Only Railway鉄道写真家 中井精也氏 × FE 85mm F1.4 GM
Vol.2
美しき鉄道風景を、中井氏がαで撮る! デジタルカメラマガジンとの連動企画を毎月コラム形式でお届けします
みなさんこんにちは。鉄道写真家の中井精也です。
装いも新たに始まった「Only Railway」の第二回目です。この企画は、毎回1本のGMレンズをセレクトして、そのレンズの魅力を最大限に活かして撮りきる!というものです。今回セレクトしたレンズはFE 85mm F1.4 GM。そして撮影地として選んだのは、岐阜県と富山県を結ぶ高山本線です。
下呂温泉、飛騨高山温泉、飛騨古川などの有名観光地を結ぶこの路線は、四季折々の絶景を堪能できる路線です。その中でも最も素晴らしい風景を堪能できるのが、飛騨金山駅から下呂駅にかけて続く、「中山七里(なかやましちり)」と呼ばれる飛騨川の渓谷に沿って走る区間です。
ところで、このレンズは両立することが難しいと言われている「美しいボケ」と「高い解像感」の両方を兼ね備えている、僕のお気に入りのレンズです。ボケの美しいレンズは全体的にふわっとした描写になりがちですよね。でもこのレンズは、ボケている部分は優しく柔らかく、それでいてピント面にある被写体はキリッと高い解像力で描写してくれるので、とても立体感のある作品を撮ることができるのです。
ポートレートに恐らく最適なレンズの1本だと思いますが、鉄道写真においても、唯一無二の描写力を発揮してくれるレンズです。
それでは早速ですが、今回ご覧いただく最初の1枚です。
僕です。(笑) いえいえ。冗談では無く僕の背景に注目してください。 そうです。すごい霧!! 飛騨川の名勝「中山七里」は全長約28kmにわたって渓谷が続きますが、その中間に位置する下原ダムが今回の舞台です。ダム湖畔ギリギリのところを列車が走っていて、鉄道ファンの間でも有名なポイントとして知られています。 ただ、撮影時期は夏真っ盛りなので、沿線風景は見渡す限りただただ緑一色。そこで僕が写真想像力を駆使した結果、幻想的な霧が出る確率の 高い早朝の時間帯で撮影することに決めました。高山本線の始発列車は、焼石駅発5時47分の上り普通列車なので、ホテルを4時に出発して下原ダムへと向かいます。 5時過ぎに現場に着いてみると、予想通り霧が出ています。でも霧が濃すぎて、列車まで霧に隠れてしまいそう・・・。刻々と変化する霧の表情に翻弄されながら、不安とともに列車を待ちます。
今回ご覧いただく、こちらが本当の最初の1枚です!(笑)
全体をベールのように包んでいた霧が収まり、列車が見えるようになった最高のタイミングで、始発列車が来ました。霧と水面が生み出す幻想的なグラデーションを、FE 85mm F1.4 GMは、繊細かつ美しく描写してくれました! というわけで、始発列車で満足いく作品を撮ることができましたが、欲張りな僕はこれだけでは満足できません。(笑) さらに粘って、異なる表情を狙います!
ご覧いただく2枚目になります。 如何ですか? たった1時間半くらいで、風景の表情はここまで変わります。この時間帯は霧に光が当たり、白飛びしやすい条件でしたが、これだけ明暗差が大きい状況でも、色の滲(にじ)みやトーンの破綻もまったく見られない、素晴らしい描写をしてくれました。
最初にお話したように、FE 85mm F1.4 GMを僕が気に入っている理由は、美しいボケと高い解像感の両方を持ち合わせているところです。これは他のGマスターレンズでも言えることなのですが、僕はこのレンズに、個人的にそれを特に顕著に感じます。
さて、今回ご覧いただく3枚目になります。 手前に茂った草の前ボケとダム湖の湖面をこれほどまでに写真の中で同化させることができたことに、正直驚きました。そして2Dであるはずのスチール写真でありながら、まるで3Dのような立体感を感じれる表現にもなっていると思います。
ところで、ほんの少しだけレンズの話から逸れますが、今回の撮影は特別に一足早く、あの話題の新型カメラα7R IVで撮っています。この写真を撮っていて感じた立体感は、なんでだろうと思い、拡大してみたら、驚きの描写でした!α7R IVに関しては、別な機会にたっぷりお伝えする予定ですが、ここでは高画素の凄さの一端を少々。 あの列車の大きさで、「キハ25-1002」という形式番号までしっかりと読めます。うーん。恐るべし・・・
今回ご覧いただく最後の写真になります。 夕方、奇岩連なる「中山七里」の夕景を撮影しました。傾いた光線に輝く水の飛沫が、臨場感とともに描写されました。逆光で大きな明暗差があるシーンでしたが、シャドウ部からハイライトにかけての繊細なトーンが、とても美しく描写されているかと思います。
今回選んだFE 85mm F1.4 GMですが、やっぱり好きなレンズだと改めて思いました。 それでは来月もこの場所で。中井精也でした。
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