驚異的な解像感と卓越した表現力
α7R IIIが描く海鳥の楽園自然写真家 寺沢孝毅 氏
世界でも有数の海鳥の繁殖地、北海道の「天売島(てうりとう)」を中心に活動している自然写真家の寺沢孝毅さん。海鳥が子育ての地として選んだ小さな離島は、日本海の強風と荒波によって削られた断崖絶壁など、手つかずの自然風景も見どころのひとつ。海鳥とともにその風景までを美しく写すため、α7R IIIを手に撮影に臨んだ寺沢さん。α9との使い分けやα7R IIIならではの秀でた機能や性能まで、撮影した作品とともに話をお聞きしました。
寺沢 孝毅/自然写真家 1960年北海道生まれ。4歳から野鳥観察を始め、中学1年からカメラを手にする。1982年に新卒の教師として天売小学校に赴任し、すぐに天売島で繁殖する海鳥の保護を手がける。10年間の勤務の後も天売島に居を定め、自然写真家として独立。『海中を飛ぶ鳥 海鳥たちのくらし』(福音館書店)、『ケイマフリ 天売島の紅い妖精』(文一総合出版)、『北極 いのちの物語』(偕成社)など著書多数。
周囲の風景とともに海鳥を撮影したいから
高解像で描写力の高いα7R IIIを選択
――寺沢さんはα9でも撮影していますが、α7R IIIとはどのように使い分けているのですか?
今はα9とα7R IIIの2台が僕のメインカメラです。α9は最高約20コマ/秒という高速連写を生かし、鳥や動物などの動く被写体を大きく見せたい時に使います。瞬間を切り取ると同時に被写体に迫る、という感じですね。α7R IIIは高解像なので、画面の隅から隅まできちっと描写したい時に使います。例えば、雄大な景色のなかに野性の生き物がたたずむ場面を撮ったり、おびただしい海鳥の群れを撮影したり。簡単に言えば、1つの個体に集中して撮る時はα9、背景も美しくしっかり写したい時はα7R IIIという意識で使い分けています。
――α7R IIIで撮影した率直な感想を聞かせてください。
実に素晴らしい、良いカメラだと思います。なかでも解像感や、描写の緻密(ちみつ)さは圧巻です。撮影した写真をモニターで拡大して隅々まで確認しますが、本当に驚くような写真が撮れていることがあります。なぜこんな風に撮れたのか、撮れるのか、と自分でも信じられないような素晴らしい作品が撮れることもありますからね。そのくらい画質が良いので風景を入れ込む撮影では、必ずα7R IIIを使います。
暗部も潰れずにデータを残す
広いダイナミックレンジで緻密な描写に
――なかでも高い解像感や緻密な描写力が際立った作品はありますか?
下の、朝日とともに飛び立つウミネコを撮影した作品ですね。ウミネコの繁殖地である天売島の海岸で、まだ巣作りや繁殖が始まる前のエネルギッシュに飛び回る姿を撮影しました。ウミネコには日の出の時間帯に一斉に群をなして、「これからしっかりと子育てするぞ!」とみんなで士気を高めているような習慣があるのです。その瞬間を、昇ってくる朝日とともに画面に収めました。α7R IIIを手にしたときから、いつか撮ってみたいと心待ちにしていたシーンです。
この作品ではダイナミックレンジの広さがわかりますよね。太陽の強い光が画面に入っていますが、岩場のシャドー部分もウミネコが白い点のようにすべてキレイに出ています。ソフト上で少しシャドー部を上げていますが、潰れて見える部分もきちんとデータが残っているので本当に緻密にディテールが出てくるのですよ。ですからα7R IIIを使う時は、ダイナミックレンジの広さに確信を持って撮影に臨めます。さらに画面の四隅まで高解像に表現し、空の階調も美しい、鳥が躍動する作品に仕上げることができました。
α7R IIIは5軸ボディ内手ブレ補正が優秀なので、三脚なしでもブレずに撮れると判断し、手持ちで撮影しました。手持ちにすると動きが軽くなり、いいアングルを素早く探せるのも魅力ですね。
「G Master」レンズとの組み合わせで
光や空気感をより印象的に描き出す
――「G Master」レンズで撮影した作品が多いですが、カメラとの相性や仕上がりの印象を聞かせてください。
