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フォトグラファー 池之平昌信 氏×α7R III
特集:この一台で、挑む。すべてに応える。

〜流し撮りの職人が語る、
α7R III〜

α Universe editorial team

世界20カ国以上でF-1GPやラリー等のレース撮影を手がけ、現在も第一線で活躍する池之平昌信氏。超高速で駆け抜ける被写体を追い続け、自ら「流し撮りの職人」と称する池之平 氏は、α7R IIIになにを感じたのでしょうか。

池之平 昌信/フォトグラファー 1966年鹿児島生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。在学中より国内のスポーツ、レースを、1987年からF-1GPの撮影を開始。世界20カ国以上、約50カ所のサーキットなどへ赴き約300以上のレース、ラリー等のイベントを取材・撮影。国内外のレース専門誌、自動車雑誌、一般誌、新聞、カメラ雑誌などへの寄稿多数。社団法人 日本写真家協会会員。
http://ikenohira.com/index.html

――以前からαシリーズを使っている池之平さんにα7R IIIを試していただきました。素直な感想を聞かせてください。

ここ5年くらい新しい機種が出るたびに手に取ってきましたが、一歩一歩進化しているという感じがしていました。でも、α7R IIIとα9に関しては、一挙に2〜3段飛びに進化したと思います。とくに感じるのはEVFの見やすさ、AFの精度、追随スピードです。僕の仕事はAFがすべてといってもいいくらいですが、プロの道具としてついにフルサイズミラーレスのAF性能も信頼できるレベルまできた。以前は、ちゃんと設定を準備して、息を整えて、タイミングをばっちり合わせれば撮れるという感じで、それでも一瞬ファインダーから目を離すとモニター画像になって、そこでタイムラグが発生すると決定瞬間を逃す、といったことがありました。そこがだいぶ改善されて、暗い時や露出補正が必要なシーンも、EVFの画面をそのまま信用できるようになった。基本、EVFで見たままに写るから短時間で撮影できるし、こちらは素早く撮影の態勢に入っていける。スピードが命ですから。 フォーカスエリアに関しては、これまでずっと<拡張フレキシブルスポット>を使っていましたが、α7R IIIでは<ゾーン>もかなり使えました。やっぱり、被写体を捉える範囲が広げられれば広がるほどうれしいですね。たとえば、モトクロスの撮影は選手によって飛ぶ高さが違うので、エリアを広めにフォローできれば撮れる可能性もアップするでしょう。 バッテリーのもちもかなりよくなりました。今までは午前の撮影に1本、午後に1本という感じでしたが、一日1本でOKでした。記録媒体も<UHS-2>になってストレスが減った。これまでだと、書き込み中に再生画像が見られないことがあったけど、その待ち時間がなくなりました。 先ほども触れましたが、ミラーレス一眼の最大のメリットはやはりEVFですよね。撮影中にホワイトバランスや露出を変えたいとき、ファインダーから目を離さないで確認できるわけですよ。撮る寸前でも好きなように変えられるから、ほんの一瞬のシャッターチャンスも逃さない。これが一眼レフだったら大変ですよ。一度、試し撮りして確認しなきゃならないんだから。 それに一眼レフにつきもののミラーショック(シャッターショック)がないのもありがたい。僕は1/8秒で流し撮りすることが多いんですね。そういった領域で、α7R IIIは一眼レフより成功率が高いと思います。シャッタースピードに制限がなくて好きなように撮れるのは、動くものを撮るカメラマンには大きなアドバンテージになります。

――それでは、実際に作品を見ながら解説をお願いします。

α7R III,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 226mm,F9,1/8秒,ISO 100

向かってくるバイクをとらえた一枚です。上下運動が激しいので通常はスローシャッターで撮るのは無謀、ボツ連発のはずですが、上手に撮れました。10コマ/秒の連写モードでささっと撮影しましたが、これが秒4〜5コマだったら苦しいでしょうね。すべてAFで撮りましたが、このシチュエーションだとフォーカスよりも、ライダーとバイクの不規則な動きに同調できるかがポイントになります。

α7R III,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm,F10,1/8秒,ISO 50

これもAFの性能が生きた写真です。かなり高速で走っていますが、1/8秒で成功しました。ドライバーのヘルメットにフォーカスがきていて、そこがブレの芯になっている。流し撮り職人として、この写真は結構好きですね。

α7R III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 200mm,F3.5,1/800秒,ISO 100

これはミラーレスならではの作品です。一眼レフで撮ろうとすると、泥だらけのところに這いつくばらなければならないんです。でも、α7R IIIは地面にカメラを置いてモニターを見ながら撮れる。泥だらけにならなくても済むんですね(笑)。一眼レフのモニターでは、動くものをAFで撮ることはかなり困難です。10コマ/秒の連写で撮りまくれば、砂や土の飛び方や、選手の手の位置、バイクの跳ね具合や背景との兼ね合いなどを比べて、ベストな一枚を選ぶことができます。

――高速で走っている被写体だとは思えないような作品もあります。

α7R III,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm,F5.6,1/640秒,ISO 500

※拡大画像はギャラリーでご覧いただけます。

高解像、高階調性能もここまできたかって感じがします。ライダーの眼差しまではっきりわかる。すごいですねえ。

α7R III,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm,F7.1,1/4000秒,ISO 100

こちらは階調の豊かさがわかる写真。早朝に逆光で撮りました。露出を少し落としてホワイトバランスモードを<曇天>に設定。暗いところもしっかり残っていて、そこからのグラデーションがきれいに表現されている。この色つやはカメラの性能ですね。

α7R III,FE 70-200mm F2.8 GM OSS 200mm,F4.5,1/1250秒,ISO 100

バイクが跳ね上げた砂にピントが合った一枚は、AF性能が良すぎたから撮れたんだと思います。本当は、後ろのライダーを撮るつもりだったんです(笑)。コンマ何秒で舞い上がった小さな砂や土も逃さないってすごいですよね。背景のボケ具合もいい感じに出ています。

――最後は砂ぼこりに埋もれるライダー。こちらの作品も高い階調性が生かされています。

α7R III,FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm,F5.6,1/1600秒,ISO 250

これは逃げていくライダーを追っている構図ですが、普通、遠ざかっていく被写体ってAFは苦手なんですよ。けど、しっかり捉え続けてくれる。このAFの俊敏性と粘りはほめてあげたいですね。α7R IIIのAFはしっかり対象を追従して、かつフルサイズならではの高解像度と豊かな階調性が表現できる。 今後は、高感度の特性を生かして24時間レースなど夜間のレース撮影にもチャレンジしてみたいですね。さらに性能を発揮できるのではないでしょうか。 アマチュアの方にとっては、レースの写真は敷居が高いジャンルだと思うんです。難しすぎるって。でも、α7R IIIはその敷居を下げてくれる。固定観念を捨ててサーキットに来てください。α7R IIIならば、きっといい写真が撮れるはずです。

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