写真家 井上浩輝 氏×α7R III
特集:この一台で、挑む。すべてに応える。
〜α7R IIIで撮る、北の風景と動物撮影の世界〜
〜α7R IIIで撮る、北の風景と動物撮影の世界〜
道内最高峰の旭岳を望む東川町をベースに野生動物や風景を撮り続けている写真家・井上浩輝氏に、α7R IIIについて語っていただきました。被写体はもちろん北海道の大自然。α7R IIIは、世界中から注目を集める写真家の創作意欲をどう刺激したのでしょうか。
井上 浩輝/写真家 1979年札幌市生まれ。札幌南高校、新潟大学卒業、東北学院大学法務研究科修了後、北海道に戻り、風景写真の撮影を開始。次第にキタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、2016年に米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。自然と人間社会のかかわりへの疑問に端を発した「A Wild Fox Chase」というキタキツネを追った作品群を制作、発表してきた。 写真は国内のみならず海外の広告などでも使用され、近時は、北海道と本州を結ぶ航空会社 AIR DO と提携しながら野生動物や風景など「いま生きている光景」にレンズを向けている。
――井上さんはα7R IIのヘビーユーザーでしたが、今回の撮影でα7R IIIを使った印象をお聞かせください。
α7R IIの困ったところがほとんど解決された気がします。EVF(電子ビューファインダー)の使い勝手やピント合わせの性能がすごくよくなっている。フォーカスに関してはマルチセレクターとタッチパッドでAF操作ができるようになって、2秒くらいの時間を手に入れることができました。この2秒の差ってすごく大きいんです。たとえば、動物だったら、2秒の間でいろんな仕草や表情を見せてくれますからね。そういう意味で、AFのポイントを素早く自由に合わせられる機能は、撮影のチャンスを広げてくれました。あと、マウントのビス数が増えていますよね。レンズを装着したときのフィット感が上がって、雪が降っているときでも信頼度が増したような気がします。バッテリーの持ちも非常によくなった。先日行った鶴の撮影は、夜中の3時頃から朝の9時まで、氷点下20度くらいの条件下でしたが、一度もバッテリーを替えなくて大丈夫でした。今までだったら4本交換してたのに。液晶モニターの解像度も上がって、でもよく見えるようになったので、撮る側はしっかり確認して撮る責任が増したような。これはうれしい悲鳴です。
――それでは、作品を見ながらお話をお聞きします。はじめは鹿の写真。
被写体にピントを合わせる方法はいくつかあって、この場合は端っこにいる鹿にフォーカスポイントを当てるボタン操作をしてからピピっとAFを合わせたり、一度マニュアルに戻して左手の人差し指でピントリングを触って微調整したり。でも、α7R IIIだったらタッチパッド機能。ファインダーを覗きながらスクリーンにタッチして、グイっと直感的に鹿のいるポイントにフォーカスをもっていって撮れる。この方が、断然早いです。鹿がこちらを向く一瞬を狙って連写しますが、しっかり撮れたのはタッチパッド機能のおかげです。
こちらは高感度の強さを証明するカットです。日没後、ISO 5000で撮影しましたがノイズがまったく気になりません。α7R IIだったらISO 3200までという感覚でしたが、このカメラはISO 6400〜ISO 12800まではいける。日が沈んでもしばらくは撮れるようになったわけで、ぼくの労働時間は確実に増えますね。諦めるのはまだ早いって(笑)。
――この写真は野生動物の気高さを感じさせますね。
被写体はオジロワシ。レンズは100mm-400mmの望遠ズーム<FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS>。2倍のテレコンバーター<SAL20TC>を使っているので、実質800mmで撮影しています。2枚目は、2倍の<全画素超解像ズーム>で実質1600mmです。超解像といってもほとんど実像、十分に使えます。すごいですよね。
――愛らしいリスの作品。カメラ目線がリスと同じくらい低いですね。
最初の写真は地面すれすれ、体をびしょびしょにしながら撮りました。このカットも、α7R IIでは手前の枝や樹にピントがきて撮れなかったかもしれません。今回は、タッチパッド機能でリスにポイントを合わせて簡単に撮れました。2枚目は、突然足元に現われたリスを激写しました。立体感があってお人形さんみたいですよね。3枚目は、クルミを食べているリスがウインクしているカットですが、もちろん狙って撮ったわけでなく、たまたまです。前後のぼけもいい感じになっていますが、それもたまたまです(笑)。撮っている最中は1秒の余裕もないですからね。
――風景写真のなかにしっかりと動物が生きている作品です。
幹の中にフクロウがいるんですが、これが今回の一番のお気に入りです。自然の圧倒的な風景の中で小さな生命が宿っているという現実が高解像度で再現されています。 2枚目も同じです。左下に一匹の鹿が写っていますが、画全体がものすごくクリアで、思わずざわっとする解像感です。撮影時、鹿が現れるまで寒いなかずっと待っていましたが、待った甲斐がありました。逆光の条件で、よくぞここまで写ってくれた。色もそのままいじっていません。本当に、見たままの画が撮れるんですね。
――北海道らしいキタキツネの写真ですね。
キタキツネの写真は、雪の上に腹ばいになって撮りました。 疾走している写真は連写で、躍動感がしっかり表現できています。2枚目は、僕の前で立ち止まって「撮ってくれ」と言わんばかりの目線をくれました。眉間の雪の結晶まで写って、解像感は想像以上でした。最後の一枚は、ずっとキタキツネが坂道を登って行ったところで僕が鳴きまねをしたら振り返ってくれたんです。まるで「なあに?」って言っているような表情をしています。
――最後に、α7R IIIの一番の魅力といったらなんでしょう?
αシリーズは進化のスピードがすごく速いと思います。いろんなところで恩恵にあずかっていますが、ぼくが一番頼りにしているのはEVF(電子ビューファインダー)。ぼくはカメラマンとしての経験がまだまだ浅いので、こんな天気の日に、こんな明るさで被写体にこれだけの光が当たっているときにどんな写り方をしてどんなぼけ方をするのかって簡単には想像できないんです。ところが、ミラーレスの一眼だったらファインダーを覗けば、どう撮れるか教えてくれるんです。単純化すると、一眼レフのカメラは過去を見るんです。撮影者は、過去を見て、それに修正を加えながら撮る。反対に、ミラーレスのEVFはこれから撮れるものを見せてくれる。つまり、EVFには未来が写っているんです。これは写真の腕を一気に上げてくれます。一眼レフだったら、何年もかけて経験を積んで、写るものを感覚としてつかまなければいけなかったのが、αならば撮れるものがはじめからわかっているんですからね。露出にあれこれ悩む時間がそっくりなくなって、その時間を画角や構図にあてられる。これはものすごい革命的な出来事だと思います。
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