東京カメラ部10選コラボトークショー
〜αの使い手が魅せる新表現〜
国内最大の審査型SNSである『東京カメラ部』
において、延べ4.5億人が選ぶその年の10枚
「10選」に選出された経歴を持つ黒田明臣 氏
と富久浩二 氏が、αユーザーならではの作品
づくりの魅力を語る。
黒田 明臣/フォトグラファー
東京カメラ部10選2015 ポートレート写真を専門としたフォトグラファー。広告・雑誌・企業のビジネス写真を中心に活動する傍ら、セミナー・ワークショップ講師としても活動中。独学で学んだ撮影技法・RAW現像・ライティングに関するテクニックを、カメラ誌・書籍・WEBメディアにも執筆中。元フリーランスのWEBエンジニアで、大規模WEBサービスの設計・運用や立ち上げを担当。国内外でのコンテスト入賞やSNSでの評価を経て撮影案件が増えたことで元々フリーランスであったことも活かしフォトグラファーへとキャリアチェンジ。写真とWEBエンジニアリング、両方のスキルを活かしてSNS時代に何か寄与できないかと模索している。
フォトグラファーWEBマガジンであるヒーコのファウンダー
http://xico.media/
ホームページ
http://artratio.net/
Twitter
https://twitter.com/crypingraphy/
Instagram
https://www.instagram.com/artratio/
富久 浩二/フォトグラファー 1970年福岡生まれ。2012、2013年「東京カメラ部10選」に選出。日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、人が入った物語のある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影。子供の頃の目線、なんとなく懐かしさを感じてもらえるように、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをしたような高さからの撮影が特徴的。 2011年 SONYフォトコンテスト最優秀賞/2011年イギリスのマガジンCamerapixioにて日本人初の掲載/2012年 ナッジオのDaily Dozen2回選出/2012年インドのAPF Magazine Street Photographyにて日本人初の掲載/2012、2013、2014、2015年イラクでの国際写真展に展示。
トークショーレポート
2017年11月11日(土)にαプラザ(銀座)ソニーストア銀座4階カメラコーナーでトークショーが行われ、「東京カメラ部10選」の黒田明臣氏、富久浩二氏が登壇しました。
司会「本日は東京カメラ部で人気のフォトグラファーの2名の方から、それぞれの写真哲学、撮影秘話、αを使用した撮影術などをリアルに語っていただきたいと思います。ご登壇いただくのは黒田明臣さんと富久浩二さんです。さっそく黒田さんから普段の写真活動について教えてください」
黒田「私の場合は、趣味で撮影する写真と仕事で撮影する写真は少し違うのですが、基本的には人物ポートレートを中心に撮影しています。この作品はα7R IIを使用し、自宅のリビングで撮影しました。顔に着色料で色付けした蜂蜜をかけて撮るのですが、蜂蜜はお肌によいという噂なので彼女の肌の健康を考えて撮影しました(笑)。α7R IIだと高画素のうえ、ダイナミックレンジがとても広いのが気に入っています。明るいところと暗いところの階調・コントラストを思ったとおりに再現できます」
黒田「この作品はモデルさんに寝てもらって、手持ちで真俯瞰で撮影しています。チルト可動式液晶モニターだから構図やピントを問題なく確認できるので、どんな条件でも撮影可能なのがα7R IIのメリットのひとつです。手ブレ補正もあるのでピントのしっかり合った1枚を撮影できますね」
黒田「α Universeで『計算と挑戦のポートレート』と題して作品撮影をさせていただきました。つまりトライ&エラーで自分自身の今の技術、感性を表現しようと。この作品で言えば、背景にアルミホイルを用意して、青いフィルターのライトを当て、『どのような写真になるかな?』ということを繰り返しています。失敗することもたくさんありますが、このようなトライ&エラーが大切だと思います」
