写真家 塙真一 氏×α7 III
〜スナップで活きるポテンシャル。街をロマンチックに〜
街角の何気ない風景も、視線をグッと引き寄せるような印象的な作品に仕上げる塙氏。α7 IIIを片手に大好きな街だというフランスのパリへ。街中の撮影で、α7 IIIのどのような機能が生きたのか、撮影テクニックも交えて話をお聞きしました。
塙 真一/写真家 東京都生まれ。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、俳優やタレント、政治家などの撮影も行う。また、海外での肖像写真撮影や街風景スナップ、夜の街を歩きながら撮影する「夜スナ!」をライフワークとする。写真展の開催も多数。日本写真家協会(JPS)会員。
基本性能が進化して満足度が高い、ビジネスクラスのカメラ
――α7 IIIの印象を聞かせてください。
αのフルサイズミラーレスモデルはラインアップも充実していて、連写など高速性能に優れたα9や約4240万画素の圧倒的な高解像モデルα7R IIIがα7 IIIに先行して発売されています。この2つのモデルを飛行機のシートに例えるならファーストクラス、α7 IIIはビジネスクラスという感じですね。ファーストクラスはもちろん素晴らしいけど、普通の人の感覚で言えば、ビジネスクラスだって十分に満足できる。というか、ビジネスクラスが目標でいいんじゃないですかね。
僕はα9も使っていますが、実際のところ、ここまでのハイスペックは必要ないと思うシーンもあるんです。例えばスポーツや舞台を撮る人は連写性能がより高い方が良いだろうし、ローリングシャッターの歪みが気になる、みたいな人はα9のようなカメラが必要なのかもしれません。でもそれは限られた用途で使用していると思うのです。それ以外の用途では僕も含めて『α7 IIIで十分満足』という印象です。 デジタルの場合、画像処理の進化も含めての画質ですし、バッファーの書き込み速度なども含めていろんな部分が進化しています。ですから新しいカメラの方があらゆる面で性能や機能が高く、快適に撮影できるようになっていますね。α7 IIIのどのような最新機能がスナップ撮影で役に立ったのか、これから作品を見ながらお話ししていきたいと思います。
――まるでポートレートのようにバイクを印象的に写していますね。
立体感があって、フルサイズならではの良さが際立っている1枚だと思います。これは50mm <Planar T* FE 50mm F1.4 ZA>のレンズを使ってF2で撮影していますが、F2でこの立体感です。フルサイズの良さは、50mmが50mmのレンズとしてしっかり使えるところ。APS-Cサイズだと同じ画角にするためには35mmレンズを使うことになりますよね。F2で同じように撮影したら、このナチュラルなぼけ味はまず出ないと思います。 僕は、このぼけ味が立体感につながると思っているんです。フルサイズの良さは、何気ない景色を撮っても立体感を生み出せること。ピントはいくら絞っても厳密には合っていない部分があります。被写体深度が深くなっていて、ピント位置前後も合っているように見えますが、実は合っていません。ピントが合っている部分と合っていない部分のバランスはフルサイズが一番優れていると思っています。 さらに、このピント感もミラーレスの強みですね。フルサイズでも確実にピントを合わせてくれる。α7 IIIはα9と同様の693点像面位相差AFセンサーを搭載しているので、ピントの位置も自由自在。画面の隅にまで持っていけるのも魅力です。
――ローアングルの作品も多く見られますが、使い勝手はどうでしたか。
これはカフェのテーブルの上にカメラを置くような状態で、チルト液晶を使って撮った作品です。傘をさしたお婆さんが良い感じで通りがかったので、フランス国旗が見えた瞬間に撮影しました。 僕はチルト液晶をかなり活用するんですが、チルトを可動するとアイセンサーが自動的にオフになるのがすごく便利。α7R IIからさらに使い勝手が良くなっていることをすごく感じています。やはりα7 IIIはユーザーからの声をフィードバックして、より使いやすいモデルになっているのだと実感しました。
――夜景の作品は、どれもパリらしい素敵な雰囲気ですね。
