鉄道写真家 山下 大祐氏×鉄道タレント 伊藤 桃さん
「写真で語る、鉄道旅の魅力」
〜鉄道フェスティバル スペシャルトークショー〜
2018年10月6日(土)、7日(日)に「鉄道フェスティバル」で行われた鉄道写真家・山下大祐氏と鉄道タレント・伊藤 桃さんのトークショーの内容をご紹介します。 鉄道事業者による各種展示が行われる「鉄道フェスティバル」が日比谷公園で開催され、今年はソニーも出展。そこで行われたスペシャルトークショーでは鉄道写真の楽しみ方や上手な撮り方など、お二人が実際に撮影した写真を見ながら楽しいお話を聞くことができました。
山下 大祐/鉄道写真家
1987年兵庫県出身。
日本大学芸術学部写真学科卒業後、ロケアシスタントで多様な撮影現場を経験しながら、Webや雑誌、営業写真等の撮影を行う。2014年から(有)レイルマンフォトオフィス所属。鉄道会社のカレンダーや車両カタログ等の撮影に携わる中、カメラ広告、鉄道誌のグラフ等で独創性の高いビジュアルを発表している。日本鉄道写真作家協会会員。
伊藤 桃/鉄道タレント
青森県野辺地町出身。小さい頃から寝台列車が大好きで、初めての子どもだけの旅は中学生の時、妹と寝台列車日本海の二人旅。青春18きっぷで旅を続けるうちに鉄道の旅でしか出会えない旅情にひかれ、いつしか旅の目的が鉄道に乗ることに。2016年1月10日 JR全線完乗。好きな車両は国鉄型キハ40。窓が開く車両。好きな路線は選べないけど一つあげるのならばJR北海道日高本線。好きな駅も選べないけど一つあげるのならば肥薩線嘉例川駅。渋い駅や車両が好き。
新曲CD「出発☆進行〜どこまでも〜」 9月16日リリース
執筆本『桃のふわり鉄道旅』電子書籍版 7月18日配信開始
カメラを片手に伊藤さんが乗車したのは
地元に近い秋田・岩手ののどかなローカル線
――本日は山下さんと伊藤さんに、「旅と写真で語る、鉄道の魅力」をテーマに、撮影していただいた作品を紹介しながらお話を聞いていきたいと思います。伊藤さんはソニーのカメラとともに旅に出たそうですね。
伊藤さん(以下敬称略):はい。「秋田・岩手 ローカル線の旅」をしてきました。私は実家が青森県の野辺地町にあるので、実家に帰る時に久しぶりに鉄道の旅をしようと決めていて。その時に撮った写真をご紹介したいと思います。最初に秋田新幹線で角館に出て、そこから秋田内陸縦貫鉄道に乗ってきました。
伊藤:これは列車から降りて車両を撮影したものです。田園風景など、大自然の中ではカラフルな車両が映えますよね。秋田内陸縦貫鉄道は赤やブルーなどカラフルな車両が多いので、風景とのコントラストを楽しめる写真も撮れるんですよ。
山下:秋田の内陸線には「秋田 犬っこ列車」が走っていますからね。秋田犬をイメージしたラッピングなのですが、車両ごとに基調の色がちがうんです。そういう列車との出会いも旅の楽しさですよね。 伊藤:車窓からだけでなく季節の景色の中を走る車両も撮りたいので、乗り鉄をする時はなるべく駅に降りるようにしています。駅に入ってくる車両を正面から撮れますし、駅周辺を散歩して地元の方とお話しすると、路線のことをより深く知ることができますから。
伊藤:この駅、ご存知の方がいらっしゃったら手を挙げていただけますか。山下さんは見ただけでわかったみたいですが。 山下:でも意外と手を挙げている方は少ないですね。ここは有名なアニメ作品に登場する駅のモチーフになったと言われている駅ですね。 伊藤:実はこれ、けっこう撮るのが難しかったんですよ。線路がとても近いじゃないですか。駅から50mくらいのところにある踏切から撮影したんですけど、そこからだとズームを効かせないとこの写真が撮れなくて。今回はRX100 VIという200mmまでズームができるカメラだったので思い通りの写真が撮れました。ポケットに入るくらい小さいのにここまでズームアップできたのでビックリです!
グリップがよく、撮りたい時にすぐ撮れる。
軽くて小さいカメラは鉄道の旅に最適
伊藤:ここからは三陸鉄道ですね。来年、北リアス線と南リアス線が繋がるので、その前に一度乗っておかないと、と思って行ってきました。今回私が使ったのは一駅だけ降りられる旅の切符。北リアスでは田野畑駅に降りることにしました。かなり迷いましたが、震災後、完全復旧する前に行ったことがあったので、完全復旧した今、もう一度降りてみたいと思って。この辺りは、津波の被害が大きかったところですから。
山下:これは海に入って足元を撮ったわけですね。 伊藤:田野畑駅の近くには海もあるので、せっかくなので入ってみました。足を海に浸けながら、三陸の海をのんびり眺めて、きれいな海が復活してよかったと一人思いを馳せていたので、周りの人にはちょっと怪しい人に見えたかもしれません(笑)。 山下:伊藤さん、こんなに豪華な車両にも乗ったんですか?
