CP+スペシャルセミナー「写真について語ろう2019」−αcafeスペシャルフォトコンテスト受賞作品発表と作品講評−
福田健太郎氏、野口純一氏、山下大祐氏
【前段】
カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2019」ソニーブース内で、3月1日(金)に「αcafeスペシャルフォトコンテスト」の受賞作品の発表と、審査員の福田健太郎氏、野口純一氏、山下大祐氏による作品講評が行われました。そのスペシャルセミナーの様子をレポートします。
福田 健太郎/写真家 1973年、埼玉県川口市生まれ。幼少期から自然に魅かれ、18歳から写真家を志す。写真専門学校卒業後、写真家 竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスの写真家として活動を開始。日本を主なフィールドに、生命に溢れる自然の姿を見つめ続けている。写真集に『泉の森』、『春恋し-桜巡る旅-』など著書多数。公益社団法人 日本写真家協会会員。
野口 純一/野生動物写真家 1968年、埼玉県生まれ。北海道在住。2輪、4輪のエンジニア時代にバイクツーリングで訪れた北海道にひかれ、2000 年に移住。キタキツネの撮影をきっかけに、02年から写真家として活動を開始。北海道を中心に国内外の野生動物を撮影し、雑誌やカレンダー等の各種媒体に作品を提供。野生動物に関する深い知識と豊富な経験に基づく的確で粘り強い撮影スタイルから生み出される、力強く美しい作品には定評がある。公益社団法人日本写真家協会 (JPS) 会員。 http://www.junsetsusha.com
鉄道写真家/山下大祐
1987年、兵庫県生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業後、ロケアシスタントをしながらwebや雑誌等の撮影をする。2014年から(有)レイルマンフォトオフィス所属。鉄道会社のカレンダーや車両カタログなどの撮影に携わる中、カメラ広告、鉄道誌のグラフ等で独創性の高いビジュアルを発表している。日本鉄道写真作家協会会員。
「CP+」の感想
司会:現在ご活躍の三人の写真家の方を審査員に迎えて行われた、「第8回 αcafeスペシャルフォトコンテスト」の受賞作品の発表をさせていただくと同時に、その受賞作品の講評も審査員の先生方から直接いただきます。
まず毎年恒例となりました「CP +」、今年も非常に盛り上がっております。そこでイベントの率直な感想についてお伺いしたいと思います。
福田:もう2日目になりましたね。さらに盛り上がってきていて、昨日、今日で2周ぐらいしているのですがまだ見きれていない。だから、これが終わったらもう少しだけ。じっくりと写真とかいろいろなものを楽しみたいと思います。
野口:本当に今日もすごい盛り上がりで、私もびっくりしています。年々このイベントの盛り上がりがすごくなってきているので、本当に皆さんの生活の中で写真というものがどんどん欠かせないものになってきているのかなと、嬉しく思っています。
山下:もう例年以上の盛り上がりで本当にワクワクします。このステージに立つ人間としても非常にワクワクするような盛り上がりを感じています。もしかしたら、この中に今回の受賞者の方もいらしているんじゃないかなとか、そういうのを期待しています。
福田:そのドキドキ感が伝わってきますね。
野口:こっちもドキドキしていますね。
司会:この「αcafeスペシャルフォトコンテスト」も今回で8回目を迎えました。改めまして、このフォトコンテストの概要からご説明させていただきます。「αcafeスペシャルフォトコンテスト」は、αユーザー写真投稿コミュニティーサイト『αcafe』における年に1度の最高峰のフォトコンテストです。今回は2018年12月25日から2019年1月31日に応募された作品のなかから各部門の優秀作品が選出されました。部門は一般の部から「生き物」、「乗り物」、「自由」の3部門。そして、αcafeユーザーの最高ランクの称号である「カンピオーネ」のメンバーのみで行われる、「カンピオーネ限定部門」からなり、各優秀作品が選ばれます。今回も実に多くの作品が集まりました。ではさっそく一般の部「生き物部門」の作品から参りましょう。
一般の部【生き物部門】
司会:審査いただいたのは野口先生です。野口先生、「生き物部門」の応募作品全体をご覧になっていかがでしょうか。
