写真家 カンディダ・ヘーファー
インタビュー
世界最大規模の写真コンクール ソニーワールドフォトグラフィーアワード。第11回の今年は特別功労賞にドイツを代表する現代写真家カンディダ・ヘーファーが選ばれました。ロンドンで行われたSWPA 2018写真展会場でお話を聞きました。
2008年からソニーが支援を続けるソニーワールドフォトグラフィーアワード(SWPA)。 SWPAはプロフェッショナル部門、一般公募部門、ユース部門、学生部門の4つの部門で構成され、このうちプロフェッショナル部門、一般公募部門はそれぞれ10のカテゴリー(ジャンル)に分かれており、写真家個々のキャリアステージやジャンルに合った応募できることが大きな特徴です。 また、今年度の応募点数は32万点にも上り世界最大規模となり、受賞者は国内外のメディアにもとりあげられ、世界的な知名度向上につながるチャンスを得ます。 さらに、各部門賞とは別に大きな業績を既に残した写真家に対しては「特別功労賞」が用意されており、偉大な功績を讃えられます。SWPAはこれらのプログラムを通じて写真文化の継続的な発展に寄与して行くことを目的としています。 本記事では、本年度の「特別功労賞」に選ばれた、現代写真を代表するドイツの写真家カンディダ・へーファーに話を聞きました。 取材:ヤン・ケビン(御苗場・ソニー賞 受賞者)
カンディダ・へーファー。ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーにて、ベルント&ヒラ・ベッヒャーから写真を学んだカンディダは、アンドレアス・グルスキーやトーマス・ルフと並ぶドイツ現代写真を代表する作家として知られています。
初期の作品には、ドイツに住むトルコ人労働者を撮影したドキュメンタリーもありましたが、世界的に知られているのは、美術館や図書館といった公共施設の室内空間を撮影し、人間がつくり出した“空間そのもの”を被写体とした巨大なプリント作品の方かもしれません。
「ドキュメンタリーを撮影していたころ、プライベートな空間に入り込んで撮影することに抵抗を感じていました。その頃からすでに(トルコ人労働者たちが働く)レストランやショップなどの内装も撮影していて、人々が暮らす空間の重要性をわかっていました」(カンディダ・へーファー) アーティストの初期の作品において、後期の作品へと続く共通点が見つかることは少なくありません。 しかし、プライベートの空間から公共の施設へと被写体が変わり、そして写真の中に人間が含まれなくなることで、彼女の作品そのもののスタイルは全く異なるものへ進化しました。特に、際立っているのが被写体との距離感です。 「被写体との距離感の違いは明らかですね。人の撮影では被写体との距離は近くなりますし、空間の大きさも距離に影響します」(カンディダ・へーファー) 公共空間を撮った作品からは、まるで数百年後の世代が過去の文明を見ているかのような客観性をも感じます。
「写真には、撮るという瞬間が必要です。でも、私が最も楽しみを見つけ出すのは最初のテストプリントが上がってくる瞬間。目の前にあるプリントと対峙しながら、記憶ではなくイメージそのものと向き合います。色、光、クロッピング、サイズなど、さまざまな決定が行われます。私にとって創作とは撮影後に起こるものです」(カンディダ・へーファー) ここで彼女が創作と答えた作業は、仕上がりイメージを作り込んでいく作業のこと。 撮影そのものについてはどうなのでしょうか? 「光の状況によって撮影時間は変わります。1枚の作品を撮る際にも、露光時間や被写界深度を変えて複数枚の撮影を行います。一番の課題は人がいない時間帯に撮影をしなくてはいけないという事。オープン前など、限られた時間との闘いの中で、最高の撮影ができるよう努めています」(カンディダ・へーファー)
現在はデジタルカメラで作品制作を行っているカンディダ。大判デジタルカメラのほかに、ソニーのDSC-RX1を日常的に持ち歩き、大判カメラによる撮影とは異なる方法で被写体の細部に向けた抽象的な作品を撮影しているといいます。常に進化を続けているのです。 SWPAの授賞作品展示を見て「クオリティーの高さに驚いた」というカンディダ。最後に、若い作家に対するアドバイスを求めると「辛抱と忍耐」そう優しく答えた彼女は、訪れた時と同様、静かに会場を後にしました。
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