写真家 佐藤健寿 氏×α7R III
特集:この一台で、挑む。すべてに応える。
〜α7R IIIの高解像が描き出す
魅惑のポートレート〜
世界の不思議な被写体を独自の視点で捉え、アーティスティックな作品に仕上げる佐藤健寿氏。今回はインドの北と南を縦断して、α7R IIIでさまざまな作品を撮っていただきました。海外の過酷な環境下でα7R IIIがどのような活躍を見せたのか、存分に語っていただきます。
佐藤 健寿/写真家 武蔵野美術大学卒。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。著書に『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『SATELLITE』(朝日新聞出版社)、『TRANSIT 佐藤健寿特別編集号〜美しき不思議な世界〜』(講談社)など。TBS系「クレイジージャーニー」、NHK「ニッポンのジレンマ」ほかテレビ・ラジオ・雑誌への出演歴多数。近著は長崎市後援のもと端島を撮影した『THE ISLAND 軍艦島』(朝日新聞出版)。
――まずはα7R IIIを使ってみた率直な感想をお聞かせください。
僕はα7R IIも使っていましたが、かなり完成度が高かったので正直α7R IIIにはあまり期待していなかったんです。大きなアップデートはされていないと思っていたんですけど、実際に使ってみて驚きました。α7R IIで「もっとこうだったらいいのに」と感じていた部分が本当に細かく潰されていて、完成度を極めた、という印象です。個人的にはカメラとしてのグレードが一段階上がって、よりカメラっぽくなった感じがしますね。 グリップも良くなりましたし、バッテリー性能がアップしたのもうれしいところ。僕の場合、7〜8割がロケというか、旅先で撮ることが多いんですよ。とくに今回行ったインドみたいな場所では充電できないまま3〜4日過ごさなきゃならない時もあります。α7R IIではバッテリーをたくさん持って行かないと心配でしたが、α7R IIIは1回充電すれば1日は余裕で持ちました。これは大きな改善点だと思います。
――ここからは撮影していただいた写真を見ながらお話を伺っていきたいと思います。この逆光の写真はどのような意図で撮られたんですか?
逆光の写真、けっこう好きなんですよね。これは南インドで撮影したんですけど、この辺りは夕方になるとモヤが出るんですよ。太陽の光がフワッと拡散したような景色は、僕の中では南インドの象徴だったので、思わずカメラを向けました。 実はこういうシーンってけっこう難しくて、普通にパっと撮るとだいたい失敗するんです。でも、α7R IIIは何も考えずに調整することなくきれいな写真を撮ることができます。ハイライトのディテール部までしっかり残してくれるので、逆光でも臆することなく撮れるカメラと言えますね。
――川の色がとても印象的な写真ですが、これはどの辺りで撮影したものですか?
パキスタンとの国境付近にある、カシミールという場所で撮影しました。都市部から車で7〜8時間くらいかかる場所にあるんですけど、これ、インダス川なんですよ。石灰岩か何かの影響でこういう川の色をしているらしいんですけど、色も加工せずに見たままの色を出すことができました。 色再現に関してはα7R IIと基本傾向は一緒だと思いますが、ヒストグラムで言うといい意味で山型になりがちというか、中間のトーンがすごくきれいに出ますよね。この写真の岩肌はもっと黒潰れしていたり、コントラストがついたりしたはずなんですけど、質感もしっかり出ていますし立体感まで表現できたと思います。
――先程の川の写真もそうですが、この写真も絞り開放付近で撮影しているんですね。
ふつう風景を撮る場合、F値を上げて絞って撮ることが多いと思うんですけど、僕は開放付近で撮ることが多いんです。絞って撮ったガチガチの風景写真ではなく、フワッと撮った感じの風景写真が好きで、わざと周辺光量を落すために開放付近で撮ったりするんです。その方が人間の目に近い感じがするし、旅情感がアップすると思って。でもこのカメラで撮るとそういった雰囲気を保ちつつも凄い解像感ですよね。「手持ちで、開放でここまで撮れてしまうのか!」と思うほど感動しました。 いま、インスタグラムとか見ていても、若い人たちはあえて写真を劣化させているじゃないですか。何をもって良しとするかは多様化している時代といえます。ですからガチガチだけの風景写真とは違う見せ方でアプローチしたい、という考えもあっての開放なんです。
――この写真で活用した機能はありますか?
車で走っている途中に見つけて、ドライバーさんにわざわざ停めてもらって撮影したワンシーンです。夕方、たき火を囲んで家族でくつろいでいるところを撮らせてもらいました。こういう時は、顔認識や瞳AFが圧倒的に頼りになります。
これはF1.4の開放で撮影したんですけど、ピントが浅くてシビアになる開放でもしっかり瞳にフォーカスしてくれますからね。「合わせようと思う前に合ってしまっている」みたいな感じがあって。この時は中判のフィルムカメラでも撮影したんですけど、後で見たら鼻にピントが合ってしまっているものもあったので、そういうミスを極端に少なくできるのもα7R IIIの魅力のひとつだと思います。
――この女の子を撮影する時も「瞳AF」を使われたのでしょうか?
ポートレート撮影ではずっと瞳AFをオンにしていました。これは日中に開放で撮っていて、+1の露出補正をしていますが、レンズの性能を含めてとてもきれいに撮れていると思います。Planar T* FE 50mm F1.4 ZAで撮影したんですけど、ぼけもきれいですし、月並みな表現ですけどシャープでツァイスらしい仕上がりですよね。このレンズはプラナーの理想というか最終形という感じがします。
この女の子もそうですが、今回の撮影では出会ってすぐ撮らなきゃいけないパターンが多かったんです。でもα7R IIIは瞳AFがとても速いので、人物撮影もスムーズに撮ることができました。カメラの前で身構えることなく自然な瞬間を撮りたいシーンでは、本当に速いAFがものを言います。
――民族衣装もビーズなど、装飾の細工まできれいに表現されていますね。
南インドの少数民族の衣装ですね。実は正装した彼らを見つけるのがすごく大変だったんです。ガイドによると週に1回マーケットが開催されて、この民族も作ったものを売るためにそこに行くことを教えてもらいました。川沿いの道を通って行くと聞いたので、そこで待ち伏せしたんです(笑)。でも、ちょうどいい光でかつ距離がとれる場所が川沿いには全然ないんですよ。結局、日陰になっている一角を見つけて黒い布をバックに自然光で撮影しました。 ビーズをはじめ、色彩豊かな民族衣装を高い解像感で表現できたと思います。僕のお気に入りは大きなリング状のイヤリングをつけた女性の写真。表情がとても素敵で、シワの感じや肌の質感を忠実に再現できました。線が細かくて中判カメラっぽい仕上がりですよね。
――最後に、カメラファンに向けてメッセージをお願いします。
軽くてフルサイズで、バッテリーの持ちがよくて、画質も文句なし。旅のカメラに求められる要素がすべて備わっているα7R IIIは、おそらくいまの市場では最強の1台です。 プロとアマチュアの作品の違いってちょっとした差だと思うんですよね。最後の最後に、ちょっとした知識を使ってちょっとした調整を行うことでプロの域まで持ち上げる。その最後のワンステップくらいの差しかないと、僕は思っていて。でもα7R IIIで撮れば、カメラ任せでもその辺りの調整までできてしまいますから。そういう意味では「撮影者を堕落させるカメラ」なのかもしれません(笑)。 悩まずにプロのクオリティの写真が撮れるカメラなので、自分の作品には何かが足りない、もう一段上のレベルを目指したい、という方は、ぜひα7R IIIを試していただきたいと思います。
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