませんでした。撮影していることを相手に気づかれないと、こんなステキな写真が撮れるんですね。

<全画素超解像ズーム>を使った作品を、あと2枚お見せしましょう。

RX10 IV,220mm,F4,1/250秒,ISO1600
RX10 IV,220mm,F4,1/125秒,ISO1600

このとき、何人かといっしょに撮影に臨みました。わたしは<全画素超解像ズーム>で1200mm相当の画角で絞りは<F4>。暗い森の中なので、シャッタースピードは、1/125秒〜1/250秒。羽はブレますが、絞り優先で撮影しました。まわりの人は一眼レフに100-400mmのズームレンズをつけてF5.6ぐらいで撮っていましたが、仕上がりは全然違いました。ポートレートでたとえるならば、ほかの人たちがバストアップで撮っているのに、「RX10 IV」では顔のアップが撮れるわけで、当然、わたしの写真はキビタキにぐっと寄れて、よりリアリティのあるインパクトの強い仕上がりになりました。同じ状況下でこれだけ表現力に差が出るのだから、写真っておもしろいですよね。というか、選ぶカメラでこれだけ差がつくのは逆に怖いともいえます。 ここ3〜4年、標準レンズで風景を撮っていた女性が、100-400mmのズームレンズを携えてリスや鳥を撮影しにくる機会が増えています。感性の優れた彼女たちが「RX10 IV」を選ぶと、ものすごく素敵な写真が撮れるでしょうね。おじさんがいくら頑張ったって、彼女たちの新鮮な感性にはかないません。よく、上手に写真が撮れないと、より高性能のカメラにしてなんとかしようっていう傾向がありますけど「RX10 IV」こそ、撮影者の感性を引き立たせるカメラなんですね。でも、彼女たちがそれに気づいたら、ぼくら動物写真家はきびしくなりますよ(笑)。

自分を自由にしてくれるカメラ「RX10 IV」

自分にとって「RX10 IV」は、1200mmのズームでスナップ写真が撮れるカメラです。これってすごいことですよ。フルサイズの一眼レフとレンズを何本かと三脚、テレコンバーターを持って動物を追いかけるのと、「RX10 IV」をひとつ持って移動するのは大違い。人間は荷物が重くなればなるほどフットワークも重くなるし、頭の中も固まってきちゃう。たとえば、動物写真を撮るのに一箇所で構えてずーっと動かないで撮る人が多いですが、それはそれで決定的瞬間をきれいに撮ることはできても、ユーモアを感じるおもしろい写真は撮れません。撮影者がフットワーク軽くあちらこちらに動いた方が絶対におもしろい写真が撮れると思うんです。 それは報道写真で鍛えられた感覚です。写真週刊誌もアメリカの通信社も、写真にただの速報性とかまわりと一緒の確実性などは求めていなかった。100人のカメラマンがいたら100通りの違う写真が揃うはずだという姿勢で、その中の一番を求められた。そのためにはカメラマンは自分の足で動かなければならない。動けば動くほど身軽になってひとつだけの写真を撮れる可能性は大きくなる。だいたい、海外のカメラマンはレンズ1本で動き回っていました。報道写真も「RX10 IV」だったら楽ですよね。広角から望遠まで、これひとつでいろんな表現が撮れるんですから。 売れる写真集って短期間で撮影したものが多いってご存知ですか?大きなカメラで時間をかけて撮影した立派な作品が並ぶ写真集ってきれいだけど、人に訴えるものが意外に小さいんです。子どもに写真集を見せたらすぐわかりますよ。何ページかめくると飽きちゃう。反対に、短期間でスナップ写真のように感覚的に撮った作品は飽きないんです。次のはどんな表情が見られるんだろうって嬉々としてページをめくっていく。シャープで高画質だから売れるのではない。その感性がおもしろいから売れるんです。そういう意味でも「RX10 IV」は、感性を反映してくれるカメラだと思います。このカメラを感性の鋭い若い人たちが使いこなすとおもしろい写真がいっぱい撮れるでしょうね。ライバルが多くなってたいへんです(笑)。

――次回は、野生のリスや高速で飛行する鳥など、撮影が難しいとされる被写体を撮影した感触を詳しくお伺いします。お楽しみに。

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動物写真家 小原玲 氏 感性の赴くままに決定的瞬間をとらえる。動物写真界を変えるカメラ『RX10 IV』

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