「G Master」レンズと組み合わせることで空気感まで伝えることができて、表現力がさらにアップしますね。例えば下の作品。これはケイマフリとオオセグロカモメを「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」で撮影したものです。手前の岩とそこで羽を休める鳥たちはシャープに写しつつ、背景はふんわりとぼけている。さらに、うっすらとかかっている霧に柔らかな光が差し込んでいて、その描写が実に美しい。このあたりはやはり最高峰レンズならではの描写力です。表現するのがとても難しいシーンですが、僕が表現したい「光」と「空気感」がきちっと描けた1枚ですね。
――ケイマフリなどの黒い鳥は露出を決めるのが難しそうですね。
とくにこの作品は海も岩も背景の崖も暗い色をしていて、全体的に明るい色が少ない場面でした。そんな状況で黒いケイマフリを撮るわけですから、何も調整しないと黒い鳥がグレー掛かって写ってしまいます。黒い鳥なのに、正しい黒に写らない。そんな時に役立つのが、仕上がりの画があらかじめ見えるEVFです。「もう少し黒を締めたほうがいいな」と思ったら露出補整をマイナスにしますが、EVFにはカメラ設定を反映した画が写るので、それを見ながら正しい色に調整できます。ファインダーを覗(のぞ)きながら細かな露出補正ができるのは、とても便利です。
白の世界も階調豊かに表現
抜群の機動力で欲しいシーンを逃さない
――下のハクチョウの作品は、美しい白の世界ですね。
ハクチョウをメインに白い靄(もや)や水蒸気、さらに後ろの樹木と、ハイライトからシャドー部まで階調豊かに表現しています。微妙な色合いやグラデーションなどの描写がとても優れているという印象ですね。カメラをパッと簡単に被写体に向けることができる小型軽量のαが得意なシーンと言えるでしょう。しかもαなら被写体に向けてシャッターを押せば誰でも美しい写真が撮れる。プロでなくてもこのような作品が撮れてしまうのが恐ろしいところです(笑)。この時は−30℃という厳しい環境でしたが、バッテリー消費も含めて通常と変わらずに撮影できたので耐寒性能も優れているという印象です。
高解像なのに連写性能も高い!
奥行の動きを捉えるAF性能も優秀
――通常はα9で撮るような鳥の連写も撮影したのですね。
α7R IIIの連写性能なら十分に鳥を追うことができることを伝えたくて撮ってみました。最高約10コマ/秒で撮れますから、タイミングさえ合えばしっかりその姿を捉えることができます。下の作品群はウトウがエサとなるマイワシを口にくわえ、草むらにある巣に持って帰るシーンを撮影したものです。彼らは時速80kmという速さで飛びますし、巣に帰ってくるのは決まって日没後。暗いシーンで素早く動く鳥を撮ることになりますが、このように難しいシーンでも連写で全コマしっかり撮れてしまうのは見事です。
この時のように、奥から手前に飛んでくる鳥をAFで捉えるのは非常に難しいのですが、連写でもしっかり鳥を追随してくれます。このシーンを撮影して、α7R IIIが描写性能だけでなくスピード性能も両立していることを実感しました。ウトウは天売島にいる海鳥の中でも極めて撮影が難しい鳥です。それを連写で撮れたことで、α7R IIIの実力を証明できたと思います。
全画面を高解像に描写する圧巻の16mm
船の上からでもブレずに撮れるαシステム
――下の作品は16mmという広角で撮影していますが、「FE 16-35mm F2.8 GM」の印象を聞かせてください。
16mmのような広角で撮影すると画像の四隅はピントが少し甘くなったり、画像が流れているように感じたりと、何らかの悪さを起こすものです。今まではそれは仕方がないことだと諦めていましたが、α7R IIIと「FE 16-35mm F2.8 GM」の組み合わせはそういったことを全く感じさせません。全画面が高解像に描写できるので、畳一枚ぐらいに引き伸ばしてお見せしたいと思うくらいです(笑)。
この作品は、ウミネコの繁殖地を船の上から撮影したものです。草が生えている斜面に巣があり、そこから鳥が出てきて旋回しながら舞う瞬間にカメラを向けました。船の上なのでとても揺れますし、三脚も付けられない。当然、手持ちで撮影しましたが、それでもブレることなくきれいに撮れました。船の上のような悪条件の場所からも失敗なく撮影できるα7R IIIは、僕にとっては実に頼もしい存在です。
カメラは真実を伝えるための道具
いかに正確に描写できるかが重要
――今後、α7R IIIで撮影してみたい被写体はありますか?