実は、ソニーのカメラには夜のスナップ撮影に最適なモードがあるんですよ。僕はちょっと赤みがかった夜景が好みなので、その好み通りに仕上げるメソッドがあるんです。 クリエイティブスタイルを「夕景」にセットして、ホワイトバランスを「日陰」に、さらにマゼンタ方向に振るんです。そうすると印象的な赤というかオレンジっぽい色が出てきます。クリエイティブスタイル+ホワイトバランスがうまい具合にマッチして、絶妙な色味を出してくれるんですよ。それがヨーロッパっぽい灯りに見せてくれるので、日本の繁華街で撮影しても同じような印象に仕上げられます。 そのため、夜スナップに出掛ける時は、「夕景」モードが基本。あとは状況を見ながらホワイトバランスを「太陽光」に変えたり、マゼンタやアンバーの振り幅を変えたりして撮影しています。
α7 III,FE 16-35mm F4 ZA OSS 16mm,F4,1/8 秒,ISO640
――夜景の画質についてはいかがですか。
ダイナミックレンジが広く、暗部が黒つぶれしていないところはすごいですね。上の写真では、建物の壁の質感もしっかり表現できています。 さらに手ブレ補正も強力です。夜景ではスローシャッターで撮ることも多いのですが、例えば1/3秒の手持ちで撮ってもブレません。1/3秒というと、多かれ少なかれブレるものなのですが、α7 IIIはまったく問題ありませんでした。手持ちでスピーディーに撮っていくのが基本の夜スナップでは、かなり頼りになります。
――スピーディーに撮るために工夫していることはありますか。
上の写真のように、ちょっと人がブレた状態で撮りたい時がありますよね。普段は絞り優先(A)モードで、絞りは開放に近い状態で撮っていますが、人をブラしたいときはシャッタースピード優先(S)モードにして、1/10とか1/8秒に設定して撮影します。 人をブラしたい場合は(S)モードに変更して撮ります。最初からシャッタースピードを設定しておけば、モードダイヤルを回すだけで人をブラしたい時の設定になるので、すごくスピーディーに撮影できます。最近のαでは、(A)モードでも ISOオートの時の下限のシャッタースピードは、任意に設定*できるようになっていますが、人のブレ具合を調整するには、(S)モードがお勧めです。 *撮影モードがP(プログラムオート)またはA(絞り優先)で[ISO AUTO]選択時に「ISO AUTO低速限界」設定にて、ISO感度が変わり始めるシャッタースピードを設定できます。 (A)か(S)の適正なモードを選んで、ファインダーを覗きながら露出補正ダイヤルで明るさを変えながら撮っていくのが僕のスタイル。やっぱり、スナップ撮影ではいかにスッと構えてパッと撮るかということに尽きますからね。面倒な設定を省いて俊敏性を上げる工夫も必要だと思います。
――スナップ撮影に向いているカメラとは。
コンパクトなボディで、ピントや構図を含めて軽快に撮っていけるカメラですね。その上で、フルサイズセンサー搭載によるぼけ感が得られ、仕上がりにも満足できるα7 IIIは、今や僕のお気に入りの1台です。
今回のパリ撮影では、主にFE 16-35mm F4 ZA OSS をメインに使いました。同じ焦点距離でGマスターもありますが、よりコンパクトなF4通しのレンズにしたのです。一日中歩きますから、カメラもレンズも軽いことはとても大切。フルサイズのセンサーならこのレンズでも十分良い画が撮れますからね。 街スナップではほとんど充電せずに撮り続けることになるので、バッテリーも重要です。α7 IIIはバッテリー性能が格段にアップしたので、ほぼ丸一日もちました。予備に1個持っていれば安心してガンガン撮影できるレベルでしたよ。
――最後に、スナップを上手に撮る秘訣を教えてください。
ファインダーとチルト液晶を上手に使い分けることでしょうか。アングルだけの問題ではなく、可動式のチルト液晶を使った方が撮りやすいシーンがありますからね。 スナップは風景の中に人を入れることで、街の雰囲気も伝えやすくなります。その街で生きている人、過ごしている人を自然な形で撮影するためにも、ぜひチルト液晶での撮影も取り入れてみてください。ファインダー主体で撮影している人は、きっといつもと違ったスナップ写真が撮れるはずです。
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