Only Railway鉄道写真家 中井精也氏
Vol.1
美しき鉄道風景を、中井氏がαで撮る! デジタルカメラマガジンとの連動企画を毎月コラム形式でお届けします
みなさんこんにちは、鉄道写真家の中井精也です。
1ヶ月のブランクがありましたが、「威風鐵道―Majestic TRAIN−」に続いて、新企画「Only Railway」が今月からスタートします。タイトル名にある「Only」とは、鉄道しか撮らない僕のスタイルに由来するものですが、実はもう1つ意味があります。それは特定の被写体を、たった1本のレンズだけで撮影するということ。
鉄道は決められたレールの上を走るものなので、被写体を好きな位置に移動させることができません。それだけに、被写体やお題となるレンズによってはハードルが高そうですが、僕は撮影が困難であればあるほど燃え上がるタイプなのです(笑)。
今回のレンズはGMレンズとしては脅威の小型軽量を誇る、FE 24mm F1.4 GM。そして被写体は西武鉄道の新しい特急車両001系、愛称Laview(ラビュー)です。
かなり斬新なデザイン。僕は一目見たときからすっかりファンになってしまいました。それでは、早速ご覧ください。
鉄道が専門ではないデザイナーによって生み出された西武鉄道の新型特急用車両「Laview」は、今までの車両にはなかったデザインと、シルバー単色の塗装が目を見張るほど斬新です。
それだけに沿線の風景から浮いてしまうかと思いきや、秩父の自然豊かな風景にも、美しく調和しているから不思議です。
あおり気味の構図なのでパースがつきすぎてしまうシーンですが、あえて大きく画面を右に傾けることで、自然な描写になるよう心がけました。FE 24mm F1.4 GMの歪みのない素直な描写力が、まるで肉眼でみているかのような臨場感でそれを再現してくれました。
2枚目の写真になります。 ほぼ同じ場所で、今度は流し撮りにチャレンジ。1/8秒という低速シャッターを選択することで、画面上部の森が弧を描くように大きく流れ、とても幻想的な写真にすることができました。 先端部の曲面は、まるで弾丸のようにも見えます。
僕は被写体に対するとき、その被写体をどんなテーマで撮るかを考えるようにしています。何も考えずにただ撮るのも楽しいものですが、テーマを決めると、撮影する作品をよりリアルに想像できるようになります。たとえば雑誌の限られたスペースに複数の作品を掲載するような場合には、誌面が単調にならないようにメリハリを付ける必要があります。そんなときに撮影する写真を想像できていれば、同じようなカットを量産してしまい、いざ写真を組もうとしたときに苦労するなんてこともなくなるのです。
今回も、秩父線の山間部の撮影からはじめました。ご覧いただいたように林の中で素敵な写真が撮れましたが、さらに撮り進めるうちに、この車両に合うテーマが、「都会的」「近未来的」「クール」も、素敵ではないかと思うようになりました。そこで訪ねたのは西武池袋線の起点である池袋付近。ここは最近線路をまたぐように高層ビルが建てられ、近未来的な街並みが誕生しています。まずはビルから飛び出してくるLaviewを撮影。低い雲に都会の光が反射して、近未来的な都市の風景になったと思います。
こちらの2枚は線路上に建つビルの真下の部分で、通路から撮影したもの。
建造物の無機質な背景が、Laviewの未来的なデザインに良く似合います。どちらもホワイトバランスを「電球」モードにして、クールな印象に仕上げました。2枚目はエレベーターの壁面のガラスに風景を反射させ、まるで2つの列車が行き来しているような、幻想的なイメージに仕上げてみました。 今回ご覧いただく最後の写真になります。
最後に選んだ撮影地は高層マンションとビル街が建つ線路際。今回は24mmレンズ1本のみでの撮影なので、とにかくパースがきつくなりすぎないように気をつけました。ここでも列車を画面いっぱいに入れてしまうとパースがつきすぎてしまうので、あえて少し遠くの位置で流し撮りし、背景の左右にビルを配置することで、広角レンズで撮ったとは思えないような構図を心掛けました。ほぼ同じ場所で撮影した撮影シーンの動画をご覧ください。かなりの勢いでカメラをパンしているのが、お分かりいただけるかと思います。
如何だったでしょうか? 自分でも24mm単焦点レンズ1本のみで撮ったとは思えないほど、バラエティーに富んだ作品になったのではと思います。
さて次回はどんなレンズで、どんな被写体を狙うのでしょうか? お楽しみに!
それではまた来月もこの場所で。中井精也でした。
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