風景写真家 高橋真澄 氏×α7R III
特集:この一台で、挑む。すべてに応える。
〜α7R IIIで広がる風景写真〜
〜α7R IIIで広がる風景写真〜
高橋真澄氏は、大自然の中でふいに現れてはすぐに消えてしまう奇跡的な瞬間を、写真という形で永遠に閉じ込める風景写真家。撮影は、気温がマイナス25度にもなるという真冬の北海道で行われました。過酷な撮影現場で、α7R IIIはどんな瞬間を切り取ってくれたのでしょうか。
高橋 真澄/風景写真家 1959年北海道生まれ。大学時代より北海道の山を中心に撮影し始める。丘をはじめとする美瑛・富良野の自然風景を独自の感性で表現し続けている。写真集「風雅」「サンピラー」等著書は70冊以上。北海道上富良野町在住。現在、初写真集から30年を迎えるにあたり、過去の作品から現在の作品をまとめた写真集を制作中。また、四季シリーズ「秋」「冬」発売中、「春」「夏」順次発売。
――α7R IIIの使用感はいかがでしたか。
今までずっとα7R IIを使っていて、とくに不満があったわけではないのですが、α7R IIIは全体的に滑らかになったというか、使い勝手がかなりよくなった。わたしがカメラに求めるのは、導線を邪魔しない機械であること。その意味で、カスタマイズ機能の充実はとくにうれしかった。カメラは作品を撮るための道具です。あとは、道具がどれだけこちらの思考と同調してくれるかが大切なんです。α7R IIIの操作性は、カメラのことを意識させないで被写体に向かわせてくれるレベルまで向上している。撮る者の体の一部のように反応してくれます。無音・無振動の電子シャッターもとても使えるし、画作りもずいぶん進歩した。耐久性や耐水性もだいぶ向上しているんじゃないですか。
――実際に撮られた作品を見ながら話をお聞きします。まずは、光芒(光の筋)を放つ樹木の神秘的な写真です。
光源があって、遮るものがあって、スクリーンがあって初めて光芒を絵にできます。この作品では、太陽の強烈な光、遮る樹木、そして手前側にガスが発生していて条件が揃いました。ソニーのミラーレス一眼のいいところは、ファインダーで見たままの被写界深度が撮れるということ。写真の中央に光の点がありますよね、この大きさは絞りひとつで大きさが変わります。絞りの加減で、エッジが立った作品にするか、やわらかい雰囲気に仕上げるか決められるんです。これが一眼レフだったらファインダーを覗いてもみんな開放で見えるから大変。被写界深度レバーを操作しながら何回も調整しなきゃならない。α7R IIIはその手間がまったくいらない。光の弾け方、フレアの出方などは秒単位で刻々と変わっていきますが、勘を頼りに撮影する一眼レフと比べて、ミラーレスはリアルに見たままが撮れるんですから。この差はすごく大きいです。歩留まりのことを考えたら、風景写真はミラーレスでなければ撮影できません。
空を背景にした作品は、小一時間くらいねばって、寄ったり引いたり、横と縦もいろいろ試して撮影しました。風景写真は、じっくり待って「ここぞ」というところで撮るものだと思ってる人も多いけれど、それは素人の撮り方。わたしはバンバンいきます。連写は使いませんが、ひとつの状況で画角や絞り、ホワイトバランスなどを変えて500〜600カット撮ることもありますよ。
――つづいては、虹のように7色に輝く彩氷。作りこんだ作品ですね。
光源とレンズの角度を調整しながら望遠のマクロレンズでF22まで絞って撮影します。水の反射はPLフィルターで除去。虹色に見えるのは光の回折現象のためで、光が氷にあたる角度によって出る色は科学的に決まっているんです。42度で赤、40度で青とか。カメラは三脚に固定して、同じ状況で何枚か撮って、撮影後に10数枚のカットを深度合成して各色が映えるようにしています。2枚目は漆塗りをイメージして作りました。なんか宇宙的ですよね。
――芸術的な印象の作品。どんな状況で撮影したのでしょうか。
マイナス20度〜25度。これくらい冷えると霧氷がきれいについてエッジの効いた感じになります。そうそう、バッテリーがものすごくよくなりましたね。バッテリーの容量が2.2倍になったという話ですが、実感としてそれ以上。極寒の条件下でもまったく平気でした。わたしはガンガン枚数を撮るから、結構うれしいです。
これはラベンダー畑。撮る角度によって幾何学模様の柄が変わるんですよね。これは被写界深度はあまりいじらずに、ホワイトバランスをいろいろと変えて撮影しました。青と白の陰影をダイレクトに確認しながらシャッターを切る。α7R IIIだったらその微妙な変化をファインダーで見ながら撮影できるので楽しいですよね。
――星空とのコラボレーションも素敵ですね。
太陽の逆光を受けた雪が光っているように舞っている作品と星を背景にした作品。どちらもサイレントシャッターを使ってワイヤレスで飛ばしてバンバン撮ってます。こうした風景写真は、100-400mmの望遠ズーム<FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS>で撮ることが多いけど、シャッターによるブレの心配がまったくない。これはとてもありがたいことです。
――美しい風景写真を撮るコツはなんでしょうか。
どう造形的に作っていくか。リアリティというより、どう見せたいかを意識することだと思います。キツネの足跡がついた作品は、意図的に目線を足跡にもっていかせるように調整しました。ちょうど陽が沈むタイミングを狙っていますが、太陽の位置がもうちょっと高ければ陽の光と青空が目立つし、太陽が地平線に隠れると足跡よりも手前の樹木の存在感が増してくる。なにをメインに表現したいのか、それがはっきりすればするほど強い写真になるのではないでしょうか。
個人的には、この作品が好きですね。すごくシンプルだけど、味があるというか。絶景はすぐに飽きるんです。しみじみとしたものをポンと撮影したい。α7R IIIは、撮る側の意思をスムーズに表現してくれるカメラです。大判カメラや中判カメラでなければ撮れないようなクオリティの写真を撮れて、しかも枚数を気にすることなくたくさん撮れるんですから。これはすごいことですよ。
――最後に、カメラファンの方にアドバイスをお願いします。
風景写真はまずは場数を踏むこと。大自然のパワーはすごいから、どうしても場の力に押されちゃうんですよ。それでも、慣れてくると場の迫力を冷静に受け止められるようになる。そこからですね、こう撮りたい、ああ撮りたいっていうのは。自分の目線で自然をどう切り取っていくかがポイントで、女性の方が男性よりもそういった想いが強いように感じます。こう撮りたい、ああ撮りたいという興味がたくさんあればあるほどチャンスは広がる。その先に、自分だけの切り口が見えてくるのではないでしょうか。そのためにも、日頃から、写真だけでなくいろいろな芸術に触れて、感じて、インスピレーションを感じてほしいですね。
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