Majestic TRAIN- 威風鐵道 -
鉄道写真家 中井精也 氏 × α7R III Vol. 8
ドラマチックな鉄道写真をコンセプトに、中井氏が撮る心に響く鉄道風景をデジタルカメラマガジンとのタイアップ企画として毎月コラム形式でお届けします!
新年あけましておめでとうございます
鉄道写真家の中井精也です。
さて今回の舞台は、宮崎県を走る日豊本線の小丸川橋梁です。
高鍋駅に近く、広大な小丸川の河口付近に架かる鉄橋ですが、トラスや防風壁などがなく、とても絵になります。
そして冬には鉄橋の奥から朝日が昇るため、ドラマチックな光景が狙えます。今回はこの鉄橋にこだわって撮影しました。
最初にご覧いただく写真です。撮影日の日の出時刻は7時9分。
辺りがまだ暗い6時ごろから、鉄橋が見える橋に立って夜明けを待ちます。ようやく辺りが徐々に明るくなってきた6時43分、宮崎行きの特急ひゅうが1号が、静かに鉄橋を横切るシーンを、α7R IIIにFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを装着して焦点距離198mmで撮影したのが1枚目の写真です。夜明け前のブルーモーメント。すべてが青に染まる世界に列車が過ぎゆく風景は、とてもドラマチックです。
ちなみにこの写真のポイントですが、画面左下の小舟です。こうした副題を入れることで、見る人に旅情を感じてもらえるような作品になるのではないかなって思います。
撮影していたのは、このような場所からです。
まだ薄暗いですが、登校する学生さんがたくさん通っていきます。 ちょっと驚いたのが、みなさん僕にも「おはようございます!」と、挨拶をしてくれたこと。思わず人の温もりを感じてしまい、心がポカポカになりました。
次にご覧いただく写真はこちらです。
日が昇ったあと、鉄橋のまわりを歩いていると、中洲に小さな森を見つけました。何気なく森に入って鉄橋を見ると、空をバックに木々のシルエットがアートのように浮かびあがるのを発見しました。これはイケる!と思った 僕は、列車がうまく見える隙間を探しながら、いろいろな木の下にもぐりこみ、試行錯誤を繰り返し、構図を組み立てました。
そして撮影したのがこのカット。装着したのはFE 16-35mm F2.8 GM 。焦点距離16mmの強烈なパース(遠近感)と逆光に輝く葉が、不思議な世界観を生み出してくれました。
それから、木々の隙間からとはいえ、このような完全な逆光の状況で、フレアやゴーストが出ない描写力には、改めて驚きました。
今回、3枚目の写真です。
鉄橋の海側に移動してみると、海からかなりの波が岸に打ち寄せていることに気付きました。かがんで低い位置から見てみると、波がかかって濡れた石が、太陽の光を受けてキラキラ輝いています。
その石の輝きを前ボケさせて撮ったのが、この写真です。
撮影に使ったレンズはFE 24mm F1.4 GMです。このレンズの開放F値は1.4。
その開放で撮影することで、まるで砂浜に散りばめた宝石のように、ロマンチックな作品に仕上げることができました。
ちなみに、日差しが強くとても明るい状況で、開放で撮影しているので、NDフィルターを使っています。
撮影はこんな体勢です!まったくロマンチックではないですね(笑)
打ち寄せる波にカメラが濡れないように、十分に気をつけながらかなり低いアングルで撮影しました。
それにしてもスイスに持ち出し時も感じたことですが、このレンズ、大口径の単焦点レンズとは思えないほどコンパクトで軽くて僕の大のお気に入りです。
あまり褒め過ぎるとなんですが、でも決して大げさではなく、この素晴らしい描写力と機動力を実現したFE 24mm F1.4 GMは、歴史に残る銘玉だと僕は思います。
そして4枚目の写真がこちらです。
砂浜を歩いていると大きな水たまりを見つけたので、3枚目の写真と同じように水面ギリギリの位置から狙いました。
今度はレンズをFE 16-35mm F2.8 GMに変えて撮影。水たまりが水鏡になり、幻想的な写真が撮れました。
このように創造力を膨らませて、自分が心動かされる風景を探し、それを強調するような撮り方を思考することで、撮れる写真の魅力は何倍にもアップすると僕は思います。
最後に、一気に2枚の写真をご覧いただきます。
朝日の光で水面に一直線に伸びるサンロードがとても綺麗です。
横位置の写真をよく見ると鉄橋の奥には、真冬の冷え込みが厳しい朝などに、海や川の水面に霧が立ち上がってる“けあらし”が微かに分かるかと思います。
なお縦位置の写真は、7時20分の「にちりん4号大分行き」で、横位置は7時36分の「ひゅうが5号」を撮影したものです。
縦位置はサンロードを主役と決め構図を縦にし、横位置は壮大な感じにしたかったので風景全体を入れるべく横構図にしました。
このようにほぼ同じ状況でも、自分が何を主題にしたいかによって、フレキシブルに構図を変えることも、ぜひ試してみてください。
1つの鉄橋にこだわって撮影した今回の撮影。思考錯誤して創造力を膨らませることが出来て、とても刺激的な撮影となりました。
それでは来月もこの場所で!中井精也でした。
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