α7R IIIで捉えた、奇跡の瞬間
〜撮りたかったのは、いままで誰も見たことがない写真〜
ファッションフォトグラファー 中川昌彦 氏
α7の第三世代として新発売された「α7R III」。このカメラを使ってファッションフォトグラファー・中川昌彦氏が今回目指したのは、「誰も見たことがない写真」。実際に撮影した感想を伺った。
中川 昌彦/ファッションフォトグラファー
1962年、大阪生まれ。ファッション雑誌をはじめ、主にアパレル企業のブランド広告を数多く手掛ける。フィルムカメラの時代から第一線で活躍、
多くのモデルを撮り続けているファッションフォトグラファー。
「α7R III」だから撮れた、最高の瞬間
――『α7R III』の性能をフルに引き出したこの作品は、どんな状況で撮影したのでしょうか? 動きがあって誰も見たことがないような写真を撮りたくて、スタッフ一同で知恵を出し合いました。場所は都内の撮影スタジオ。トランポリンを用意して、モデルはオーディションで一番上手に跳んでくれた人に依頼しました。彼女が宙に舞う一瞬を<10コマ/秒>の高速連写で捉えています。レンズは85mm(F1.4)の単焦点で、絞りは<F8>、シャッタースピードは<1/250秒>です。ストロボは8台。閃光速度を上げて10コマしっかり同調させて撮影しました。
――飛び散る花が印象的です。 両サイドに脚立に乗ったスタッフが3人ずついて、合計6人で花を投げ入れています。最初は、上から撒こうと考えていましたが、それだとボトボトって感じになって味気ないので、高低差をつけて横から投げてもらいました。生花なので何回か投げているとどうしても花が傷んできますが、4200万画素の高解像度だからちょっとした傷もしっかり写ってしまうんですよね。新しい花を追加しながら撮影していました。
連写ができない通常の撮影だったら、三脚でカメラを固定して、モデルが放物線の頂上にきたタイミングでシャッターを一度だけ切ります。今回は、跳び始めから押しっぱなしで撮れるわけですから、モデルは跳ぶ回数が減るし、ぼくも一瞬を逃す心配がないから精神的にもだいぶラクでした。 それだけではありません。連写された仕上がりを見ると、予想していなかったおもしろいカットがいっぱいあるんですよ。たとえば、下降するときに髪の毛が逆立っているカットなど、美容やヘアの作品として十分使えます。単発撮りだったら見逃してしまう一瞬に、ひとの手で作り込めないような自然な髪の美しい流れが表現できているんです。α7R IIIのおかげで新しい発見に出合えました。表現の幅が広がりますね。
――解像度についてはいかがでしたか?
髪の毛の一本一本、細かい花のひとつひとつ、ネックレスの玉のひとつひとつ。すべてがクリアに写っています。洋服は知り合いのデザイナーにボリューム感のあるものを作ってもらいましたが、その質感や美しいドレープも表現されていますし、ハイライトは飛ばず、シャドウはつぶれず、アザ―カットを含めて、すべてすばらしい解像度でした。一発目を撮ったあとでモニターを確認したとき、スタッフみんなから「おーっ」て感嘆の声が上がりました。4200万画素で高速連写できるって、こんなにすごいんだって。
高い精度でAFが追従するから、画作りに集中できる
――ポートレートは<瞳AF>で撮影されたんですね。 瞳AFの検出精度には正直驚きました。モデルの膝から上や全身が写る構図だと、目はちっちゃい点になりますが、それでもしっかり検出する。しかも、モデルが動き回っても確実に追従してくれるし、こちらを向いていなくても、振り返ったらすぐ<瞳AF>が機能するんです。 フォーカスに関しては<瞳AF>に全部任せておけばいいので、光の加減や構図など、画作りに専念できるうえ、モデルとしっかりコミュニケーションをとる時間の余裕もできます。4200万画素だから、フレーム内の隅々の細かいところまで気を配る必要があるので、なおさらピントをカメラに頼れるのはうれしいですよね。