野口:生き物部門なんですけども、ワイルドライフからペット、果ては水族館に至るまで、非常に幅広い応募をいただきました。ありがとうございます。全体的なレベルの高さにも大変驚いて刺激を受けています。
司会:どんな作品が選ばれているのか楽しみです。では、まず銅賞の作品からです。銅賞はこちらの作品です。
銅賞
司会:見事銅賞に輝いた、猫の作品ですね。野口先生、受賞のポイントはどのようなところだったのでしょうか。
野口:テーブルの映り込みを蜃気楼に見立てた作者の方の発想の面白さと、主役の猫のちょっと拗ねたような表情。これがすごく気に入ったんですね。あと背景の処理もすっきりとバランスよくまとまっていて、とても良い作品だと思いました。
司会:猫の性格が伝わってくるような、かわいらしい作品ですね。ありがとうございました。では、続いて銀賞の作品です。
銀賞
野口:パッと見た瞬間の全体の美しさ、これがものすごく際立っていて印象に残った作品です。そして、おそらくテーブルの上でセッティングして撮影したものだと思うんですけれども、使用したレンズの性格を非常にうまく使っていて、作者の方はだいぶ写真を撮り慣れているんだろうなと感じました。
司会:美しいですね。ありがとうございました。
司会:では「生き物部門」で金賞に輝いた作品をご紹介しましょう。金賞はこちらの作品です。
金賞
司会:凛々しい作品ですが、野口先生こちらの作品の受賞理由をお願いいたします。
野口:今回、金賞は全く迷わなかったですね。タイトルを見て、この写真を見た瞬間にもう即座に決定した作品です。作者の方のイマジネーションの凄さですよね。実際に目の前の光景をそのまま写しただけではなく、写真から受けた作者の方のイメージ、思い。そういったものを見る方にストレートに伝えられる。そして見た人は「望郷」というタイトルから、虎の境遇や今どういった思いでいるのか、想像力が掻き立てられる。そういった点がとても素晴らしいと思います。
司会:背景のストーリーが見えるというところも写真の魅力のひとつなのですね。野口さんありがとうございました。生き物の写真をよく撮られる方は特にこういったポイントを押さえて撮っていただくと、より良い写真が撮れるのではないでしょうか。
一般の部【乗り物部門】
司会:それでは生き物部門に続きまして、今度は一般の部「乗り物部門」を発表します。審査いただいたのは山下先生です。よろしくお願いいたします。「乗り物部門」の応募作品の全体をご覧になっていかがでしたか。
山下:写真としての質感というかレベルの高さっていうのは、全体を見渡してすごく感じることがありました。ただ私が専門としている鉄道写真が意外と少なかったなぁと(笑)。鉄道と車が若干少なかったかなと思います。
司会:意外ですね、鉄道や車は身近な気がしますが。
山下:そうなんですよね。撮っている方はたくさんいらっしゃると思うんですけどね。
司会:では、こちらも作品、講評ともに大変楽しみです。まずは銅賞の作品から発表いたしましょう。
銅賞
山下:応募いただいた鉄道写真のなかでも1番目立っていたというか、秀でていましたね。このローカル線、ディーゼルカーが走ってるような非電化のローカル線なんですけれども、早朝に奥に霧が立ち込めている風景とともに非常に印象的に写していますね。この狙いがもともとあってこの場所、この時間、列車の時間とにらめっこしながら立たれたんだろうなというのも感じ取ることができます。色の作り方、黒と黄色の世界の作り方が、この時間帯とマッチする、無理のない色だなと思いました。スッと入ってくる印象的な作品でした。
司会:さあ、続いては銀賞の作品をご紹介します。
銀賞
山下:鉄道に対して多かったのが飛行機です。民間機が多かったかもしれないですね。その中でもこの写真に目が留まったのは、背景とのギャップ感といいますか。後ろは結構どんよりとした厚い雲が立ち込めているような、そういう背景の中に陽の当たった飛行機が置かれているというユーモアさがかなりこの作品を際立てているような気がします。「ねらいうち」というタイトルなので、ここに飛行機がピタッとおさまっているところを狙い撃ったのかなと思ったのですが、若干流し撮りしているような感じに見えるんですね。背景が若干ブレているということです。おそらく追いながら撮ったんだろうなと。じゃあ「ねらいうち」って何なんだろうなと。下に写っている、あえて写したホテルとの対比なのかなと解釈しました。同じ長細いものが2つ、空の背景に映り込み、陽が当たっている。それが非常に良かったと思います。強いてですよ? 強いていうなら下にチラチラ見えているものは要らなかったかなというのもあります。