黒田「こちらは11月末に発売されるα7R IIIをお借りして撮影したものです。レンズは同時発売されるFE 24-105mm F4 G OSSで、ほぼJPGの撮って出しです。極端な加工をしなくても自分らしい写真が撮れたな、と思った1枚ですね」
「この作品は浴室で撮影しています。ものすごく狭い場所なのですが、ディスプレイ(チルト可動式液晶モニター)を広げて腰のあたりからギリギリの状態で撮っています。条件の厳しい環境でも工夫次第で撮影できるところもα7シリーズを愛用しているポイントです」 司会「ありがとうございます。続いて富久さんは、どのような思いで撮影に臨まれていますでしょうか」
富久「私の写真は、基本的にはその場で待って撮るということはないのですが、この作品では雪と足跡という魅力的なシチュエーションに巡り合ったので、15分ぐらいチャンスをうかがっていました」 司会「赤い傘が印象的な作品ですね」 富久「そうですね。もう人が来ないかな、と思っていたのですが、向こうから歩いてくる人が見えてしまったのでちょっと待ってみました(笑)」
富久「あと、私はほっこりする写真を撮ろうと思っておりまして、それを現しているのがこの作品です。実はここにキユーピーがあるのは昔から知っていて、何年かぶりに歩いたらちょうど面白い作品になりました」 司会「キユーピーのシンクロですね(笑)」 富久「何かひとつ見つけたら、それに関連することを想像するんですね。撮影する角度とか、被写体をどう配置するとかが面白いんです。例えば次の作品は、野球ではなく雲に魅力を感じたんです」
富久「雲が稲妻みたいに見えるな、と思ったときに野球少年がいたので、稲妻×魔球、とそのとき思い描きました。そのイメージを投球するボールに合わせています。本当はボールを離す瞬間を捉えたかったんですけどね。このように現場で撮影する対象を組み合わせて考える、というのが私の撮影のポイントとなります」
富久「また、被写体を組み合わせることのほかに、ファインダーに入り込む邪魔なものも“邪魔だと考えない”ようにしています。この作品の場合、動物園のペンギンを撮ろうとしたときに広角レンズだと邪魔なものが入り込んでしまいますね。でも望遠レンズを使うと面白い構図が生まれます。ペンギンの大きさと手前の柵にあるペンギンのイラストの大きさをなるべく合わせるように、少し絞って撮影すると面白くなる。邪魔なものを逆手にとった思考方法を常に意識しています」
富久「海外では私の交差点の写真が気に入られているのですが、その作品を撮っているときに、信号機にその下の風景が写り込んでいることに気づきまして。この作品は横断歩道を歩いている人が写り込んでいるところを捉えています」 司会「ちゃんと信号機のなかに横断歩道が写っているんですね。ありがとうございます。では続いて現在取り組んでいる写真について教えていただきたいと思います。黒田さんからお願いします」
黒田「仕事での撮影も大切ですが、自分の作品づくり、“撮りたい”という気持ちを大切にしたいと考えています。その気持ちを表現するためにWEBメディアで『写真と生きる』という連載をしています。写真に関わる人たちをプロアマ問わず対談して写真を撮るという企画なのですが、せっかくなのでフォーマット化して撮影しようと考えました。α7R IIと80mmのGマスターレンズを使用して全部撮影しています。そして、撮影場所を選ばないようにヘッドショットの画角にしています。寄るとピントが合いづらいのですが瞳AFなら押しながら好きなときに撮るだけ。少しずれてしまった場合でもDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)を駆使すれば微調整ができます。ほかのカメラだと難しいことがα7R IIだと簡単に調節できるんですね」
黒田「シャボン玉を使って表現したのですが、このように面白いと思ったチャレンジを許容してくれる仕事は楽しく撮らせていただいてますね」
黒田「これはスローシャッターで撮っていますが、α7R IIでなければ撮れなかった作品です。波の流れを表現するためにだいたい2秒開けているんです。普通なら絶対ブレますよね。でもちゃんとピントが合ってます。手ブレ補正のすごさがわかる1枚だと思います」