こんなところでも<瞳AF>が効くのかと感心したのは、モデルとカメラの間に文様的な前ボケがあったシーンとモデルがレンズの入った眼鏡をかけているとき。並みのAFだったら、障害物や眼鏡にピントが合ってしまいますが、『α7R III』は瞳を逃しませんでした。
スタジオワークで活躍した、UHS-II対応の高速転送機能
――4200万画素の高解像なので撮った画は当然、大容量のファイルになります。そこで今回は、記録媒体はUHS-II対応の高速SD『SF-G』を使っていただきました。 10コマ連写でもデータ処理のために間が空くことなく、まったくストレスなく撮影できました。今までのメモリカードだと、撮影中にモデルがいい感じになっていても、データ処理の時間がどうしても必要になりますよね。そんなときに「ちょっと待ってて」と水を差すのも興ざめなので、撮っているフリをすることがあったんです(笑)でも今回はそのようなストレスを感じることがありませんでした。UHS-II対応のα7R IIIと、SDメモリーカード「SF-Gシリーズ」のような高速コンビでストレスフリーを経験してしまうと、もう後戻りはできないですね。
スタジオでの撮影は、テザー撮影用にPC側にはあらかじめ今回新しく出たソニーの純正ソフトウェアシリーズ『Imaging Edge』のソフトをダウンロードして、カメラとPCはUSBケーブルでつないで、JPEGとRawデータをPC側に同時に飛ばしていました。これだけ大きなデータでもPCまで瞬時に転送できるのでこれは便利ですね。今回のジャンプの撮影では、花の散り具合も気になってけっこうまめにモニターでチェックしていました。あと、バッテリーは容量が従来の約2.2倍の大容量になった『NP-FZ100』となりましたが、一日中バッテリーを気にせず、撮り続けられましたよ。 4200万画素でいいなと感じたのは、トリミングしても使えること。カタログやポスター、雑誌などの紙媒体を中心にずっとやってきたので、つい何年か前までは縦位置がほとんどだったんですが、最近はWEB用に正方形に近いものや横位置もくださいってよく言われるんですよ。そんな要求には、縦位置の写真を少し引きで撮って、トリミングすることもあります。ここまで高画質高精細なら横位置で撮った写真を縦位置にトリミングすることもできるでしょうね。横位置で全身を撮るとだいぶ被写体は小さくなりますが、4200万画素ならば、縦位置にトリミングしても、紙媒体で使用することも可能だと思います。もちろん、これは画質についてのお話で、縦と横では画づくりは全く違うものになるため通常は別カットとしてしっかり、時間と予算を組んで頂くようにお願いしています。
――どんな人にこのカメラをすすめたいですか? ここまでカメラが進化すると、絵心さえあれば特別な技術がなくても、いい写真が撮れてしまいますね。カメラが優秀だと撮影者は画作りに専念できるところがいい。たとえば、屋外のポートレート撮影だったら、刻々と変化する露出に神経質にならざるをえなくて、「あ、日差しの加減が変わったな。今落ちたみたいだけど、メーターでいくつになった?」ってアシスタントにいちいち確認してもらったりすると、ホントは今シャッターを押したいんだけど押せないという時間があったんです。ミラーレスの『α7R III』だと、環境光の条件の変化はモニターを見ながら全部わかるので、撮影を中断せずに撮りながら絞りを開けたり、閉めたりとかっていうことがそれほど意識せずにできる。フォーカスも、ここまで解像度が上がってくると、ちょっとずれるとすごく気になりますが、AFがすごく良くなったので、カメラに任せて、服やヘア、メークのこととかに集中できますよね。光の使い方はカメラには任せられませんので、どこに立って、どう動いてもらうか、専念できるようになったのはすごくうれしいですよね。欠点はなにかって聞かれても、ちょっと思い浮かばないほど完成されたカメラだと思います。逆に機能やスペックを僕が生かしきれていないんじゃないかって……(笑)。
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