伊藤:これは「さんりくしおさい」の愛称で知られるレトロな列車の内装ですね。観光列車として使われることも多いですが、通常運行でも走っていて。本当に内装が素敵なんですよ。ゆったりした椅子と大きなテーブルでリラックスしながら鉄道の旅を楽しめました。 山下:普段からこの仕様ですからね。普通に旅をしていてこんな豪華な列車に乗れるなんて、伊藤さん、ツイていますね。 伊藤:田野畑駅に降りたことで出会えた電車ですね。おかげでちょっと「いい旅、夢気分」を味わえました(笑)。
――今回、伊藤さんにはコンパクトカメラのRX100 VIとミラーレス一眼のα6000を使っていただきましたが、実際に使ってみていかがでしたか? 伊藤:乗り鉄の旅はずっと荷物を持ったままなので重いカメラだと大変ですが、今回使ったカメラはどちらも本当に小さくて軽いので助かりました。RXは想像以上にズームが効くし、αはグリップが良くてすごく持ちやすい。構えてからすぐにシャッターを押せたのでとても使いやすかったです。 山下:どちらも女性でも扱いやすいサイズ感ですよね。しかも、グリップが少し前に出ていて、ひっかかりのある形をしていますから。意外とそれだけで、シャッターを押す時のブレなども抑えることができます。さすが伊藤さん、見るポイントが違いますね! α6000はAPS-Cサイズのセンサーを搭載していますが、フルサイズミラーレスと同じレンズを使えるのが魅力です。レンズはそのままで気軽にステップアップできるので、ぜひ伊藤さんにもαのフルサイズ機を試してほしいと思います。
α7R IIIはISO感度12800も常用できる高画質。
暗がりでもドラマチックな作品が撮れる
――山下さんは伊藤さんが使用したα6000よりもイメージセンサーが大きいカメラを使っていますよね? どのようなカメラを使っているのですか? 山下:フルサイズセンサーを持ったミラーレス一眼、α7R IIIで撮っています。ピクセルを多く持つ高画素であり、連写性能も高くて動く被写体にも強い。バランスのとれた万能なカメラです。 ――α7R III には5つのポイントがありますので、今回はそれに基づいて山下さんに作品を紹介していただこうと思います。 山下:はい。まずは「高画質」についてです。それがわかる作品からご覧いただきましょう。
この作品は群生するアジサイ越しに走るサンライズエクスプレスを写したものです。日没から30分後くらいだったので、撮影時は暗がりの中でした。注目していただきたいのはISO感度。ISO12800で撮影しています。サンライズエクスプレスは走っていますから1/1000秒のシャッタースピードが必要です。そのため感度を12800まで上げたわけです。 α7R IIIはISO12800を常用感度として使えるほど高感度性能を誇ります。こんなに暗い状態で撮影しても手前の花はきっちり写っているところがすごい。 列車の窓明かりを出すためには、かなり暗い状況で地明かりとの露出が揃わないといけません。日中に撮ると露出が落ち込むため、列車の窓明かりは写りませんから。オレンジ色の車内の明かりが表現できるのは、かなり暗い状況ということです。その暗さで撮っても高感度で高い解像力を見せてくれるのは本当に見事です。
頼りになる最高10コマ/秒のスピード性能。
機動性が高く流し撮りでも被写体を逃さない
山下:次は「スピード」について。下の作品はそれがなければ撮れなかった1枚です。画面の右側はトンネルの出口があり、列車が出てきた瞬間を狙いました。α7R IIIは最大秒間10コマの連写ができるので、こういったタイミングが取りにくいシーンでも活躍してくれます。
山下:こういう時は連写に頼るしかないんですよね。でも、連写が遅いカメラでは頼ろうとしても頼れない。状況が見えていたら1枚切りでも撮れる可能性はありますが、見えないところから出てくるので非常に難しいところです。 でも頼れる連写性能があれば、タイミングを見計らって連写すればいいわけですから。思い通りの位置に失敗なく列車を止めるためには、α7R IIIのような連写性能の高いカメラが役立ちます。
