やっと出会えた。そう思えるカメラ。 鉄道写真家 中井精也 氏 First Impression α7R III
待望の新型αとなるα7R IIIを携え、中井氏が北の大地
へ赴きました。「やっと出会えた!そう思えるカメラです」と感想をもらした中井氏に、実際に撮影した写真と
共にファーストインプレッションを語っていただきます
こんにちは。鉄道写真家の中井精也です。 ついに登場しましたね!“α7R III”。発売に先駆けて試せる機会を得ましたので、ひと足早く僕が撮った写真と共にご紹介いたします。 α7R IIIがこの手に届いて、さて何を撮ろうと思案していたとき、閃いたのは「北の大地はまさに紅葉シーズン」ということ。いてもたってもいられなくなった僕は、届いた翌日には北海道へ向かっておりました。着いて最初に訪ねたのは石勝線の夕張支線。かつては石炭輸送の貨物列車がひっきりなしに走っていたこの路線も、今ではたった一両のディーゼルカーが、のんびりと走っています。早朝に丘に登った時は一面が霧でなにも見えない状態。下りの一番列車は、音しか聞こえませんでした(涙)。でもいつか晴れることを信じて待っていると、突然霧が晴れ、息を飲むような紅葉が眼前に広がりました。
ここは何度も撮影している場所ですが、これほど美しく紅葉が色づいたのは記憶にありません。そして興奮冷めやらぬまま撮影したのがこの作品です。α7R IIIは有効画素数こそ先代のα7R IIと変わりませんが、より精細に、そしてクリアーになっています。遠景の森はデジカメが苦手な被写体ですが、木々が溶けることなく葉っぱ一枚一枚が描写されているかのように、臨場感のある描写になっています。ここでは風景をメインに、列車はかなり小さく写しましたが、拡大して見ると、なんと「1763」という車両番号まで読めるのには驚愕しました。
続いて狙ったのはJR北海道のスター的存在とも言える「スーパーおおぞら」。カーブの多い区間でも速度を落とさずに走れる振り子装置を装備し、どんな線形でも颯爽と走ります。海岸線の地形に逆らわずに敷かれたS字カーブを、6両編成が全体をくねらせて走る姿は迫力満点です。その6両編成の全てがギリギリ入る構図で撮ろうと試みました。このような撮影ですから、シャッターチャンスは限られます。こんなシーンでは、置きピンで撮影するのは困難な状況。しかしこのα7R III、AFの精度が物凄く高かったです。AF-Cモードで快適に撮れてしまいます。列車の最後尾まで全てがきちんと収まるのはたったの 1カット。そのあまりにもわずかなチャンスを、構図にだけ集中し、ピントはカメラのパワーを信じて撮影できるのは嬉しいものです。
そして今回の北海道でとても印象に残った写真。根室本線の厚岸〜糸魚沢。厚岸湖とそれを取り囲むように広がる湿原の中に線路が敷かれています。ラムサール条約にも指定されている水鳥たちの楽園でもあります。鳥たちの心地よい歌声を聞きながら、ひたすら夜明けを待ちます。そうしてやがて太陽が昇ると、辺りの風景はまるで息を吹き返したかのように輝き出しました。α7R IIIは、クリアーな太陽光線が生む大きな明暗差にも関わらず湿原のディテールが潰れることなく、眼前の風景を見事に描写してくれました。さらにダイナミックレンジの広さが肉眼で見た印象に近い臨場感のある写りを実現してくれました。空のグラデーションの美しい連続性、α9と同等のAFエリアの広さも加え、カメラの大きな進歩を実感した1枚です。
さて朝陽の写真の次は夜の写真です。α7R IIIはα7R IIと同じ4240万画素という高画素なカメラですが、α7R IIIの高感度画質は驚くほど美しかったです。これまでこうした状況では
α7S IIで狙うことがほとんどでしたが今回持ってきているカメラはα7R IIIのみです。結果、夜の踏切から見た風景を、ISO6400とは思えないほど綺麗に描写してくれました。
最近のデジカメはISO6400くらいの高感度なら常用域なのかもしれませんが、それはある程度光量がある状況でのお話。この撮影シーンのように、肉眼ではほぼ真っ暗で、ピントを合わせるのも困難なような条件では、暗部にノイズが乗ったり、夜空のグラデーションに縞状のムラが出がちです。踏切のナトリウム灯に浮かび上がる線路から夜空に目を移せば、降るような星と天の川。僕が再現したかったロマンチックな夜の風景が完成しました。
海を見下ろす丘の上に立つと、秋とは思えない冷たい向かい風が吹き抜けてきました。刻々と変化する空の表情。そして雲の隙間から一瞬だけ差した光を受けて輝く列車。その全てを最高の画質で、写し止めることができました。
これまでは高画素を活かした高精細な作品を狙う時、瞬間を写し止める時など、シーンによってカメラを持ち変えることがありましたが、このα7R IIIはその必要を感じませんでした。
本当にオールマイティーなカメラに仕上がっていました。瞬く時を高精細に写し止める。写真家なら誰もが求め続けてきたカメラに、やっと出会えた気がします。 中井精也
鉄道写真家 中井精也
Gallery α7R III
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