黒田「雑誌のスローシャッターの特集で撮影した作品ですが、ライトが当たっている部分は止まって、ほかの光が当たっている部分は動く、というのを表現しています。このような作品のときも手ブレ補正があるとしっかり撮影できます。さらに連写できると最適な瞬間を逃さないですね。先日α7R IIIを使わせていただいたときに連写スピードがものすごく速くなっていると感じました。このような“動き”を表現に取り入れた作品づくりのためにもかなり期待大です。たぶんすぐに買います(笑)」
黒田「1年半ぐらいいろいろな人を撮影していますが、それらは本当にやりたいことだけをやっている写真です。この写真も見るからに闇というか、ハッピー感がないので仕事だと敬遠されてしまいますが、自分の作品ではそのようなものも継続的に撮っています」 司会「すごく雰囲気がありますが、どのような感じで撮影しているのですか?」 黒田「普通に撮っているつもりですが、人から見るとちょっと変わっているようです。私はモデルさんに『かわいい』とか『いいね』とか言わないでスッと近づいてパッと撮るみたいなスタイルなので。手ブレ補正が効いているので片手で大丈夫です」 司会「やはりα7R IIが黒田さんの撮影に向いているんですか?」 黒田「向いてます。チルト式のディスプレイ(チルト可動式液晶モニター)や手ブレ補正がないと表現できませんし、ダイナミックレンジの広さを満たしているのもα7R IIなんですね。またロケーションで撮るときはディスプレイが見にくいのでEVFで確認しますが、EVFだと拡大表示も可能です。さらに撮った写真もEVFで見られる。そのような撮影効率的な部分でもα7R IIを使用するメリットがあります」 司会「ちなみに黒田さんがお気に入りのレンズはありますか?」 黒田「一番よく使うのは50mmですね。あと85mm。どちらも解像感があり、階調表現が豊かなので現像するときに解像感のある部分はもちろん、ぼけているところの明るさを変えたときも元々の色が出ます。自分好みのコントラストに写真全体を調整できるのも魅力ですね」 司会「ありがとうございます。それでは続いて富久さんお伺いします」
富久「私はモデルさんと目が合っちゃうとダメなタイプだったんです。恥ずかしいというか。でも知り合いのモデルさんが協力してくれて、最近やっと人を撮れるようになりまして。この作品はポートレート専門の方に見てもらって、最後までどうやって撮ったかわからない、と言っていたのでシメシメと思っています(笑)。実はカガミを使って、志村けんのコントみたいな手法で撮影しています。ぼけがある部分とクッキリした部分が交差して、このような凸凹した感じになります。そしてこの表現方法は光学ファインダーだとぼけ具合がわからないのですが、EVFだとぼけ感が視認できるんですね。EVFが作品の幅を広げてくれる好例だと思います」
富久「人を配置した作品も撮っているのですが、ほとんどモデルに指示はしていません。遠くて聞こえないので。でもなんとかわかってくれて撮れた、という感じですね。だんだん人を撮るのが楽しくなってきました」
富久「これもガラスを活かした作品ですが、まだモデルの目を見られないんですね。1対1で撮れない。何かに隠れながらコソコソしながら撮影している感じです(笑)」 司会「ありがとうございました。富久さんのポートレートを拝見しましたが、黒田さんどのような印象ですか?」 黒田「どうしても他者や常識に影響されてしまうのですが、富久さんは子どもの頃からの好奇心とか発想力を持っていると思います。どのような写真でも、富久さんオリジナルの撮り方を見つけるんだろうな、と」 司会「富久さんの写真っぽいな、と思うと富久さんの写真、黒田さんの写真っぽいなと思うと黒田さんの写真なんですよね。富久さんは黒田さんの写真を見てどのように感じますか?」 富久「上達のスピードが違いますよね。普通の人の5倍10倍の速さ。まだ3年ぐらいですよね、すごいと思います。一度お宅に伺ったら写真関係の本がたくさんあるんですよ。研究しているんだな、と感心しました。見せ方や編集のテクニックには追いついていけません」 司会「ここまで成功した写真を拝見してきましたが、もちろん失敗作もあると思います。ということで今日は失敗例を見せていただこうと思います」