α7R IIIはこの春のアップデートで動物対応の「リアルタイム瞳AF」が搭載されたので、将来的には大海原を滑空するアホウドリを撮影してみたいですね。今は、鳥類はあまり対応していないようですが、この鳥は海鳥のなかでも大型の部類なので、目の位置がはっきりしていて動物対応の「リアルタイム瞳AF」にも反応してくれるのではないかと思っているのです。期待通りに反応してくれることを信じて、早ければ来年、南半球の海でこの撮影に挑戦しようと計画をしています。
さらに、最近発売された「FE 600mm F4 GM OSS」にも注目しています。1.4倍と2倍のテレコンバーターにも対応しているので、それをつけて撮影したらどうなるか、とてもワクワクしますね。αはレンズとのバランスや手ブレ補正機能が優秀なので手持ちでも撮れるのではないかと期待しています。
――最後に、寺沢さんがネイチャー撮影でカメラに求めるものを教えてください。
そこにあるものをいかに正確に描写してくれるか、というのがまずひとつです。僕は真実を伝えるために撮影しているので、真実をきちっと伝える道具でなければ意味がありません。色彩や被写体の動き、質感、画面の中央だけでなく周辺の部分も正確にきちっと表現するなど、あらゆることを正確に写してくれる機材であることが重要です。
生き物の撮影は難しいので、カメラやレンズにはいろいろな能力を求めます。撮影に行く時は当然多くのレンズを持って行きたくなる。結果的に荷物が重くなるので、小型軽量という方向性は僕にとって非常に大事です。その点、αは小型軽量の路線をきちっと踏襲していて、必要な機能もきちんと備わっている。さらに耐久性も申し分ありません。僕の場合は北海道の島が拠点ということで厳しい寒さ、海での撮影など過酷な環境に持ち込むことが多いですが、トラブルはまったくありませんでした。環境が過酷なほど「撮りたい」「見せたい」と思う場面がありますから、α7R IIIは今後も僕のいい相棒であり続けてくれると思っています。
■寺沢孝毅 作品展「THE MOMENT of Bird」
【写真展スケジュール】 ※入場無料 事前予約不要
・αプラザ(札幌)※ソニーストア 札幌内:
2019年8月17日(土)〜2019年8月29日(木)
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・αプラザ(名古屋)※ソニーストア 名古屋内:
2019年9月21日(土)〜2019年10月4日(金)
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・αプラザ(福岡天神)※ソニーストア 福岡天神内:
2019年11月22日(金)〜2019年11月27日(水)
詳しくはこちら
・αプラザ(大阪)※ソニーストア 大阪内:
2020年2月15日(土)〜2020年2月28日(金)
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【ギャラリートーク】 ※入場無料・事前申し込み制ですが、満席の場合は立ち見可能
αプラザ(札幌)※ソニーストア 札幌内:
2019年8月18日(日)13:00〜14:00
2019年8月18日(日)15:00〜16:00
詳しくはこちら
・αプラザ(名古屋)※ソニーストア 名古屋内:
2019年9月22日(日)13:00〜14:00
2019年9月22日(日)15:00〜16:00
詳しくはこちら
・αプラザ(福岡天神)※ソニーストア 福岡天神内:
2019年11月24日(日)13:00〜14:00
2019年11月24日(日)15:00〜16:00
詳しくはこちら
・αプラザ(大阪)※ソニーストア 大阪内:
2020年2月16日(日)13:00〜14:00
2020年2月16日(日)15:00〜16:00
詳しくはこちら
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