山下:次の作品では「機動性」の高さについて解説します。僕はファインダーアクションの良さも機動性や撮りやすさに繋がっていると思っているので、連写時のファインダーアクションについてお話したいと思います。 上の写真は列車の動きに合わせてカメラを振り、列車の動きにシンクロさせることで背景が流れて写るという「流し撮り」で撮影したものです。これも連写を使っていますが、流し撮りの場合は連写で構図を安定させつつ、動いている被写体を追いかけて、かつシャッターを切り続けなければならないためファインダーの見え方がカギになります。 α7R IIIは連続撮影枚数の選択が可能ですが、ここでは最高8コマ/秒と10コマ/秒で撮った時のファインダーの見え方の差について説明します。8コマ/秒で撮影すると、1コマ撮るごとにブラックアウトをして、明るくなった時はレンズの先のライブの画が見える。つまり常にライブビューで見ることができるわけです。しかし、10コマ/秒の時は静止画が連続します。速さ優先で、撮った静止画が連続して見えるという状態になるためライブビューで見ることができません。 秒間10コマでは被写体を追い続けることが難しいので、流し撮りをする場合は秒間8コマの連写を選んで流し撮りをしていただければ、バシッとキマりやすいということ。何を優先するかによって連写の特性を活かせるところも、α7R IIIが持つ機動性の高さだと思います。
スタミナを使う撮影でも安心のバッテリー性能。
専用設計レンズなら難しい状況でもAFを活かせる
山下:続いて「スタミナ」について触れたいと思います。これは山梨県・北杜市にある大糸桜というしだれ桜とともに、星空と列車の窓明かりを写したものです。実際はレンズの前を遮光している時間もありますが、長時間露光で撮影しました。列車が来た時に窓明かりを写し、そのあと30秒くらい開けっ放しにしてシャッターを閉じるとこのような画が撮れます。ちなみに桜への光は自分で当ててライトアップしているんです。 伊藤:光でいろいろな演出をしないといけないので大変ですね。 山下:夜の撮影では自分でライトを持っていくことも多いですよ。光を取り込んでいる時間と遮光している時間を含めて、トータルでシャッターが開いている時間は1分8秒になっています。日没後、1日の最後にこういった根を詰めて長時間露光の撮影をしているとバッテリーのスタミナが気になるところです。それまでにたくさんの写真を撮っているわけですから。でもα7R IIIはバッテリーの持ちがいいので、出ずっぱりになる鉄道撮影でも安心です。
山下:最後に「専用設計レンズ」についてお話しします。専用設計のレンズが数多くラインアップされているのもαの魅力の一つ。レンズに内蔵されているモーターはボディと連携し、AF性能や画質性能にも影響するので専用設計の方が圧倒的に有利です。今回ご紹介した作品はすべてフルサイズミラーレスのカメラに特化した「G Master」という最高峰ブランドのレンズで撮影しましたが、このシリーズは本当に秀逸です。 上の作品はAFで車掌さんのシルエットにピントを合わせていますが、この一つ前のコマを見たら大きくピントがぼけていました。要するにAFでピタッと合った最初の1コマです。大雪が降る中、駅に入ってきた電車を吹き込んでくる雪と格闘しながら撮影しましたが、こういう難しい状況でもばっちりピントが合うのはカメラ本体の性能はもちろんのこと、専用設計レンズのおかげです。
鉄道の魅力をより多くの人に発信できるよう、
心に響くような写真を撮り続けたい
――最後にお二人に、鉄道写真の魅力はどんなところにあるかお話しいただけますか?
伊藤:美しい景色の中、列車でコトコトと行く時間が私はとても好きです。車両、駅、出会う人々、一つひとつに物語が見えるところが鉄道旅の良さだと思いますし、私もそういう部分に魅力を感じています。写真は本当に素人同然ですが、旅をするとどうしても写真に収めたいという景色がたくさんあって。それを、たくさんの人に伝えたいという夢があるので、これからも地道に写真を撮り続けたいと思っています。 写真は自分が見た景色を誰かに伝えられるツールの一つですから。私が見てきたいろいろな風景をいろいろな人に見ていただき、さらに良い評価をもらえるように良い写真を撮りたい。そのためにも頑張って写真の勉強もしていきたいと思います。
山下:鉄道は私にとって触れていきたい文化というか被写体なので、これからも写真を通して画にしたいものを表現し、その魅力を伝えていきたいと思っています。例えば格好良さとか、日本の風土を細く走るローカル線とか。鉄道車両にはデザイナーさんがいるので潜在的に格好良いものですが、その格好良さをさらに際立たせる作品が撮れれば最高です。 これからはフルサイズミラーレスカメラが主流になる時代です。みなさんもカメラを買うとなったら、αシリーズも選択肢に入ってくると思います。その時はぜひ今日見た写真を思い出していただいて「あんな写真が撮れるなら」と検討材料にしていただければと思います。私は新作をたくさん撮って皆さんに発表していきたいと思っているので、作品と名前だけはぜひ覚えて帰ってください! ――伊藤さん、山下さん、今日はとても楽しく、ためになるお話をありがとうございました。
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