黒田「失敗写真というか、後処理を考えた撮影の例を紹介します。この写真を見ていただくと見るからに失敗作ですね。普通に撮ったらこんな感じになります。ただ、この写真は暗く撮った理由があるんです。ダイナミックレンジが優れているのであえてアンダーに撮っています。その写真を現像したのが次の写真です」
司会「先ほどの写真を現像するとこのようになるんですね」 黒田「顔のディテールとか元々の光などが救済できていますね。こういう後処理を考えた撮影をするのに有効だなと思います。α7R IIは、このような撮影方法ができるように進化しています。ただ、この写真に仕上げようとするとISO100ぐらいのできるだけ低い値で撮影しなければなりません。800とか1600とかだとレタッチ耐性が低くなってしまいます」
黒田「こちらは失敗写真ではなくて、自分が撮影したカットを全部並べています。ヘアメイクさんの手が入っていたり、ライトのテストの途中だったり、そしてこの指さしている写真のあたりから作品として撮り始めています。ちょっとモデルさんに顎を上げてもらったところでOK、撮影終了。でも、そのあと三脚からカメラを外して手持ちでアオリ気味で撮ってみたりすることで、違うイメージの写真が撮れるという例ですね。同じような画角で何枚も撮るよりも、撮影スタイルを変えることで面白い写真を狙っています」
富久「失敗写真を人に見せるの初めてなんですが……。これはポストの赤と白い郵便マークをきれいに撮りたいなと思ったのですがイマイチでした。私の構図のつくり方に三角構図というのがあるのですが、画面のなかで三角に結ぶ部分を見つけるんですね。それを意識してOK写真となったのが次の写真です」
富久「ポストと傘と後ろの看板という赤の三点を結んでいます。多少のブレは雰囲気ですね。歩いている人の歩幅が出るぐらい、1/15秒ぐらいのシャッタースピードだと作品に動きが出ます。このように瞬間を切り取るので、街スナップの場合は常にカメラをスタンバイモードにしています」 司会「今回、富久さんに被写体との向き合い方を教えていただけるということですが」 富久「被写体を何かひとつ見つけたときに、それに執着するだけでなく、まわりのものをよく見ることが大切です。そのなかには邪魔なものもあるかもしれませんが、そのような障害物が邪魔でなくなる一瞬があるんですね。その瞬間を逃さないように撮影します」 司会「今から実際にカメラとモニターをつないで富久さんにコスモスを撮影してもらいます」
富久「カメラはα7 II、ライブビューで撮影します。白い壁にコスモスというありがちなシチュエーションですが、花のほかに柵などの要素を見つけます。邪魔なもののようですが、邪魔ではない、という撮影方法ですね」
富久「影が入ったりするときはスマホのライトが便利です。光るカバーがあるんですね。意外性のある光を足して撮影するのも面白いです。街中などでも使えますし、ポートレートでもほうれい線を消したり、意外と使い勝手がいいんです」 司会「富久さんの撮影のコツが少しわかりました。スマホのライトは今日から使える写真術ですね。それでは最後におふたりの今後の活動についてお伺いします」 黒田「やりたいことはいろいろありますが、継続して自分の写真を撮り続けて行くことが最優先です。あとは早くα7R IIIを買いたい(笑)。α7R IIで困っている問題がすべて解決するんですよね。テザー撮影の場合、α7R IIはUSB-IIなのでちょっと重い。α7R IIIならUSB Type-Cなので快適なテザー撮影が可能です。あと、ダイヤルの誤操作が多いのですが、それもα7R IIIでは改善されています。かゆいところに手が届くのが魅力でもありますね」 司会「ぜひ、この会場でも実機を操作できるので皆さん試してみてください。では富久さんの今後の活動についてお願いします」 富久「最近ポートレートを撮っているので『どうやって撮ってるの?』と思わせるような写真を撮りたいですね。プリントもしますので、そちらも継続して取り組んでいきたいです。西武池袋線の秋津駅に30枚ぐらい貼ってありますので近くにお越しの際はぜひご覧ください」 司会「本日は本当にありがとうございました」
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