「そこにしかない一瞬」を捉える
ドキュメンタリー撮影で活かされたα7R II
〜旅先でのポートレート撮影の幅を広げたミラーレス機〜 フォトグラファー・須田卓馬 氏
須田卓馬 氏は、ポートレートのジャンルで活躍するフォトグラファー。国内でスタジオ中心の仕事を精力的にこなす一方、ライフワークとしてアジアの国々での撮影を続けている。須田氏が旅先に携帯するカメラは「α7R II」。どうして、海外の撮影でα7RIIをチョイスするのか? ウズベキスタンの「カラカルパクスタン自治区」で撮影した作品を見ながら、その理由をじっくり伺った。
須田 卓馬/フォトグラファー
東京都出身。学生時代よりアジアの人々に魅せられ、旅先での撮影を重ねる。大学卒業後、ジャーナリスティックな映像を配信する通信会社に所属。その後、商業的なファッション写真を学び2007年に独立。現在は、主に雑誌やウェブなどでポートレートを撮影している。ライフワークとして、イランに住むアフガン難民の女性Fereshteh(ファラシュテ)の成長を長年追って撮影を続け、2016年春には銀座ソニーギャラリーで『Fereshteh-13years In Iran-』を開催した。
https://www.takuphoto.net
海外での撮影は自分のライフワーク
まだ誰にも知られていない景色を撮りたい
――海外で撮影を始めたきっかけは? もともと旅が好きでバックパッカーをしていたんです。その流れで写真を撮るようになりました。最初は風景を撮っていたんですが、段々と人を撮るのが楽しくなってきて、もっと人物を積極的に撮ろうかなと。元々はフォトジャーナリストを目指していたんですが、現在は俳優さんや女優さんと、ミュージシャンを多く撮影しています。一方で、フィールドワークというか、時間があると海外へ撮影をしに行くという感じです。
――今回の海外作品は、ウズベキスタンで撮影されていますね。どうして、ウズベキスタンに興味をもたれたのですか? イランに住むひとりの難民女性の撮影がひと段落して、さて次はなにを撮ろうかと考えていたときに、大学時代の友人を思い出しました。彼の故郷はウズベキスタンの中にある、カラカルパクスタン自治区で、現地に住んでいました。人口もとても少なくて、もう言語も文化も全然違うので、自分の目で見てみたかったし、まだあまり知られていない場所を撮りたかったんです。ちなみに、カラカルパクスタンとは、黒いとんがり帽子をかぶる民族という意味なんですが、実際に行ってみるとかぶっている人はいませんでした(笑)。
――撮影するにあたって「テーマ」はあったんですか? 今回、あまりテーマを決めずに行ったんですよ。旅をしながら、パックパッカーをしていた時のような感じで、出会った人を撮っていこうかなと思っていたんですが、気付いたらテーマを探していて。人物や家族に密着して撮るのが好きみたいです。 広大な荒野の中にぽつんぽつんとある小さな村で、たまたま出会ったこの家族の雰囲気がすごくよくて。お願いして1日撮って、一回町に戻ったんです。でも、どんな暮しをしているんだろう、もっと撮りたい、という思いが溢れてきて、もう一度その家族の元に戻って、さらに撮影をお願いしました。それが今回の『家族の写真』に繋がりました。
目の前の風景をそっと切り取ることができる
サイレントシャッターと高感度性能
――旅の相棒として、α7R IIを選ばれたそうです。このように被写体の生活に密着して撮影するとき、α7R IIにはどんなメリットがありますか? まずは、手軽さ。小型のαは基本的に旅に向いています。その上でフットワーク軽く被写体のまわりを動き回ってリアルな表情を撮りたい。だから三脚は立てずに、すべて手持ちで撮影しているんですが、さすがに重いカメラではつらいです。あと大きいカメラだと威圧感があって、被写体はどうしても身構えてしまいます。ミラーレスのコンパクトさと軽さはスナップを撮るのに欠かせません。今回のロケ地は旧ソ連で、撮られることに警戒心が強い人々だったので、なおさらでした。
サイレント撮影機能も助かりました。女性たちが透けた布を使って花嫁さんごっこをしている写真などは、その場の雰囲気を壊したくなくて、相手に気づかれずに撮りたかった。シャッターの音がすると、1枚目は撮れるけれど、その後は撮れなくなりますから。今回は、家族の自然な表情を写したかったのでサイレント撮影はかなり役立ちました。
室内の暗い場所での撮影も多かったんですが、感度を上げても、手ぶれ補正も効いているので光量の少ない室内でも安心して撮れます。35mmレンズのときに被写体が動かなければ、シャッタースピードは1/15〜1/30秒くらいで撮れる感覚があります。この一家の撮影では、ISO800〜1000程度まで上げて撮影することもありましたが、ウズベキスタンで別に撮った漁師さんの写真では、夜間の漁をiPhoneのライト機能を照明に使ってISO12800まで上げて撮影したこともありました。
撮影時に露出を合わせられるEVFで
細部までつぶれずに表現できるギリギリを狙う
――明暗のコントラストがついた作品の表現力がすばらしいです。 露出を決めるのがけっこう難しいような、ぎりぎりのシチュエーションが好きなんです(笑)。たとえば、川べりでお母さんが洗い物をしている写真。夕暮れどきですが、ほとんど夜に近くて、実際はもっと暗かったんです。でも、このカメラってダイナミックレンジが広いじゃないですか。ぼくの感覚だと、とくにシャドー部分を起こす表現力に優れている。EVFファインダーで、絞りやシャッタースピードを調整しながら画を確認して、「これなら背景もディティールもつぶれずに撮れる」というポイントを探りました。
朝方の逆光で被写体がシルエット気味になっている写真は、露出合わせは難しいけど画的には狙いたいところ。少しでもディティールが残っていれば、表現できる。α7R IIのダイナミックレンジの広さとEVFファインダーの扱いやすさは、表現の幅が広がります。 撮影中に黒く見える部分がつぶれているかないかを確認するときは、ヒストグラムを利用します。露出の決定は、ISO感度や絞りを固定して最終的にシャッタースピードで調整することが多いですね。あと、いつでも少し暗めに撮って後で起こしています。
被写体との距離感とコミュニケーションに
集中させてくれるオートフォーカス
――屋外のいきいきとした子どもたちの写真も印象的です。 「顔検出モード」を「入」にしてピント合せを任せることも多いですが、この検出能力がホントに優秀で助かりました。ぼくは被写体の周囲を動きながら撮影しているんですが、ノーファインダーでもピントは被写体にばっちり合っている。ピントに関してはもう大丈夫なので、ぼくは彼らとのコミュニケーションや構図に集中できるわけです。子どもたちと一緒に遊んでいるような写真が撮れたのは顔検出機能のおかげです。相手がじっとしているときは、「瞳AF」もONにします。
チルト可動式液晶モニターもよく使っています。おばあさんが窯でパンを焼いている写真は、ローアングルでカメラを地面に置いて撮りました。ピント合わせは「顔検出モード」です。 αは、よく使う機能を好きなボタンに設定できるのですごく便利ですね。僕はカスタムボタン1(C1)は「AFモード」、C2は「サイレント撮影」、C4は「顔検出」。「瞳AF」はダイヤル中央に割り当てています。扱いやすいし、写りもいい。α7R IIは機能的に十分満足しています。でも実は、新しいα7R IIIを現在は使用しています(笑)。「瞳AF」の精度が上がって、テザー撮影もやりやすくなり満足しています。
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