司会:アドバイスもいただきまして。こちら銀賞の作品でした。ありがとうございます。
司会:さあ、ここでいよいよ「乗り物部門」で金賞に輝いた作品をご紹介します。
金賞
山下:即決で決まりました。ほとんど陸地で、ビルが立ち並び、その下を行き交う車。「乗り物部門」ですけれど、車の写真ではないんですよね。奥のずっと先の、消失点の先に見えている船。これこそが主役なんですね。主役に目がいく構図の作り方、遠近感の見せ方というのも非常に上手ですね。また、時間の選び方、色の作り方というのもマッチしてると思います。
司会:ありがとうございます。乗り物の写真を撮られる方はカメラ好きの方のなかでも多いということですので、大変参考になったのではないでしょうか。
一般の部【自由部門】
司会:では、「乗り物部門」に続きまして一般の部、最後は「自由部門」の発表です。審査いただいたのは福田先生です。よろしくお願いいたします。「自由部門」の応募作品全体の印象はいかがでしたか。
福田:「生き物部門」、「乗り物部門」、そのほかが「自由部門」になってくるわけですよね。すごくありがたいことに、たくさんの写真を寄せていただいて。本当に悩みました。
司会:いい写真がたくさんありましたか。
福田:ええ、悩みました。
司会:ありがとうございます。まずは銅賞の作品からご紹介します。
銅賞
司会:この作品、印象的ですね。
福田:ですね。厳冬ならではの自然美をきっちりと、丹念に捉えた姿です。北海道の道東の糠平湖なのかなと思うんですけれども、こういった景色ってなかなか見ることができないんですよ。気象条件と自然の条件がビシッと決まった時じゃないと。湖底から泡がブクブク上がってくるんです。その一瞬を氷でギュッと封じ込めた瞬間の姿。朝か夕方か、上に見えている雪山が暖色に染まっています。手前は寒色で、日陰と日向の両方、光の色温度をうまく生かしてあげて広角レンズのパンフォーカスでキリッと緊張感あふれる作品に仕上げています。見事ですね。
司会:どれぐらい粘って撮ったんだろうと想像してしまいますね。ありがとうございます。では続いて銀賞の作品です。
銀賞
福田:「渋い」という一言ですね。光と影の魔術師、レンブラントの絵画を髣髴とさせるようですね。コントラストやシャープネスが、カチッとして強烈な “写真です”って主張するような作品をよく見るのですが、こちらの写真はその場の空気感、厳かさ、そういったものをうまく表現しようとしていますね。撮影者の“被写体の男性をしっかりと撮らなければいけない”という緊張と、“撮りたい”という熱い思いが感じられます。人物だけでなく、生活感あふれる環境も素敵ですよね。もう悔しい、こんな写真が撮れて。おめでとうございます。
司会:悔しいのですね。
司会:それではいよいよ一般の部「自由部門」の金賞作品をご紹介いたしましょう。
金賞
福田:α7R IIIなんですね、フルサイズの。これはもう狙っているなと。イメージを高めての、初日の出。くまさんは“この姿を捉えるんだ”っていう気持ちでこの位置に立っているんです。前方の防波堤で初日の出を拝む方が列をなしていますね。太陽をシャープに捉えているという姿が現実感も溢れますし、人の気持ちですよね、心に訴えてくるものがある。そういう姿があるから金賞に選ばせていただきました。ありがとうございます。
司会:ありがとうございました。「自由部門」となりますとテーマが限定されていないので、発想が非常に重要になってくると思います。そういった点も含めてヒントになったことがあったのではないでしょうか。
【カンピオーネ(CAMPIONE)限定】
司会:それではいよいよ「カンピオーネ限定部門」に移りたいと思います。まず「カンピオーネ」についてご存じない方のためにご説明いたします。αユーザーによる写真投稿コミュニティーサイトである『αcafe』。ここに投稿された作品に対して、他のユーザーからの評価として「ブラボー」がつきます。その数が一定数に到達しますとランクアップしてさまざまな特典があります。「カンピオーネ」はそのすべての8ランクの中で最高ランクに到達した方に与えられる称号です。これは『αcafe』の中でも非常に人気のある、選ばれた方々しか持てない称号です。この限定部門でのフォトコンテストにおけるチャンピオンは非常に権威のあるものとなるでしょう。
