写真家 井上浩輝 氏
α、RXで写し撮る、
ドラマチックなヒコーキ写真
“北海道の翼”として、道内各地と本州を結ぶ旅客機「AIRDO(エア・ドゥ)」の広告撮影に携わってきた写真家・井上浩輝氏。今回はαシリーズ、RXシリーズの機材を駆使して撮り溜めてきた、珠玉の作品群を井上氏のコメントともに紹介する。
井上 浩輝/写真家
北海道東川町
1979年札幌市生まれ。札幌南高校、新潟大学卒業、東北学院大学法務研究科修了後、北海道に戻り、風景写真の撮影を開始。次第にキタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、2016年に米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』ネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。また、北海道と本州を結ぶ航空会社 AIR DO やSONY、東芝メモリなどと提携しながら、精力的に北海道の自然風景や生き物たちを撮影している。これまで発表してきた作品には、人間社会の自然への関わり方に対する疑問に端を発した「A Wild Fox Chase」というキタキツネを追った作品群などがある。写真集『ふゆのきつね』を2017年に日経ナショナルジオグラフィック社から刊行。また、2017年2月には様々な分野で活躍する人物を取材しその魅力に迫るテレビ番組「情熱大陸」に取り上げられた。
写真集『ふゆのきつね』日経ナショナルジオグラフィック社
写真エッセイ集『北国からの手紙』アスコム
臨場感のピークを逃さず写し止める
機首から尾翼までを画面いっぱいに収めると、ヒコーキの力強い動きを表現できる。αシリーズなら、高精度なAFでコックピットをきちんと捉え、高速連写で迫力のある一枚を仕留めることができる。
離陸直後、大きなベイパーがジャンボ機の主翼上部に出現した。高速かつ加速しながら離陸する大きな機体を画面いっぱいに捉え続けながらシャッターを切っていくには、秒間20コマのブラックアウトフリーのα9だと非常に心強い。(新千歳空港 11月)
1.4倍のテレコンを装着しても気持ちの良い解像感と素早く粘り強いAFのおかげで、着陸進入中の機体の迫力と緊張感を写すことができた。(新千歳空港 9月)
豊かな自然に囲まれた旭川空港の夜は暗く、機体をほんのり照らす街灯りすらない。そのような夜間にランディングライトを煌々とさせながら着陸進入する機体をこの角度から撮影していても、α9のAFは迷うことがなかった。ISO6400でのノイズの少なさにも目を見張る。(旭川空港 9月)
高解像度だから、風景まで立体的に描ける
北海道の風景と機体を一緒に写し込むことで、これまでにないヒコーキ写真になる。αシリーズとG Masterレンズの組み合わせなら、白い機体は浮き上がるように精細に、風景は拡大しても質感を失わずに描くことができる。
ハイライト重点測光は、被写体の白飛びを抑えて撮影したいときに適している。晴れ時々曇りの空へ飛び立つ政府専用機が機首を上げたとき、機首に陽が差した。もっとも明るくなる機首が白飛びせずに日陰が暗くなることで、ドラマチックに写すことができた。(旭川空港 8月)
白樺の森とヒコーキ。吹雪いているものの、フレキシブルスポットで指定した場所にヒコーキを重ねると、難なくAFが合焦してくれる。雪景色の撮影では露出の設定が難しく、暗くなってしまいがちだが、これから撮れるものが見えているEVFには見えている。これらの機能のおかげで、撮影前にイメージした通りの撮影が容易にできることが心地よい。(帯広空港 2月)
北海道最高峰の大雪山旭岳とともにヒコーキを撮ろうと構図を決めてヒコーキの離陸を待つ。ヒコーキが画面の中に飛び込んで来るやいなや、α9のAFが機体を追い始める。この優秀なAFをひとたび味わうと、なかなか他のカメラには戻ることができない。(旭川空港 9月)
質感までリアルに伝える豊かな階調
パーツの質感をリアルに描写できる、ソニーのセンサーには絶対の信頼を置いている。解像力だけでなく、階調力もあるので、光がないところも黒潰れすることなく、微妙なグラデーションもそのままに表現できた。
いったいどれだけの距離を高速に回転し続けてきたのだろうか。黒光りするジェットエンジンのブレードの質感を階調豊かなα9のセンサーが写し出してくれた。(下地島空港 11月)
夕暮れ迫る基地でタッチアンドゴー訓練をする政府専用機がまた滑走路に滑り込んで来た。西の空の残照がピカピカに磨き上げられた機体に反射する。(新千歳空港 8月)
「ピクセルシフトマルチ撮影」機能を使用して薄暗いコクピットを撮影した。被写体の持つ細部の色や質感に加えて、それぞれのスイッチに透けるLEDや電球の明かりの階調も豊かに表現され、空気感が写し止められているのがおもしろい。
望遠以外にも、レンズの選択肢はたくさんある
時には「ヒコーキ写真=望遠レンズ」というセオリーから離れてレンズを選ぶようにしている。すると、今までなら撮ろうと思わなかったアングルがひらめく。ヒコーキ撮影を楽しむ皆さんにも、このシャープな描写と、美しいぼけ感をぜひ体験いただきたい。
ヒコーキを撮影するレンズは望遠レンズだけではない。空港周辺の情景とともに撮ることで季節感を作品の中に取り入れることができる。このレンズは、合焦した部分のシャープさと、ぼけのやわからさの差が素敵だ。(仙台空港 4月)
滑走路のまわりの芝生に寝っ転がって撮ってみたいと思っていた。12mmのレンズを通して見る世界の広がりが気持ちいい。(旭川空港 8月)
レンズ一体型カメラが
ヒコーキ撮影をさらに面白くする
高品質なレンズを搭載するRXシリーズもヒコーキ撮影では大活躍だ。コンパクトデジカメでありながら1.0型センサーを搭載した「RX100 V」があれば、少ない荷物でフットワーク軽く、撮りたいと思ったその瞬間に集中することができる。
あ! と感じたときに、さっと撮ることができる取り回しの良いコンパクトデジカメRX100シリーズも気に入っている。小さなカメラにもかかわらず、実に写りが良く、持ち歩く機材を減らしたいときにとても便利。(羽田空港 7月) 他にもRXシリーズでは24〜600mmの幅広い焦点距離で撮影できる「RX10 IV」というモデルがある。600mmのズームでの圧縮効果はおもしろく、AFスピードは速く、精度も高いためヒコーキ撮影には最適な1台と言える。 このようにRXシリーズからαシリーズ、果てはレンズまで様々な機材で多彩な表現が可能だ。ぜひ様々な角度からヒコーキ写真を楽しんでほしい。
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