司会:なお、この「カンピオーネフォトコンテスト」は昨年新設された部門で、今回二代目のチャンピオンが決定されました。今年の「カンピオーネ部門」の最優秀賞は、一体どの作品だったのでしょうか。審査は野口先生、山下先生、福田先生のお三方にお願いしました。
栄えある「カンピオーネ部門」最優秀賞作品発表の前に、今回最優秀賞は非常に接戦だったと聞いておりますので、次点の作品も特別にご紹介したいと思います。まずは次点としてこちらの作品です。
特別紹介作品
司会:こちら本当に素晴らしい作品なのですけれども、次点になったのですね。山下先生コメントをいただけますか。
山下:私も評価が高かったのですが。まず、画面全体におかしなもの、邪魔になるジャギーになるものが入っていない。その画面構成さすが「カンピオーネ」でいらっしゃいますね。「物語があるね。」というのが誰かの言葉なんじゃないか。撮影者の言葉なのか、隣のお友達の方を向いている小学生ぐらいの女の子の言葉なのかわかりませんけれども。学校の行事でやってきたお寺か展望台で活動していますよね。見えたものに対して「物語があるね」と言ったのか、この写真に対しての「物語がある」なのかははっきりはしませんけれど、私は女の子の言葉なんじゃないかなと思って写真を見ました。
司会:ありがとうございます。そしてもう1作品、惜しくも最優秀賞には届かなかったのですが、大変素晴らしかった写真をご紹介します。
次点
司会:こちらは審査員代表で福田さん、いかがですか。
福田:茜色の背景にスーッと浮かび上がるように女性をシルエット描写で再現、表現している。「Voltage」というタイトルをつけていますけれども、タイトルを見ても見なくても、いろいろな想像を膨らませられる作品だなと思いました。私は好きなんですけれどもね。
司会:はい、ありがとうございます。では、最優秀賞作品をご紹介いたします。栄えある「カンピオーネ部門」最優秀賞作品はこちらです。
最優秀賞
司会:印象的ですね。受賞のポイントを、代表して野口先生にお願いします。
野口:天の川と富士山を組み合わせた、星景写真としても非常に完成度が高いんですけれども、さらに絶妙な位置に流星を配置したこと。これによって非常にダイナミックな動きのある星景写真になったと思います。壮大な宇宙のスケールを感じさせてくれる。そして地上の灯りも写り込んでいる。我々人類も地球という天体に生きている、この宇宙の一員なんだなというところにまた思いを馳せさせる。総合的にとても素晴らしい作品だと思いました。
総括
司会:「第8回αcafeスペシャルフォトコンテスト」の全受賞作品をご紹介しました。作品審査を行った上での全体の総括などもいただきたいと思います。では山下先生からお願いします。
山下:鉄道の写真をもっとたくさん見たかったなというのはありましたけれども(笑)。『αcafe』のサイトをちょくちょく拝見しますけれども、本当にレベルが高いですね。いつも拝見するたびに悔しすぎてブラウザを閉じます(笑)。そういう非常にレベルの高い場所で皆さん競ってらっしゃいますので、審査できたことも光栄でした。今後とも皆さんで競い合っていただきたいなと思います。
野口:山下先生と繰り返しになってしまいますが、『αcafe』は拝見するたびに非常にレベルの高い作品が多く、我々プロでも刺激も受けてしまうような、非常に活気のある素晴らしい集いだと思っています。
福田:『αcafe』は年々盛り上がりを見せていて、写真を共に楽しむ場として、すごくありがたい場を設けてといただいたと思っております。「カンピオーネ部門」は今回2回目ですのでまだ手探りといった印象を受けます。カンピオーネの舞台に選ばれている人は、どういう風に写真を出したらいいのか、ちょっと迷っているんじゃないかなと思うんです。もっともっと自信を持っていただいて、1番いい作品を出していただければと思います。
司会:はい、ありがとうございました。今回は福田健太郎さん、野口純一さん、山下大祐さんをお迎えして、スペシャルコラボトーク「写真について語ろう2019」をお届けいたしました。先生方、今日はとても楽しく、ためになる話をありがとうございました。
最終ノミネート作品も含め、全ての受賞作品はαcafe内結果発表ページでご覧いただけます
https://acafe.msc.sony.jp/info/contest_2019/result/index.html
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